自然保護を困難にする?地方への権限移譲問題


現在、国内の自然保護にかかわる国の権限を、地方自治体に移管する動きが進んでいます。しかし、この動きは、自治体の境界を越えて広がる自然環境や野生生物を保護する上で必要とされる、国レベルでの取り組みを、今後困難にしてしまう可能性があります。2011年11月11日、細野豪志環境大臣、輿石東民主党陳情要請対策本部長に対し、環境省の事務・権限を地方に移譲することに反対する要望書を提出しました。

環境省の権限を地方に移管することによる問題

現在、国内では、国と自治体が対等な立場で政治や政策を進めていく地方分権改革が進んでいます。

そして、その一環として、国の出先機関(地方事務所)についても、原則廃止してゆくことが決まっています。

この地方事務所の廃止は、広域連合制度(複数の都道府県が広域にわたり処理する事務)が整った地域であることが条件になっており、現在、関西広域連合や九州地方理事会が環境省の地方環境事務所の権限を全て移管するよう要望しています。

しかし、自然保護に関しては、こうした地方への権限移譲が、問題を引き起こす可能性があります。

そもそも、さまざまな野生生物は、市町村を越え、県境を越え、国を越えて生息しているものであり、その保護には、国というレベルでの視点での判断や取り組みが欠かせません。

また、渡り鳥のように、国という枠を超えた、国際的な視点から保全を考えてゆかねばならないケースもあります。

今回、関西広域連合や九州地方理事会が環境省から譲渡を要望している、権限の中には、国立公園や鳥獣保護区などの権限や許認可も含まれていますが、実際に、このような形で、自然保護の主権が地方自治体に移った場合、開発を許可する責任者と、開発から自然を守る責任者が、同じになってしまう恐れがあります。

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日本を代表する3つの自然保護団体の要望

2011年11月11日、WWFジャパン、日本自然保護協会、日本野鳥の会の3団体は、細野豪志環境大臣、輿石東民主党陳情要請対策本部長に対し、環境省・地方環境事務所の事務・権限の地方行政組織への移譲に反対する旨の要望書・意見書を提出しました。

この要望は、自然保護、生物多様性保全に関わる立場から、それぞれ、国立公園の管理や野生動物の広域的な保護・管理に必要とされる業務等を、地方に移管をせず、引き続き環境省の地方環境事務所で行なうことを求めるものです。

WWFジャパンは、この要望書の中で、国際的な視野に立って、重要な国立公園などの保護区の指定と実効的な管理を行なうために、下の2点を中心に、今後も国の機関である地方環境事務所が、責任を持って進めることを強く求めました。

  1. 自然保護施策の柱となる、国指定の国立公園などの
    保護区を国が直接管理すること
  2. 地域を越えて取り組むべき、野生生物の保護が
    推進できるように、行政の体制を維持すること

実際、現状の広域連合では、自然保護に必要とされる、予防原則に基づいた、対応や取り組みが確実に実施できるのか、また国際的に求められる、生物多様性に関するさまざまな調査データなどが、解析・報告できるのか、不透明なままです。

予算がつかないなどの理由で、各地方にある自然保護の拠点が活動できなくなるようなことになれば、それは日本の生物多様性を保全する上での、大きな後退となります。

2010年に名古屋で開かれた生物多様性条約会議(COP10)では決まった「愛知目標」では、その第一番目に、生物多様性の主流化、つまりその保全に優先的に取り組むべきことが挙げられています。

こうした国としての大方針を達成してゆくためにも、環境行政のあり方と、その権限の配分には、慎重を期さねばなりません。

要望書

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