エコロジカル・フットプリント Q&A


2010年8月25日に発表した、『日本のエコロジカル・フットプリント報告書』について、お寄せいただいたご質問につき、お答えいたします。

Q&A

Q1:エコロジカル・フットプリントはどうやって計測しているのですか?
Q2:エコロジカル・フットプリントで評価できない点は何ですか?
Q3:オーストラリア、スウェーデンなど、一覧に無い国があるのはなぜですか?
Q4:日本バッシングにみえます。省エネなどに努力しているのに、日本の負荷が大きいという言い方はおかしいのでは?
Q5:日本の輸入がよくないようにみえます。これは、鎖国するべきということですか? 土地が少ない国が不利になる指標なのではありませんか?
Q6:輸出入はどう計算しているのですか?
Q7:今回のデータに原子力が含まれていないのはなぜ?
Q8:エコロジカル・フットプリントは海外でどのように利用されていますか?

Q1:エコロジカル・フットプリントはどうやって計測しているのですか?

A:人間の消費活動による生じた、さまざまな地球環境への負荷を、その消費をまかなうために必要な面積に換算し、計測しています

エコロジカル・フットプリントは、各国や特定の地域が消費した漁業資源や木材資源などを、その生産に必要な土地や海洋の表面積に換算し、消費の規模を表したものです。二酸化炭素については、排出された量を自然に吸収できるだけの土地の面積に換算しています。

これを、地域や国の人口で割って、人類1人当たりに必要な面積を表しています。

この計算の基になっているデータは、国連食糧農業機関(FAO)のデータを使っています。
さまざまな動物や植物の生産量を基に、その利用の方法に応じて、土地や海洋の生産力を割り出しています。

そして、「海洋」「森林」「耕作地」といった、さまざまな土地タイプの生産性を、一つの基準で評価するため、「等価係数」を使用し、土地タイプの間に存在する、平均的な生産性の相違を反映させています。

また、同じ小麦を生産する場合でも、国によって生産効率が異なりますので、これを一つの基準で評価するため「収量係数」を使用し、特定の国の1ヘクタールあたりの生産量と、世界平均の1ヘクタールあたりの生産量を補正しています。

この国別フットプリントの計算方法については、エコ ロジカル・フットプリントの評価委員会で、定期的に見直しが行なわれ、修正されています。

例1)製品は原材料に戻って計算
■10トンのオレンジジュースを消費した場合
→ 50トンのオレンジから生産 
→ 50トンのオレンジは3haの農地から収穫される 
→ 3haのオレンジ農園が必要

例2)化石燃料はCO2に換算し、それを吸収するのに必要な森林地面積として計算
■1トンの化石燃料を消費した場合
→ 20トンのCO2を排出 
→ 20tのCO2は13haの森林地が吸収
→ 13haの森林地

Q2:エコロジカル・フットプリントで評価できない点は何ですか?

A:水の消費や原子力による影響などが評価できていません

エコロジカル・フットプリントは、持続可能な自然資源を対象とした指標であり、汚染物質のような、そもそも持続可能ではないものがもたらす環境への影響は、評価していません。

エコロジカル・フットプリントの評価によって明らかになった問題が、仮に全て改善できれば、持続可能な社会の実現は可能になるかもしれませんが、地球環境が抱える問題の全てが解決できるわけではない、ということです。

また、持続可能な消費という観点から見ても、エコロジカル・フットプリントではカバーできていない分野が複数あります。たとえば、以下のような点については、 評価が出来ていません。

1) 水資源の消費量: ウォーターフットプリント
2) 放射性物質の排出: 放射能フットプリント
3) 温められた排水による生態系への影響: 温排水フットプリント

これらはいずれも重要な問題ですが、「面積に換算する」という、エコロジカル・フットプリントの手法では、評価が難しいと判断されたため、含まれておりません。

また、もう一つ、重要な点が今のエコロジカル・フットプリントの指標からは抜け落ちています。

それは、この指標が「人間以外の生物が生存するために必要な土地」が、カウントできていないことです。

つまり、現時点では計算される面積の全てが、「人間が利用する土地」と見なされていることです。本来であれば、エコロジカル・フットプリントで明らかになった、人類が利用可能な土地の面積に加え、さまざまな生物が生きる上で必要な土地の面積を考慮しなければ、地球の自然環境を十分に保全できたことにはなりません。

さらに、人間以外の生命、すなわち地球の生物多様性が、私たちにもたらしている生態系サービスの精神的、文化的な恩恵についても、エコロジカルフットプリントでは考慮されていません。

Q3:オーストラリア、スウェーデンなど、一覧に無い国があるのはなぜですか?

A:得られたデータが不確実だった国は一覧から除外されています

今回のレポートの作成に際しては、国連や各国際機関がまとめているデータを使用しています。しかし一部の国については、データが一部不確実であった り、政府修正が得られなかったケースがありました。これらの国については、土地別、または時系列で示した考察の結果は、表示しておりません。

よって、これらの未評価の国が、他と同列に評価が出来るようになれば、現在の人口一人あたりのフットプリントの大きさの順位(すなわち地球環境に負担をかけている国の順位)は、変わってくる可能性があります。

また、不確実なデータであっても、誤差や影響が小さいと判断された国の場合は、エコロジカル・フットプリントの合計値のみ記載している場合があります。

Q4:日本バッシングにみえます。省エネなどに努力しているのに、日本の負荷が大きいという言い方はおかしいのでは?

A:これは日本バッシングではありません

「エコロジカル・フットプリント」は、世界各国が地球に与える負荷も数値化しています。日本だけを調べたものではなく、日本バッシングを目的としたものではありません。日本が地球環境に与える負荷がどれくらいで、どのような特徴があるのか、できるだけ客観的に把握しようとしたものです。持続可能な社会づくりのために、地球環境への負荷を指標によって「見える化」し、現状を知ることが目的です。

日本の1人あたりのエコロジカル・フットプリントの数値は、世界29位であり、G8諸国のなかでは、もっとも低いドイツと同程度の数値となっています。また、報告書のなかには、日本のエコロジカル・フットプリントは減少傾向にあることも報告しています。

しかし、世界平均の1.5倍にあたり、日本の生活を世界の人々がすれば地球が2.3個分必要ということは地球に負荷を与えていることを示しています。
報告書には、将来、ムダをなくし技術革新などの工夫をすれば、世界をリードし、環境先進国となることができると提案をしています。

Q5:日本の輸入がよくないようにみえます。これは、鎖国するべきということですか? 土地が少ない国が不利になる指標なのではありませんか?

A:生態学的観点から貿易の不均衡を指摘したものであり、貿易自体を非難するものでもありません

エコロジカル・フットプリントは、国あるいはその国の国民1人あたりが、地球の生物生産力をどの程度利用したかを数値化した、あくまで指標の一つです。

そもそも、自然資源のあり方の利用の是非や、その配分の方法を示したものではなく、また、貿易自体を非難するものでもありません。生態学的観点から見た時に明らかな、貿易の不均衡を示したものです。

どのように評価するにせよ、日本の生活が、海外からの輸入、すなわち、海外の「生物生産力」に大きく依存していることは事実です。つまり、海外の=地球全体の生物生産力を維持することに努めることは、重要なことといえます。

日本の生活は海外の生物生産力に大きく依存している、という、この事実を踏まえた上で、どのような政策をとるのか。それぞれの国の価値基準に基づいた判断により、政策は決められることになりますが、今後、こうした海外の生物生産力とのつながりを意識した視点で、政策を検討していく必要があるといえます。

Q6:輸出入はどう計算しているのですか?

A:その国の生産分に輸入分を加え、輸出分を差し引いたものを「消費エコロジカル・フットプリント」としています

消費についてのエコロジカル・フットプリントは、その国の生産分に輸入分を加え、輸出分を差し引く形で計算しています。

たとえば、日本で製造され、アメリカで販売され使用される自動車を生産するのに資源を消費した場合は、日本ではなく、アメリカの消費としてフットプリントに加算されます。

Q7:今回のデータに原子力が含まれていないのはなぜ?

A:原子力がもたらす環境への負荷を、「フットプリント」として面積に換算する方法の精度が不十分と判断されたためです

過去のエコロジカル・フットプリントでは、確かに原子力発電を、化石燃料(火力)の発電に則した指標で、フットプリントを計測していました。しかし、「エコ ロジカル・フットプリント勘定検討委員会」が検討した結果、他のフットプリントの指標の換算方法と比較して、根拠が不十分であり、整合性がとれないことか ら、2008年版の『生きている地球レポート』のエコロジカル・フットプリントからは、原子力を除くこととしました。

しかし、このことは、原子力が環境に負担のないエネルギーであるということを示すものでは、断じてありません。原子力は、廃棄物としての毒性、その将来の保管や危機管理にかかる環境的、経済的負荷が大きく、持続可能なエネルギーとは、到底いえないものです。

これらの問題点については、「エコロジカル・フットプリント」に欠けた要素を補う視点で明らかにするべき、という意見もあり、現在研究者が別の指標として検討しています。

なお、今回の日本のエコロジカル・フットプリントの中では、ウラン採掘、精製、輸送にかかるCO2排出については、カーボン・フットプリントに含め、計算しています。

Q8:エコロジカル・フットプリントは海外でどのように利用されていますか?

A:国の公的な指標として採用され、政策決定の際の参考データとして活用されています

エコロジカル・フットプリントは、次の7カ国・地域で、公式指標として採用、または採用が決定されています。

スイス、日本、アラブ首長国連邦、エクアドル、 フィンランド、スコットランド、ウェールズ

また、生物多様性条約でも、環境の変化を示す指標のひとつとして取り上げられています。

さらに、WBCSD (持続可能な開発のための世界経済人会議)でも、このエコロジカル・フットプリントを使って世界経済の持続可能性を評価し、報告書『ビジョン2050』として2010年2月に発行しました。

エコロジカル・フットプリントは、あくまで環境の変化を示す指標の一つですが、その精度の高さと信頼性から、政府機関や国際機関で公的に活用され始めています。

 

参考資料

同志社大学経済学部/NPO法人エコロジカル・フットプリント・ジャパン 和田喜彦

 

エコロジカル・フットプリント・レポート 日本2009

日本語版(オリジナル) / 英語版(Japan Ecological Footprint Report 2009)

 

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