産油国から地球温暖化対策を!


カタールのドーハCO18会場より、温暖化担当の小西です。
会議が2週目に突入した12月3日、WWFでは「湾岸産油国の気候変動への耐性と環境都市の役割」と題したサイドイベントを行ない、中東からの温暖化対策を訴えました。

中東の産油国はこれまで、石油や天然ガスなどの化石燃料で得たオイルマネーを、先進国がたどってきた「持続不可能な」都市建設に投じてきました。

その象徴の一つが、ここドーハの町です。
砂漠に築かれたこの巨大な人工都市を支える海水を淡水化するシステム、冷房や食料輸入、車道を埋め尽くす新車は、いずれも大量の化石燃料によりもたらされています。

カタールの国民1人あたりのCO2排出量は世界1位。もし人類のすべてが、カタール人と同じ生活をしたら、地球が6.6個必要になるほど環境への負荷は膨大です。

一方で、海岸部に都市が集中する中東や北アフリカは、温暖化の影響を最も強く受ける地域でもあります。

ボストン大学の研究によると、海面上昇は中東地域の数千万人の住居を奪う可能性があるとのこと、淡水化プラントや発電所なども破壊されれば、多くの国民の生活に深刻な影響が及びます。いかな産油国とはいえ、これからの国の未来を、化石燃料で支えてゆくわけにはいかないのです。

実際、新しい時代に向けた動きも出始めています。
たとえば、アラブ首長国連邦のマスダール・シティー。ゼロ・カーボンとゼロ・エミッションをめざす未来都市で、WWFが「地球1個分の暮らし」に認定した町です。

サイドイベントで、WWFのサマンサ・スミスは次のように訴えました「再生可能エネルギーへの転換は持続可能な経済成長をもたらし、中東の若者に夢を与え、雇用を生み出します」。

湾岸の産油国が、オイルマネーを新エネルギーの開発に振り向け、世界のグリーン成長を主導できるか。その大きな可能性が今、注目されています。

 

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ドーハのコルニッシュ地区。砂漠で緑を維持するために膨大なエネルギーと水が消費されている

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公共交通機関が未整備なので道路はいつも渋滞。ちなみにガソリンは1リットルで1リアル(約23円)

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湾岸産油国の未来を議論したWWFのサイドイベント。左端がWWFのサマンサ・スミス

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専門ディレクター(環境・エネルギー)
小西 雅子

博士(公共政策学・法政大)。米ハーバード大修士課程修了。気象予報士。昭和女子大学特命教授、京都大学院特任教授兼務。
中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005 年に国際 NGO の WWF ジャパンへ。専門は国連における気候変動国際交渉及び国内外の環境・エネルギー政策。2002 年国際気象フェスティバル「気象キャスターグランプリ」受賞。環境省中央環境審議会委員なども務めている。著書『地球温暖化を解決したい―エネルギーをどう選ぶ?』(岩波書店 2021)など多数。

世界197か国が温暖化対策を実施する!と決意して2015年に国連で合意された「パリ協定」の成立には感動しました!今や温暖化対策の担い手は各国政府だけではなく、企業や自治体・投資家・それに市民です。「変わる世の中」を応援することが好きな小西です♪

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環境保全団体です。

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