ネパールのインドサイ保護に成果


2011年に実施されたネパールのサイに関する個体数調査の結果、インドサイが3年前よりも増加していることが分かりました。2008年の調査で435頭だったのが、2011年には534頭にまで増えていました。内戦などの混乱から立ち直ったネパールでの取り組みが、再び保護活動が軌道に乗り始めています。

インドサイの生息範囲と脅威

インドサイ(Rhinoceros unicornis)は、かつてヒマラヤの南麓、インダス川やガンジス川、ブラマプトラ川などの河川流域に沿った、インド亜大陸北部に広く生息していました。

1600年ごろまでは、インド北西部やパキスタン、ネパール、バングラデシュ、ブータンといった国々でも、ごくふつうに見られたとされています。

しかし現在では、ネパールやインド北部・北東部の限られた保護区に、個体群が分断化された状態で生息するのみで、個体数も全体で2,500頭あまりと推定されています。IUCNのレッドリストでも、VU(危急種)という絶滅危機種のカテゴリーに位置づけられています。

インドサイが激減したのは、19世紀から20世紀初頭までのことでした。
減少した原因は、生息地が農地開発で失われていったこと、19世紀後半に広まったスポーツ・ハンティングと、伝統薬の原料になる角を目当てに行なわれた密猟の犠牲になってきたことなどです。
1966年の調査では、ネパール国内のインドサイ個体数はわずかに100頭。ここから、保護活動が始まりました。

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チトワン国立公園のインドサイ

内戦の困難を越えて

ネパールでのインドサイの保護は、ネパール政府の国立公園・野生生物保護局が中心となり、WWFネパールやナショナル・トラスト・フォー・ネイチャー・コンサベーション(National Trust for Nature Conservation)などがこれを支える形で進められています。

この一連の取り組みは、1970年代から続けられてきたもので、非常に多くの努力を傾けて行なわれ、一時は600頭まで増加。増えたインドサイを、チトワン国立公園から別の保護区に移送するプロジェクトも実施されるなど、さまざまな効果と展開を見せてきたのです。

しかし、1990年代の後半から、ネパールでは内戦による社会不安が増加。各地での保護活動も行き詰まり、2000年からの5年間で、100頭を超えるインドサイが密猟されるなど、大きな危機が迫りました。

そうした状況の中でも、保護活動はやむことなく続けられてきました。
そして、2011年4月23日に公表された、新しいネパールのサイに関する個体数調査では、インドサイの推定生息頭数として534頭を確認。2008年の調査では435頭でしたので、99頭増えた個体を確認することができました。

しかも、このうち503頭が生息するチトワン国立公園をはじめとして、3つの保護区の全てで個体数が増えていることが分かりました。

必要とされる保護策

この増加の背景の一つには、ネパール政府による密猟対策の充実があります。
さらに、密猟を防ぐことや生息地となる自然環境を効果的に保全し、管理することが必要とされました。

たとえば、重要な生息地であるチトワン国立公園では、はびこっていた外来種の植物が、インドサイの生息に適していた水辺の生息環境に悪影響を及ぼしていたため、これを抑えることが求められました。
また、水の管理を通じて湿地を守り、家畜がサイの生息地の植物を食べてしまうのを防ぐことなども必要です。

さらに、密猟の原因になっている角の取引を厳しく禁じることも、必要な措置です。インドサイはワシントン条約の附属書1に掲載されており、国際取引が規制されていますが、こうした規制を確かなものにすることも、大事な保護策の一つです。

WWFによるサポート

これまで、米国魚類野生生物局や地元のNGO、地域社会と民間部門と共に、ネパール政府を全面的に支援してきたWWFネパールでは、今回の個体数調査についても、資金的支援と技術的支援を実施。
さらにこのWWFネパールを世界各国のWWFネットワークのメンバーが支援をしてきました。

今回報告された個体数増加を受けて、WWFのクリスティ・ウイリアムズ(アジアのサイ・ゾウ保護戦略コーディネーター)は、「ネパール政府による密猟対策への支援を、WWFは強化してきましたが、それが3年で成果を得ることになりました。このことには大いに勇気づけられます」と述べています。

実際、インドサイが生きられる環境を守ることは、他のより多くの野生生物を保護することにもつながります。
WWFネパールの自然保護プログラムディレクターであるガーナ・S・グルングも、インドサイの個体数をさらに増やすための戦略を考えていきたいと話しています。

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