戸倉のカキ養殖が「生物多様性日本アワード」の優秀賞を受賞!


海洋担当の前川です。
東日本大震災の被災地、宮城県南三陸、戸倉の海から、嬉しいニュースが届きました。

海の自然や労働者の人権に配慮した、持続可能な養殖に与えられる国際認証「ASC(水産養殖管理協議会)認証」を、昨年3月、日本で初めて取得した宮城県漁業協同組合の志津川支所戸倉出張所の取り組みが、「生物多様性日本アワード」の優秀賞を受賞したというのです。

このアワードは、イオン環境財団が生物多様性の保全と持続可能な利用に資する優れた取組を顕彰するもので、今回で5回目となります。

戸倉の例がすごいのは、名産品のカキ養殖施設を津波で全て損失し、再開の目途も立たない中で、生産者の皆さんが、ASC認証の取得を目指し、過密なカキ養殖を大きく改善する、新たな決断をしたこと。

そのためには養殖イカダを半分以下に減らし、生産量を落とす、という英断もしました。

南三陸戸倉の海

南三陸町で行なわれたASC認証授賞式展(ASCホワイト氏と後藤カキ部会長)日本での認証取得は、いまだこの宮城県漁協のカキ養殖1例のみです。

結果、海の環境がよくなり、震災前は成長に2~3年かかっていたカキが、1年で大きく育つようになり、作業時間も大幅に短縮。

またイカダを減らしたことで、同様の災害が起きても、被害規模を抑えられるようになりました。

こうした取り組みは、多くの人々の共感を集め、ASC認証取得への原動力となり、さらには企業や団体、学校などから「研修を受けたい」という要望も多く寄せられるようになったそうです。

戸倉の皆さんによる、民間企業の視察研修の受け入れの様子

今回の受賞は、そんな戸倉の皆さんの頑張りが認められた一つの証。
2011年以降、「暮らしと自然の復興プロジェクト」の一環として、調査や環境教育、認証取得のためサポートをしてきた私たちとしては、喜びもひとしおです。

9月26日には授賞式がありますので、かけつけて彼らの受賞を一緒に喜びたいと思います。

関連情報

ASCマークを付けた戸倉のカキ。ASC認証は養殖に対して与えられる国際的なエコラベルで、自然環境への配慮はもちろん、労働者の人権や周辺地域との連携といった責任ある運営が求められます。世界では認証を取得した養殖場が飛躍的に増加。今後日本でもブリやマダイなどでの取得が期待されます。

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自然保護室(海洋水産 グループ長)
前川 聡

修士(動物学・北海道大学)
渡り性水鳥の全国調査および国際保全プログラムのコーディネーター業務、WWFサンゴ礁保護研究センター(沖縄県石垣島)での住民参加型の環境調査および普及啓発業務、海洋保護区の設定および管理状況の評価業務等に従事後、2011年より東日本大震災復興支援プロジェクトと水産エコラベルの普及および取得支援に携わる。養殖業成長産業化推進協議会委員。

日本各地の漁師町を訪ねては、持続的な養殖や漁業の推進のために関係者の方々と話し合いをしています。道すがら、普段はなかなか見ることができない風景や鳥を見つけては、一人ほくそえんでいます。もちろん、新鮮な魚介とお酒も! 健康診断の数値が気になるAround Fifty

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