自然エネルギーは、「まかなえる!」


いま、日本で使われているエネルギーのうち、自然エネルギーによって産み出されている割合はごくわずかにすぎません。それでもWWFは、「2050年までに、必要なエネルギーの100%を、自然エネルギーでまかなえる可能性がある」と考えています。その根拠となっているのが、2011年から2013年にかけて行なったシミュレーション研究です。

WWFの「エネルギー・シナリオ」

その研究の結果は、『脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案』というレポートにまとめられています。「脱炭素社会」というのは、石油や石炭をどんどん燃やして、大気中のCO2(二酸化炭素)を増やし続けることから脱した社会、という意味です。

WWFのエネルギーシナリオは、次の4編から成り立っています。

  1. 省エネルギー編:エネルギーの消費量を、どのくらいまで減らせるか
  2. 自然エネルギー編:どのようなタイプの自然エネルギーを、どのくらい導入できるのか
  3. 費用算定編:省エネと、自然エネルギーの導入を進めるのに、どのくらい費用がかかるか
  4. 電力系統編:発電所から、最終的に電気を使うところまでをつなぐシステムを、どのくらい強化する必要があるか

1.省エネルギー編のポイント

「無理な節電をしなくても、50%の省エネが可能!」

「省エネルギー編」のもっとも大きなポイントは、「無理な節約をしなくても、50%の省エネが可能!」という点です。

今後、日本は人口が減っていく可能性が高く、エネルギーの消費量も、ある程度、自然に減っていくと予想されます。また一方で、LED電球のように、今と変わらない明るさを確保しながら、消費するエネルギーを大幅に減らせる技術も進んできています。

住宅の断熱性能を高めれば、暖房や冷房のエネルギーも無理なく減らせるでしょうし、工場で出る廃熱を再利用すれば、エネルギーの使用量だけでなく、ガソリンなどの燃料を買うのにかかっていたコストまで減らすことができます。

WWFのエネルギーシナリオ「省エネルギー編」は、こうした技術の導入や効率化を図れば、現在の生活の質を落とすことなく、2050年には2008年と比べて50.6%ものエネルギー需要を減らせることを示しています。

2.自然エネルギー編のポイント

「日本にある自然エネルギーで100%まかなえる!」

「自然エネルギー編」では、「日本にある自然エネルギーだけで100%まかなえる!」という可能性が示されました。

具体的には、風力、太陽光、水力、地熱、バイオマスを組み合わせることで、どのくらいエネルギーを供給できるかを見ていきました。環境省などの調査データなどをもとに、立地条件に一定の制約を設けた上で、それぞれの自然エネルギーを、今後どれだけ拡大できる可能性があるかを検討しました。

さらに、将来、自然エネルギーだけで電力の需給のバランスが本当に保てるかを確認するため、2050年の1年間(365日、1765時間)のエネルギー需要を、自然エネルギーだけでまかなうことができるかどうかをシミュレーションしました。気象データを使い、雨が多い、風が弱いといった季節的な条件も計算に入れ、エネルギー需要の大きいとき(夏の日中など)にも対応できるのか、といったことも含めて、検証しました。

その結果、2050年には、自然エネルギーによって、日本のエネルギー需要を100%満たすことは、少なくとも技術的には、充分可能であることが分かりました。

3.費用算定編のポイント

「自然エネルギーは、わりにあう!」

いくら「技術的には可能」といっても、コストがかかりすぎるようでは、現実的とはいえません。

そこで、「①省エネルギー編」で設定した省エネを進めるためと、「②自然エネルギー編」で設定した自然エネルギーの拡大を実現するために、どのくらいの費用がかかるかを計算しました。その結果、2010年から2050年までの40年間で、省エネの推進と、自然エネルギーの拡大のために必要となる設備投資は、約442兆円という数字が出てきました。

もうひとつ、673兆円という数字も算出されました。これは何を示す数字かというと、自然エネルギーに切り替えていくことで、石油や石炭、天然ガスなどを購入する費用(燃料費)を、どのくらい浮かせられるか、という"便益"です。

つまり、設備投資に442兆円かかったとしても、その分、燃料費がかからなくなっていくので、やがては「元がとれ」、最終的には約200兆円も「お徳」になる、という結果になったのです。

4.電力系統編のポイント

「自然エネルギーは、わけあえる!」

「電力系統」とは、発電所から、最終的に電気を使うところまでをつなぐシステムのことです。

日本の電力系統は10地域(北海道、東北、関東、北陸、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄)に分かれており、10社の電力会社が、別々に所有しています。沖縄を除く9つの電力系統については、隣り合う地域と、多少、電力のやりとりができるようになっていますが、あまり融通が利く状態にはなっていません。

自然エネルギーの主力となる太陽光発電と風力発電は、気象によって発電量が変わります。そのため、電力が余っている地域と、足りない地域で、電力をやりとりできることが重要になってきます。この「電力のやりとり」をスムーズにするためには、隣り合う地域間の送電容量(電気を送ることのできる量)を、今より大きくしていく必要があります。

どのくらい強化が必要なのかを検討した結果、自然エネルギーが、日本全体の電力に占める比率が30%になるまで(WWFのシナリオでは2020年)は、地域間における送電容量は、特別に増強する必要はないことがわかりました。

ただし、50% (WWFのシナリオでは2030年)になると、現在の運用容量を超えてくるため、増強を図る必要がでてきます。100%(WWFのシナリオでは2050年)になると、多くの地域間で増強が必要となりますが、それまでは、まだ建設期間が充分にあることを考慮すると、今から増強に着手していくことで、運用が実現可能であることがわかります。

また、よく心配される、周波数の違う東日本と西日本で、電力のやりとりをしなければならないのでは?という点に関しては、周波数の違いを越えて送電する必要は、必ずしもないことが示されました。

電力の2大消費地は、東京と大阪です。WWFのシナリオは、東日本全体で電力を融通できれば、東京の需要を満たすことができ、西日本全体で電力を融通できれば、大阪の需要を満たすことができるという結果を示しています。

参考資料

各シナリオについて、詳しくご覧になりたい方はこちら

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