ICCAT会合閉幕 地中海クロマグロの漁獲量増枠に懸念


イタリアで開催されていた第19回ICCAT(大西洋まぐろ類保存国際員会)年次会合が2014年11月17日に終了しました。今回の会合では、大西洋クロマグロ資源に近年回復の傾向が認められたことを受け、各国の漁獲枠を今後3年間に毎年20%ずつ増やすことが合意されました。しかし、トレーサビリティの改善はいまだ進んでおらず、早計な増枠は資源枯渇の危機を再び招くおそれがあります。

資源回復の傾向が認められた大西洋クロマグロ

一時、枯渇が懸念されるほどに減少傾向をたどっていた、東部大西洋および地中海の大西洋クロマグロ(本まぐろ)。この大西洋クロマグロの資源状況に近年、回復の兆候が認められています。

マグロの資源状況を調査・検討する科学委員会は2013年、各国の漁獲割当量を、今後も年間1万3,400トンに抑えることができれば、資源は回復に転じ、マグロ漁業を持続可能な水準に戻すことができる可能性が十分にあると指摘。資源枯渇の危機を脱する道筋を示しました。

この報告を受け、ICCAT加盟国は2013年の会合で、2014年の大西洋クロマグロの漁獲割当量を、年間1万3,400トンとすることに合意。

漁獲割当量の増枠を求める一部の国の提案を退ける形で、大西洋クロマグロの資源保護に向けた一歩を踏み出しました。

しかし、その後みとめられた資源回復の兆候は、一部の国々や水産業界の関係者に、楽観的な展望を抱かせることになりました。

マグロ資源管理にかかわる世界の国際機関。 海域や魚種によって管轄が異なる。くわしく見る

クロマグロ。マグロは卵から育てる完全養殖がまだほとんど普及しておらず、未成魚をつかまえて生け簀で育てる「蓄養」と呼ばれる養殖が一般的に広く行なわれている。この方法は結局、自然の資源に依存するため、現状で養殖マグロを増やしても、天然資源の保護にはつながらない。

性急に過ぎる漁獲割当量の増枠決定

そうした中、2014年11月10日から17日まで、イタリアのジェノヴァで開かれた第19回目となるICCATの年次会合では、加盟各国により漁獲割当量の段階的な引き上げが合意されました。

その内容は、2014年に1万3,500トンであった漁獲割当量を、3年間で毎年20%ずつ増枠し、2016年に1万9,296トンにするというものです。

また、2017年の漁獲枠については、暫定的に2万3,155トンとし、これについては2016年に予定されている資源評価の結果によって見直すことになりました。

イタリアのジェノヴァで開かれた第19回ICCAT年次会合

この拙速ともいうべき楽観的な合意は、「いかなる増枠についても、無理なく節度ある形で行なうべきである」という、科学委員会の警告を無視するものであり、資源危機を再び招く引き金となりかねないものです。

今回の会合で、ICCAT加盟各国に対し、漁獲割当量を2013年と同レベルの1万3,500トンとし、毎年の増枠は10%以下にとどめ、5年間をかけて上限まで増やすよう求めてきたWWFは、トレーサビリティなどの改善がいまだに進捗を見ない中で、この漁獲増枠が合意されたことに懸念を表明。

過去数年間にわたり傾けられてきた、マグロ資源の保全のための努力が水泡に帰す恐れがあることを指摘しました。

今も続くクロマグロの危機

世界の全漁獲量の7割を日本が消費しているクロマグロについては、現在、太平洋においても深刻な危機が指摘されています。

2014年11月17日に、IUCN(国際自然保護連合)が改訂した、絶滅の危機にある世界の野生生物のリスト「レッドリスト」でも、大西洋クロマグロを絶滅の危機が高いとされる「絶滅危惧種(EN)」、太平洋クロマグロもそれに次ぐ「危急種(VU)」として掲載。

漁業資源であると同時に、海の生態系の頂点に立つ野生生物としてのクロマグロが、絶滅の危機の度合いを高めつつあることを警告しています。

この太平洋クロマグロの資源管理については、2014年12月1日から5日の日程で、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の総会が開催されることになっています。

クロマグロ資源の保全と、海洋の生態系にも配慮した「持続可能な管理」につながる措置の実現は、各国の意思と決定に委ねられています。

WWFは今後も、持続可能なクロマグロ漁業の確立をめざし、生産現場から消費の現場までをつなぐ、透明性の確保につながるような管理の仕組みや基準づくりを支援してゆきます。

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