WWFは、関西電力大飯原発3、4号機の今の段階での再稼働に強く反対します


声明 2012年4月27日

野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら関係3閣僚は、定期検査で停止中の関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に関して、政府の決めた「安全性の判断基準」を満たしているとして、関電管内の電力不足を緩和するために再稼働が必要と結論づけています。

しかし、WWFは、未曾有の被害をもたらした福島原子力発電所事故の調査は終わっておらず、地元の自治体にも強い反発がある中において、拙速に作成した安全性の基準に照らした判断で、大飯原発の再稼動に踏み切ることに強く反対します。

枝野大臣は、関西電力の電力需給について、「全ての原発が起動されないままでは、夏に非常に厳しい電力不足に直面する。また今の状況が続けば電力料金の値上げに踏み切らざるを得ない」と原発の再稼動の必要性を説明しています。

関西電力からの報告を元に資源エネルギー庁が示した電力不足の内容は、2009年夏並みの猛暑ならば2割程度の電力不足となるというものです。しかし実はこのデータの示す電力不足になる時間というのは、ほんの数十時間に過ぎず、昨年においては夏全体の3%以下にすぎませんでした。しかも電力不足になる時間帯は昼ごろから夕方にかけてであるため、このピークの時間帯に賢く節電を行えば、電力不足は回避できるのです。

2010年のような、冷房停止や各種機器の一斉停止、休日シフトなど、労働環境や生活環境を悪化させる無理な方法をとる必要もありません。ピーク時間帯の電気料金を上げることによって、消費者に行動変化を促すなどの手法や、ピーク時間帯に電力供給を止める代わりに電力料金を安くする契約を結んでいる大口需要家に協力してもらう、自家発電の追加活用などの方法で十分まかなえると考えられます。

また夏のピーク時の需要の7割以上を占める工場と業務施設(オフィス、商業施設、宿泊施設など)においては、照明の明るさ低下、不要箇所の空調停止、さらに旧設備から更新などで大幅な省エネの余地があります。これらを進めることによって、恒久的な省エネ社会へとシフトしていくことができます。

したがってWWFは、真の安全性が確保されていない現状で、電力不足を理由に、原発の再稼動を急がせることは不合理と考えます。十分な時間をかけて再稼動を判断するべきです。

WWFの考える再稼動の5条件は以下です。

原発再稼働5条件

1. 信頼できる原発規制新体制の確立

  • エネルギー供給と安全対策を明確に分けた体制:原子力規制庁が設置されていること
  • 独立した権限:新しい規制組織は、安全を確保するための諸規制の制定において独立した権限を持つこと。また、電力会社や原子力事業などの利害関係者から離れた中立的な立場の体制を整えること
  • 放射性物質を適用対象とするよう環境基本法および関連法の改正を至急すすめること

2. 事故原因を踏まえた新安全基準の適用

  • 政府事故調・国会事故調・民間事故調の調査結果をもとに、事故の根本原因(津波想定、想定地震動、組織的な不作為等)に基づいた新しい安全基準を再検討すること
  • 新しい安全基準については、国際的な組織を含む中立な立場からの評価を十分に受けること
  • その新しい安全基準をすべての原発に再適用し、津波対策などの措置が完了していること。また、その基準適用自体が、中立的な立場から検証されること
  • 自然は想定できない事態が起こりうることを理解し、予防原則を最優先に考えること

3. 原発事故防災体制と危機管理の抜本的な見直し

  • 事故時の放射能拡散シミュレーション等、被害予測を全原発地点で公開し、迅速かつ的確に対応できる防災計画・危機管理体制が構築されていること
  • 現実的な事故対応の準備と防災訓練の実施計画があること

4. 被害想定範囲に応じた地方自治体との安全協定と地域社会の再稼働への同意

  • 放射能拡散シミュレーション等の被害予測に応じた範囲に含まれる地方自治体と、原子力安全協定を締結すること
  • 原子力政策の基本である公開の原則に則り、客観的な情報が提示された上で、当該範囲に含まれる自治体住民の中で、熟議がされていること

5. 中長期的な脱原発依存の実現の工程表の提示

  • 旧型や老朽化した原発、地震や津波などの危険性の高い地域の原発を早期に運転停止し、廃炉にしていく計画や、その他の原発の運転終了までの期間などの計画を示し、政府の主張する「脱原発依存」の工程が具体的に示されること
  • 使用済み核燃料の現実的な長期管理方策が提示されること

WWFは、2050年に100%自然エネルギー社会が技術的に可能であるシナリオを発表し、提唱しています。

2011年2月に発表した世界シナリオのあとに、11月には日本版シナリオを発表しました。最も重要なポイントは、今ある省エネ技術を最大限に普及させることによって2050年にエネルギー消費を半減できること、原発を段階的に廃止していくこと、そして自然エネルギーを急速に普及させていくことの3つです。

その中で原発の再稼動の際に安全性の確認、地元の同意など必要な条件を挙げており、今回さらに条件を具体化しました。WWFは上記に掲げた5つの条件が満たされない限り、再稼動は認められないと考えます。

なるべく早く原発を全廃するために、今最も必要なことは、徹底して省エネを進めながら、自然エネルギーを急速に普及させることです。

これによって温暖化の進行を抑えることも可能となり、安全で安心な環境を私たちの子どもや孫の世代に残すことができます。今こそエネルギーを変えていく機会です。あなたもぜひご一緒にお考えください!

くわしくはこちらをご覧ください。

 

関連Q&A

Q. 原子力発電の定期検査とはなんのこと?

A. 原子炉の設置者は定期検査を受ける義務があります。経済産業大臣は、技術基準に適合しているかどうかを検査します (核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第29条および電気事業法第54条)。実際には現在は経済産業省の原子力安全・保安院が実施します。検査の内容は、設備が正常に機能するか、消耗品の交換、劣化の補修などです。
定期検査の間隔は、従来の13ヶ月を超えない時期から、平成21年の省令改正により、13ヶ月を超えない時期、18ヶ月を超えない時期、24ヶ月を超えない時期の3つとなりました(ただし、24ヶ月を超えない時期については施行から5年後に導入)。

Q.大飯原発の再稼働はどうやって決めるの?

A. 2011年7月6日、原子力安全委員会は「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価の実施について」をとりまとめ、原子力安全・保安院に対し、発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価(以下「総合的安全評価」)の実施を要請 しました。

この総合的安全評価は、何らかの基準に対する合否判定を目的とするものではありません。設計上の想定を超える外部事象に対して、施設の潜在的な脆弱性を事業者が的確に把握し、様々な対策を行うこと等により、施設の頑健性(がんけんせい=丈夫さ)を高め、これらの内容について技術的説明責任を果たすことについて、規制行政庁である保安院が評価結果を的確に確認することを求めたものです。

2011年7月11日、政府は、3大臣が原発の安全確認に関する統一見解を発表し、そのなかで総合評価で再稼働の可否を判断するとしました。

2012年2月13日、原子力委員会は、保安院から「関西電力株式会社大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価(一次評価)に関する審査書」の報告を受けました。 原子力委員会は一次評価への見解を述べ、さらに二次評価をすみやかにおこない、安全対策の継続的改善を求めています。

(原子力安全委員会、2011.3.24, 「関西電力株式会社大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価(一次評価)に関する原子力安全・保安院による確認結果について」を一部引用
http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2012/genan015/siryo1.pdf
官房長官記者発表、2011.7.11, 首相官邸HP. http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201107/11_a.html)

Q.原子力安全協定とはなんのことですか?

A. 原子力施設の安全に係る規制権限は国にあり、原子力防災関係を除いて、自治体には法的権限がありません。
しかし実際には、関係自治体は事業者との間で 「原子力安全協定」を締結しています。事業者は関係自治体 に対してトラブル等の連絡を行っており、またトラブル等により停止した原子力施設の運転再開にあたっては、関係自治体の了解を得ることとしています。 法律上は規制権限を持たない関係自治体が、実質的に関与を行っていく上での重要な根拠とな っています。

現在、すべての原子力発電所で安全協定が結ばれており、施設を新増設する場合の事前協議、事前了解、環境放射能や温排水の調査、異常時や平常時の通報・連絡、自治体の立入り検査、損害賠償などが記載されています。原発が設置された1960年代から協定が発生しており、公害防止協定に近いものであったと考えられています。

(参考:菅原慎悦、 原子力安全協定の現状と課題、ジュリスト1339, 2010.4.15)

Q.環境政策のなかで、放射性物質の汚染はどう扱われていますか?

A.環境行政の基本となる環境基本法では、 放射性物質による環境の汚染の防止のための措置については、原子力基本法その他の関係法律で定めると規定し、適用除外しています(第13条)。一方、原子力基本法関連の法律のうち、原子炉等規制法では、原発の運転によって発生する放射性廃棄物の処理のみを対象としており、廃棄物以外の放射性物質については、他の関係法令でも規制するものは見当たりません。

環境基本法の適用除外であることから、大気汚染防止法第27条、水質汚染防止法第23条、土壌汚染対策法第2条、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律第2条、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律第52条、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第2条、環境影響評価法第52条、特定化学物質の影響への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律第2条、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律第2条1項、特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条、資源の有効な利用の促進に関する法律第2条2項などの個別法でも、放射性物質については適用除外となっています。

我が国の環境政策の歴史を振り返ると、1967年に制定した公害対策基本法には、放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置は原子力基本法その他関係法令による、となっていました(同法第8条)。1970年の改正時に、いわゆる経済調和条項が削除され、環境と経済の関係における第一のパラダイムシフトがありました。さらに、大塚直教授によると、1993年に制定した環境基本法が、限りある環境のなかで経済を発展させるとの考えを取り入れた時点で、第2のパラダイムの変更があったと考えられています。

しかし、いずれのときも、放射性物質の汚染は環境法の対象となりませんでした。その背景には、公害は人体に害が出て初めて公害と認識しますが、当時の原子力発電や、そこに起因する放射性物質は、人体に害を与えるとは想定されていなかったと推測されます。

(参考:安部慶三、2012.1, 立法と調査 2012.1 No.324、参議院事務局企画調整室編集・発行、「3・11 大震災後の環境行政・政策の課題 」http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2012pdf/20120113132.pdf)

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