名古屋で「シギ・チドリ類ネットワーク交流会」を開催


干潟などのウェットランド(湿地)の自然を象徴する野生生物、渡り鳥。国境を超えて移動する、この鳥たちを保全するためには、飛来地のある各国が協力しながら、多様な湿地の生物多様性を保全しなければなりません。WWFジャパンと環境省は10月23日、生物多様性条約第10回締約国会議(CBD・COP10)が開かれている名古屋市で「シギ・チドリ類ネットワーク交流会」を開催しました。

シギ・チドリ...「地球の旅人」たち

シギ・チドリ類とは、海辺の干潟や、水田などを含めた湿地の環境(ウェットランド)を主な生息地とする鳥たちです。

その多くは、夏の繁殖地である北極圏と、越冬地である東南アジアやオセアニア、アフリカ、南米などの地域を行き来するので、年2回、地球を南北に、長距離の「渡り」をするのが特徴です。
この長旅の途中にあたる、日本や韓国、中国といった東アジアの干潟にも、春と秋のシーズンを中心に、数多くやってくる姿が見られます。

この渡り鳥たちと、その生息地である湿地の保全を考える、「シギ・チドリ類ネットワーク交流会」を、2010年10月23日に、名古屋で開催しました。

これは、名古屋で開かれている、生物多様性条約第10回締約国会議(CBD・COP10)の第一週目が終わった週末を機に、WWFジャパンと環境省が、湿地保全の国際条約「ラムサール条約」の登録地である藤前干潟で執り行ったものです。

各国の協力のもとで

これは、シギ・チドリ類をはじめとする渡り鳥に限ったことではありませんが、国境を超えて移動し、複数の生息地を必要とする生きものを保全するためには、生息地のあるそれぞれの国や地域が、協力しながら活動にあたる必要があります。

一つの国で保護が行なわれても、別の国で保護がなされなければ、結局その生きものは守ることができないからです。

したがって、各生息地の活動を、地域や国境の壁を越えた人のネットワークで結び、調査データや活動経験などを共有していくことが欠かせません。

WWFでは、シギ・チドリ類を、沿岸域の湿地環境がどのような状態にあるかを知る上で重要な指標生物のひとつと位置づけ、その保全のために、国内ネットワークや、国際的な協力体制を強化することを中心に活動を進めてきました。

今回の交流会では、繁殖地、越冬地、中継地(渡りの途中でエネルギー補給をするところ)を結ぶ国際的な協力体制である「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ(=鳥の渡り)パートナーシップ(EAAFP)」と、国内のシギ・チドリ類飛来地が参加する「シギ・チドリ類ネットワーク」について、より連携を深めるためには何が必要か、また、各地の湿地がどのような課題を抱えているか、などが主要な議題となりました。

保全の両輪

「東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ(EAAFP)」の事務局は、現在、韓国におかれています。今回の交流会には、EAAFP事務局のアラン・リーさんも参加。現在、世界で活動している、9つのフライウェイパートナーシップや、その活動の目的について紹介してくださいました。

世界の9つのフライウェイパートナーシップ

  • 西大西洋フライウェイパートナーシップ
  • 東アジア・西アフリカフライウェイパートナーシップ
  • 中央アジアフライウェイパートナーシップ
  • 黒海・地中海フライウェイパートナーシップ
  • 東アジア・オーストラリア地域フライウェイパートナーシップ
  • ミシシッピー・南北アメリカフライウェイパートナーシップ
  • 大西洋・南北アメリカフライウェイパートナーシップ
  • 太平洋・南北アメリカフライウェイパートナーシップ
  • 東太平洋フライウェイパートナーシップ

フライウェイパートナーシプの目的

  • 国際的に重要な湿地のネットワークの構築
  • 教育、普及啓発
  • モニタリングの強化、知識の充実、情報交換
  • 政策決定者や地元関係者の保全能力の向上
  • 保全を強化する手法の開発

 

日本はこの中の、東アジアオースオラリア地域フライウェイに含まれています。
アランさんによると、このフライウェイは5000万羽を超える、シギやチドリ、ガンカモ類、そしてツルなどの渡り性の水鳥が利用しているとのこと。
また同時に、世界の9つのフライウェイの中でも、特に地域住民の人口が多く、干潟など沿岸域の利用や開発も盛んであることが特徴だといいます。

そのため、フライウェイパートナーシップという、強力な保全の義務を伴わない、ゆるやかで自主的なネットワークと、「ラムサール条約」のような公的かつ法的な保全を約束する仕組み、その両方を使って、柔軟に保全を進めていくことの重要性が指摘されました。

地球を南北に大移動する渡り鳥たちは、まさに「地球の旅人」。日本にもシギやチドリの仲間が多数飛来します。

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名古屋港の一角に残る藤前干潟。ラムサール条約に登録された、国際的な保護湿地でもある。

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計画されていたゴミ処分場の建設予定地。干潟の真ん中に作られる予定だった。

渡り鳥たちの東アジアのフライウェイ(空の道)

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WWFスタッフの前川は日本のシギ・チドリネットワークのコーディネーターを勤めています。

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COP10本会議にも期待!

国内各地からの報告

交流会では、日本国内の「シギ・チドリ類ネットワーク」参加地である、千葉県の谷津干潟、地元名古屋市の藤前干潟、徳島県の吉野川河口域、熊本県の球磨川河口域からの報告も行なわれました。

それぞれに活動の特徴や課題がありましたが、共通して語られたのは、「シギ・チドリ類ネットワークに参加したことによって、地元住民の間に「水鳥にとって重要な生息地」という認 識が広がり、環境教育の場としての活用なども行なわれるようになった」ということ。

またその一方で、いまだに大きな開発計画があったり、周辺地域からの汚染の影響があるなどの課題を抱えている、という点も各地に共通した報告内容でした。

そのため、さらなる保全を進めるには、ラムサール条約への登録をめざす必要があると考えている地域も少なくありません。

こうした中、「シギ・チドリ類ネットワーク」と並ぶ、国内の渡り鳥ネットワーク「ガンカモ類ネットワーク」の参加地で、2005年に「ラムサール条約」登録湿地にも指定された宮城県蕪栗沼から、とても勇気づけられる発表がありました。

連携の強化をめざして

蕪栗沼では、越冬にやってくるガンカモ類の採食地と休息地を確保する意味で始めた「ふゆみずたんぼ」という取り組み(冬のあいだも田を干さず、水をためて おくこと)を進めたところ、水田の生物多様性が高まり、結果として田んぼの除草効果や施肥料効果につながったそうです。

それは、保護活動によって多くの水鳥で賑わうようになった水田が、農業にも恩恵をもたらす結果になったことを実証するものであり、その湿地を「ラムサール条約」の登録地にしてゆくことに対して、地元の人々の理解を得ることにもつながった、確かな事例です。

参加者からは、やはりまだ「各地域がばらばらに活動しているという印象が否めない、今後もっと連携や情報の共有を図っていきたい」という感想が聞かれました。
また、今回のような交流会に、地元の行政担当者が参加してくれるようになることを期待する声もあり、多様な地域が交流し、多様な立場の関係者が集えるようにするためには、交流会の定期的に開催も重要ではないか、という指摘もありました。

10月25日の月曜日からは再び、COP10の本会議が再開されます。
週の後半はいよいよ各国の首脳クラスが名古屋に集まり、具体的な決議がなされていく予定です。

日本にかろうじて残された貴重な干潟や河口域の生物多様性の保全に向け、地域の協力が促進されるような、意欲的な目標が採択されるように、会議の進展が期待されます。

 

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