公有水面埋立承認申請書(名護市辺野古)に係る利害関係人の意見書


2013年7月18日 意見書

沖縄県知事 仲井眞弘多 殿

提出者

住所:東京都港区芝3-1-14 日本生命赤羽橋ビル6F
氏名:公益財団法人世界自然保護基金(WWF)ジャパン事務局長 樋口隆昌
E-mail:masayuki@wwf.or.jp(権田)

利害関係の内容

南西諸島に残された希少な沿岸生態系を有する辺野古・大浦湾は、科学的に見て地球上で優先的に保全すべき200地域に位置付けられており、その改変計画は生物多様性の保全を推進する国際環境NGOの立場から、容認できない行為である。生物多様性の保全に甚大な影響を及ぼすものであり、且つこれまでの調査・影響評価手続きにおいても、その科学的根拠および保全措置を著しく欠くものとして抗議するとともに、今回の申請の却下を求めるものである。

意見

当該計画地域における自然環境やそこに生息する絶滅危惧種を含む生物への影響は以下の理由のとおり甚大な影響が予想される。沖縄県知事による「当該評価書で示された環境保全措置等では、事業実施区域周辺域の生活環境及び自然環境の保全を図ることは不可能と考える」との意見は妥当であり、公有水面埋立法における、都道府県知事の埋め立ての免許要件である「環境保全に十分配慮されたもの」といえるものではない。このため沖縄県知事においては、当該申請書に対し、認可をするべきではない。

絶滅危惧種であるジュゴンとその生息環境への影響

辺野古・大浦湾地域は、絶滅危惧種IA類に指定されているジュゴンの限られた生息地である。
IUCN(国際自然保護連合)の2000年アンマン・2004年バンコクでの勧告、2008年のバルセロナでの決議を遵守し、ジュゴンの生息場所やその周辺(ノグチゲラ、ヤンバルクイナとその生息地)の保全と個体群の存続を確実にするための適切な対策を講じることが求められているにもかかわらず、今回の生息地域の大規模な改変はその生息環境に甚大な影響を及ぼすものである。

本来、ジュゴンの生息環境の維持のみならず、危機的な状況にあるその個体数の回復のためには広大且つ安全な海草藻場の存在が不可欠である。しかしながら、調査段階において安部~嘉陽地先前面海岸から大浦湾西部の辺野古地先にかけてのジュゴンの生息適地域とその周辺のバッファゾーンの影響予測を行っているにもかかわらず、評価書において、汀間港等周辺の大浦湾のみバッファゾーンとみなした結果は科学的根拠がしめされていないままであり、現状での埋め立て計画の推進は藻場が破壊されることによるジュゴンの絶滅の要因になると予測される。

生物の多様性を有する生態系とその価値の逸失

2007年9月に、沖縄県名護市の大浦湾で発見された、アオサンゴの大群集について、当法人は2008年に、研究者や他の自然保護団体と共に調査を実施。汀間漁港の南東およそ2キロのところにある、通称「チリビシ」と呼ばれる場所に位置していること、また、高さ12m、幅30m、長さ60mにわたって広がっていることを確認した。現在、オニヒトデによる食害や沿岸の開発、温暖化などによる白化現象によって、多くのサンゴが減少しつつある中、このような特徴的な、アオサンゴが大規模に分布する大浦湾の環境は、同地域にて近年発見された多数のエビ・カニ類の新種などの生物とともに、その自然環境と生物多様性の豊かさを示すものであり、後世に受け継ぐべき地域の環境資源として保全する必要がある。
しかしながら、今回の工事によって生じた海流への大きな影響が大浦湾など周辺のサンゴ礁や海草藻場へも次第に悪影響を拡大していく可能性が高い。埋め立て土砂の7割を超える1,640万㎥の岩ズリについて、沖縄だけでなく九州、瀬戸内周辺からの購入を予定しており、生態系に対する影響を及ぼさない材料の選定を担保するプロセスとその内容が不明である。

環境影響調査・評価手続きにおける問題

当法人が2012年2月に提出した意見書において指摘し、改善を求めた普天間飛行場代替施設建設事業にかかる環境影響評価書の調査、予測、評価の手法や環境保全措置の不足・不十分な内容および環境影響評価そのものの手続について、何ら改善がなされてない。申請された埋め立て工事を含む基地建設工事が生物多様性に与える影響は甚大であり、建設位置の再考を速やかに行うか、再度、方法書に立ち返り、環境アセスメント手続きを適正にやり直す必要がある。
そもそも評価書において、普天間飛行場代替施設が環境の自然的構成要素の良好な状態の保持、生物多様性の確保や自然環境の体系的保全、人と自然との豊かな触れ合いについて大部分の項目でその影響の可能性を予測し、一部の項目では決定的な影響を与えるとしながらも、その影響は軽微であると評価されている点は、明らかな矛盾であり、調査、予測、評価の早急な再実施を行うべきである。

かけがえのない資源としての地域の自然環境の損失

琉球列島(南西諸島)は、「世界環境保全戦略」(IUCN、UNEP、WWF 1980年)および「グローバル200」(WWF 2003年)により、地球上で重要な生物相と自然環境を有している保護・保全の優先度が高い地域と評価されている。特に琉球列島の島々は、亜熱帯林やマングローブ林、サンゴ礁や干潟など多種多様な環境の構成要素で形成されており、世界的にも類を見ない貴重な生態系である。また島嶼域で構成されるためこの列島にしか生息していない数多くの固有種を育んできた。これらは、琉球列島の自然資源であるだけでなく、我が国並びに世界的にみても後世に残すべき財産といえるものである。

そして辺野古海域の環境は、その特性上、外洋に面したサンゴ礁生態系であり、リーフやラグーンが発達した浅海域である。このラグーンには、沖縄島では最大面積の藻場が広がっており、大浦湾には大規模なサンゴの群集が発見されている。また沖縄県では、辺野古海域を「自然環境の厳正な保護を図る区域」に指定している地域でもある。

この地域の特色である、海洋に囲まれた島という脆弱な生態系を、本土並みの基準で大規模に開発実施することは地域生態系の破壊に直結する可能性が高く、島嶼域ならではの固有種の絶滅の原因にもなりかねない。さらに沖縄では地域の自然環境を基盤として景観および生活や文化が育まれており、とくに海とのつながりにおいては沿岸域での自然とのふれあいを含めた生活の糧を得る場として、長い歴史の中で、そこに暮らす人々によってかたちづくられたものである。辺野古においては、陸域に名称が残るように、サンゴ礁のクチや岩にも名称がある。これらは文化遺産ともいえるものであり、自然環境の大規模改変は地域社会、住民および次の世代にとっての、地域の価値観や文化の消失につながるものである。

このためWWFジャパンは、今回の埋め立て申請をはじめ、辺野古新基地(普天間代替施設)計画については、生物多様性保全の観点から、計画の中止を含む見直しを行うとともに、辺野古・大浦湾海域については、生物多様性保全のための海洋保護区を設置し、やんばるの森とあわせて世界自然遺産への登録を推進するよう、沖縄県行政に対しその施策推進と、国へも働きかけを行うことを求めるものである。

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