日本の生きた野生動物輸入に関する報告書を発表 ― 日本は世界有数の野生動物輸入国 絶滅危機種や希少種、固有種を含む野生動物の輸入実態が明らかに ―
2026/09/18

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下 WWFジャパン)は、本日2026年9月18日(金)、日本でペットとして利用される野生動物の取引動向を分析し、世界の希少な野生動物に与える影響や、その取引が持続可能であるかについて評価した報告書『消費に伴う責任-日本の生きた野生動物の輸入-』を発表しました。
『消費に伴う責任-日本の生きた野生動物の輸入-』
URL:https://www.wwf.or.jp/activities/data/202609wildlife01.pdf
■調査背景
日本は世界有数の野生動物消費国であり、ペットや展示などを目的として世界中から多様な野生動物を輸入しています。一方、野生動物取引は種(しゅ)の過剰利用や違法取引、人獣共通感染症、外来種問題など、さまざまな課題との関わりが指摘されています。
WWFジャパンは、日本における生きた野生動物の取引実態とその影響を明らかにするため、2020年から2024年の輸入データや国内市場調査、違法取引データを分析し、報告書にまとめました。
■主な調査結果
調査・分析の結果、日本は生きた野生動物の主要な輸入・消費国の一つであり、絶滅危機種(※1)や固有種をそれぞれ100種以上輸入している実態が明らかになりました。また、日本のペット需要が海外における希少な野生動物の捕獲圧を高めている可能性や、密輸されていることも確認されました。さらに、輸入記録がないにもかかわらず、国内で販売されている種が確認された他、他国で外来種化している種の大量輸入も明らかになりました。
これらの結果は、日本の市場が、海外の種の存続を脅かし、違法取引、外来種問題などに影響を及ぼしている可能性を示しています。持続可能な取引に向けた取引国との連携強化や市場のトレーサビリティの確立が求められます。
(※1) 本報告書ではIUCNレッドリストの危急種(VU)、絶滅危惧種(EN)、近絶滅種(CR)をまとめて「絶滅危機種」としています。
- 日本は世界有数の野生動物消費国
2020年から2024年の5年間における、日本のワシントン条約附属書掲載種の輸入量を各国と比較した結果、日本は爬虫類で49万8,478個体(世界第3位)を輸入したほか、両生類4万3,214個体(世界第2位)、哺乳類2万8,380個体(世界第2位)と、いずれも世界有数の輸入国であることが明らかになりました。また、輸入される種・分類群の多様性においても世界上位に位置し、特に爬虫類と両生類では輸入量上位5カ国中最多の分類群数を輸入していました。これらの結果から、日本が国際的な野生動物取引市場における重要な消費国であることが示されました。 - 日本に輸入される多くの絶滅危機種
IUCNレッドリストを確認した結果、日本が2020年から2024年に輸入したワシントン条約附属書掲載種には多数の絶滅危機種が含まれており、爬虫類120種(20万4,613個体)、両生類30種(4,624個体)、鳥類23種(2,694個体)が該当していました。これらの種の需要や取引量が継続・増加した場合、種の存続に影響を及ぼすおそれがあるため、注意が必要です。 - 需要を背景とした野生個体の取引
輸入個体の多くは飼育下繁殖由来として取引されている一方で、マダガスカルやコンゴ民主共和国、ガイアナなどから日本に輸出されたトカゲやヘビなどの一部の爬虫類は、その全てが野生で捕獲された個体であることが確認されました。特に、野生由来のマダガスカルのカメレオンやヤモリの固有種の輸入は、種の存続に悪影響となる可能性もあり懸念があります。固有種の保全に配慮し、輸入の自粛といった対策が求められます。
- 輸入記録との不一致が示すトレーサビリティの課題
2025年に東京都内で開催された爬虫類展示即売会の調査結果の分析からは、販売が確認された648分類群のうち、ワシントン条約附属書掲載種でありながら取引データ上で輸入記録が確認できない17種が見つかりました。さらに、野生由来個体が繁殖個体として輸入された可能性、いわゆる「ロンダリング」が疑われる販売事例も確認されました。これらの結果は、取引の透明性向上とトレーサビリティ確立の必要性を示しています。
- 日本市場を狙った違法取引と執行上の課題
2020年から2024年に税関が差し止めたワシントン条約附属書掲載種の動物密輸未遂事案は少なくとも20件、1,209個体にのぼりました。差止個体の多くは爬虫類や両生類で、商業航空貨物による大規模な持ち込み事案も確認されました。また、日本向けの野生動物密輸として海外で摘発された事案の中には、世界的に悪名高い密輸犯が関わっていたものもあり、日本のペット市場は他国の犯罪組織からも標的にされていることが分かりました。こうした違法取引の実態解明と防止に向け、税関や警察、輸出国当局による連携強化が求められます。
- 輸入される野生動物がもたらす新たな外来種および人獣共通感染症リスク
2020年から2024年に日本で最も多く輸入されたクサガメ(9万7,412個体)はすでに国内で定着し、在来種との交雑による遺伝的攪乱が生じています。また、輸入量の多いボールパイソン(6万1,723個体)やグリーンイグアナ(1万1,985個体)は、海外ではすでに外来種として定着した事例が報告されています。これらの種は日本でもペットとして広く流通しており、脱走や遺棄を通じて野外に定着・繁殖するおそれがあります。さらに、気候変動によりこれまでの気候や気温では定着が困難だった種でも新たに外来種化する可能性があり、今後益々注意が必要です。
加えて、近年確認された野生動物の密輸事案の中には、人獣共通感染症を媒介するリスクが高い動物も含まれており、公衆衛生上の懸念も浮き彫りになりました。日本の野生動物のペット利用が、種の存続だけでなく、生態系や社会問題にも繋がっていることを再認識し、より体系的な外来種リスクの評価や輸入の制限といった措置が必要です。
本調査に関わった担当者のコメントは以下の通りです。
■WWFジャパン専門オフィサーのコメント
WWFジャパン 自然保護室 野生生物グループ 成瀬唯

今回の調査から、日本は多種多様な野生動物を世界中から輸入しており、なかには保全上懸念の高い種も多く含まれていました。世界の美しく、珍しい動物に惹かれる気持ちはごく自然なものだと思います。しかし、それら野生動物を日本でペットとして飼育することが良いのか、日本の需要の裏で起こる多様な問題を再認識し、消費大国として責任のある選択と行動をとる必要があると考えます。
■調査概要
調査期間:2025年~2026年
調査対象:日本に輸入される生きた野生動物(哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類等)
調査データ:目的に応じて以下のデータ・情報を収集・分析しました。
- 生きた野生動物の輸入量および輸入金額規模:国連貿易統計(UN Comtrade)と財務省の貿易統計
- 国際取引が規制されている種に関する取引データ:ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)の取引データ
- 国内市場調査データ:生きた動物の展示即売会の実地調査で取得したデータ、およびウェブ検索から取得した販売広告情報
- 種の絶滅のおそれに関する情報: IUCNレッドリスト
- 外来種に関するデータ:GRIIS(各国で侵入・外来種化した種の情報)、EICAT(外来種が環境に与える影響)、およびCABI Horizon Scanning Tool(特定の地域で外来種化する可能性のある種を確認できるツール)
- 違法取引:日本の税関によるワシントン条約附属書掲載種の差止実績、 Robin des Boisの「On the Trail」およびウェブ検索(日本の国外で摘発された密輸に関する情報)
- 諸外国の法令:文献調査および各国の専門家へのヒアリング
■ご参考
- 野生動物輸入大国の日本とその責任
https://www.wwf.or.jp/activities/lib/6398.html
- 外来生物(外来種)問題
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3557.html
- 野生動物のペット利用の課題とWWFジャパンの取り組み
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/5099.html
- フクロウの国内取引調査が示すこと
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5648.html
- ワシントン条約CoP19を前に-日本の両生類ペット取引調査報告
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/4966.html
- ペットショップの爬虫類はどこから来たか?―国内市場調査から―
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/44.html



