太平洋クロマグロの資源回復を!2015年IATTC会合


2015年6月29日から7月3日まで、南米エクアドルのグアヤキルで全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)の第89回年次会合が開催されます。資源量が96%も失われてしまった、太平洋クロマグロ(本まぐろ)については、長期的な資源の回復計画に着手できるかが注目されます。WWFはキハダやメバチについても、資源の過剰漁獲を招いている漁業の在り方について問題を指摘。会合の参加各国に対し、厳しい対策を採るよう求めています。

96%減少した太平洋クロマグロ

太平洋の海の生態系の頂点に立つ大型の魚類、クロマグロ。

全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)および北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)の指摘によれば、その資源量は、長年続いた過剰な漁獲により、すでに96%が失われました。

この危機的な状況の中、IATTCに加盟する21の国と地域および欧州連合は、2014年10月、「太平洋クロマグロの漁獲割当量を半減する必要がある」という科学的な勧告を大筋で受け入れ、いかなる国も2015年の漁獲量を3,500トン以内に抑えることに合意。

さらに、クロマグロを漁獲している国が今後、それぞれ国内で漁獲証明制度を設けることにも合意しました。

しかし、太平洋くろまぐろ問題を担当するWWFジャパン水産プロジェクトリーダーの山内愛子は、こうした各国の判断を評価する一方、「資源回復の鍵となる加入量(漁獲開始年齢に達した魚の資源量)は、引き続き低水準であることが指摘されており、太平洋における現在の管理は、クロマグロ資源の確実な回復を早期に目指すにはまだ不十分だと言える」と警告を発しています。

状態が非常に悪く、科学的知見から不確実性も高いクロマグロ資源を確実に回復させるには、長期的な視野に立ち、野心的な改善目標値を設定した上で厳格な資源回復計画を導入し、未成魚の漁獲の大幅な削減と、産卵可能な成魚(親魚)の保全を実施することが必要です。

しかし、太平洋を管轄する国際的な資源管理機関では、予防的管理となるような厳格なルールが、いまだに設けられていません。

中西部太平洋のマグロ漁を管轄するWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)では、30kg未満の若い太平洋クロマグロの漁獲削減を求める保全措置が、2014年12月に採択されましたが、産卵可能な親魚の資源に関する保全措置としては実効性のあるものではありません。

早期に、また確実に資源を枯渇状態から回復させるためにも、太平洋の全ての海域を対象とした長期的な資源回復計画を策定し、稚魚と親魚の保全をはかりながら、漁業や漁獲量に関するモニタリング調査を実施することが急務です。

メキシコで養殖(蓄養)される太平洋クロマグロ。 マグロは卵から育てる完全養殖がまだほとんど普及しておらず、未成魚をつかまえて生け簀で育てる「蓄養」と呼ばれる養殖が一般的に広く行なわれている。この方法は結局、自然の資源に依存するため、蓄養マグロを増やしても、天然資源の保護にはつながらない。

世界のマグロ資源管理にかかわる国際機関。
海域や魚種によって管轄が異なる。くわしく見る

WWFは今回のIATTC会合の開催にあたり、この他にも、マグロと一緒に誤って漁獲(混獲)される、オニイトマキエイ(マンタ)やウミガメ、サメ類を減らすよう、漁具の改善を含めた対応を求めています。

懸念されるメバチとキハダの資源

このクロマグロ以外にも、東太平洋のマグロ漁はさまざまな課題を抱えています。

とりわけ、メバチやキハダといったマグロ漁については、各国の過剰な漁獲能力が大きな問題になっています。

漁獲能力とは、たとえば漁船の数や巻き網の総操業回数など、マグロの漁獲量を大きく左右する漁業の要素のことです。

たとえば、東部太平洋におけるメバチとキハダの漁獲量は、およそ90%が巻き網漁によるものですが、2015年の時点で、この巻き網の量は、27万2,076立方メートルにのぼりました。

これは、科学者が推奨している適切な総容量である15万8,000立方メートルを、大幅に超過した数字です。

また、浮き漁礁などを設置してマグロを集める集魚装置(FADs)の設置数や、操業している漁船そのものも増加している可能性が指摘されており、このことも、東部太平洋におけるメバチやキハダの資源状況を不透明なものにしている点が懸念されています。

この問題について、WWFの国際漁業プログラム東部太平洋コーディネーターであるパブロ・ギレロは、次のように言っています。

「私たちはIATTCの加盟各国に対し、現在の漁船団の漁獲能力を凍結し、マグロ漁船の許可数を減らすことを求めています。これは、東部太平洋の海域でのマグロ漁業の将来を左右する、マグロ産業最大の関心事となるでしょう」。

IATTCの開催にあたって

WWFは南米エクアドルのグアヤキルで開かれる、IATTCの第89回会合にあたり、関係各国に向け、太平洋クロマグロについて下記の見解を発表。強く要望を行ないました。

  • IATTCの決議C-14-06で概要が示された漁獲制限を強く支持すること
  • 各国に定められた、漁獲可能な量(漁獲割当量)を順守すること
  • そのために、漁獲した太平洋クロマグロの尾数の綿密なモニタリング調査を行なうこと
  • 太平洋クロマグロの現在の資源評価を2016年のはじめにやり直すこと

さらにWWFは、東部太平洋のみならず、日本近海を含めた中西部太平洋を含めた海域において、長期的な太平洋クロマグロの回復を実現するため、IATTCおよびWCPFCに対し、次の点を訴えています。

・長期的な資源回復計画の採択

成魚と未成魚の両方に対する保全措置を含む、太平洋クロマグロをかつての資源量(初期資源量:SSB0)の「20%」まで回復させることを目標とした、長期的な資源回復計画を採択すること

・厳格な「漁獲管理方策」の採択

「漁獲管理方策」とは、資源量の変化に応じて、漁獲方法や漁獲量を制限する、漁業管理の方法の一つ。このルールとルールを発動させる基準値を事前に厳密に決めておくこと

年間10億ドルの経済活動を生み出し、従事する数万人の生活を支えるマグロ産業を、持続可能なものとすることは、海の環境問題のみならず、国際的な社会問題の解決にもつながる課題です。

また、太平洋クロマグロに限れば、その主要な漁業国は日本、メキシコ、アメリカ、韓国ですが、最大の消費国はやはり日本。消費を通じたその責任は、大きいと言わねばなりません。

太平洋の東部と西部、双方での将来に向けた判断と取り組みが求められています。


2015年7月23日 追記 / 2015年 IATTC年次総会報告

資源回復計画が合意に至らず 太平洋クロマグロは依然として危機的な状況に

2015年6月29日から7月3日まで、南米エクアドルのグアヤキルで全米熱帯マグロ類委員会(IATTC)の第89回年次会合が開催されました。この会合では、各国は求められていた太平洋クロマグロの資源回復計画の合意に至ることができませんでした。このことは、枯渇が深刻な太平洋クロマグロが重大な危機にあることを示しています。また、科学的に推奨されている最適な基準を、現状で50%も超過している漁獲能力の抑制についても、折り合いがつきませんでした。

依然として続く太平洋クロマグロの危機

「太平洋クロマグロ資源の保全に向けた建設的な交渉がほとんど行なわれなかったことは、極めて残念です。太平洋クロマグロ漁業の回復には、とりわけ稚魚の保全に関する厳しい基準を含む、厳格な回復計画が必要でしたが、合意に至りませんでした。

これは、太平洋クロマグロが依然として枯渇の危機にあるということを意味しています」と、WWFの国際漁業プログラム東部太平洋コーディネーターであるパブロ・ギレロは、述べています。

科学的な分析によると、太平洋クロマグロの産卵可能な親魚(成魚)の資源量は、かつての資源量(初期資源量)の4%にまで減少しています。これは、ミナミマグロや大西洋クロマグロと比較しても、これまでにない最低の水準です。

さらに、現在漁獲されている太平洋クロマグロの90%は、産卵することができない未成魚(3歳未満)で、この状況が資源の回復を妨げ、枯渇をさらに促進させる要因になっています。

今回の会合では、IATTCに加盟している21の国と地域は、太平洋クロマグロ資源を保全するという重要な決議を先延ばしにしました。

そのため、太平洋クロマグロ漁業の未来を守るには、2015年の12月にインドネシアのバリで開催される中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)で、保全措置が採択される必要があります。

キハダとメバチについて

また、キハダとメバチの2種のマグロについても、東部太平洋では資源が減少しているため、WWFはその過剰漁獲についても懸念しています。

今回の会合でも、この2種のマグロを巡って、新しい漁獲能力の水準についての論争や主張が続きました。

この問題については、2005年に、漁獲能力の管理についての地域計画がまとめられ、巻き網漁船の最適な漁獲能力の水準が示されています。

しかし、現在の漁獲能力は、その地域計画で定められた上限を大きく上回っています。

そこで、今回では、その時に示されたレベルまで、漁獲能力を削減する、という計画案が議論されましたが、合意には至りませんでした。

さらに、今回の会合では、東部太平洋におけるサメの保全措置についても合意に至ることができませんでした。

科学的な調査によると、サメの個体数は過去10年にわたって急激に減少しているため、回復を促すための予防措置の採択が推奨されていましたが、これについても次回以降に課題は持ち越しとなりました。

わずかな進展と多くの課題

一方、巻き網によって混獲されるオニイトマキエイ(マンタ)については、フックの使用禁止を含む、保全の基準が承認され、わずかながらも進展が見られました。

また、マグロを集める集魚装置(FADs)に関するデータの収集や分析を許可する決議も採択され、積年の課題であったこの問題についても、前進がありました。

この決議により今後、科学者が、包括的な分析を実施するための情報にアクセスすることが可能となることで、より科学的根拠に基づいた集魚装置の使用を促進できる可能性が広がります。

こうした装置の適切な使用を通じた漁業管理の措置についても、各国が早急に合意できるならば、危機にあるマグロの資源管理と、マグロを頂点とする海の生態系の保全は、新しいステップに進むことができるでしょう。

全体として、今回のIATTC会合は、重要な課題であった太平洋クロマグロの長期的な資源回復や、漁船・漁獲努力量に関する合意にことごとく失敗したことで、IATTCという国際機関が、地域の漁業管理機関として、機能を果たせていない実情が浮き彫りになりました。

また、IATTCが管轄するのは、あくまで東部太平洋の海域であり、クロマグロが回遊する太平洋全域がその対象としてカバーできているわけではありません。

2015年9月には、残りの海域、日本近海を含めた中西部太平洋のまぐろ資源と漁業を管轄するWCPFC(中西部太平洋マグロ類委員会)北小委員会会合が開かれます。

この会議の行方も、太平洋クロマグロの未来を決める、重要なものとなるでしょう。

今回のIATTC会議に参加した日本代表団も、会合の最後にあたり、このWCPFC北小委員会会合で、新しい回復計画の策定に積極的に貢献する、と意見を表明しました。

世界最大のクロマグロ消費国として、その未来に大きな責任を持つべき日本が、今後の国際交渉の中で、積極的に責任を果たすことが期待されます。


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