【REDD+ 先進事例】マドレデディオスの炭素マップ作成


参加型プロセスによる、ペルーのアマゾンでの森林炭素ベースラインマップの作成

概要

ここで取り上げるREDD+ 先進事例は、ペルーのアマゾン地帯に位置するマドレデディオス地方の森林炭素マップ作成を目的として、森林減少のパターンについて有効な情報を収集するために地方政府が採用した参加型プロセスです。このマドレデディオスの森林炭素マップ作成では、複数の利害関係者を交えた参加型のプロセスが採用されました。協力に基づいたこのプロセスは成功を収めましたが、その要因は、地方政府および市民社会がもつ既存の技術的・制度的能力の強化に主眼を置いたことにありました。

プロジェクト内容

  • キャパシティ・ビルディングと参加型のプロセスに基づく、REDD+ベースラインマップのための公式情報の収集

参加者

  • 国および地域レベルの非政府組織(NGO)などの市民団体
  • マドレデディオス地方政府(GOREMAD)
  • WWFペルー

場所

  • ペルー アマゾン地帯 マドレデディオス地方

時期

  • 2009年から(実施中)

Mapping Madre de Dios

期待された変革点

  • 特に森林測定・報告・検証システム(MRV)に関して、地方政府とREDD+の現地専門家の能力を強化する。
  • 主要な利害関係者を交えた参加型・連携型手法により、森林減少と炭素ベースラインに関するデータの収集を行なう。その際マドレデディオスにおける以前のマップ作成の取り組みで得られた既存の情報も活用する。
  • 国及び地方政府と連携して設計・評価を行う地域的モニタリングシステムを立ち上げる。立ち上げに当たっては、効率的、かつ技術的・資金的に実現可能な参加型システムであることに配慮する。

背景

マドレデディオス地方政府(GOREMAD)は、同地方の自然資源に関して、環境省が示した国の規定を満たしつつ、ペルーが採用するREDD+ネステッド・アプローチに準拠した土地利用計画を実施する必要がありました。そのために、同政府は森林減少が起こった地域に関するデータを収集しようと試みましたが、さまざまな個別研究から情報が入手できたものの、そのうちのどれひとつとして、有効性が公式に確認されたものはありませんでした。一方、多くのREDD+の取り組みが同地方で開始されるなかで、森林減少に関する公式情報を求める声が高まっていました。

森林減少に関する公式データの必要性の高まりに応えようと、「REDD+に関する技術コンソーシアム」が結成されました。同組織の目的は、森林減少に関するこれまでの研究の検証と、森林減少率およびバイオマス・炭素に関する情報を推定するための方法論の確立でした。

同コンソーシアムはしかし、多くの技術的・制度的な困難のためにその目的を達成することができませんでした。そうした諸問題を克服してプロセスを継続するため、GOREMADは2009年に「気候変動に関する技術委員会」を創設し、その中で複数の作業部会が結成されることになりました。そうしたサブグループのひとつが「環境サービスおよびREDD+に関するラウンドテーブル(MSAR)」であり、土地利用計画、持続可能な開発、そして気候変動緩和のためのツールやメカニズムに焦点を当てた取り組みを行っています。

利害関係者

直接的利害関係者

プロジェクトの設計やさまざまな決定に関与するとともに、受益者となります。

  • アマゾンフォレスト
  • マドレデディオス・アマゾン国立大学(UNAMAD)
  • アマゾン川流域保全協会(ACCA)
  • 環境省(MINAM)
  • マドレデディオス先住民連盟(FENAMAD)
  • ペルー環境法協会(SPDA)
  • マドレデディオス地方政府(GOREMAD)
  • ペルー・アマゾン調査研究所(IIAP)
  • 調査・総合開発協会(AIDER)
  • 持続的な地方開発(DRIS)
  • WWF

戦略的利害関係者

物的、人的その他の資源を提供します。

  • コンサベーション・インターナショナル(CI)
  • クリティカル・エコシステム・パートナーシップ基金(CEPF)
  • ドイツ復興金融公庫(KfW)
  • ノルウェー国際協力庁(NORAD)
  • ゴードン&ベティ・ムーア基金
  • Sall Family Foundation, Inc.

間接的利害関係者

直接的には関与しないものの、取組みに影響を与えます。

  • 栗の採集業者および貿易業者
  • 森林伐採権取得者連盟
  • 森林・野生生物プログラム

プロジェクト進展の流れ

2009年

REDD+に関する技術コンソーシアムの誕生:政府は自然資源のモニタリングの精度を高めるため、森林減少率の算定に関心を持っていました。その実行のため、政府は国際的なワークショップを組織し、市民社会、民間企業、そして国際組織の代表を招きました。その結果、REDD+に関する技術コンソーシアムが結成されたのです。このコンソーシアムに参加した10機関は、協力のための連携協定に署名し、2年間活動を行いましたが、ツール不足、現地の能力不足、技術チーム間のコミュニケーション上の問題のため、結果的に期待に応えることはできませんでした。

2010年

環境サービスおよびREDD+に関するラウンドテーブル:2010年、官民両機関および市民社会は、以前に設立されていたものの、それまでREDDには注力していなかった組織であるMSARの活動再開を求めました。この年MSARは月次の会合を開始し、これがガバナンス構造の整備、合意された明確な責任分担、技術、法律、制度、社会に関する各作業部会の立ち上げといった具体的な成果につながりました。

2010~11年

中央政府と地方政府との連携の改善:国レベルでは、環境省がREDD+に関して「気候変動緩和のための国家森林保全プログラム」と提携を結びました。地方レベルでは、MSARが環境省と協力し、同地方におけるREDD+実施のための技術的、科学的、制度的な能力を強化しました。環境省は技術アシスタントを任命し、マドレデディオスにおけるREDD+の地域的な取り組みの統合を国家レベルで支援しました。

2011年

現地における森林測定・報告・検証システム能力の強化:WWFと現地の大学(UNAMAD)は、森林測定・報告・検証システム(MRV)を専門とする、環境マネジメントおよびREDD+に関する初めてのディプロマプログラムを設置し、技術的能力の強化を図りました。気候変動とREDD+の科学的基礎についての5カ月間にわたる厳しい研修の後、GOREMAD、NGO、大学および民間の専門家35人からなる最初のクラスがプログラムを修了しました。

2012年

参加型プロセスによる、炭素ベースライン策定のための基準および手続きの決定:炭素ベースラインの策定は、MSAR内のバイオマス技術委員会において、同委員会を主導するWWFペルーの他、リーズ大学(英国)、政府機関、大学、草の根団体、民間機関、およびNGOによって共同で進められました。

2012年

MSAR、主要なREDD+推進主体としての地位を確立:MSARは環境サービスおよびREDD+に焦点を当てた2014年までの作業計画を策定しました。下部委員会はそれぞれリーダーを選出し、テーマごとの作業計画を作成しました。GOREMADは「地方首長による気候および森林タスクフォース(GCF)」の年次会合において、その経験を紹介することに成功しています。

成果

技術的成果

  • 専門家と政府関係者が、国際的なガイドラインと基準に基づいて森林減少のベースラインを推定する方法論を策定しました。このプロセスには、国内外の多くの組織によって提案された手法やツールの比較も含まれています。国立ラ・モリーナ農業大学(リマ)が厳選された方法論を開発しました。MSARはこうしたプロセスの重要性を認めるとともに、同方法論を技術的な基準として確定するためGOREMADに提出しました。
  • マドレデディオスに関するバイオマスおよび炭素ベースライン下部委員会は、WWFの主導により、官民の各組織が設定した600の森林プロットからの情報をまとめ上げました。リーズ大学(英国)がそうしたプロットからのデータの分析を支援し、必要とされるものを定義するとともに、マドレデディオスの森林炭素を計測する手順を提案しました。同手順では炭素蓄積目録(推定)の方法論が提案され、意思決定プロセスが説明されているほか、リストの設計、現地計測、データ分析およびプロセスについての提言も行なわれています。

制度上の成果

  • MSARは現在、GOREMADの指導のもと、複数の国際機関およびNGOの財政的支援を受けて定期的な活動を行っています。MSARはマドレデディオスにおけるREDD+のベースラインの構築を担っており、以前は同地域で個別に活動していたさまざまなグループの取り組みの調整を行っています。GOREMADとマドレデディオスの市民社会グループは、国家的な戦略を支える環境サービスおよびREDD+プロジェクトを共同で実施しています。
  • 環境マネジメントおよびMRVに関する初のディプロマプログラムは、同地方におけるこの複雑な問題の理解の増進をもたらしました。過去にも、より調整度の低いかたちで技術的なトレーニングを行う取り組みは数多くありましたが、現在ある組織的な体制は、複数の主要研究機関の協力のもと、学術的に高い評価を受けている現地の大学(UNAMAD)によって主導されています。
  • 現地コミュニティのメンバーは、成果に関して投票および有効性の承認を行うことにより、積極的に意思決定に参加することができます。このことで取り組みに対する現地の熱意がより高まり、技術的能力の形成の機会も増えたほか、同地方におけるREDD+プロジェクトに対する財政的支援も増加しています。

課題

  • 管理の中断と政治的不安定によってGOREMADの当局が頻繁に交代しており、プロジェクトの円滑な進展が阻害され、計画されたプログラムに影響を及ぼしています。
  • 参加型プロセスは、往々にして予想よりも長い時間を要します。この取り組みの強みは現地のグループと地方政府とが協力し合っていることによるものですが、これには相当の時間が必要となります。

得られた教訓

  • 真の参加型の技術的プロセスには、現地に最低限のレベルの能力が備わっていることが極めて重要です。これはMRVのように、混乱を引き起こしかねない複雑なテーマについて科学的、あるいは技術的な議論がある際には特に当てはまります。環境マネジメントおよびREDD+に関するディプロマプログラムに参加した経験があり、知識と情報を有する訓練された必要不可欠な人材が、十分に揃っていたからこそ、着実に歩を進め、具体的な計画や目的を定めることが可能となったのです。
  • 政権の交代率が高い場合、現地の人々が情報や知識を有していることがより一層不可欠となります。マドレデディオス政府は関連する諸問題について経験を有するものの、その作業プロセスは頻繁に起こる政府関係者のプロジェクト内外への異動によって阻害されました。こうした政治的不安定はまた、取り組みの中で得られた技術的情報の整理および統合を妨げました。知識豊かな必要不可欠な人材が政府の外部に十分に存在すれば、頻繁な政治的変化があった場合でも、プロセスの継続と一貫性を確保しやすくなります。
  • MRVのツールは柔軟であり、使用方法がシンプルかつ容易に入手可能であり、置かれた状況に適したものである必要があります。技術的なツールは、現地の状況、現地の技術者、そして現地の能力を考慮して開発される必要があります。コミュニティに特有のニーズを満たさないツールを使用すれば、作業に支障をきたすことになります。
  • ※この資料の発表は、WWFの「生きているアマゾン・イニシアティブ(Living Amazon Initiative)」との提携により実現したものです。同プログラムについて、詳しくは以下のサイトをご覧ください。
    http://wwf.panda.org/amazon

WWFのビジョン

WWFによる世界規模の「森林と気候イニシアティブ」は、人間と自然のために、REDD+が熱帯雨林の保全に大きく寄与し、そのことによって森林の減少と劣化による温暖化ガス排出量の削減にも貢献できるよう活動を行っています

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WWFは世界約100か国で活動している
環境保全団体です。

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