世界が認める宮城県南三陸町のカキ


自然保護室の前川です。
明日は3月11日。7年目を迎えた東日本大震災の日です。

この日を前に、アメリカからちょっと嬉しい便りが届きました。

3月11日から13日まで、ボストンで開かれるシーフード博覧会で、ASC認証を取得した宮城県南三陸町のカキ養殖を紹介する映像を流したい、というものです。

連絡をくれたのは、ASCの広報担当者。そして、その映像というのは、以前に私たちが地元の方々のご協力で制作したものでした。

南三陸町志津川湾の海で獲れたカキ

ASC認証とは、海の環境に配慮して行なわれる養殖業に与えられる国際認証で、「持続可能な水産業」の証でもあります。

これを日本で初めて取得したのが、宮城県南三陸町戸倉地区のカキ養殖でした。

ASCのラベル

戸倉地区の皆さんはあの日、津波で大切な養殖施設の全てを失いながら、そこから見事に養殖を再興。

しかも、ただ震災前に戻すのではなく、より自然に配慮した「海と共存する」復興を実現したのです。

そのためには、生産量が落ちることを承知で、津波前まで続いていた過密養殖をやめる決断も下しました。

試行錯誤の末、ASCの認証取得が実現したのは2016年。

私たちWWFジャパンも、この戸倉の皆さんの挑戦を「暮らしと自然の復興プロジェクト」を通じてサポートしてきたのですが、日本で初となるASC認証が、被災地の海から誕生した、ということは、本当に誇らしい取り組みの成果となりました。

戸倉の海。ASC認証の取得は、養殖を手掛ける業者の人たちにも、よい成果をもたらしました。 充分にスペースをとった低密度の養殖を行なったことで、総量は減ったものの、一つひとつのカキはむしろ早く、大きく育つようになり、良質の製品を出荷できるようになったのです。

そんな被災地・東北の努力が、国際的にも評価され、また紹介されるというのは、何とも嬉しいことです。

震災から7年。その中から生まれた海と共に生きる取り組みは、今も確かな広がりを見せながら、続けられています。

これまでの皆さまご支援に感謝するとともに、ぜひこれからも応援していただければと思います。

ASC認証を取得した戸倉のカキ養殖業者の皆さん

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自然保護室(海洋水産 グループ長)
前川 聡

修士(動物学・北海道大学)
渡り性水鳥の全国調査および国際保全プログラムのコーディネーター業務、WWFサンゴ礁保護研究センター(沖縄県石垣島)での住民参加型の環境調査および普及啓発業務、海洋保護区の設定および管理状況の評価業務等に従事後、2011年より東日本大震災復興支援プロジェクトと水産エコラベルの普及および取得支援に携わる。養殖業成長産業化推進協議会委員。

日本各地の漁師町を訪ねては、持続的な養殖や漁業の推進のために関係者の方々と話し合いをしています。道すがら、普段はなかなか見ることができない風景や鳥を見つけては、一人ほくそえんでいます。もちろん、新鮮な魚介とお酒も! 健康診断の数値が気になるAround Fifty

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