テッソ・ニロの森林保全


スマトラ島中部に位置するテッソ・ニロ周辺の森は、世界屈指の生物多様性の高さを誇る、WWFが特に力を入れて保全に取り組んできた地域です。WWFは現在、現地での森林の調査や、この地域で獲得された木材を原料に、紙製品などを生産・輸出している企業のモニター、さらにその企業から製品を購入している日本の企業などに、環境や地域社会に配慮した「責任ある木材の調達」を働きかけています。

テッソ・ニロ ~スマトラに残る最後の低地熱帯雨林

東南アジアを代表する熱帯の森を擁した島、インドネシア、スマトラ島。この島では今、急激な勢いで森が失われ、多くの野生生物を含む森の自然が、重大な危機にさらされています。
スマトラ島の中部に位置するテッソ・ニロは、スマトラの低地熱帯雨林が残された、ほとんど最後の場所。ここは、東南アジアの各地で熱帯の森とともに姿を消しつつある多くの野生生物にとっても貴重な生息地であり、とりわけ、アジアゾウの生息場所としては東南アジアで最大級の森です。
しかし、このテッソ・ニロも、現在伐採の危機にさらされており、森の周辺部では、人間とゾウの深刻な衝突の問題が起きています。 ゾウの群れは地域の住民がヤシ油を採取するために植えたアブラヤシの植林(プランテーション)を荒らし、住民はそのゾウを毒殺する、という悲劇が繰り返されています。さらに、住民がゾウやトラに襲われて命を落とす事故も跡を絶ちません。

2004年、インドネシア政府は12カ所の国立公園(合計240万ヘクタール)の新設を宣言しました。しかし、この地域を中心とした中部スマトラで生産される紙製品などは、日本にも大量に輸出されており、木材貿易という観点からも、日本は深いかかわりを持ち続けています。

アマゾンをしのぐ豊かな森

2001年、WWFは世界各地の熱帯林で、植物の多様性についての調査を行ないました。これは、各地の森林で同じ200平方メートルの調査エリア内に、何種類の植物が生育しているかを調べる、というものです。
この結果、インドネシア、スマトラ島のテッソ・ニロでは200平方メートルの中に、218種もの植物(維管束植物)が生育していることが確認されました。 同じ方法でアフリカ、アジア、中南米の熱帯林を調査したところ、確認された植物は、アマゾンでは82種、アフリカのコンゴ盆地の森で103種。つまり、テッソ・ニロの森では、いずれをも上回る、豊かな植生が確認されたのです。
熱帯雨林はもともと、陸上で最も生物多様性に富むといわれる生態系です。その中でも、テッソ・ニロはとりわけ植生が多様な世界的にも貴重な森林である、といえるでしょう。

しかし、このテッソ・ニロの森も、アマゾンやアフリカの森と同様、今、伐採や植林(プランテーション)の拡大などによって、急激にその面積を減らしています。1984年に49万5,000ヘクタールあったテッソ・ニロの森は、2001年時点で18万8,000ヘクタールにまで激減してしまったのです。
また、テッソ・ニロの森が完全になくなることが無くても、分断され、まとまった広さを維持できなくなれば、森の生態系は崩壊してしまうでしょう。そうなれば、地球上で最も植生豊かな森が、永遠に失われてしまうことになるのです。

横行する違法伐採

リアウ州では、テッソ・ニロの低地熱帯雨林や、州北東部のギアム・シアク・ケチルに残る泥炭湿地林など、正式に保護されていない森林では、現在、主に紙パルプの生産を目的とした、小規模な違法伐採が蔓延しています。
これらのパルプ用木材の違法伐採は、樹の種類やサイズを選ばず、過剰な形で行なわれるため、森の樹冠に大きな隙間を作り、熱帯林の生態系に深刻な悪影響を与えています。

紙パルプを生産する企業が、違法に伐採されたものと知りながら、木材を購入していることも大きな問題です。また、これらの企業は、伐採が許可された地域においても、規定を超える規模で伐採を行なってしまうことも多く、違法に採取された木材を利用する前提で、紙パルプの生産計画を立てていることもあります。

WWFが2000年12月に実施した調査では、テッソ・ニロ地域から、一日あたり平均1,670立方メートルの木材が伐り出されている、という結果が明らかになりました。そして、そのうちの9割近くが、違法伐採による木材であると推定されたのです。さらに、テッソ・ニロ地域とその周辺で確認された、違法に建設された製材所は、実に47カ所にのぼりました。1990年代前後の約10年間に、インドネシアの紙パルプ生産量は、10倍以上に増加し、産業は飛躍的に拡大しましたが、それを支えていたのは、違法な伐採によって失われてきた、スマトラ島の熱帯林の犠牲があったのです。

現在、インドネシア国内で施行されている法律では、これらの違法伐採を十分に取り締まる効果が期待できません。また、実際に取り締まりを行なう体制も不十分です。

残されている森林の中で状態の良い場所を保護区に指定すると同時に、 インドネシアおよびリアウ州政府と、産業側に対する働きかけを行い、森林環境の保全が実現できる政策と、その実施を求めてゆく必要があります。

日本とのかかわり

テッソ・ニロのあるリアウ州では、2003年の一年間に紙パルプを生産するため伐採された熱帯雨林の面積は、最低でも約4万ヘクタールといわれています。この面積は、東京ドーム約8,500個分に相当します。

リアウ州と隣接するジャンビ州にパルプ工場を持つAPP社は、州内で伐採に携わっている、インドネシアでも最大級の紙パルプ企業ですが、同社は年間、インドネシアの総生産量の約40%にあたる、約250万トンのパルプと、375万トンの紙製品を生産していました。

主な市場を海外に持つAPP社は、25億ドルに相当すると言われる、約250万トンの紙製品を輸出していますが、日本もまた、その市場の一つになっています。

2002年の一年間に日本が海外から輸入したコピー用紙は26万2,600トン。そのうち、21万4,611トンは、インドネシアから輸入されたもので、APP社はその中でも最大手の製紙会社でした。紙を含めた木材の大量消費国である日本は、インドネシアの熱帯林の問題に間接的に大きくかかわっているのです。

WWFはインドネシアを始め、アメリカ、ドイツ、スイスなど、各国のオフィスが協力して、この問題に取り組み、スマトラ現地の活動だけでなく、木材の市場である各国でも、取り組みを行なっています。

WWFジャパンも、スマトラ島の熱帯林伐採権を持っている最大手二社、APP社とAPRIL社から紙を購入している日本国内の企業に対し、森林破壊の現状に関する情報を提供しながら、スマトラ島の森林保全を実現するための協力を呼びかけています。伐採に直接携わっている現地の製紙会社に対し、高い環境意識を持つ日本の企業が適切な業務改善の要請が出されることは、スマトラの森を保全する大きな力となります。

企業や社会の意識を変えてゆくのは、一般の消費者です。消費者が、その企業の姿勢を問いつづけることで、森林の保全に向けた取り組みが後押しされるのです。WWFジャパンは2004年度も、森林保全活動の柱の一つとして、日本の関連企業に対する働きかけを続けると同時に、現地スマトラ島での自然林の回復や、違法伐採の調査活動を支援してゆきます。

テッソ・ニロ関連情報

リアウ州にある紙パルプの生産工場

海外向けに輸出される紙製品

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