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「サステナブル・バンキング・アセスメント(SUSBA)」の評価結果(2022年)

この記事のポイント
2023年1月、WWF はSUSBA アセスメント(2022年版) の調査結果に基づく新しい報告書を公表しました。これは、アジア地域の46の銀行(日本の5行含む)による持続可能性の取り組みを評価したものです。今回の調査結果では、2021年の評価時と比べ、2 倍以上の銀行がネットゼロの達成に取り組んでいる一方で、評価された銀行の半数は 2021 年以降、ほとんど進捗がなく、二極化が進んでいることも明らかになりました。
目次

サステナビリティの進捗 ある銀行とない銀行の二極化

2023年1月、WWF はアジア地域の46の銀行(日本の5行含む)における持続可能性の取り組みを評価した SUSBA アセスメント(2022年版) の調査結果に基づく新しい報告書を公表しました。

「サステナブル・バンキング・アセスメント(SUSBA)2022」報告書全文(英語のみ)
Sustainable-Banking-Assessment-2022.pdf

「サステナブル・バンキング・アセスメント(SUSBA)2022」仮訳
Sustainable-Banking-Assessment-2022-jp.pdf

調査結果では、2021年の評価時と比べ、2 倍以上の銀行がネットゼロの達成に取り組んでいることがわかりました。

一方で、主要な銀行が環境・社会リスク管理の方針とプロセスを強化し続けているにもかかわらず、評価された銀行の半数は 2021 年以降、ほとんど進捗がなく、二極化が進んでいることも明らかになりました。

前進が見られた点と、いまだに課題として明確になっているポイントは、概ね次の通りです。

前進した点
・評価対象の銀行でネットゼロに関するコミットメントを明らかにしているのは、2021 年の 15% から 2022 年には 39% に増加。

課題点
・自然関連のリスクが重要であると認識されているが、ほとんどの銀行は顧客に対し、自然関連のリスクの包括的評価と管理を要求していない。
・環境および社会面の考慮事項を意思決定に統合する点で大幅な進捗をとげたのは、評価された銀行の半数のみ。
・脱炭素化の科学に基づく目標設定について、依然としてエネルギー部門に大きなギャップをもたらしており、この分野へのポートフォリオについて科学に基づく目標を設定している銀行はわずか 11% にすぎない。

また、この他の課題として、評価対象国のほとんどの規制当局が、銀行に対し、科学に基づいた目標の設定や、移行計画の策定を、いまだ要求していない実情も示唆されました。

銀行に今後求められるサステナビリティあり方

今回のレポートは、評価された銀行の環境・社会面のインテグレーションについて、パフォーマンスに大きなばらつきがあることを示しています。

実施が進んでいない金融機関は直ちに取り組みを開始するとともに、実施している銀行も課題認識とコミットメントの段階を超え、方針の中で具体的にリスクを管理する能力を高める必要があります。

また、金融監督当局は、ESG リスク管理と開示要件を調整し強化することが求められます。

地球上の生物多様性のホットスポットのほぼ半分がアジア太平洋に位置しているため、この地域で環境保全を進めることは、地球規模の脱炭素と自然回復の目標を達成する上で非常に重要です。

WWF シンガポールのアジア サステナブル ファイナンス責任者であるクリスティーナ・アンゲロバは、次のように述べています。

「評価された銀行のネットゼロコミットメントは、2021 年の 15% から 2022 年には 39% に増加しましたが、残りの銀行もこれらのコミットメントを行うことが不可欠です。

すべての銀行にとって同様に重要なのは、信頼できる移行計画とともに、1.5度の道筋に沿ったポートフォリオの脱炭素化を導く科学に基づく目標を策定することです。

また、移行の計画は気候の分野にとどまらず、自然の回復(ネイチャー・ポジティブ)についても、野心的に取り入むことが大切です」

2022年に合意された、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の国際目標と、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のフレームワークを考えれば、今後、銀行が自然関連リスクを特定、評価、管理する能力を開発することは、非常に重要です。

WWFは今後も、脱炭素社会の実現と生物多様性の保全における銀行の役割を重視し、提言を行なっていきます。

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