ご支援ありがとうございました!「ブータン・プロジェクト」最終報告


実現した国境を越えた取り組み

2011年より、WWFはブータンとインド政府に協力を呼びかけ、両国の国境地帯に位置する自然豊かな10の国立公園と野生生物保護区、森林保護区をつなげ、一つのつながった広域の保全エリアを実現するプロジェクトを開始しました。

TraMCA(Transboudary Manas Conservation Area = 国境を超えたマナス保全地域)と名付けられたこの取り組みを前進させるため、WWFジャパンも2012年から2016年6月まで、WWFブータンが中心となったこの活動への支援を日本国内で呼びかけ、多くの方にご寄付、募金のご協力をいただきました。

おかげをもちまして、現地では、保護区の管理やパトロールを手掛けるレンジャーの育成や、現場で必要とされる設備や機材、調査備品などの供給、新たな調査活動などを実現することができ、プロジェクトの基盤を確立することができました。

また、日本が支援を行なっていたその期間内にも、新種の発見や、保全地域内の違法行為の減少、トラを含む野生生物の増加などが確認されたほか、今後の保全に向けた「TraMCA行動計画」がインドとブータンの両国政府に承認され、第二段階につながる確かな体制も築くことができました。

日本からの支援期間中、ご協力をいただきましたサポーターの皆さまに、心より感謝申し上げます。

なお、プロジェクトはその後も、WWFブータンの主導により継続されています。
下記にて、現地からの報告をお届けいたします。


WWF「ブータン・プロジェクト」最終報告

目次

プロジェクト概要

プロジェクト報告


謝辞 日本の皆さまのご支援とご協力に、心より感謝申し上げます。

TraMCA、それは国境を越えて設定された、ヒマラヤの環境保全のための構想です。国境には縛られない野生動物と、その地域の人々の自然の営みに恩恵をもたらすことを目指したこの取り組みは、2011年に開始されました。

ヒマラヤ山脈は、とかく雪や氷河を連想させる景観ですが、その南麓に広がる亜熱帯の地域には、多様かつ豊かな生態系が見られます。多くの動植物が息づくこの場所は、世界的に見ても、最も貴重な生物多様性に恵まれた場所の一つであり、その保全は国際的にも重要な課題と言えるでしょう。

TraMCA(Transboundary Manas Conservation Area=「国境を越えたマナス保全地域」構想)は、この地域の景観を、長期的な観点で保全するため、インドとブータンの国境をまたぐ形で考案、設計されました。

この新たな取り組みは、両国を含めた国際社会が目指す、トラやインドサイの中長期的な保全戦略の目標達成にも貢献するものであり、2国間の協力のもと、それを推進する役割も担っています

また、この国境を越えた地域の自然保護は、アジアゾウや、コビトイノシシ、アラゲウサギ、ゴールデンラングール、バラシンガジカ(インドヌマジカ)やベンガルショウノガンといった、ヒマラヤ東部の固有種を含む希少な野生生物を保全する上でも、欠かせない取り組みです。

さらに、TraMCAの対象地域は、動物相が豊かであるばかりでなく、インド亜大陸の大河川ブラマプトラ川につながる重要な流域でもあります。ヒマラヤ山脈を水源とするその大小の河川は、ブータンからインドへと流れるあいだに地域社会や自然環境を潤す、重要な生態系サービスの供給源となっています。

マナス地域の国境を超えた環境保全構想であるTraMCAは、地域住民やそこに生きる野生生物の恩恵のために、2011年に誕生しました。

それ以降、この国境を越えた画期的な協調体制は、野生動物の保護管理や違法取引の取り締まり、気候変動、またヒトと野生生物の軋轢、さらには保全に必要な情報交換や交流についても、ブータン、インド、それぞれの国立公園の最前線で働くスタッフたちが、協働することを可能にしました。

WWFジャパンを通じて、日本の支援者(サポーター)の皆さまから寄せられた資金援助は、ブータンのマナス地域の国立公園と、その間をつなぐ「コリドー(緑の回廊)」をひとまとまりの保護区として守る、TraMCAの構想を前進させる大きな力となりました。

WWFジャパンによる技術的、資金的な支援は、TraMCAに含まれる国立公園の豊かな生物多様性に支えられた自然資源に対する、さまざまな脅威を抑制する効果を引き出すと共に、公園施設や人材の配置増強・育成にも大きな進展をもたらしました。このプロジェクト支援のもとで、知見が十分でなかった動物分類群の調査や、現場スタッフの研修プログラムも実施することができました。こうした取り組みは、TraMCAに暮らす地域住民にも、広く主体的な保全の重要性を認識させ、森林などの資源管理の強化に、高い効果をもたらしました。

2011年にTraMCA保全計画が掲げた目標の多くを達成に導いたのは、ブータン王国政府による献身的かつ全面的な支援、特に森林省の国立公園局のリーダシップ、そしてその職員たちの努力でした。さらに、WWFネットワークが主導する、東ヒマラヤ・プログラム(Living Himalayas Initiative)、およびトラ保護プログラム(Tigers Alive Initiative)による協力・支援も、このプロジェクトの実現に貢献しました。

私たちは、TraMCAでの一大計画がより大きく前進するように、その貴重な取り組みと展望が新たな関心と支援の広がりを獲得できることを、そしてこの活動が、情熱を持ったプロジェクト・チームと、熱心な保全活動の担い手たちが先頭に立つ現場で今後も継続されることを、心から願っています。

WWFブータン代表
デチェン・ドルジ

▲ 目次へ戻る


TraMCA「国境を越えたマナス保全地域」

幸福度を上げ、快適な暮らしをもたらす、手つかずの生物多様性を確保するランドスケープ

ブータン南部の3つの保護区、フィブソ野生生物保護区、ロイヤル・マナス国立公園、ジョモツァンカ野生動物保護区と、2つの「緑の回廊」がTraMCAの中核を形成。

TraMCA(国境を越えたマナス保全地域)は、2011年にWWFの国際的な自然保護プログラムである「トラ保護プログラム(TAI)」と「東ヒマラヤ・プログラム」の協働で誕生した、きわめて多様かつ豊かな生態系を擁した、大規模なランドスケープの構想です。

その対象地域は、ブータンの南東部とインド北東部のアッサム州一帯に広がり、自然環境のみならず、民族の多様性、文化・伝統といった地域の社会的側面においても、豊かさが認められています。ブータン国内のTraMCAの中核は、3つの保護区、西からフィブソ野生生物保護区(PWS)、ロイヤル・マナス国立公園(RMNP)、ジョモツァンカ野生動物保護区(JWS)と、それらをつなぐ2つの緑の回廊から成ります。また、インドのマナス・トラ保護区とブータンのロイヤル・マナス国立公園は、国境を挟んで隣接するTraMCAの主要地域にあたり、トラ、アジアゾウ、インドサイ、コビトイノシシ、ベンガルショウノガン、アラゲウサギのほか、哺乳類、鳥類および維管束植物が1,500種以上も生息しています。また、ここはヒマラヤ山脈を水源とし、ブラマプトラ川に注ぐ河川の流域でもあり、上流のブータンから下流のインドにかけて広がる多くの地域社会に、生態系サービスを供給する貴重なランドスケープです。さらに、森との強いつながりをもった、文化的、民族的に多様な少数民族が、多数暮らす地域でもあります。

TraMCAのランドスケープは、ブータンとインドの国境を挟むことから、地域の人口の増加、また開発による圧力など、さまざまな脅威にさらされています。また、この場所は、ブータンでも貧しい地区でもあり、ここで暮らし商売する人々は、森の木を伐採したり、家畜を放牧するなど、日々の生活を自然資源に大きく頼っています。野生動物の密猟問題は、アジアゾウ、コツメカワウソ、ガウルや魚類など、少数に限定されていますが、木材やキノコなどの林産物の違法採取や密売は横行しています。また密猟者や家畜の放牧者は、草食動物をおびき寄せて仕留めたり、牛の好きな新芽がよく育つように、自然の草地や低木林に火を放つこともあります。時にはその火が手に負えないほど大きくなって、森を焼き払ってしまい、鉄砲水を引き起こしてがけ崩れなど甚大な被害につながる例もあります。さらに、農道の建設や、電力の送配電網の設置による局所的な開発もありますし、耕作を放棄した草地で樹木の侵入が増え、草食動物の採食場所が劣化するなどの問題も起きています。

▲ 目次へ戻る


プロジェクトの背景

2012年7月から2015年10月まで行なわれたプロジェクトでは、気候変動の影響を考慮した新たな保全管理計画を策定する際の、指標種の優先順位づけをするために、動植物の科学的データが調査・更新されました。また、野生動物による農作物被害などの影響で起こる、地域社会との軋轢による衝突事故や、国境を越えて行なわれる密猟や密輸などの犯罪が減少しています。

この報告時点までの3年4カ月にわたり行なわれたプロジェクトでは、TraMCAのブータン領内の3つの保護区(ロイヤル・マナス国立公園, フィブソ野生動物保護区およびジョモツァンカ野生動物保護区)を主要な対象地域としました。その目的は、自然資源の持続可能な利用を通じ、生物多様性の保全に貢献することです。そのため、国立公園や緑の回廊に居住するコミュニティは、プロジェクトを推進する上での重要なプレーヤーでした。

この結果、地域の自然環境の総合的な保全計画が進展し、優先的に保全するべき動植物に関する科学的なデータが収集・更新されました。また、人と野生動物の間で生じる軋轢や事故の影響を受ける地域社会や、国境を越えて行なわれる密猟や密輸などの犯罪が減少しました。

野生動物の生息環境を向上させるため、塩舐め場や水飲み場を地図にプロットし、元の状態に復元。草地の管理も強化しました。また、空間情報を組み込んだモニタリング・早期警告ツール(SMART)を導入して、広く運用したことで、ブータン側および国境を越えて行なわれていた野生動物の密猟や、違法伐採された木材などの密輸の発生率を低下させることに成功しました。

地域社会に対しては、生物多様性の重要性や、その保全の必要性に対する意識の向上や、森林や自然保護の原則、法令等について伝える取り組みを行ないました。

また、プロジェクトでは、スタッフの人材育成、調査用の備品、輸送・通信設備、その他、現場で必要とされる装備品の供給、あるいはレンジャーの活動拠点の設営と維持、野生生物の観察塔建設、パトロール経路の管理、地域社会への支援といった組織強化を実施。これらの取り組みも、プロジェクトの目的達成に貢献しました。

▲ 目次へ戻る

ジョモツァンカ野生動物保護区の運営

334.73平方キロの面積を持つジョモツァンカ野生動物保護区(JWS)は、ブータン南東部のサムドップ・ジョンカル地方にあり、南側はインドのアッサム州と国境を接しています。ここは、アジアゾウ、ガウルをはじめとする、熱帯の野生動物の重要な生息地になっており、1992年に正式に保護区として設立されました。しかし、管理運営に必要な資源や人材不足が続き、保護区としては形骸化していました。そうした状況の中、ブータン政府が運営を本格化する後押しとなったのが、今回のプロジェクトでした。

ジョモツァンカ野生動物保護区は、カーリング森林保護区を通じて、インド側とブータン側のTraMCAを一つの生態系としてまとめています。つまり、東部地域を一つに結ぶ上で大変重要な役割を担っている、ジョモツァンカがきちんと保護管理されなければ、中央にあるマナス保護区群から、緑の回廊を介してTraMCAをさらに東へと延長させる意味がないのです。

また、このジョモツァンカにおける取り組みは、ロイヤル・マナス国立公園とジョモツァンカ野生動物保護区を結ぶ緑の回廊の、まさに中心部にあたるナンランの町の開発を食い止めるという、一つの重要な成果にも結び付きました。ロイヤル・マナス国立公園とジョモツァンカ野生動物保護区による共同調査により、予定されていた新たな都市計画や地域の開発計画が、緑の回廊の自然に影響を及ぼすことが明らかになったのです。現在、都市計画は緑の回廊を外れた場所に移されました。

このプロジェクトでは、越境戦略としてインド側と定期的な共同パトロールを実施することで、国境をまたいでまん延している密猟に歯止めをかける効果も見られました。レンジャーの駐在所とスタッフの宿泊施設を改修し、一時滞在用キャンプを備えた野生動物観測塔が建設されました。運営戦略を立てるために、生物多様性と地域の社会経済に関する情報を集めました。

▲ 目次へ戻る

ランドスケープの中で守られている生態系のつながり

開発行為による脅威や圧力が高まる中、国境を越えて広がる豊かなランドスケープを守ることの大切さが認識され、このプロジェクトによって、生物多様性の保全とブータン、インドの地域住民、双方に恩恵をもたらす、TraMCAの構想が具体化することになりました。前述のジョモツァンカ野生動物保護区の管理強化に加え、TraMCAのブータン側にある3つの国立公園を結ぶ緑の回廊で科学的な調査が実施され、その機能と有効性が認められました。

2014年には、ブータンのロイヤル・マナス国立公園とインドのマナス国立公園が共同で、トラのモニタリング調査を実施。この時、14頭の個体が識別され、そのうちの3頭が国境を越えて行動していることが分かりました。さらに、ゾウやガウル、アクシスジカなどの野生動物の生息域も、ブータンとインドにまたがっていることが確認されました。

プロジェクトでは、このランドスケープ全体の保全を効果的に行うため、レンジャーの駐在所と、一時滞在用のキャンプを備えた野生動物観測台の戦略的な配置を検討し、必要に応じて新設、改修しました。無線中継器を設置することで通信網を強化し、トランシーバーも配布されました。また、現場で必要とされる装備品や生活用品は、公園スタッフに定期的に支給され、日々の保全活動の助けになることはもちろん、士気を高めることにも役立ちました。

▲ 目次へ戻る

調査で新種の存在が明らかに

このプロジェクトでは、科学的な情報をしっかりと蓄積するためにさまざまな研究や調査を実施し、生息する野生生物のインベントリーを作成・彼らの生態を把握するという点において、大きな成功を収めました。この中には、哺乳類、鳥類、植物で新たに発見された種も加わりました。爬虫類と両生類、魚類および蝶類に関しては、研究が開始され、継続されています。また、こうした調査の実施に先立ち、生物多様性の調査やデータ解析、および報告書の作成といったスタッフの人材育成も行なわれました。カメラや双眼鏡、その他の調査用機材も提供され、国立公園の管理に携わるスタッフが、効果的な保全活動に継続して従事できるようになったのです。

カメラトラップ調査により、フィブソ野生動物保護区とジョモツァンカ野生動物保護区、およびロイヤル・マナス国立公園の北部では、初めてトラの写真が撮影され、TraMCA全域がトラにとって重要な生息地であることが、あらためて確認されました。そして、4年にわたるトラの科学的モニタリング調査では、合計28頭の個体をTraMCA内で識別することに成功しています。

▲ 目次へ戻る

爬虫類および両生類の調査

TraMCAで行なわれた初めての爬虫類および両生類の調査結果は、最も特筆すべき成果のひとつとなりました。この調査により、TraMCAには数多くの爬虫類と両生類が生息することが判明したためです。

兵庫県立大学の教授であり、兵庫県立人と自然の博物館の自然・環境評価研究部長でもある太田英利博士が、WWFジャパン自然保護室の科学者である岡安直比博士と共に、33名の現地のスタッフに対して爬虫類、両生類の扱い方や採集方法、解剖を含めた検体の処理方法について指導を行ないました。ブータンではこれまで、国内に生息する爬虫類、両生類の大規模な調査が実施された例がなく、今回のような指導も、おそらく初めてでした。標本採集と保存の方法について指導を受けた現場のスタッフにより、調査は現在も継続中で、今後さらに多くの両生類・爬虫類が、生息する野生動物のリストに加えられる見込みです。

▲ 目次へ戻る

野生動物保護の現場にSMART導入

TraMCAランドスケープにとって、野生動物の密猟や森林資源の違法採取は深刻な脅威です。これまで行なわれてきたパトロールは、体系化されておらず、犯罪件数や状況を記録するのみで実効性に乏しく、期待された結果を出すことができませんでした。そこで、今回のプロジェクトでは空間情報を組み込んだモニタリング・報告ツール(SMART)を導入。その結果、野生動物およびその生息地の保護に対する法執行の有効性が高まりました。現場のスタッフは、現場でのデータ収集やSMARTソフトを使用したデータ分析、および報告書の作成もできるパトロールの訓練を受けました。

SMARTでは、密猟の現場などで、レンジャーの一人がGPSを使って位置情報と観察記録を入力し、別のレンジャーがデジタルカメラで発見現場を撮影、記録します。パトロール終了時に、すべてのデータがグリッドシステムを使用して地図に反映され、密猟の頻度が高く、野生動物への脅威が特に大きなエリアが、地理的に特定されます。こうした情報は現在、保護区マネージャーやレンジャーたちが次のパトロール計画を立案する際に活かされ、現場で最も差し迫った課題のひとつとなっている、密猟や違法取引から野生動物を守る役に立っています。

SMARTを活用した一連の取り組みにより、TraMCA内で発生する違法行為は、2014年を基準年とした時、3年間で31パーセント減少しました。この成果が認められ、昨年の年次公園会議中に、ブータン政府森林省森林公園局がSMARTを使用したパトロールを、国全体の保護区で導入することを承認しました。

▲ 目次へ戻る

生息環境の管理を通じた野生動物の回復

TraMCAにおける野生動物の生息環境として重要なのは、森林のほか、河川敷に広がる草原、水飲み場、塩なめ場の3つです。これらの分布が調査されて地図に落とし込まれ、今もモニタリングが続けられています。また、もともと存在していた水飲み場の維持管理だけでなく、保全の必要に応じ、人工的な水飲み場も数カ所に設置しました。自然の塩なめ場についても、必要と判断された場合は塩分ミネラルを加え、維持につとめました。草原の回復の見込みがあるエリアでは、ヒマワリヒヨドリ、ランタナ(シチヘンゲ)など外来植物を駆除し、森林性の灌木なども択伐して元の環境を復元しました。現在は、これらの草原を維持するために、計画的に火入れが行なわれています。また、野生動物の好む植物を植え付け、草地の生息環境を改善しました。
プロジェクト期間中にこうした管理が行なわれた草原は、1,141エーカー(約4.6平方キロ)に及びました。定期的に行われる野生動物のモニタリング調査では、草原、水飲み場および塩場(塩なめ場)での目撃数の増加が確認されました。

草原生態系がうまく機能するために重要な草地の生息環境を整えるため、科学的根拠に基づいた草原管理体制の構築が進められています。この体制によって、草食獣が暮らし易い草原が拡大、定着すれば、長期的に草原生態系が保全される確率が高くなります。

▲ 目次へ戻る

地域住民と野生動物の軋轢を解消する

TraMCAは、ブータン国内におけるアジアゾウの主要な生息地となっています。このため、ゾウは地域住民と野生動物との間で生じる軋轢問題の要因となっています。プロジェクトでは地域を対象とした、農作物被害保険、家畜保険、ソーラー式電気柵、エコツーリズム開発、普及啓発や環境教育活動など、多彩な方法を通じて、地域社会の窮状を緩和させました。

とりわけソーラー式の電気柵、照明と警報器付き防護柵が、直接的な効果をあげ、人とゾウの軋轢を大いに緩和。野生動物の報復的な殺害の抑制にもつながりました。今回のプロジェクトによって設置された電気柵は、総延長16キロ。該当地域では野生動物による農作物被害と報復による密猟が軽減されるなど、約111の世帯にその恩恵がもたらされました。さらに、ロイヤル・マナス国立公園では、住民と野生動物の軋轢が少なくとも2年間減少を続けており、2013年末の動向調査で示された30件と比較すると2014年末には25件であったことが報告されました。

▲ 目次へ戻る

国境を越えた協力を通じ野生動物保護への関心を高める

2013年以降、ブータン、インド間のTraMCA生物多様性保全のための年次調整会議が定例化し、両国関係機関の協調のもと、これまで3回開催されています。取り組みの進展に応じ、ステークホルダーの数も増加し、現在ではインドから14の機関と団体(9つの政府系機関と5つのNGO)が、ブータンからは10の機関・団体が参加しており、その中にはWWFブータンも含まれています。

TraMCAにおける多国間保全から学んだ教訓の共有や、生物多様性の管理を共同で向上させるという点における課題・可能性についての議論に、、一連のワークショップは非常に意味を持つものとなっています。

こうした多国間の取り組みの最大の成果のひとつは、TraMCA行動計画が承認されたことです。これによりインドとブータンの両国は、ランドスケープの保全目標に沿った計画を立て、人材や資金を動員するのがより容易になっています。さらにこの調整会議は、国境地帯の共同パトロールを更新・計画して、違法行為を食い止めるプラットフォームの役割も果たしています。野生動物の共同調査についても、自動カメラ(カメラトラップ)を利用したトラの調査からスタートしました。

▲ 目次へ戻る

関連情報

報告書

関連記事

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは世界約100か国で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP