アルパカ!...ではありません


寒さ厳しいこのシーズン、こんな時期にはふわふわモコモコの皆さんから分けていただいた毛織物のセーターやマフラーが手放せませんね。

町でよく見かけるヒツジ、カシミアやアルパカなどは、その動物を傷つけない方法で毛が収穫されています。

中には、滅多にお目にかかれないものも。
その一例が、アルパカに似た動物のビクーニャです。

ビクーニャ。南米に4種(家畜含む)が知られるラクダ科の動物の1種です。

ビクーニャは南米に生息するラクダ科の動物で、クリクリした大きい黒い目と長い首、そして、アンデスの高地で寒さから身を守る、驚くほど細く柔らかな毛を持っています。

一頭から採れる毛は多くても200gほどで、かつてはインカの支配者一族のみがその貴重な毛織物を身にまとうことができたとか。

しかし、この毛を目当てにした密猟により、1950年代の40万頭から1960年代には1万頭ほどまで減少。絶滅が危ぶまれました。

野生のビクーニャが生きるアンデス山脈の高地。厳しい自然が広がっています。

そこで、ペルーを中心に保護区の設立や、一時的に国際取引を禁止する取り組みが進められてきました。

特に注目される点は、ビクーニャを傷つけずに毛を採取する伝統技法を、地元の人々が復活させ、保護と地元の利益を両立させたことです。

こうした努力が実を結び、ビクーニャは絶滅の危機から脱することができました。

しかし、国際取引は今も厳しく管理されており、取引できるのは、ビクーニャを殺さずに採取した毛や毛製品に限られています。

ビクーニャの毛の採取。保護区の中で地域の人たちによって行なわれています。

そして、そうした製品には原産国の承認を得て、決まったロゴを付けることが義務付けられています。

今年秋のワシントン条約会議(COP17)では、この条件が変更され、原産国がいくつもある場合は、複数のロゴが付くことになりました。

持続可能な証でもあるこうした印にもちゃんと目を向けて、温かさをいただきたいものです。(トラフィック 若尾)

今も続けられているビクーニャの保護活動。1960年代に始まったその保護活動は、WWFがペルー政府に保護を要請し、保護区設立を支援したことがきっかけでした。この取り組みはのちに、WWFペルーの設立にもつながっていきます。写真はペルー南部のサリナス・アガーダ・ブランカ国立保護区より。

関連情報

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自然保護室(野生生物)、TRAFFIC
若尾 慶子

修士(筑波大学大学院・環境科学)
一級小型船舶操縦免許、知的財産管理技能士2級、高圧ガス販売主任者、登録販売者。
医療機器商社、海外青年協力隊を経て2014年入局。
TRAFFICでペット取引される両生類・爬虫類の調査や政策提言を実施。淡水プロジェクトのコミュニケーション、助成金担当を行い、2021年より野生生物グループ及びTRAFFICでペットプロジェクトを担当。
「南西諸島固有の両生類・爬虫類のペット取引(TRAFFIC、2018)」「SDGsと環境教育(学文社、2017)」

子供の頃から生き物に興味があり、大人になってからは動物園でドーセントのボランティアをしていました。生き物に関わる仕事を本業にしたいと医療機器業界からWWFへ転身!ヒトと自然が調和できる世界を本気で目指す賛同者を増やしたいと願う酒&猫好きです。今、もっとも気がかりな動物はオガサワラカワラヒワ。

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環境保全団体です。

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