達成されなかった生物多様性保全「2010年目標」を教訓に


生物多様性条約事務局は2010年5月10日に公表した報告書(GBO3)の中で、世界の生物多様性保全のための「2010年目標」の達成状況を評価。設けられていた、21の個別の目標の全てについて、達成されていないことを指摘しました。これは、今世界で必要とされている生物多様性の保全が、現状では十分に実施されていないことを警告するものです。

公表されたGBO3

生物多様性条約(CBD)事務局が、今回公表した報告書「地球規模生物多様性概況第3版(GBO3)」は、世界の生物多様性の現状をまとめたもので、「2010年目標」の達成状況を評価しています。

この2010年目標とは、2002年に開かれた生物多様性条約の第6回締約国会議(COP6)で定められた、「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」という国際目標で、個別に21の項目に分けられており、それぞれの達成が求められていました。

しかし、今回の報告書GBO3では「2010年目標」は、21の個別目標のいずれについても達成されなかった、と結論づけています。

名古屋で生物多様性条約会議が開かれる2010年は、この目標年にあたるため、報告書GBO3にも注目が集まっていましたが、非常に厳しい結果となりました。

20100520a.jpg

今も破壊が続くスマトラ島の熱帯林

達成されなかった「2010年目標」

 「2010年目標」の達成状況を測るためには、主に以下のような21の個別目標が、細かく設定されています。

  • 生物多様性の重要な地域の保護
  • 絶滅危惧種の現状の改善
  • 生物資源の非持続的な消費
  • 侵略的外来種の制御
  • 気候変動への対応
  • 貧困層の食糧を支える生物資源の維持
  • 遺伝資源の利用から生じる利益の公正な配分
  • 開発途上国への技術移転 ほか

 これらの目標は、単に野生生物の保護を求めるものではなく、生物多様性の破壊につながっている世界の貧困や社会問題を緩和し、生活改善を図ることをも目指しています。
このため、同じく2002年に開かれた「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルクサミット)」も「2010年目標」を支持しました。

そして、今回公表されたGBO3によれば、「重要な地域の保護」のようにある程度、前進した個別目標もありますが、「生物資源の非持続的な消費」や「貧困層の食糧を支える生物資源の維持」のように、ほとんど前進のみられなかったものもあります。

いずれにせよ、21の個別目標を全体としてみれば、地球的規模で達成されたものはないという、残念な結論になりました。

「2010年目標」を設けた効果

 しかし、達成されなかったとはいえ、保護地域が拡大したことや、外来種問題への取り組みが増えたこと、そして、生物多様性国家戦略・行動計画の策定が進んだこと(約170カ国で実現)など、2010年目標を設けたことで認められた一定の効果は確かにありました。

生物多様性条約の加盟各国が、生物多様性保全のため、どの方向に向けて努力すればいいのか、道筋をつけるのに役立ったと言えます。

2010年10月に、名古屋で開かれる生物多様性条約第10回締約国会議(CBD・COP10)では、2010年以降の次期目標の設定が大きな議論になります。

これは、現時点では「ポスト2010年目標」と呼ばれており、現在CBD事務局は、2020年を「次期目標年」とする議論のたたき台を、条約加盟国に提示しています。

この、名古屋での採択が期待される「新戦略計画(2011-2020年)」は、より検証しやすく、意欲的だが実現可能な目標が掲げられる必要があります。

そして、その目標のもと、生物多様性保全の取り組みの規模が、これまでよりも拡大され、政策の策定時や企業の事業活動に際して、環境への配慮がより高く求められることになるでしょう。

手遅れにならないうちに行動を!

野生生物は一度絶滅してしまえば、二度とよみがえることはありません。自然環境も、一度破壊すれば、完全に元の姿に戻すのは、限りなく不可能となります。

今回発表された報告書GBO3は、生物多様性を保全するための早めの行動が、遅れて行動を起こすよりもはるかに有効であり、費用も安くつくことを指摘しています。

環境を壊し、生物多様性を損ない過ぎて、後戻りのできない地点(tipping point)を過ぎてしまうことがないように、あらためて世界の生物多様性と、人類がそこから受けているさまざまな自然資源、生態系サービスの状況を適切に把握し、対処していく必要があります。

WWFも、今回の報告書の内容をふまえて、生物多様性を保全する対策の強化をより積極的に求めていくと共に、政府との交渉や国際会議の場を通じて、2020年に向けた次期目標がよりよいものとなるよう、働きかけていきます。

 

関連情報

GBO3は環境省の生物多様性に関するサイトで発表されています。

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは世界約100か国で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP