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プラスチック汚染問題の解決に向けた最新報告書を発表

この記事のポイント
WWFは2019年3月5日、プラスチック汚染問題解決に向けての最新の報告書『SOLVING PLASTC POLLUTION THROUGH ACCOUNTABILITY(私たちの責任でプラスチック汚染問題を解決する)』を発表しました。プラスチックは既に地球を汚染し、野生生物と生態系に大きな負担をかけています。さらに、人類もまた、食品や空気の中に含まれるマイクロプラスチックにさられていることが分かってきました。この地球規模の問題の解決には、国際社会と産業界、そして個人が、それぞれの行動に責任を持ち、協力する必要があります。WWFはこの報告書の発表と同時に、これから求められる行動についても提言しています。

自然界に流入するプラスチック

国際的な問題として、その解決が求められている、プラスチック汚染の問題。
主に石油から生成され、自然界のサイクルの中で容易に分解、吸収されないプラスチックは、環境中に非常に長期間にわたって残留し、海や陸域の生態系に、深刻な影響を及ぼし、人体への影響も懸念されています。
それにもかかわらず、世界の国々では、経済の発展に伴い、このプラスチックの利用と廃棄は増加し続けています。

2000年以降に生産されたプラスチックは、それまでに地球上で生産された、全てのプラスチックを合わせたのと同じ量と達しています。
また、プラスチック生産に使われる石油や天然ガスが、これらの消費全体の4%を占めており、これが今後急拡大すると予測もされています。

プラスチック汚染自然環境と社会への脅威

そして、生産されたプラスチックの実に75%が、最終的には「プラスチック廃棄物」となっています。その総量は世界全体で、年間数百万トン。
この「プラスチック廃棄物」全体の3分の1が、自然界に入り込みれ、海洋、川や湖などの淡水域、そして陸域の環境を汚染しています。
野生性動物の240にも上る種が、プラスチックを体内に摂取していることが確認されているほか、少なくとも270種の生物が、廃棄された漁網などのプラスチックごみに絡まり、その生存にも関わる影響を受けています。

こうした問題の現状と、解決すべき方向性について、WWFは2019年3月5日、最新の報告書『SOLVING PLASTC POLLUTION THROUGH ACCOUNTABILITY(私たちの責任でプラスチック汚染問題を解決する)』を発表。併せて、今後国際社会や産業界、個人に対し求められる行動について提言しました。

報告書『SOLVING PLASTC POLLUTION THROUGH ACCOUNTABILITY(私たちの責任でプラスチック汚染問題を解決する)』

SOLVING PLASTIC POLLUTION THROUGH ACCOUNTABILITY (私たちの責任でプラスチック汚染問題を解決する )要約版( 仮訳)

解決のために求められる責任と取り組み

今回の報告書では、プラスチックの消費と廃棄についての責任にも言及しています。
現在、世界でのプラスチック消費の約5割を、アメリカや日本、韓国、EUといった、先進国を中心とする高所得国が、約3分の1を中国やロシア、ブラジル、タイなど上位の中所得国が占めています。
一方、低位の中所得国(インド、インドネシア等)や低所得国(サブ・サハラアフリカ地域のタンザニア、エチオピア等)の、消費の割合は2割弱。しかし、そこから排出されるプラスチックごみは、7~8割以上が適切に処理されていない、という問題を抱えています。

この課題の解決のためには、プラスチックの削減や処理について、早急に法的拘束力のある国際合意を実現し、同時に各国が対策の目標と計画とを策定する必要があります。

こうした取り組みの中には、低所得国への財政的、技術的支援を含めることや、使い捨てプラスチックの回収率100%を実現するなどの現行の取り組みの強化に加え、プラスチックの価格に人や環境への悪影響を回避するためのコストを反映させるなど、新たな考え方を盛り込んでゆく必要があります。
また、産業界には、イノベーションや幅広い協力を推進することで、自然環境に負荷をかけない代替物を開発、普及させ、消費者にプラスチック以外の選択肢を提供することが、必須の取り組みとして求められると、WWFは考えています。

WWFはこの報告書の中で、深刻なプラスチック汚染の問題には、全ての国に責任があること、そして、この問題は、現在の世代によって引き起こされた問題であり、同時に今の世代で解決することが可能な問題であることを指摘しました。
国際社会、各国政府、産業界、そして個人が、強く責任感を持ち、直ちに変革を起すことができれば、毎年数百万トンものプラスチックが自然界に流入する事態を、食い止めることができます。
WWFは2019年に開かれるG20をはじめとした各国による検討の場を中心として、これからも国際社会に対し、対策の強化と取り組みを求めていきます。

WWFの求める提言とアクション

プラスチックの増大による危機は拡大を続けていますが、政府・産業界・市民社会団体・市民の各部門のそれぞれが「責任を持って共に行動する」ことで、状況を変えていくことが出来ます。

WWFは、世界の各部門に向けて、以下の通り、協働したアクションを求めます。

各国政府に求めること

  • 法的拘束力のある国際合意を交わす
  • 各国でのプラスチック削減等の目標を策定する
  • リサイクル推進や持続可能な代替品開発における適切な政策を導入する
  • 産業界や市民社会団体と協働する
  • 環境保全を徹底するごみ処理システム構築へ投資する
  • 関連するすべての業界に対し、効率的な拡大生産者責任(EPR)を導入する
  • 監視と法令遵守をしっかり行うために十分な方策を実施する
  • 各国地域レベルでの活動推進とごみ流出防止へ投資する

プラスチックを取り扱う産業界や企業に求めること

  • 過剰/不必要なプラスチックを削減する
  • 容器包装にリサイクルされたプラスチックや持続可能な代替プラスチックを使うことを約束する
  • 持続可能なプラスチックへの代替品を開発する
  • 持続可能ではない経済モデルからの脱却に向けて、力を結集する
  • 環境への負荷を抑えたごみ管理システム構築へ投資する
  • 適切な法規制の導入をサポートする

市民社会団体に求めること

  • 産業界や政府と協力する
  • 市民の声を活かすための仕組みを作っていく
  • 国際機関、各国政府、企業に問題解決への取組の責任を課していく

市民に求めること

  • 政府が透明性と責任を持って対策を進めるよう、協力していく
  • 消費者の立場から、産業界にしっかりとした対策をとるよう働きかける
  • 自身が不必要なプラスチック使用を削減し、リサイクルを推進する

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