インドネシアの森林破壊につながるAPP製品の購入・投資の見直しを


2013年2月5日、インドネシアのスマトラ島を中心に約200万ヘクタールに及ぶ熱帯林を伐採してきた、製紙メーカーAPP社は、「森林保護方針」を発表し、全ての自然林の伐採をいったん停止するとしました。しかし、その後も同社の原料供給企業が自然林の伐採を行なっていることが確認され、方針が守られていない事実が明らかとなりました。このためWWFは、7月1日、APP社と取引のある企業と投資家に対し、同社が森林破壊に関与しない責任ある企業になったと、完全に独立した第三者が認めるまでは、製品の購入や新たな設備拡大計画への投資は、行なわれるべきでないとの見解を発表しました。

守られることがなかった「約束」の歴史

1984年の操業以来、スマトラ島で大規模な熱帯林の伐採を続けてきた、シナル・マス・グループのアジア・パルプ・アンド・ペーパー社(以下、APP社)は、これまでに幾度も、「工場に受け入れる製紙原料の100%を、自然の熱帯林ではなく、植林木にする」という約束を繰り返し行なってきました。

しかし、同社は、自ら約束した自然林伐採中止の期限を、2004年から2007年まで、さらには2009年までと延長し、結果として、スマトラトラやスマトラゾウなどの、絶滅の危機に瀕する希少な野生生物が息づく自然林の破壊を続けました。

2012年には、持続可能性ロードマップ「ビジョン2020」をもって「2015年までにこの目標を達成する」とこの期限をさらに延長することを発表し、自然林伐採の即時停止を求めてきたWWFをはじめとする多くの環境団体から強い批判を受けました。

そして、翌年の2013年2月には、その目標を約2年前倒しするという新たな「森林保護方針」を発表しました。

スマトラ島中部、リアウ州での森林破壊(2012年4月)

またも虚言だったAPP社の「森林保護方針」

この「森林保護方針」は、「2013年2月1日以降、独立した評価によって、長期的な管理プログラムのもとで保護される保護価値の高い地域が特定されるまで、全ての木材供給会社の自然林の皆伐を停止する」ことを宣言したものです。

これにはWWFなどが繰り返し求め続けてきた、「自然林原料の全面的な受け入れ停止」と同等と思われる内容が含まれていました

この発表により、長年にわたり論争の的となってきたAPP社が、ついに自然林破壊に関与しない責任ある調達へと舵を切るのか、世界中から大きな注目を集めました

ところが2013年3月以降も、インドネシアで森林減少・違法伐採を監視するNGOの連合体、アイズ・オン・ザ・フォレストなどの独立した分析により、この「森林保護方針」には、重大な問題があるとの指摘がされました。

それは、APP社が発表した木材供給企業および保有する森林伐採許可地においては、法的に許可される自然の熱帯林の伐採はすでに概ね完了していることです。

つまり、約30年わたってAPP社の原料調達の中心地となってきたスマトラ島中部のリアウ州においては、すでに可能な限りの自然林を伐り尽くし、植林地への転換をほぼ完了させた上で、今回の宣言を行なった、ということが明らかになったのです。

しかも、方針発表の翌月には、ボルネオ島のインドネシア領カリマンタンで、5月にもスマトラ島リアウ州の伐採許可地において自然林の破壊が続いていることが、現地のNGOの調査によって確認されました。

そして5月16日には、さらに深刻な事実が明らかにされました。それは、APP社が「全ての自然林の伐採をいったん停止する」と述べた中から、複数の地域を除外しているということです。これは、方針発表以降、複数回にわたって行なわれてきた対話のなかで明らかにされました。

APP 社が「自然林」ではなく「低木地」とし、伐採停止の対象外とした森。ここは法的に伐採が禁止されている深さ4メートル以上の泥炭地の森で、深刻な絶滅の危機にあるスマトラトラの生息地でもある。(2013年5月29日撮影)

取引企業・投資機関への呼びかけ

2013年5月31日、WWFは、APP社のCEOリンダ・ウィジャヤ氏に対し、改めてWWFの懸念を示す書簡を送付しました。

WWFは、今回の「森林保護方針」こそは、インドネシアの森林と地域社会にとって朗報となるように期待し、自らの掲げた約束の順守を強く求めてきました。しかし現実には、保護価値の高さを測る評価は一つも完了しないまま、自然林の皆伐が続いていることに、WWF は、強い不信の念を示すとともに、例外なく自然林原料の受け入れを停止することを求めました。

その後、6月になってAPP社は、「2013 年2月1日以前に伐採された全ての自然林木材を工場に運び入れる絶対的な期限を8月31 日までとする。つまりこの日以降は、APP社の木材置き場には自然林原料は搬入されないということだ」との誓約を発表しました。

WWFはこれを一応は歓迎するものの、「自然林原料がAPP 社の木材置き場に入らない」という言葉が、WWFの求める「自然林破壊を行なわない」と同義であるとの確証はないと考えています。

その理由は、2月の方針発表後に確認された自然林の伐採について、APP 社は、その土地を「自然林」ではなく「低木地」とし、伐採の一時停止の対象外としたためです。そこは、法的に伐採が禁止されている深さ4メートル以上の泥炭地の森で、深刻な絶滅の危機にあるスマトラトラの生息地でもあります。

このためWWFは、7月1日、APP社の取引企業や投資機関に対して、2月の「森林保護方針」と今回の新たな誓約が、本当に同社の自然林破壊への関与を絶つものであることが、真に独立した第三者によって確証されるまでは、APP社の製品を購入しないこと、また新たな設備拡大計画への投資も行なわないことを勧める要請を発表しました。

とりわけ、南スマトラで建設予定とされる巨大な製紙工場に関しては、これが完成した場合、この工場にどのような原料が、どこから、どれだけの量持ち込まれることになるのか、きわめて不透明な状況です。

この計画が新たな自然林伐採の引き金にならないよう、WWF は現地のNGOと協力しながらモニタリングを続けるとともに、APP社に対し、ごまかしや時間稼ぎではない「森林保護方針」の実行を求めます。

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