海垣サミット in 奄美 参加報告


2013年3月23日、24日の両日、鹿児島県の奄美大島で「九州~奄美~沖縄・海垣サミットin奄美」が開催されました。海垣(インカチ)とは、干潟のような遠浅の海岸に、半円形に石を積み上げ、潮の干満差を利用して魚をとる、伝統的な漁法。世界各地に、この方法で漁業を行なう文化が点在しています。今回のサミットでは、海垣を使った漁法の伝統を持つ世界各地の地域の代表者が集い、海の持続可能な利用について話し合いと交流の場を持ちました。

伝統的な漁法を通じた海とのつながり

2013年3月に開催された「九州~奄美~沖縄・海垣サミットin奄美」は、WWFジャパンと沖縄の石垣島・白保の市民グループ「白保魚湧く海保全協議会」が共催した、「2010年 世界海垣サミットin白保」(第3回 日本 海垣サミット)に続くものです。

第4回 日本 海垣サミットと位置付けられた今回のサミットには、大分県宇佐市、長崎県五島市、島原市、沖縄県竹富町西表島、奄美大島、加計呂麻島から3地域、そして白保の計8つの地域が参加しました。

これらはいずれも、九州から沖縄にかけて広く分布する「石干見(イシヒビ)」、「スクイ、スケ」、「海垣」の復元や再生を行なってきた地域であり、今回、新たに4つの地域からの参加がありました。

石垣島の白保からはWWFジャパンのスタッフ2名と、白保魚湧く海保全協議会の代表2名が出席しました。

1日目は基調講演と事例発表。
まずはじめに、主催者である奄美遺産活用実行委員会会長の朝山毅奄美市長からの挨拶がありました。続いて、基調講演として、関西学院大学の田和正孝教授が「よみがえる伝統漁法 石干見」というテーマで、国内、世界の類似の漁具の分布と呼称について、そして近年の保存、活用の動向を紹介。
また、総合地球環境学研究所の秋道智彌名誉教授より「現代によみがえる「漁具の化石」魚垣と里海創生」というテーマで講演。両者の講演を通して、参加者それぞれが自分たちの取り組みが世界につながるものであり、生物多様性の保全や総合的な沿岸域管理につながる重要な取り組みであるとの認識を新たにしました。

さらに話題提供として、沖縄県水産業改良普及センター鹿熊信一郎氏より「沖縄の里海―海垣や海洋保護区との関係」として、白保での海垣復元が生物多様性の増加と生物生産性の向上につながっていることや沖縄県各地での水産資源管理の取り組みなど里海づくりの重要性の報告がありました。

龍郷町瀬留の海垣
近くには「平家漁法跡」という看板が立てられていました。

その後、事例発表では大分県宇佐市の長洲アーバンデザイン会議の嶌田久生副議長から「長洲の石干見の現状と課題」について、西表島をほりおこす会の石垣金星会長から「西表島の伝統漁法」、龍郷町文化財保護審議会の當田嶺男会長から「龍郷町瀬留集落の「海垣の現状と課題」」など8つの事例の発表があり、白保からも、海垣の復元と、その後のサンゴ礁保全の取り組みについて、魚湧く海保全協議会の赤嶺真事務局長が発表しました。

これらのサミットの総括として、WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」のセンター長上村真仁から「地域の海を地域で守る 取り組みの重要性~海垣サミットでの各地との交流を通して」というテーマで、これまでのサミットの経緯や世界海垣サミットSATOUMI共同宣言について紹介。海垣のネットワーク構築などを提案しました。

現場から発信する海の保全と共存のありかた

2日目は、参加者による、奄美大島の海垣の現地視察が行なわれました。
この日は、奄美大島にある龍郷町瀬留、龍郷町屋入、笠利町手花部(てけぶ)の3つの海垣を見学。さらに、その集落の区長さんのお話を伺いました。

複雑に入り組むリアス式海岸の湾奥部、そこに位置する集落の前の浅瀬に、海垣が築かれており、島の人々が営んできた里海的な暮らしがとてもよくわかる現場でした。

ここで参加者からはかつての利用状況や所有関係、獲れた魚の種類や現在の管理方法などさまざまな質問が出され、賑わった現地施策となりました。

この2日間の日程や懇親の場は、それぞれの地域の持つ「人と海」、「人と自然との繋がり」が、沿岸域の豊かな暮らしの根底にあることを改めて強く、参加者に認識させるものとなりました。

また、前回の白保でのサミットでは、海垣と生物多様性の保全との関わりに関心が高まりましたが、今回は、世界自然遺産の暫定リストに掲載された奄美大島と西表島が参加したこともあり、地域が継承してきた暮らしの文化と世界遺産との関わりについても関心が向けられ、トップダウンだけに頼らない、ボトムアップからの自然の価値の再確認の必要性が示唆される、貴重な場となりました。

WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」では、地元である白保の皆さんと積み上げてきた「地域の海を地域で守る取り組み」を広げていくためにも、今後も海垣サミットの取り組みを応援していきます。

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