地球温暖化の国際交渉 COP19報告会 開催報告


2013年12月18日、WWFジャパンは他のNGOと共催で「地球温暖化の国際交渉 COP19&COP/MOP9報告会 ~NGOはワルシャワ会議をどう見たか、日本はどうするべきか~」を開催しました。国連気候変動会議(COP19)がポーランド・ワルシャワにて開催されたのは2013年11月11日~23日。今回の会議で、2015年に合意予定の新しい国際枠組みへ向けた交渉はどの程度進展したのか。そして、著しく足りない各国の排出削減量を底上げするための具体的な協力は合意できたのか、ワルシャワの会議に参加したNGOメンバーが、会議の成果とその日本にとっての意味を詳しく解説しました。

NGOが見た国際会議の現場

報告会が開催された、東京の日比谷図書文化館日比谷コンベンションホールには、当日200名ほどの方々が訪れ、質疑応答も活発に行なわれるなど、関心の高さがうかがえる報告会となりました。

これまでの気候変動交渉の経緯(気候ネットワーク 伊与田昌慶)

まず、気候ネットワークの伊与田昌慶さんからは、国連気候変動枠組条約が採択されて以降、現在に至るまでの国際交渉について概要の解説がありました。

1992年に採択された気候変動枠組条約は、気候変動問題に関して作られた初めての国際的な法的枠組みで、温暖化を防ぐために国同士の協力体制を築いた点で意義があることを説明。

また、1997年に採択された京都議定書についても、いくつかの課題はあるものの、それまで何の制限もなかった温室効果ガスの排出を「管理」することに世界が合意した点で非常に大きな意義があると解説しました。

更に、世界の二酸化炭素(CO2)排出量について、絶対値では中国や米国が突出しているものの、一人当たりの排出量に換算すれば、依然、先進国と途上国には開きがあり、この南北格差をどうするかが国際交渉でも議論が難しい部分だと話しました。

京都議定書の第一約束期間(2008年~2012年)終了以降の「次期枠組み」の合意が期待された、2009年のコペンハーゲン会議(COP15)は不調に終わったものの、コペンハーゲン、および2010年のカンクン会議(COP16)で、世界は「気候変動の深刻な悪影響をくい止めるには、世界の平均気温上昇を産業革命前比で2度未満に抑えるべき」という目標を共有しました。

会場の様子

気候ネットワークの伊与田昌慶さん

しかし、これまでに大気中に蓄積されているCO2の累積排出量をみても、今後、「2度未満」の世界を実現するには、早急に大幅削減を実現しなくてはなりません。

現在、国際交渉の場では、2015年に予定されているパリ会議で、全ての国が参加する「次期枠組み」の合意を目指しているものの、現状を見ると、もう少し交渉を加速する必要があると伊与田さんは述べました。

ダーバン・プラットフォーム作業部会(ADP)について(WWFジャパン 小西雅子)

次いで、WWFジャパンの小西雅子からは、2011年のダーバン会議(COP17)から交渉が開始された「ダーバン・プラットフォーム作業部会(ADP)」の進捗を報告しました。

ADPでは、2015年に合意、2020年に発効が予定される「次期枠組み」そのものについて話し合う「ワークストリーム1」と、その合意から発効までの5年間の取り組み強化を話し合う「ワークストリーム2」の議論が並行して続けられています。

WWFジャパン 小西雅子

今回の会議では、どのような作業を経て次期枠組みを決定するかが大きなテーマでした。

しかし、交渉は難航し、国同士の対立には深刻なものがありました。従来、国際交渉の場では先進国と途上国の間の意見の隔たりが主でしたが、現在は、途上国同士の間でも見解の相違が目立つようになってきています。

中国やインド、サウジアラビアを中心にした「同志国グループ」、ブラジル、南ア、インド、中国から成る「BASIC」、アフリカ諸国、小島嶼国連合「AOSIS」、後発開発途上国「LDC」、中南米の中間途上国から成る「AILAC」と、グループが細分化され、異なる意見を主張するようになりました。

議論の結果、2015年に開催が予定されているパリ会議(COP21)より「かなり前」に各国が削減目標案を提示し、それに基づいて議論を深 め、パリ会議の場で全体の削減目標を合意するといういわば「事前協議型」で削減目標をまとめる方向性が見えてきました。

言葉のニュアンスは弱いものの、2015年のCOP21で予定されている合意までに、必要なプロセスが合意されたこと、そして、排出削減の可能性が高い行動について、技術的な検討が行なわれることが決まったことはワルシャワ会議の成果だといえるでしょう。

また、途上国の間にもAILACのように先進的な意見を主張するグループが出てきたのも希望だといえる、と小西は話しました。

日本の削減目標発表に対する反応と日本がやるべきこと(気候ネットワーク 平田仁子)

気候ネットワークの平田仁子さんからは、ワルシャワ会議の開催に合わせて日本政府が発表した新たな温室効果ガス削減目標について報告がありました。

日本政府は2013年11月15日に「2020年に温室効果ガス排出を2005年度比で3.8%削減」するとしました。

政府はこれを「野心的目標」と述べましたが、計算根拠も不明のうえ、民主党政権時に宣言した「25%削減」という目標を撤回したのみならず、京都議定書の基準年である1990年比にすると3.1%の排出増に当たります。

気候ネットワークの平田仁子さん

また、平田さんは「3.8%」は間に合わせの暫定目標であり、閣議決定も、政府が設置した「地球温暖化対策推進本部」での正式な決定でもないことを指摘しました。

こうした日本の発表に対し、イギリス、EU、そして70カ国超の国々から成る小島嶼国連合(AOSIS)は、会議開催期間中、落胆の意を表明する声明を出しました。

今回の日本の発表は、途上国から先進国に対する不信感を募らせ、一部の途上国からは排出削減努力を回避するための口実にも使われるなど、ワルシャワ会議の交渉において著しく悪影響を及ぼす結果となりました。

日本政府は、原発は温暖化対策のために必要だという姿勢を崩していませんが、過去、原発の増加とともに、CO2の排出量が減ったという実績はありません。

また、新たな石炭火力発電所の建設計画も進んでいます。原発への依存や石炭発電へ回帰するのではなく、排出量の大幅削減が見込める対策の実施を進めること、そして今後の気候変動対策に関するプロセスおよび情報はきちんと市民に公開されるべきだとしました。

「損害と損失」及び気候資金(FoEジャパン 小野寺ゆうり)

FoE Japan の小野寺ゆうりさんからは、気候資金と「損失と損害」についてのお話がありました。

今回のCOPは、資金COPと呼ばれ、資金に関する議論が期待されましたが、あまり大きな成果は得られませんでした。

国連気候変動枠組条約の下では、これまでGEF(地球環境ファシリティ)が主な基金でしたが、3年前のカンクンでの合意で、GCF(緑の気候基金)が設立されました。また、コペンハーゲン合意とカンクン合意において、2020年までに1000億ドルという資金の流れを生み出すことが合意されました。

FoE Japan の小野寺ゆうりさん

こうした公的資金に加えて、CDM(クリーン開発メカニズム)のような市場メカニズムを通じた民間資金の流れに期待する先進国も出てきました。これには途上国が警戒を強めています。

今回の会議では、途上国は短期資金と呼ばれる2010~2012年の間の資金に後の、2013年以降の資金支援に関する不安が強く出ていました。また、先ほどの1000億ドルへ向けて、2017年に700億ドルを達成するべきだという主張や資金に関する特別作業部会を設置するべきだなどの主張を最後まで崩しませんでした。

しかし、最終的な合意は、具体的な数字は入りませんでした。ただし、先進国に2年に1度の報告をするという内容になりました。

もう1つ重要だった「損失と損害」の議論については、まず、その概念そのものが、今回の会議まで、あまり知られていなかったのではなかったのではないでしょうかと指摘。

これまでの温暖化対策は、どちらかというと予防的に対策を行うものでしたが、現在、すでに排出されてしまった温室効果ガスによって、避けえない温暖化の影響があることが心配されています。それによって、引き起こされる「損失と損害」に対応するための国際メカニズムが、今回の会議では、会期を1日延長してようやく合意されました。

これからどれくらい実効的なメカニズムになるかは、2014年、2015年の交渉を見ていく必要があるということでした。

COP19でのREDD+(CI ジャパン 山下加夏)

コンサベーション・インターナショナルジャパンの山下加夏さんからは、REDD+(レッドプラス)の交渉についてお話がありました。

REDD(Reduction of Emission from Deforestation and forest Degradation)+とは「途上国における森林減少と森林劣化からの排出削減並びに森林保全、持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強」の略称で、途上国に対し森林保全に経済的インセンティブを提供することで、森林を伐採するよりも残す方を経済的価値の高いものにしようという試みです。

コンサベーション・インターナショナルジャパンの山下加夏さん

REDDについては2005年のモントリオール会議(COP11)から議論がはじまり、その後いくつかの項目が「+」される形となり現在に至っています。

世界の温室効果ガス排出源をみると、森林減少や劣化、そして農業による土地利用からの排出が30%近くを占めており、土地利用の側面から気候変動対策を行なう必要があるといえます。

これまで、REDD+の交渉は決してスムーズとはいえず、特に2012年のドーハ会議(COP18)では、議題に資金面の問題が入ったことから国同士の意見が折り合わず、過去5年間の交渉で初めて、まったく進展なしに終わってしまいました。

この遅れを取り戻そうという機運が高かったこともあり、ワルシャワ会議では、予め合意が見込まれていたよりも多くの項目で合意がなされました。

これはワルシャワ会議における最大の成果のひとつで、今回の合意には「ワルシャワ・フレームワークREDD+アクション(仮)」という名前もつけられました。

この合意により、REDD+という仕組みをスタートする基本的な準備が整いました。今後は、ADPの文書にREDD+の合意内容が統合されてゆくことになります。

ワルシャワ会議では、合意を優先したこともあってか、いくつかの課題については最低限での決定に留まり、社会的、および環境的な配慮についてはまだ詰め切れていない面もあるため、今後おこなわれる議論も引き続き重要になってくるでしょう。

REDD+は、歴史上はじめて全世界で森林保全に取り組む法的拘束力のある枠組みになる可能性があります。

国際条約と、実際の森林減少が続く現場の間にはまだ距離がありますが、国境を越えて進む問題には国際的に取り組む必要があります。現場と条約をつないでいくことが重要です、と山下さんは話されました。

COP20そして新たな世界の温暖化防止の目標に向けて

。2013年のワルシャワでのCOP19は、気候変動の影響を予見させるかのような巨大台風が、会期直前にフィリピンを襲ったことを受け、気候変動対策の「緊急性」が訴えられた会議となりました。

しかし、各国の政府代表は、それぞれ緊急性を言及しつつも、従来通り自国のみの立場を訴える姿勢を崩さず、会議は難航。いくつかの部分的な成果は見られたものの、世界的な危機を解消するために、意見の相違を乗り越えて行こうとする意志は、希薄な会議となりました。

今回NGOが開催したこの報告会でも、そうした成果の側面と、引きずり続けている問題の側面が、それぞれの講演者の言葉によって明らかにされました。「2005年度比で3.8%削減」をもってよしとする政府の主張からはうかがえない、会議の内容や現場の様子を、多角的な視点から社会に向けて示すのは、こうした報告会が担う大きな役割の一つです。

特に会期中、削減目標の事実上の「引き下げ」を表明し、国際社会で批判の嵐にさらされた日本には、国内で早急に気候変動目標を見直し、そして新しい2020年以降の目標についての検討も開始することが求められています。
2014年のCOPは、ペルーの首都リマで開催される予定です。

開催概要

COP19・COP/MOP9報告会「NGOはワルシャワ会議をどう見たか、日本はどうするべきか」

日時 2013年12月18日(水)14:00~16:30
場所 日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール 千代田区日比谷公園1番4号
共催 WWFジャパン、気候ネットワーク、FoE Japan、オックスファム・ジャパン、コンサベー ション・インターナショナル・ジャパン、グリーンピース・ジャパン、地球環境と大気汚染を考え る全国市民会議(CASA)、環境エネルギー政策研究所(ISEP)、レインフォレスト・アクション・ ネットワーク日本代表部(RAN)、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
備考 ※この報告会は平成25年度独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて開催されました。

Ustream 録画動画

※冒頭に欠けている部分あり

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