日本で唯一の肉食美形?


広報担当の三間です。
先月、長野へ行った折、標高1500メートルくらいの山を歩いていたら、こんな虫に出会いました。

白地に黒の斑紋をいくつもちりばめた、大きさはせいぜい1.5センチほどの小さなチョウです。

葉の上にじっとして、カメラを近づけても、ちっとも動きません。地味ですが、よく見ると白と黒のコントラストが見事な、なかなかの美形。

とりあえず、写真に撮って後で調べてみると、面白いことがわかりました。

まず、名前は「ゴイシシジミ」。なんとこのチョウ、日本で唯一の、純粋な肉食のチョウ、だというのです。

とはいえ、チョウがヒラヒラしながら肉をかじってるわけではなく、肉食なのは幼虫の時だけで、獲物はアブラムシ。ふつう、チョウやガの幼虫、いわゆるイモムシやケムシは、葉っぱを食べますが、このチョウだけは違うらしい。

また、成虫になってからの食べ物も奇妙で、同じくアブラムシが分泌する甘い汁を吸っているとのこと。

しかも、幼虫も成虫も、食物として依存しているのは、タケやササに付く2種ほどのアブラムシに限られているらしく、トコトン変わり者のチョウであることがわかりました。

全国的にさほど珍しい虫ではないそうですが、ササの生えている場所に生息域が限られていること(確かに今回見た場所もそうだった)、またこの食性の特殊さは、まさに「奇チョウ」と呼ぶにふさわしい。

「チョウはお花の周りを飛び回って蜜を吸ってる生きものだ」

そんな思い込みに一撃をくらわし、自然の奥深さと面白さをあらためて教えてくれた、ササ原の小さな住人との出会った、感慨深い山野の一日でした。

ゴイシシジミ

ゴイシシジミ(Taraka hamada)

拡大してみると、アイライン?を引いたような眼と、触覚にも模様があるのがわかります。黒い靴も履いている?

 

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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