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福岡県大木町役場による淡水魚保全の取り組み

この記事のポイント
タナゴ類をはじめ、絶滅が懸念される日本産の淡水魚が今も生き残っている九州・有明海沿岸域の水田地帯。その貴重な生息地の一つ福岡県の大木町で、2021年度から国際的にも希少な淡水魚などの保全事業を実施するための、ふるさと納税が開始されました。目標額が達成されれば、同町の主導による、生息環境の保全に配慮した水路の改修や、絶滅危惧種についての普及展示が実現することになります。

水田・水路でつなぐ生物多様性ポイントブック

九州・有明海沿岸の水田地帯は、豊かな農業と淡水の生物多様性を支える、日本の貴重な景観が残る場所の一つ。

とりわけ、この地域の干拓地に広がるクリーク網、すなわち無数の水路が巡らせた緻密な水系は、質の高い稲作を支えると共に、世界的も貴重な、「日本の宝」ともいうべき淡水生態系を育んでいます。

ここには、多くの日本固有種を含む淡水魚類が多く分布。

唯一無二の生物多様性を有する貴重な場所として、WWFも地域の方々と協力し、農業とも両立したその保全活動に取り組んできました。

しかし、こうした環境は今、各地で急速に失われています。

土でできた生きものゆたかな水路は、農業の効率化のためコンクリートで固められ、在来の魚類や植物を脅かす外来生物も侵入。

あと数年で、多くの野生生物が絶滅してしまう可能性も指摘されています。

そこで、WWFジャパンでは、2020年3月24日、水路の生物多様性を保全しながら農業用水路の改修を行なうための、工事方法やそのアイデアを解説した「水田・水路でつなぐ生物多様性ポイントブック」を発表。

水田・水路でつなぐ生物多様性ポイントブック
© WWFジャパン

水田・水路でつなぐ生物多様性ポイントブック

これを、佐賀県、福岡県、熊本県のすべての行政の農林部局・環境部局関係者などに配布し、採用と工法の実施を呼びかけました。

その自治体の一つ、福岡県の大木町役場が、この冊子をきっかけに、WWFの水田・水路の保全プロジェクトに高い関心を寄せ、協力に向けた対話が始まりました。

大木町は生物多様性豊かな最優先保全地区

この大木町との対話と取り組みは、九州の貴重な自然と淡水魚を守る上で、非常に大きな意味を持っていました。

なぜなら大木町は、淡水魚類を指標に、優先的に保全・保護すべきエリアの中でも、特に最優先で保全すべき地域に選出されていたためです。

実際、大木町には、九州の北西部にのみ分布する、希少淡水魚の生息も確認されており、WWFとしても保全活動を進めたい場所の1つでした。

九州大学が保全を優先すべきエリアをまとめた、九州北西部のクリーク網生物多様性優先保全地域地図。
©Norio Onikura / WWFジャパン

九州大学が保全を優先すべきエリアをまとめた、九州北西部のクリーク網生物多様性優先保全地域地図。

連携を大きく進めた「堀の勉強会」

WWFが大木町役場と実施した最初の取り組みは、2020年10月8日に行なった堀、すなわち農業用水路についての勉強会です。

勉強会の趣旨は、日本の生物多様性の宝とも呼ばれる、有明海沿岸の水田地帯を後世に引き継いでいくにあたり、地域の関係者の共通理解を深めること。

大木町役場の町長をはじめ、町議会議員、町役場の多くの関係部局、そして、実際農業を進めている農業者や関心のある地域の方々など、約30名の方がご参加くださいました。

この日講演したのは、「ポイントブック」の著者でもある、九州大学の鬼倉徳雄先生と、福岡県保健環境研究所の中島淳先生です。

この水田、水路とそこにすむ野生生物のお二人の専門家より、有明海沿岸の水田地帯の魅力やこれからの生物多様性保全について講演をいただきました。

そして、今後に向けた活動のアイデアなどを、大木町の皆さまと検討。

その中から今回、大木町が実施を表明した、淡水魚などの絶滅危惧種を保全する、新たな事業企画が立ち上がったのです。

九州大学 鬼倉徳雄先生
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九州大学 鬼倉徳雄先生

福岡県保健環境研究所 中島淳先生
© Jun Nakajima

福岡県保健環境研究所 中島淳先生

後世に引き継げ!希少淡水魚などの保全事業

この勉強会の後、大木町役場では、まず町内に「世界で唯一無二の生物多様性がある」ということを、地域で共有することが大切だという認識のもと、町内にある堀をテーマにした「石丸山公園」をまるごと水族館にする事業を企画しました。

1つ目の企画は、公園内に新たに設ける水槽設備で、その場で見られる希少な魚類などの水生生物を展示し堀の生物多様性の大切さを考える機会を提供するもの。

そして2つ目の企画として、公園内にある堀を、「水田・水路でつなぐ生物多様性ポイントブック」に沿った形で改修することにより、水田の自然に配慮した改修講じの事例を「見える化」する試みも計画しています。

これが実現すれば、地域の多くの方が、自分たちの町で、希少な水生生物や、改修の事例を実際に見ることができることになり、意識の啓発や、他地域への情報発信に大きく寄与することが期待されます。

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WWFサポーターの力で実現した取り組みを、ぜひ応援してください!

さらに、大木町ではこの事業を推進するため、2020年度ふるさと納税を活用。

寄付目的事業の一つに設定し、納税の呼びかけを開始しました。

目標金額が無事達成できれば、2021年度以降、事業は予算化され、実現に大きく踏み出すことになります。

また、この取り組みは、WWFの活動をご支援くださっているサポーターの皆さまのおかげで、形になったものでもあります。

今回の大木町役場の取り組みの契機となった、WWFの「水田・水路でつなぐ生物多様性ポイントブック」。

これは、2019年秋にWWFが呼びかけた、田んぼと生きもの保全キャンペーン「失われる命の色」で、皆さまからお寄せいただいた寄付金により制作されたものだからです。

今回、大木町でスタートした新たな取り組みは、九州、さらには日本の自然保護においても、大きな意味を持つ一歩です。

キャンペーンでご支援を頂きました皆さまに、あらためて感謝申し上げますとともに、この大木町の取り組みについても、是非応援していただければ幸いです。

田んぼと生きもの保全キャンペーン「失われる命の色」
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田んぼと生きもの保全キャンペーン「失われる命の色」

未来へ生物多様性という宝をつなぎたい~絶滅危惧淡水魚保全プロジェクト~

概要:「ふるさと」を応援したい、「ふるさと」へ協力したいという納税者の方の思いを活かすため、その応援したい地方自治体への寄付を通じて、そのきふ寄附額の一定限度を居住地の個人住民税・所得税から控除できる制度が「ふるさと納税制度」です。

主体:大木町役場企画課企画係
詳細:下記URLからご確認下さい(大木町のサイト)
http://www.town.ooki.lg.jp/soshiki/kikaku/1/3/1434503105911.html

【寄付のお願い】失われる命の色 田んぼの魚たちと自然を守るために、ぜひご支援ください!

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