自然を守るには、その価値を評価すること/生物多様性COP10に向けたWWFの提言


COP10開会に際しての声明 2010年10月18日

【名古屋発】10年に一度とも言うべき極めて重要な会議が生物多様性条約のもとに開催され、名古屋に締約国が集まっている(CBD COP10)。各国は生物多様性の損失を止めるための新たな目標に合意するだけでなく、目標を達成するための資金メカニズムを立ち上げ、資金面での公約をする必要がある。

「名古屋における締約国会議で世界が最も期待するのは、世界の自然資源が劇的に失われていっているのを止めることであり、我々の生活を支えるシステムが劣化し続けるのを止めることである」とWWFインターナショナル事務局長ジェームズ・リープは言う。

「真っ先に取り組むべきは、健全で機能的で多様性に富んだ生態系からもたらされる莫大な価値を、経済上の意思決定に際して組み入れることである。澄んだ大気と水、食糧をまかなう健全な土壌と漁業、健康を支える遺伝子の仕組みと健康を守る化学物質といった具体的に自然が果たしている役割に、我々は価格付けをする必要がある」とリープ事務局長は付け加える。
したがって、WWFは、生物多様性の価値を国家勘定、開発と貧困緩和の戦略、計画立案プロセスに組み込むことを強く求める。

WWFは去る10月13日に『生きている地球レポート2010』を公表し、人類の地球に対する需要と生物多様性に対するインパクトを明らかにした。これによれば、人類は地球1.5個分に相当する資源を消費する一方、すでに確立された、生物多様性の健全性を測る指標である生きている地球指数(LPI)は、1970年とくらべておよそ30%-熱帯に関してはおよそ60%-低下した。

「生きている地球レポートは地球の健康手帳であり、地球にかかる圧力を測るものである。その2010年版は、世界で最も貧しい国々の将来の発展を阻害している生物多様性の危機が、熱帯に現実の問題として存在することを示している」とリープ事務局長は述べる。

生物多様性条約(CBD)に加盟する193の国と地域は2002年に、生物多様性の損失速度を“顕著に減少”させるという2010年までの目標に合意し、そのために国内の代表的な生息地のうち10%を保護区にすることとされた。しかし、CBD事務局は2010年5月に、21の個別目標のすべてで世界的スケールでは達成されていないことを報告した。絶滅危惧種の生息地のうち5分の1には、保護の網がかかっていない、公海の1%未満しか保護区になっていないといったように。

「我々の繁栄と存続は健全な生態系にかかっている。地球上の森林、海洋、河川は我々の社会と経済の基礎である。純粋に経済学な見地に立っても、我々が現在当たり前と見なしている生態系サービスを人工的に生み出すよりも、健全な生態系を保全し、回復させていく方がはるかに費用対効果にすぐれる」とリープ事務局長は語る。

「自然資源の過剰利用につながる補助金を廃止するだけでも、各国政府は生物多様性保全に大きな利益をもたらすことができる」たとえば、世界の商業漁船は、沿岸海洋が持続的に生み出せる生産力の2.5倍もの漁獲能力があるため、世界銀行の試算では、この乱獲によって毎年500億ドルの利益機会を失い、2,700万人分の雇用を危機にさらし、10億人以上の人々の福利に影響している。

国連環境計画によれば、世界の漁業を立て直し、グリーン化するために、毎年80億ドル規模の投資をすれば、漁獲が向上し、食糧安全保障と数多くの人々の所得が改善されるという。その3倍以上にのぼる漁業補助金を段階的に削減・廃止していけば、過剰漁獲をなくす助けとなり、漁業の保護と再建のための基金を創設することに資金を向けることができる。

WWFは、“2020年までに20%を保護区にする”という目標を提案している。これは、各国が自国の管轄内の陸域と沿岸域の生態系を保全するのに加えて、多国間協定によって国家管轄権外の生物多様性の豊かな公海についても同じ割合の保護区を設けることも含まれる。

生物多様性を政策決定や計画策定のプロセスにおいて主流化するだけでなく、水の取水に制限を設け、河川や地下水が持続的に供給できる水準に抑えることもWWFは提案している。生物多様性に脅威となる有害な補助金は削減し、漁業を持続可能なものとする国際的な努力が大いに求められている。

「気候変動は生物多様性の損失にとってカギとなる要因である。気候変動にともなう影響に直面して、最も抵抗力を発揮するのは、多様性に富む健全な生態系である」とリープ事務局長は言う。「今回の締約国会議は、生物多様性、開発、気候変動という国際的なアジェンダに生じている溝に橋渡しをする機会となる。これは、端的には2020年までに森林減少正味ゼロを達成するという目標への支持を通じてなされるだろう」

REDD(森林の減少と劣化による炭素の排出削減)というプログラムは、すでに気候変動会議のテーブルに載っているが、熱帯で毎分サッカー場およそ36面分という速度で今も生じている森林減少を食い止めるのに、大きな役割を果たすだろう。

「REDDイニシアティブは、炭素の貯留という熱帯の植生が供給する重要な生態系サービスのひとつに対して、資金を用意する今までにない機会となる。名古屋入りした国々は、熱帯林の減少にともなう炭素の排出削減につながるプログラムを確かなものにする、予防措置を作り上げることを通じて、森林の極めて豊かな生物多様性を守り、それに頼って生きる地域共同体の利益を守ることになる」とリープ事務局長は言う。

WWFはCBDの3つの目的のうちのひとつ、遺伝資源から生じる利益を配分するための公正かつ衡平な原則の確立に、進捗が見られることを求めている。2008年のCBD COP9はABS(遺伝資源へのアクセスと公平な利益配分)の問題を名古屋で決着させるように取り決めたのだ。

「生物多様性に富む国々の利益を認め、先住民および地域共同体の遺伝資源や関連する伝統的知識への権利を確かなものにするABS議定書の成立は、長く遅延してしまっている」とリープ事務局長は語る。

 

For further information:

Natalia Reiter nreiter@wwfint.org   
Sarah Bladen sbladen@wwfint.org

WWF CBD Media Centre: www.panda.org/CBD/media
WWF Living Planet Report Media Centre: www.panda.org/lpr/media

問合せ先:WWFジャパン CBDシニア担当:粟野(090-6018-2101)/自然保護室長:岡安(080-1308-9661)/広報担当:大倉(090-7201-3085)

 

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