電力システム改革専門委員会 最終報告書への意見書


意見書 2013年2月18日

総合資源エネルギー調査会 総合部会 電力システム改革専門委員会 御中

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WWFジャパンは、このたびの電力システム改革専門委員会から出された最終報告書の方向性について歓迎する。
日本の電力システムは、先進国の中でいまやもっとも自由化が遅れており、その弊害は再生可能エネルギー導入の極端な遅延となって現れ、日本は温暖化対策においても後退が著しい国となっている。これまで日本では地域独占型の電力会社体制の下で送電網の独立性が確保できず、時代に逆行してきたが、福島原発事故以降の2012年1月に発足した今回の電力システム改革専門委員会では、初めて中立の識者が自由な議論を繰り広げることができた。その結果、最終報告書では明確に改革の方向性が示されたことを、WWFジャパンは高く評価する。
WWFジャパンの観点ではより踏み込んでもらいたい点もあるが、まずはこの報告書が国民に広く知られ、今国会に提出される電力事業法改正案として形作られ、早期に採択されて、端緒についた電力システム改革が後退することなく進められることを強く願う。

WWFジャパンは、特に以下の決定を歓迎する。

1)地域独占を撤廃することを明記したこと:

「これまで一般電気事業者に認められてきた地域独占の制度を撤廃し、原則として、すべての者がすべての地域ですべての需要に応じ電気の供給を行うことを可能とする」と明記されたことは、日本の電力システムがようやく時代の流れに沿い、改革への一歩を踏み出したことを象徴している。

2)広域系統運用の拡大を、新運用機関設立で実行していくこと:

安定供給と喫緊の課題である再エネの急速な導入のためには、系統の広域運用が欠かせない。ESCJの運用では機能しないことが分かった今、新たな権限を持つ広域系統運用機関の設立は必須であり、2015年という具体的な工程を持って示されたことを高く評価する。広域系統運用機関の業務として、特に中立性が必要となる系統アクセス業務、連系線・基幹系統にかかる作業停止計画の調整などについて、現状の電力会社から権限を移行させることが重要で、早急に詳細を詰め、速やかに進めていくべきである。また今後の地域間連系線の設備増強計画などもいずれは新広域系統運用機関の業務の一つとなっていくべきだが、新運用機関が設立されるまで待つことなく重要な送電設備を増強していくために、過渡期には、再生可能エネルギーの大量導入を前提とした設備計画を元に、政府が主体となって進めていく必要がある。

3)送配電部門の中立性の確保として、「法的分離」方式を前提として作業すること:

送電会社の重要な使命の一つは、すべての発電会社を公平に扱うことである。『発電部門は自由化、送電部門は規制』を原則とする発送電分離の形式としては、送電部門の「法的分離」は、「機能分離」よりも送配電部門の独立性の明確さと、監視し易さの面で優れる。また送電・系統運用の専門家が前面に出て、公共インフラとして運営していくことによる革新性も期待される。将来的には、中立性の確保として最終形である「所有権分離」が望ましいが、その所有権分離に移行しやすいことも利点である。

4)市場の自由競争の状況のレビューや送配電部門の中立性を確保するために、託送規制や新たな行為規制の実効性を担保するための新規制組織を早急に設立すること:

これまでの日本の電力改革であった「制度があっても実質的には変わらない」というパターンを打破するためには、託送規制や新たな行為規制が実効力を持っているかどうかや、電力市場の競争状況などを定期的にレビューし、必要に応じてルールを整備していくことが重要だ。そのためには独立性と高度な専門性を有する新たな規制組織が改革の初期から不可欠であり、2015年を目途に新規制組織へ移行することが明記されたことは評価に値する。規制組織の監視がなければ、送配電部門の中立化の確保も競争市場の整備も進まないと考えられるため、直ちに組織の詳細設計に入っていくことが必要である。

5)電力システム改革の工程表が示されたこと

今回の報告書の提言を進めるために、具体的な工程表が示されたことを最も高く評価する。「目途とする」という示し方ではなく、「期限」とすることが望ましく、さらに電力事業法の改正案の附則などに入れて、法的な拘束力を持たせ強力に進めていくことが望まれる。

一方、以下については改善を求めたい

1)法的分離の時期を5~7年後の2018~2020年としたことの前倒し

日本は2003年から会計分離を行っており、構造分離に向かって十分時間をかけているのではないか?ここから法的分離までに5~7年もかけるというのはいかにも長い。たとえば欧州では、1996年の第1次欧州電力指令(96/92/EC)で、送電網の規制について会計と運営の分離が求められ、7年後の2003年の第2次欧州電力指令(2003/54/EC)には2004年1月までに法的分離を行うことが義務化された。それを受けてドイツではRWEなどは約1年で法的分離を達成しており、Vattenfallではすでに2002年に送電系統部門を分社化、2010年には完全に所有権分離(売却)している。また欧州の先進国はすでに発送電分離を達成しており、日本などの後発組は、いわばその社会実験を参考にすることができる立場であることを考えると、もっと早期に期限を切ることができるのではないか?

2)独立した強い新規制組織を作ること

送配電部門の中立性を確保し、取引監視や競争状況のレビューを行っていくためには、今までにない強制力の強い規制組織が必要となる。また一般電気事業者に対し、適正予備率の確保を超える部分の電源について最大限の市場投入を行うことや、卸電力市場が機能するまで新電力に対し一定量の常時バックアップを供給することなどが求められているが、自主的な取り組みに頼っている部分が多い。こうした自主的取り組みを監視する仕組みも過渡期には欠かせない。
新規制組織はうたわれているが、"移行"という言葉が示唆することからは、今までの経産省の一部局である規制局が拡大するイメージに聞こえる。しかしドイツの例を見ても、当初は電力会社による新規参入の阻害行為などで自由化が進まず、強力な規制機関であるドイツ連邦ネットワーク規制庁(BNetzA)を創設したことによって送電部門の規制・監督が強化され、初めて本格的な発送電分離が進んだ。したがって10年以上自由化が遅れている日本においては、この事例に鑑み、最初から強い独立性と専門性を持った新規制組織が求められる。

3)法的分離を含む改革について工程表に沿って改革が行われているか監視を行うこと:

まずは今回の改革について期限とともに、電事法改正の中に位置づけることが大切だが、特に法的分離について、いたずらに改革を先延ばしすることのないように、各電力会社に移行計画を提出させ、その妥当性を審査する場を設定して、着実に実行に移していくように監視していく仕組みが必要である。2003年の第3次自由化議論の結果、決定されていた小売り自由化が、2008年になって「小売り自由化範囲の拡大を行うことは適切ではない」として葬られてしまったが、今回の法的分離も5~7年という長い準備期間を設定することで、実質的には改革を先送りし、さらに政治情勢の変化によって後退させるということを繰り返してはならない。

4)④再エネの導入を、優先的に電力システム改革を行う目的と明記すること:

電力システム改革の目的が、安定供給を事業者や需要家の選択や競争を通じた創意工夫によって実現する方策と位置付けられているのは当然だが、「再エネ導入の拡大」も、持続可能で安全なエネルギー確保、及びエネルギー安全保障、さらに地球温暖化対策の観点から、最重要の目的の一つとして明記するべきである。特に、広域系統運用に係るルールの策定のあり方、移行期における送配電部門へのインセンティブの確保、そして、中長期での供給力確保等の取組みにおいて、その視点を持ってこの改革を貫いていくことが大切である。

5)環境アセスをいたずらに競争阻害要因と位置づけないこと:

電源開発における環境アセスについては、改善の余地があることは確かだが、適切な環境アセスは電源の持続可能な開発にとってむしろ積極的な役割を果たすものである。いたずらにこれを競争を妨げるものと位置づけることは避けなければならない。

いまだ電気事業連合会は、「原発再稼働やエネルギー政策が不透明な中で、組織形態の見直しを判断するべきではない」とした意見書を提出しているが、電力システム改革は、福島原発事故後の需給ひっ迫で現状のシステムの機能不全が明らかとなった今、今後のエネルギー政策にかかわらず必定である。
政策提言の場である経済産業省の委員会の場で、具体的な工程表を伴った電力システム改革提言が出されたことについて、国民に広く知らしめるべきであり、これが国会の議論の中で骨抜きにされていくことはあってはならない。再エネ導入に欠かせないこの電力システム改革が今国会で速やかに決定されることをWWFジャパンは強く促す。

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