渡り鳥たちを「見続ける」ことの大切さ


自然保護室の安村です。
先週、「渡り鳥の冬支度に異変が生じている」、というニュースが朝のNHKの番組で放送されていました。

気候変動の影響で、本来はアフリカで越冬するヘラサギがヨーロッパでも越冬するようになっている、という内容です。

調査で観察される鳥の種数も減少しており、こうした変化を心配する、フランス北部の保護区担当者のコメントも紹介されていました。

東アジアのみに生息するクロツラヘラサギ。最大で2,700羽と推定される。夏は黄海沿岸で繁殖し、秋から冬にかけて日本にも飛来し越冬します。

季節になるとやってくる渡り鳥をはじめ、身の回りの自然の変化は、よほどに気を付けていないと見落としてしまいがちです。

たとえば、「今年はツバメが少ないな?」と思っても、なかなか実際は確かめる術がありません。

そんな時に大事になってくるのが、モニタリングと呼ばれる定期的な調査です。

毎年、決まった場所で、決まった時期に、同じ調査を何十年も継続することで、データを集め、その変化を捉えるのです。

日本でもこうした調査が長い間行なわれてきました。1973年に始まり、WWFジャパンなどの民間団体も運営に関わってきた、シギ・チドリ類の全国調査です。

現在は、環境省の「モニタリングサイト1000」事業の一環として継続されており、今年も9月中旬に、全国100カ所以上の渡り鳥の飛来地で一斉調査が行なわれました。

ここで得られる渡り鳥の種数や個体数、飛来地の変化の情報は、自然環境の健全度、豊かさを知る指標となり、その保全策を立てる上での一番の基礎となります。

私も同行した沖縄県石垣市の「白保-宮良」海岸での調査。気温30度を越える中、地道で集中力を要する調査、お疲れ様でした!

また、こうした取り組みは、全国の多くの人たちが関わることで支えられている、大事な保護活動ともいえるでしょう。

そんな人たちが一堂に会する交流会も、毎年開催されています。今年は石川県金沢市にて10月24日に開催の予定。

ご関心をお持ちの方は、ぜひご参加ください!

【イベントのお知らせ】

【関連サイト】

地球規模の旅をするシギ・チドリなどの渡り鳥は、干潟やツンドラなど、さまざまな湿地生態系の上位にある野生生物です。

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自然保護室長(淡水・リーダー開発・PSP)
安村 茂樹

修士(生物化学・早稲田大学)
サンゴ礁センター駐在時に地域住民主体の環境調査を立ち上げ(現在も石垣島、久米島で継続中)。南西諸島域にて、多分野の研究者と協働した野生生物有害化学物質汚染調査、生物多様性評価調査を指揮。GIS手法を用いた保全重要域図は生物多様性条約で示されたEBSAに、野外調査ではオキナワトゲネズミ再発見や久米島沖のサンゴ大群集発見に寄与。UNEP/GEF黄海プロジェクトと連携した日中韓湿地保全活動をリードし、2020年より緊急支援や淡水・教育活動に関わる部門を統括。

沖縄のサンゴ礁と森、中国・韓国の干潟の保全に従事。国際会議でサイドイベント主催やロビー活動をする機会をいただきました。国際、環境、NGO-この3ワードが合わさるWWFで、何をすべきか考え、その仕事の醍醐味を実感し、行動する。そんな機会を一人でも多くのスタッフに提供したいです。晴れの日に気が向いたら、自転車で通勤し、休みは、川でカヌー漕いでいます。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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