ロシア沿海地方でシベリアトラ2頭を保護


2010年2月9日、極東ロシアの沿海地方で、人里に現れた2頭のシベリアトラが保護されました。そのうちの1頭であるオスのトラは、人に危害を加えるおそれがあることから、もう1頭の仔トラは、自力で食べものを得る力がないと考えられたことから、保護されました。現場には、要請を受けたWWFロシアのスタッフも駆けつけました。

人里に現れた2頭のトラ

野生のトラが遭遇した人を襲う事故は、トラが生息する地域ではしばしば起きています。
トラの亜種では最大となる、シベリアトラ(アムールトラ)が生息する極東ロシアも、その例外ではありません。

2010年2月9日、極東ロシアの沿海地方で、人里に現れた2頭のシベリアトラが捕獲・保護されました。
2頭はそれぞれ、沿海地方内の異なった場所で、違った時間に現れましたが、いずれも捕獲した方がよいと判断され、専門家の手により麻酔銃が撃たれ、眠らせて保護されることになりました。

この保護されたうちの1頭は、オスの成獣で、9日の午前3時頃、山小屋の近くに現れました。

山小屋で飼われていた犬がトラの姿を見つけてほえ始めましたが、トラを怖れてすぐにおとなしくなり、犬小屋に隠れてしまいました。
その後、山小屋の警備員が、街灯の明かりをたよりに、人の住んでいる家から50メートルほどの距離にいるトラの姿を確認。ただちにロシア沿海地方の野生生物・狩猟管理局とトラ査察官事務所に連絡を入れました。

WWFロシアのスタッフで、極東地域で活動に取り組んでいるパヴェル・フォメンコも、現場に呼ばれました。
フォメンコはその時の様子を次のように語っています。
「目の前の光景には驚きました。2人のおびえた男を乗せたトラックのあとを、トラが追いかけ、トラックの車輪にかみつこうとしていたのですから。私たちの車に気がつくと、こちらにやってきて、車のウィンドウをのぞき込みました。それからまた、トラックへと注意を向けました」。

人里に現れたオスのトラ。トラックを追跡し、管理局の自動車にも怖れる様子を見せなかった。

 

なぜ、トラがこのような行動をとったのかは、定かでありませんが、トラックを追いかける、という行動は明らかに異常なものであり、村の人々にとっては恐ろしい脅威となるものでした。

そこで、駆けつけた管理官がトラを麻酔銃で撃って眠らせる「不動化」の処置を施し、捕獲しました。
今後、このトラについては、ウイルス感染がないかどうかなどを含め、生物学的な調査を行ないながら、ほかの事例と綜合し、異常行動の原因を探っていくことになります。

また同日、もう1頭のトラが、ロシア沿海地方の野生生物・狩猟管理局とトラ査察官事務所により、捕獲されました。こちらはまだ仔どものトラで、村のごみ処分場の近くをうろついていました。

野生生物・狩猟管理局の責任者であるタチアナ・アラミレワはこの捕獲について、こう述べています。
「野生生物・狩猟管理局が子どものトラを捕獲しようと考えたのは妥当な処置でした。この年齢で、雪が深いという状況を考えると、自分で食べ物を得る見込みはなく、餓死してしまうか、密猟者に捕らえられてしまう可能性があるからです」。

 

ロシアにおけるトラと人の遭遇事故

極東ロシアでは毎年、10頭から30頭ほどのトラが、人里に姿を現し、人との遭遇事故を引き起こしていると報告されています。

トラと人の遭遇事故が多く起きるのは、野山で獲物を見つけるのが難しくなる、1月はじめから3月末頃の冬の季節。この季節はもともと、イノシシやシカなどの動物の数が少ない上、雪が深いため、トラが獲物を捕まえるのも困難なためです。

その結果、母親からはぐれてしまったと思われる仔トラは、食物にありつけなくなり、犬などの家畜をねらって村に近づく成獣のトラも、密猟者によって撃たれる危険性が高くなります。

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捕獲したトラを調査する、パヴェル・フォメンコ(中央)。

こうした問題について、ロシアでは、外部の団体や専門家の意見を取り入れながら、沿海地方の野生生物・狩猟管理局とトラ査察官事務所が対処することになっています。
しかし、根本的な解決は難しく、今回のような事態の再発を防ぐのは、容易ではありません。

「大きな問題は、こうやって捕獲したトラを、どこで飼育し、将来をどうするかです」と、WWFロシアのパヴェル・フォメンコは述べます。
「ロシア沿海地方には、捕獲したトラを野生に戻すための、専用のリハビリセンターはありません。地元政府は、このようなトラの一時的な収容施設を作り、野生復帰させるリハビリ・プログラムを整備するという重要な課題を解決できていないのです。こうした施設がなければ、トラと人との間に生じる問題を、最小化しようとする人々の努力も、実を結ばないことでしょう」。

トラの生息する森が広く豊かで、獲物となる動物も多くいれば、トラが人里に下りてくる危険性は減らすことができるに違いありません。
生息環境である森の保全と、人前に姿を現してしまったトラの保護。その数400~500頭ともいわれるシベリアトラを、絶滅から救うため、この2つの取り組みの実現が必要とされています。

 

  • For additional information please contact:
    Yulia Fomenko, Coordinatior of Communications, WWF Russia, Amur branch.
    Tel. in Vladivostok: (4232) 41-48-68, fax 41-48-63

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