活動トピック

オランウータンについて

危機にさらされる「森の住人」

マレー語で「森の住人」という名を持つオランウータン。
オランウータンは、ボルネオ(カリマンタン)島とスマトラ島の、豊かな熱帯の林にだけに生息している大型類人猿です。

オランウータンは現在、生息地である熱帯の森の急速な消失によって、絶滅の危機に瀕しています。

オランウータンの個体数は、過去100年の間に、およそ80%減少したと見られています。その主な原因は、違法伐採や農地開拓などによる生息地の減少。また、ペットにすることを目的とした、違法な密猟や密輸や、地球温暖化による生息環境の変化なども大きな脅威です。

熱帯の森とオランウータンを守る

WWFはこれまで、インドネシア、およびマレーシアで、オランウータンの保護活動を、地元の人々と協力をしながら行なってきました。
その活動は、すでにあるオランウータンの保護区や生息地に残る森を守る取り組みから、政府機関に対する新しい保護区の設立要請、そして、密猟や密輸の防止活動など、多岐にわたります。

オランウータンを保護することは、生息地である豊かな熱帯の森と、そこに生息するさらに多くの野生生物を守ることにつながります。

WWFは、熱帯の自然を広く保全する取り組みの一環として、オランウータンの保護活動に取り組んでいます。


オランウータンという動物

熱帯アジアに生きる「森の人」

オランウータン(マレー語で「森の人」という意味)は、アジアで唯一の大型類人猿です。
大昔は東南アジアの島々とインドシナに広く分布していたと考えられていますが、現在では、ボルネオ(カリマンタン)島とスマトラ島の熱帯林だけに生息しています。

オランウータンは長い間、一種とされていましたが、現在では、ボルネオ島に生息するボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)と、スマトラ島に生息するスマトラオランウータン(Pongo abelii)の二種に分類されています。

オランウータンは、体毛の密度は低く、長くて荒く、赤みをおびています。特に、雄は成長すると体毛が非常に長くなります。

この成熟した雄には2つのタイプが知られています。
一つ目は、「フランジオス」と呼ばれるタイプで、一部の優位なオスがこれに該当します。このフランジオスは、ほほの肉ひだ(フランジ)を大きく発達させるため、きわめて特徴的な顔になります。
もう一つは、成熟しても肉ひだが発達しない劣位のオスで、これは「アンフランジオス」と呼ばれます。体格も大きく異なり、フランジオスは時にアンフランジオスの倍ほどの体重にまで成長します。

■ボルネオオランウータン

分類 霊長目ヒト科
学名 Pongo pygmaeus
サイズ

【頭胴長】オス:96-97cm / メス:72-85cm

【体重】
フランジオス:60-85kg
アンフランジオス:30-65kg
メス:30-45kg

レッドリスト CR=近絶滅種

■スマトラオランウータン

分類 霊長目ヒト科
学名 Pongo abelii
サイズ

【頭胴長】オス:94-99cm / メス:68-84cm

【体重】
フランジオス:60-85kg
アンフランジオス:30-65kg
メス:30-45kg

レッドリスト CR=近絶滅種

オランウータンのくらし

オランウータンは、樹上生活をする霊長類の中では最大の種で、家族や社会生活を営まない単独生活者です。
オランウータンは、果実食が中心で、熱帯林に育つ野生のマンゴーやドリアン、マンゴスチン、イチジクなどを好んで食べ、その他若葉や新芽、昆虫、樹皮や時には鳥の卵なども食べます。

広い範囲をゆっくり行動し、樹木にぶら下がり、隣の木に手が届くまで、木を揺すって移動します。
雄は雌よりも広い行動範囲を持ち、時おり大きな叫び声を上げます。雌は10歳程度で成熟し、3~6年に一度、1頭の子どもを生みます。妊娠期間は約9ヵ月。子どもは3歳ぐらいで離乳、7~10歳で独立します。寿命は35年ぐらいと考えられています。

オランウータンの生息地

東南アジアの熱帯林に生きる

オランウータンの生息する熱帯林は、自然が非常に豊かな環境で、他にも多くの生きものたちが生活しています。

熱帯林は、地球上で最も多様な生物が生きる自然環境の一つです。

さまざまな種類の植物の育つ森には、それぞれの植物を利用して生きるさまざまな昆虫、鳥や小動物、また、それらを捕食する動物が生息しているからです。
オランウータンのすむ、ボルネオ(カリマンタン)島とスマトラ島の熱帯雨林も、きわめて野生生物が豊かな地域です。

その一つ、ボルネオ島のマレーシア領サバ州を流れるキナバタンガン川は、中流から下流にかけて6万5000平方キロにおよぶ氾濫原(定期的な増水によって形成される)になっており、ここにはオランウータンやアジアゾウ、テングザル、サイチョウ、マレーコウノトリなど、多くの哺乳類や鳥類が生息しています。

失われる熱帯の森

しかし、オランウータンの生息する森は、現在どんどん失われつつあります。

地形のなだらかな平地にある森林は、多くの動植物を育む一方で、人間にとって利用しやすい場所でもあるからです。

大きく育った樹木は材木として伐採され、海外へも多く輸出されています。

また人口の増加に伴う居住地や食糧の増産、ヤシ油生産のためのアブラヤシプランテーションなどは、大昔からあった自然の森を開発し、そこに息づいていた生きものたちを追いやっています。

現在のオランウータンの生息地は、ボルネオ島では東北部と西南部に分断され、スマトラ島でも北西部の小さな地域にしか残っていません。

また近年は、大規模な森林火災も多発しています。その原因を特定するのは難しいことですが、これはエルニーニョ現象のような異常気象や、熱帯林を農地や人工林へ変えるための火入れなどによるものと考えられています。

ボルネオ島のキナバタンガン川下流周辺の森林も、一見豊かに見えますが、実際の森林は、川岸に沿ってわずかに残る程度にまで減ってしまっています。

しかも、残された森林は分断されつつあり、オランウータンやアジアゾウなどそこに生息する大型動物は移動が困難になって、人間とのトラブルも生じています。

一度火災に遭った場所や放棄された農地は、雑草やツル植物に覆われてしまい、どんなに時間が経っても、本来の熱帯林の景観を取り戻すことはありません。

そして、このような状態では、オランウータンやサイチョウが食べる実をつける樹種は、根付くことも生育することもできません。

地上数十メートルにもなる高木の育つ熱帯の森でのみ生きることの出来る動物たちは、今危機的な状況にさらされているのです。

オランウータンに迫る危機

オランウータンは現在、数々の脅威にさらされています。オランウータンの密輸は跡を絶たず、すみかである熱帯林は急激に減少しています。また、頻繁に起きている森林火災も、オランウータンの森を破壊しています。オランウータンは今、絶滅寸前の危機にさらされているのです。

個体数の減少

オランウータンの個体数は100年前、に比べると約80%も減ったといわれています。

推定個体数はそれぞれ、ボルネオオランウータンが4万5,000~6万9,000頭、スマトラオランウータンは7,300頭ほどとみられています。

スマトラ島では、過去75年あまりの間に、個体数が80%も減少。ボルネオ島でも、過去60年の間に個体数が半分になったと考えられています。

生息地の減少

オランウータンが直面している最大の脅威は、生息地である熱帯林の破壊です。

西暦2000年の時点で、オランウータンの生息地は、もともとの面積の約80%が失われたと推定されましたが、生息地の大規模な減少・改変は、いまだに続いています。

1980年代から頻繁に起こるようになった森林火災の影響もあって、生息環境はますます狭められています。

森林伐採

オランウータンのすむ熱帯林では、木材をとるための商業伐採が盛んに行なわれています。

中には、自然保護区に指定されている場所であるにもかかわらず、違法に木を切る違法伐採も行なわれています。

また、ヤシなどの植林(プランテーション)への転換や、農地開墾などのための伐採も後を絶ちません。熱帯林を農園や植林場に変えるため、森林に火をつけて一気に焼き払ってしまうという方法も、用いられています。

オランウータンは、主な食べ物を果実などの植物食に頼っており、なにより樹上を生活の場としているため、森林が破壊されると生きていくことができません。

また、一カ所で集中的に森林伐採が行なわれると、その周辺地域からはオランウータンが一気にいなくなってしまうともいわれています。

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森林火災

1990年代、世界各地の熱帯で大規模な森林火災が相次ぎました。
アジアではインドネシアとマレーシアで、とりわけ大規模な森林火災が発生。広大な熱帯林が焼失しました。
この火災により、多くの多様な動植物が被災したと考えられています。

オランウータンも、例外ではありませんでした。WWFインドネシアは、1997年にインドネシアで起こった森林火災では、およそ200万ヘクタールもの広大な森が焼け、ボルネオ中央部から西部、スマトラの南部において何千もの火災が発生したと報告しています。
ボルネオ島西部の国立公園を中心とした一帯は、オランウータンにとって重要な生息地でしたが、火災後にはその数が激減してしまったといわれています。

またこの時、マレーシアのサバ州とサラワク州でも森林火災が発生しました。
何百頭ものオランウータンが火災によって焼死したと見られ、またそれ以外にも違法なペット取引のために捕獲されたり、火災とヘイズ(有害な煙霧)から逃れようと村に出てきたオランウータンが村人によって殺されるなどの被害も出ました。

小さな規模のものを含めると、熱帯林の火災は毎年起きています。
火災が起きやすくなっている理由には、伐採が進んだことで空気の通りがよくなり、もともと閉鎖され、湿度の高かった熱帯林が乾燥したこと、農園や人工林を作るために人が森に火をつけていること、またエルニーニョなどの異常気象などがあげられます。

密猟・密輸

ペットとしての違法取引も、オランウータンの生存を脅かす脅威の一つです。
ワシントン条約によって輸出入の禁止されている動物であるにもかかわらず、毎年いろいろな国で、オランウータンの密輸が摘発されています。

台湾では、1995年から1999年にかけて、およそ1000頭ものオランウータンが違法に輸入されていたという報告もあるといいます。日本でも、1999年に大阪のペットショップで4頭のオランウータンが売られていたという衝撃的なニュースがありました。

オランウータンは成長すると体が大きくなり力も強いため、売り買いされるのは、たいてい子どものオランウータンです。

子どもを捕まえるために、まず母親が殺され、しかも輸送される途中で、多くの子どもは死んでしまいます。生息地の保護、火災の予防、違法取引の取り締まりなど、オランウータンを絶滅の危機から救うためには、多くの課題が残されています。

地球温暖化の影響

地球温暖化が進むと、スマトラと周辺の島々では、特に2025年までに、雨が増加すると予想されています。こうした天候の変化は、オランウータンの主食である果物の生育を減少させ、オランウータンの成長や繁殖に影響を及ぼすと考えられています。
一方で、乾季には干ばつがこの島々を襲い、森林火災を深刻化させる可能性が指摘されています。1997年以降、たびたび生じている「エルニーニョ現象」と、それにともなって生じた大規模な森林火災は、すでに広大な森を焼き、多くの野生のオランウータンを死に至らしめました。もともと、森林伐採によって減少しているオランウータンにとって、気候変動によるさらなる打撃は、絶滅危機を深刻化させる大きな問題です。
さらに、森が燃えれば、温暖化の主因である二酸化炭素が大量に大気中に放出され、これがまた温暖化をより進めてしまう原因にもなります。

WWFのオランウータン保護活動

WWFは現在、オランウータンとその生息地の自然環境を保全するため、政府への支援、保護と開発の両立、人材育成、環境教育などさまざまな活動に取り組んでいます。

インドネシア:

WWFは、インドネシアの熱帯林を守るため、保護区の設立や管理の充実など、広く生態系を保全する取り組みを行なってきました。

保護区以外の場所では野生生物が地域の人々と共生できるように、土地利用計画の工夫に焦点をあてています。
グヌン・ルーサー国立公園は、スマトラ島第二の広さを誇る国立公園で、島内最大のオランウータン生息地です。しかしここ西暦2000年前後を中心に、公園内では違法な伐採や定住、密猟などが深刻になっていました。

こうした現状は、公園側と地元住民との間で生じるもめごとを解決するようにWWFが公園当局を支援してきた結果、変わってきました。WWFは、地域の自然環境を人が壊さずに生活してゆくためには、政府の協力によって、地元が地場産業を創出し、振興させる力を持つことが大切であると考えています。

WWFはまた、ボルネオ島のマレーシア国境に接するバタン・クリフン(Betung Kerihun)における自然保護区設立をめざし、インドネシア政府を支援しています。ここは、すでに国立公園予定地となっており、オランウータンをはじめ豊かな動植物の見られる地域です。

このバタン・クリフンは、マレーシア側のランジャク・エンティマウ(Lantjak Entimau)野生生物サンクチュアリと接しているため、計画には地域振興策として、二国間での経済、科学、教育、文化協力と交流の促進が盛り込まれています。これは、隣接国の地域間協力の利点を示すよい例としても期待されています。

マレーシア:

WWFは、マレーシアのサバ州においても、オランウータン生息地保全活動を支援してきました。特に保全活動に力を入れてきたのは、サバ州東部のキナバタンガン川下流域に広がる氾濫原の森林で、ここはオランウータンやその他の大型哺乳類であるアジアゾウ、マレーグマ、テングザルなどの生息地でもあります。

この地域の森林は、現在開発などによってバラバラに分断されており、これを元の状態に戻すためには長期的なプロジェクトを行なっていく必要があります。

WWFは1999年から、オランウータンの生態や個体数の把握、森林の多目的利用によるオランウータンの生存能力に与える影響の調査、サバ野生生物スタッフの育成と野生動物保護の必要性に対する地元民意識向上などの活動を展開しました。

また一方で、地域の人々と協力して、切り開かれた森に生い茂っている雑草やツル植物を取り除く作業や、もともとそこに育っていた熱帯林の樹種の苗を植えるなどの活動を支援しながら、野生生物保護区の整備拡充や、新規の設立も目指しています。


REFERENCES

  • Wanted Alive! Great Apes in the Wild (WWF 1997 Species Status Report)
  • The New Encyclopedia of Mammals (Oxford University Press)
  • レッドデータアニマルズ(5)東南アジアの島々(講談社)
  • WWFパンダニュース 2000年春号/2003年春号
  • WWF International flagship Species/Orang-utan
  • Our Vanishing Relative: The Status of Wild Orang-Utans at the Close of the Twentieth Century
  • The IUCN Red List of Threatened Species
    Pongo abelii: http://www.iucnredlist.org/details/39780/0
    Pongo pygmaeus: http://www.iucnredlist.org/details/17975/0
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