マグロの運搬:生マグロと冷凍マグロ


さまざまな方法で漁獲されたマグロは、船や飛行機で運ばれ、港や市場を通じて私たちの食卓にやってきます。世界のマグロ生産量の約20%を輸入している日本では、日本の漁場だけでなく、海外で水揚げされたマグロも、生鮮漁として、また冷凍品や缶詰などの加工品などの形で消費しています。

どうやって運ばれるか?

特に、刺身用のマグロの場合は、流通や販売の方法によって、大きく生鮮マグロ(生マグロ)と冷凍マグロに分けられます。

生マグロ

「生マグロ」とは「加熱していないマグロ」という意味ではなく、「一度も凍らせていないマグロ」であることを意味します。生物の細胞は一般に一度凍らせると、内部の水分が凍ってでできる氷により、細胞が破壊されます。また、解凍の際には、この氷が解けて、細胞内の成分が細胞外に出てしまったり、細胞内に空洞ができてしまうため、鮮度や味が落ちることがあります。

マグロも同様で、大抵の場合、凍らせたものよりも、一度も凍らせたことのない「生マグロ」の方が重宝され、高い価格で売られています。ただ、生マグロは、長期間保存することができないので、短期間で販売しなくてはなりません。

小型のマグロ延縄船で獲れたマグロを生マグロとして売る場合は、漁獲したマグロを血抜きし、エラや内臓を取った後、氷または0度近い水の中で冷やしておきます。つまり、冷凍ならぬ、冷蔵状態。漁獲した漁場が遠い場合は、船が港に着くまで長くて約2~3週間も船の中でこのまま保存されます。

こうして、日本の漁港で水揚げされた生マグロの多くは、卸売市場へ冷蔵トラックで運ばれます。また、沖縄や海外のようにトラックで築地などの卸売市場へマグロを運べない場合は、氷と一緒に段ボール箱にマグロを詰め、飛行機の貨物室を利用して運びます。

また、海外で蓄養されたマグロも同様です。生マグロとして出荷される蓄養マグロは、水揚げ後、血抜きし、エラや内臓を取った後で、氷と一緒に段ボール箱にマグロを詰めて、空輸します。

マグロと日本直行便のかかわり

飛行機を利用すると運ぶ時間は短縮でき、鮮度が維持できる利点があるものの、航空運賃が高くなるため、高く売れるマグロでなければ採算がとれません。また、この航空運賃は日本からの距離だけで決まるわけではなく、マグロを積む空港から日本へ飛ぶ飛行機の便数によっても左右されます。日本人が多く行く観光地であれば、仮に遠くても、飛行機の便も多いので、その貨物室にたくさんのマグロを積み込み、安い運賃で運ぶことができます。

逆に、いくらマグロが豊富に取れる地域でも、日本への飛行機の便数が少ない場合は、これと逆のことが起きるため、日本に安くマグロを運ぶことができません。つまり、日本人の移動と生マグロの輸入は、実は密接に関係しているのです。マグロをはじめ、輸入される多くの海産物が降り立つ成田空港や関西空港は、空の「漁港」とも言えます。

冷凍マグロ

冷凍マグロとは、大型のマグロ延縄漁や、蓄養などによって漁獲、生産されたマグロが、マイナス60度で急速に凍結されたものです。流通に時間をかけられるため、大型船で大量に運ぶことができ、価格を抑えることができる、という強みがあります。

冷凍マグロになるマグロは水揚げ後、血を抜き、エラや内臓を取った後で冷凍されます。マイナス60度という超低温で保存することにより、長期間マグロの品質を大きく落とすことなく、保存することができます。これらは、冷凍された状態のままで、マグロ漁船や冷凍運搬船、冷凍コンテナなどによって、大量に日本に運び込まれます。

冷凍マグロは長期間、在庫にしておくことが可能であるため、必要に応じて、計画的に供給することができます。このため、商社などが大量に買い付け、輸入して、築地などの卸売市場を経由せずに、スーパーなどの小売店に卸して販売される割合が多いとされています。

実際、冷凍マグロは、お店などでは「解凍」という表記をつけられ、刺身用のマグロとして売られています。これらは、大抵の場合、比較的安い値段がつけられています。

漁獲と流通について

マグロの漁獲方法

北半球と南半球、それぞれ高緯度から赤道周辺まで、広大な海域を回遊するマグロは、各海域の漁場で漁獲され、運ばれています。現在、マグロを獲る主な方法としては、3つの漁法が使われています。

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