減プラスチック社会提言書 ~ G20 大阪サミットを前に、責任ある日本の在り方を示す ~


外務大臣 河野太郎 殿

呼びかけ : 減プラスチック社会を実現するNGO ネットワーク

メンバー団体
国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
一般社団法人 JEAN
特定非営利活動法人 パートナーシップオフィス
容器包装の3Rを進める全国ネットワーク
全国川ごみネットワーク
公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWF ジャパン)
特定非営活動法人 プラスチックフリージャパン
ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議
公益財団法人 日本野鳥の会
特定非営利活動法人 OWS
公益財団法人 日本自然保護協会
賛同団体
さがみはら環境問題研究会
特定非営利活動法人 プロジェクト保津川
NPO法人 菜の花プロジェクトネットワーク

世界で年間800 万トンのプラスチックが海に流入し(※1)、海洋に存在するプラスチックは推定で1 億5 千万トンに達しています(※2)。半永久的に分解されないプラスチックは、海洋を汚染し続け、海鳥をはじめ様々な海洋生物に深刻な影響を与えます。日本の海岸や水辺にも国内外で発生した大量のプラスチックごみが漂着する一方で、他国に日本から流出したプラスチックごみが大量に漂着しています。

このプラスチック汚染という地球規模での危機的状況を回避するために、早急に期限付きの目標を伴った法的拘束力のある国際的枠組みを構築することが求められています。G20大阪サミットを目前にした今、日本が世界に対して協働を呼び掛けるにはこれ以上にないタイミングであり、環境に負荷をかけ続ける経済構造から、環境を守り豊かにしていくことで経済も循環していく構造へと移行するため、国際社会への貢献を期待します。

EU で使い捨てプラスチックの使用禁止規則が成立したことには、海洋汚染問題への対策としてだけでなく、気候変動対策としても認識されていることが背景にあります。産業革命前からの気温上昇を1.5 度に抑えるためには僅か11 年しか残されていないという現実に真に向き合うならば、化石燃料由来である使い捨てプラスチックの存在自体を再考し、大幅なリデュースの実現、熱回収を含む焼却処理の大幅削減、さらに現状の「大量生産、大量消費、大量廃棄」を前提とした社会そのものを見直す必要があります。この大きな原因として、環境への負の影響を抑えるためのコストがプラスチックの価格に転嫁されず、不当に安いプラスチック製品の多くが使い捨てとして過剰に流通していることがあります。

国内のプラスチックの処理状況につき、国のプラスチック資源循環戦略案では「廃プラスチック総排出量の86%が有効利用されている」としていますが、これには焼却による熱回収(58%)が包含されており(※3)、結果として温室効果ガスであるCO2 を発生させます。これに単純焼却(8%)、埋立(6%)、海外輸出分(14%)を加えると、結局は国内で発生する廃プラスチック年間903 万トンの86%(781 万トン)(※3)が、望ましい方法で処理されていないことになります。日本では、廃棄物処理法の下、廃棄後の責任を製造者に問わないごみの処理のシステムが、この不適切な構造を作り上げてきました。気候変動問題への対応を考えると、熱回収についても大幅に減らしていく以外の選択肢はありません。

プラスチックによる海洋汚染問題、廃プラスチックの国際取引による輸入国への負担などの問題に早急に対処することは急務でありますが、その先のビジョンに向けて大きく舵を切っていくことが、いま正に我が国に求められていると考えます。そこで私たちは、将来的にあるべき姿として、不必要なプラスチック製品や、持続可能な代替品が存在するプラスチック製品を取り扱わないことによる大幅リデュースを前提とした「減プラスチック社会」を提唱しています。「減プラスチック社会」への構造転換は、SDGs14(海の豊かさを守ろう)等の目標達成と連動して図られるものであり、新たな雇用や産業の育成・創設にもつながります。2018 年10 月に私たちは、第1 回目となる提言を行いました。それからプラスチック汚染問題を取巻く国内外の状況が急速に変化していることを踏まえ、日本政府に対し、より意欲的な方向性や目標を設定し、減プラスチック社会への確実な構造転換を促すため、改めて以下の提言を行います。

提言1.「減プラスチック社会」への構造転換に向けたプラスチックの大幅削減
(1)使い捨てプラスチックの生産・輸入・消費量の大幅削減
使い捨てプラスチックを中心に、バージンプラスチックの樹脂及び製品の生産・輸入・消費量を削減することで、少なくとも2016 年に国外に輸出していた廃プラスチック量に相当する「年間150 万トン(※4)の廃プラスチック排出抑制を2025 年までに実現する」こと。同様に2017 年の容器包装等・コンテナ類での廃プラスチック排出量実績415 万トン(※3)の75%に相当する「年間310 万トン以上のプラスチック排出抑制を2030 年までに実現する」こと。

(2)プラスチック製レジ袋提供の原則禁止
減プラスチック社会への移行に向けた国民の意識変革に象徴的な意味を持つプラスチック製レジ袋につき、「国内での流通を無くすという方向性を2020 年までに示す」こと。そして、「2025 年の時点で原則提供禁止を制度化」していること。

提言2.焼却処理(熱回収を含む)、及び、埋立処理についての段階的大幅削減リデュース・リユース・リサイクルと比べると望ましいとは言えない埋立・単純焼却・熱回収により国内処理される廃プラスチックの量を2017 年の年間実績652 万トン(※3)
を基準として、「2025 年までに30%(年間195 万トン)以上を削減」し、「2030 年までに
60%(年間390 万トン)以上を削減する」こと。

提言3.「大量生産、大量消費、大量廃棄」からの転換を図るシステムの構造転換
(1)環境負荷低減コストをプラスチックの価格に転嫁するシステムの構築プラスチックの利用に恩恵を受けているすべての関係者が、プラスチック汚染問題を防ぐための責任を確実に負担するように、プラスチックの価格に環境コストを組み込んだシステムを構築すること。

(2)拡大生産者責任の徹底のための法整備
「大量生産、大量消費、大量廃棄」からの移行に向けた実効性のある仕組みの構築には、プラスチックのライフサイクル全般について事業者(※5)が確実に責任を負担する拡大生産者責任の徹底が求められる。これを担保するため、容器包装リサイクル法の見直しをはじめとする法整備(※6)につき、2020 年より順次導入を始め、2025 年までに導入を完了すること。

以上

参照資料・注釈
(※1)Jambeck, Jenna R., et al. (2015)
(※2) Ocean Conservancy and McKinsey Center for Business and Environment(2015)
(※3)プラスチック循環利用協会 (2018)
https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf
(※4)日本プラスチック工業連盟 (2019)
http://www.jpif.gr.jp/3toukei/conts/nenji_in_ex/y_genryou_export_c.htm
(※5)日本の海岸や川辺で発見される主要な漂着ごみの要因は、生活系プラスチック製品
(タバコのフィルター、食品容器包装、ペットボトル、レジ袋、プラスチックの使い
捨て食器等)及び、プラスチック製の漁業・農業系製品である。これらの生産者、流
通業者、製品使用者を主な対象とすべき。
(※6)例えば、プラスチックの使用抑制、持続可能な代替品への切替え、リユース・リサ
イクル、自然界への流出抑制の促進に向けた法的拘束力のある規制、課税・課金、回
収制度、製品デザイン要求、違反者へのペナルティ等の諸制度を導入すること。

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