COP10本会議場にて黄海サイドイベントを開催しました
2010/10/20
2010年10月18日から29日まで名古屋で開かれている、生物多様性条約第10回締約国会議(CBD・COP10)の本会議の会場で、10月19日、WWFジャパンは世界を代表する海洋生態系を持つ、黄海の生物多様性をテーマにした、サイドイベントを開催しました。
東アジアの海をテーマにしたサイドイベント
サイドイベントとは、生物多様性条約の事務局が主催する、発表者を事前に公募して開かれるセッション・イベントのこと。今回も、世界各国から300を超える開催の申込みがあり、その中から事務局に選ばれたイベントが、COP10の会場内や、隣接する名古屋学院大学などで開催されました。
この一つとして行なわれることになったWWFと国連黄海プロジェクト共催の黄海のサイドイベントでは、現在WWFジャパンとWWF中国が中心となって展開している、「黄海エコリージョン・プロジェクト」の活動を紹介しました。
題して、「地方政府、NGO、国連開発計画・地球環境ファシリティと企業の黄海のための共同パートナーシップについて(PARTNERSHIPS FOR THE YELLOW SEA BETWEEN LOCAL GOVERNMENTS, NGOS, UNDP/GEF AND CORPORATE)」。
黄海プロジェクトの特徴は、国連のプログラムとして、WWFのようなNGO、中国・韓国の政府機関、海に面した地域の人々、そしてスポンサーとしての企業が一体となり、一つの環境保全に取り組んでいる点です。
サイドイベントでは、この特徴にスポットをあて、多層にわたるプロジェクトの参加主体が、発表を行ないました。
黄海の生態系を守るさまざまな取り組み
1時間半におよんだサイドイベントでは、6名のスピーカーから報告がありました。
まず、黄海エコリージョン・プロジェクトのコーディネーターを務める、WWFジャパンの東梅貞義より、黄海プロジェクト全体の概要と、その意義について解説。
続いて、国連開発計画・地球環境ファシリティ黄海プロジェクトのジァン・イーハン氏が、多国間にまたがる生態系を保全する上で必要とされる生息地の管理のあり方と、海洋保護ネットワークについて、示唆に富んだ話題を提供しました。
次に、このプロジェクトを資金的に全面的に支援している、パナソニック株式会社の社会文化グループの小川理子氏が登壇。小川氏は、生物多様性の保全にとりくむWWFのようなNGOに対し、企業が資金提供を行なうことの意義と、企業全体としてグリーンプラン2018を定め環境保全を推進している、新しい企業としての取り組みのあり方について、お話がありました。
また、遼寧省海洋水産研究院の王年斌氏は、地域の住民と、地元のNGOが協力して活動を行なったことで、沿岸海洋の漁業資源の状況が改善しつつある現状を報告。
さらに、瀋陽理工大学の周海翔氏から、中国の地元の環境ボランティアと共に取り組んでいる、渡り鳥の生息地保全活動について報告があり、国家海洋環境観測センターの温泉氏からは、中国の沿岸各地で黄海と同様の取り組みが、多数行なわれている現状について、報告がありました。
取り組みのネットワークを広げてゆく
最後に会場の参加者とのディスカッションが開かれましたが、ここでWWFネットワークのメンバーから「中国政府により海洋保全に積極的に取り組んでもらうためには、どうしたらいいか?」質問がありました。
これに対し温泉氏が、中国では黄海だけでなく、東シナ海、南シナ海などの沿岸域でも、海洋保護区の設立が進められていること、そして、黄海エコリージョンで現在行なっているような、保護区のネットワーク化を、中国のほかの地域で始まっている保護区拡大などの取り組みと効果的に連携してゆくことが、中国全体としての海洋保全の向上につながると思う、と答えました。
実際、この黄海での取り組みは、3カ国に海岸線を持つ黄海のような広大な海域を、どのように実効的に保全してゆくのか、という他の海域にも共通した課題についても、地域の多様かつ多層またがる協力をまじえた独自の手法で取り組み、成果を挙げつつあります。
今回は、多様な関係者が一致協力して、一つの海域を保全する、この黄海でのユニークな取り組みを、生物多様性条約会議の場で行なわれたサイドイベントを通じ、世界に発信する、貴重な機会となりました。
このサイドイベントには、沿岸海洋の保全に高い関心を持つ、国内外からの参加者約30名が参加。国際会議の場で、活動の内容を紹介できたことは、今後の黄海プロジェクトにとっても、大きな弾みとなることが期待されます。