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自然環境保全法(自環法)の一部が改正

この記事のポイント
2019年4月23日、自然環境保全法(自環法)の法改正が参議院環境委員会で採決されました。この法律は、1993年に環境基本法が施行されるまで、環境行政の基礎として機能していた法律であり、現在も日本の自然保護に深くかかわるものです。今回の改正にあたって作成された法案には、特に海洋保護区の設定について新たなルールが導入されました。しかし、その内容には不十分な点が見受けられたため、WWFはこの法改正に携わる国会議員に対し要望を実施。その内容が、いくつかの「付帯決議」として、採決されました。

「愛知目標」達成のために

2010年に愛知県名古屋市で開かれた、生物多様性条約の第10回締約国会議(CBD COP10)。
ここでは、生物多様性を守るための世界の約束「愛知目標(愛知ターゲット)」が採択され、各国は2020年までに、自国の海域の10%を海洋保護区とすることを約束しました。

しかし、この期限が迫っているにもかかわらず、現状の日本の海洋保護区は8.3%。目標達成に届いていません。

そこで、新たな海洋保護区を設立するため、「沖合海底自然環境保全地域制度」が新たに作られることになりました。

これは、海山や熱水噴出域、海溝など、さまざまな海の地形や、そこに見られる生態系、生物資源などを含めた、沖合域の「海底」を、海洋保護区に指定できるようにするためのものです。

そして、その実現のため、自然環境保全法(自環法)を国会で改正し、「制度」が新たに法律で規定されることになりました。

自環法は1972年に制定された、日本の自然保護行政を長年担ってきた法律の一つで、自然環境保全のための基礎調査や、基本方針の策定、保全地域の指定や規制などを主な目的としています。

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付けられた「付帯決議」

そこで今回、一部の国会議員が、「自然環境保全法の一部を改正する法律案」をまとめ、それを国会に提出することになりました。

改正案は、2019年4月2日の衆議院環境委員会と、23日の参議院環境委員会で質疑後、採決。法改正は実現の運びとなりました。

しかし、今回国会で審議されたその「案」にはいくつかの課題がありました。

何より重要な問題点は、干潟や海岸、サンゴ礁など、その生態系の貴重さがすでに認識されている沿岸域の海の自然が、十分に保護区に指定されていない点です。

今回、海底を新たに保護区にできるようになることには、大きな意味がありますが、それと同時に、守らねばならない日本沿岸の自然があること、それを保全する手立てが、いまだ不十分である点は、大きな課題です。

また、自然や野生生物に関する科学的な調査の実施や、そのための人的、資金的な充当、関係者の協力体制の確立なども、保護区拡充のためには欠かせません。

そこで、提出前から法案の不十分な点を指摘してきたWWFジャパンでは、残されていた課題について、再度国会議員に説明を行ない、対応を求めました。

その結果、最終的な採決にあたって、法案に「附帯決議」が付けられることになりました。

附帯決議とは、国会の衆参の委員会が法律案を可決する際に、その委員会の意思を表明したり、施行についての意見や希望などを表明するものです。

法的な拘束力は持ちませんが、法律の目的や重視する点を明示するものとして、無視することのできない条文になります。

そして、今回採決された「自然環境保全法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」には、WWFジャパンが求めてきた改善点が盛り込まれる形となりました。

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WWFの提言が盛り込まれた「付帯決議」のポイント

  • 今回新たに指定される沖合海底自然環境保全地域の指定については、海山、熱水噴出域および海溝を中心として、可能な限り多様な生態系が含まれる区域が指定されることとなるよう配意すること。また、絶滅のおそれがある種が存在する可能性がある場合における種の保存法に基づく科学委員会や多様な利害関係人など、幅広い意見を聴取した上で検討すること。
  • 沖合海底自然環境保全地域の保全措置の実効性を確保するため、改正法に基づく立入調査を機動的に行うなど、同地域の保全活動を関係者と協力して行うよう努めること。
  • 日本の生物多様性保全上重要な海域を後世に引き継ぐために、沿岸域を含めた日本の周辺海域について、自然環境保全基礎調査による調査を充実させ、海洋保護区の指定の推進を図ること。また、的確な調査の実施のために十分な予算及び人員を確保するよう努めること。
  • 海洋保護区の設定に当たっては、平成28年4月に環境省が公表した「生物多様性の観点から重要度の高い海域」を踏まえ、沖合域に限定することなく、幅広く海洋保護区化を推進するよう努めること。また、持続可能な漁業と生物多様性保全の両立を目指した保護区の創設など、我が国における海洋保護区の在り方について幅広く検討すること。
  • 海域の生態系と密接なつながりを持つ陸域の生態系については、絶滅危惧種の多くが里地里山に生息・生育することから、人の手が入ることで保たれる自然環境の保全を目的とした保護区の在り方についても検討を進めること。
  • 保護区の設定による生物多様性保全が有効であるかを検討した上で、改正法の施行5年後を目途に本改正内容の見直しを検討すること。

この附帯決議は、今後、環境省が環境行政の基本方針を見直す際などにも、配慮しなければならないポイントとして留意され、審議会でも議論されることになります。

自環法は3~5年後、あらためて法改正が行なわれる見込みです。
これに向け、WWFジャパンでは残された課題の指摘と、改善の要望を行ない、国会議員に対する説明と働きかけを継続してゆきます。

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