WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」 活動情報まとめ(2004年~2010年)


  • 【記者発表資料】沖縄・新石垣空港でバードストライク事故の可能性(2009年5月18日)
  • 第三回 ふるさとの海こども交流隊 in 有明海(2008年9月11日)
  • 新石垣空港建設予定地前面海域での赤土堆積とサンゴの白化を確認(2008年6月20日)
  • ふるさとの海をまもるための交流事業 第二回 in しらほ(2008年4月21日)
  • 石垣島・白保の海で重度の赤土汚染(2008年4月7日)
  • 緊急レポート 白保サンゴ礁でサンゴが大量白化(2007年8月8日)
  • アオサンゴの全貌を調査 ~2006年度エコパートナーズ事業始まる(2006年7月10日)
  • 沖縄県石垣島白保サンゴ礁海域における赤土堆積量の時空間的分布について 要旨(2004年12月1日)
  • 台風による石垣島白保海域におけるアオサンゴ群落へのサンゴ礫の堆積(2004年11月26日)

【記者発表資料】沖縄・新石垣空港でバードストライク事故の可能性(2009年5月18日)

沖縄・石垣島にあるWWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)のWWFサンゴ礁保護研究センターでは、2006年から継続して渡り性猛禽類の生息状況調査を行っている。この調査で、新石垣空港の事業地周辺でバードストライク(航空機と鳥の衝突)の可能性が高いことが判明した。事業者である沖縄県に対し、生息地の利用状態などのさらなる調査と、生息地保全のための普及啓発、情報共有など適切な対策を今後も提言していく。

WWFサンゴ礁保護研究センターが新石垣空港の事業地周辺でワシやタカなどの鳥類調査を実施したところ、サシバが短時間の間に事業地周辺を700羽以上通過するなど、バードストライクの可能性が高いことが判明した。また、国指定特別天然記念物であり絶滅危惧種でもあるカンムリワシの重要な生息地が近接していることから、今後生息に影響が出る可能性が示唆された。

センターは2006年よりタカの渡りの時期などにあわせて、地元の野鳥専門家らの協力により、新石垣空港事業地の北部にあるカラ岳を中心として猛禽類の生息状況調査を行ってきた。

その結果、2008年10月14日にはのべ838羽のサシバが確認され、うち711羽が新石垣空港の周辺を通過した。石垣島は毎年数多くのサシバの渡り個体が確認されることで有名だが、その多くは石垣島南部のバンナ岳(230m)周辺での記録であり、東海岸の通過状況はよく分かっていなかった。新石垣空港整備事業に係る環境影響評価書(沖縄県、2005)によると、沖縄県は2001年10月22〜24日の3日間の調査でのべ445羽のサシバを記録、うち24日には222羽の群れが新石垣空港の事業地内を通過している。しかしながら、評価書中では工事の影響予測はなされておらず、その後の調査も行われていない。また、バードストライクの可能性について、評価書では現石垣空港の事例を基に、草地などを利用する鳥類にのみを対象として検討しており、上空を通過する鳥類については考慮されていない。米連邦航空局らは情報の収集と解析、ガイドラインの策定など、精力的にバードストライク防止のための措置を行っている。国内においても今年2月、臨時の鳥衝突防止対策検討会を開くなど、バードストライク対策の重要性が認知されつつある。これらの情報を収集しつつ、新石垣空港においても早急な追加調査と対策の検討が必要である。

カンムリワシは事業地周辺に少なくとも3つがい確認され、定常的につがいが維持され、繁殖していると推測された。空港建設の直接的な影響の程度は不明だが、周辺開発によって生息数が減少する可能性は非常に高い。また、交通量の増加によって車との衝突事故も増加すると予測される。生息地の利用状態などのさらなる調査と、生息地保全のための普及啓発、情報共有などが必要である。

WWFジャパンは、空港建設ならびに空港供用後の離発着等の影響を評価し、事業者である沖縄県に対し適切な対策と調査の実施を今後も提言していく。


第三回 ふるさとの海こども交流隊 in 有明海(2008年9月11日)

「しらほサンゴ村」では、子どもたちに身近な自然や文化を体験してもらうことで、環境保全と地域の持続的な発展を目指す、「しらほこどもクラブ」の活動を行なっています。この「こどもクラブ」の一大イベントが、干潟の町・佐賀県鹿島市との「ふるさとの海こども交流隊」。2008年8月21日~24日まで、白保のこどもたち10名が鹿島の海を訪れました。

有明海の町・鹿島へ!

WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」では、環境保全と地域の持続的な発展の両立を目指して、地域の特長を知る、地域の将来を担う人や組織作りの支援を行なっています。

石垣島・白保の子どもたちをメンバーとした、「しらほこどもクラブ」もその一つ。子どもたちに身近な自然や文化を体験してもらうことで、海とともに生きる豊かな生活文化を受け継いでもらうための活動を続けています。

この「こどもクラブ」の一大イベントが、干潟の町・佐賀県鹿島市との「ふるさとの海こども交流隊」です。
  鹿島市は、広大な干潟が広がる有明海の特長をうまく活かしたイベント「ガタリンピック」で知られる町で、渡り鳥の重要な渡来地を保全するため国際的なシギ・チドリ類ネットワークにも参加しています。

交流隊は、この鹿島市の子どもたちと、白保の子どもたちが、互いの海を訪れて交流する企画で、2008年で3年目になります。そして、この年の交流会の第一段として、まずは白保のこどもたち10名が、8月21日~24日まで、鹿島の海を訪れました。


新石垣空港建設予定地前面海域での赤土堆積とサンゴの白化を確認(2008年6月20日)

緊急赤土調査を実施

WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」は、沖縄県石垣島における6月7日の豪雨による赤土流出の影響を調査するため、6月9日に轟川河口周辺において緊急調査を実施しました。

その結果、礁池内の広範囲にわたって濁水が広がっているのが確認されました。また、SPSS法(底質中懸濁物質含量)に基づく赤土堆積量の測定は、4地点中河口に近い3地点において、ランク8を記録したほか、轟川から沖合200mの地点においては、サンゴの白化を確認しました。轟川河口北側では、現在、新石垣空港建設事業が進められており、同日の雨により建設予定地外への濁水の流出が確認されています。

これを受け、WWFジャパンは、新石垣空港建設課に対して、7日の建設現場からの赤土流出の原因とその対策の説明を現場にて実施するよう要請を行ないました。そして、6月20日午後1時から空港建設現場事務所職員より、説明を受けることとなり、同説明会には、白保公民館長前内原用吉氏、白保魚湧く海保全協議会会長山城常和氏らも出席することとなりました。

轟川河口及び新石垣空港建設予定地前面海域での赤土堆積状況調査結果(速報)

2008年6月7日、石垣島地方気象台では最大時間雨量82mmという豪雨を記録。島内の各河川からは多量の赤土が流出し、礁池内の広範囲にわたって濁水が広がっているのが確認されました。

WWFサンゴ礁保護研究センターは、6月9日に轟川河口北側海域の4地点において底質の採取を実施。SPSS法に基づく赤土堆積量の測定と、海中の様子の視察を行ないました。 これは海底の砂を一定量採取し、その中に含まれる微粒子による水の濁り具合を測定することで、海底に沈殿している赤土の量を推定しようと言うもの。得られた数値は、濁りの成分となる微粒子がほとんど含まれていないランク1から、見た目は泥そのものと言えるランク8までの、8つの階級に分けられています。一般にサンゴが健康に生育できるのはランク4~5以下と言われており、ランク6以上は人為的な赤土の流出の影響とされています。

海域の概況

6月9日、陸上から海域の様子を窺う限り、特に濁っている様子は見られませんでしたが、海水の透明度は極めて低く、水深1.5mほどでも海底が確認できないほど濁っていました。この状態は河口から沖合200mの地点まで同様に続いていました。さらに、現場にいたサーファーの話によると、礁原まで濁りは続いていたといいます。

また、同日、別の調査グループの話によると、轟川河口から北に約1,400mの海域で調査を実施しようとしたところ、濁りがひどく調査ができなかったとのことでした。

このことから、かなりの範囲に渡って濁りが広がっていることがうかがえました。また、河口付近では5月にはなかった砂州が新たに確認されていることから、多量の土砂が流入もしくは移動したことがうかがえました。

赤土堆積量

今回、調査で改訂の底質の採取を行なったのは、轟川河口E-1、沖合200m地点E-2、轟川河口の北700m地点F-1、1400m地点G-1の4地点です。

各地点とも2サンプルを採取しました。河口に近いE-1、E-2、F-1はいずれも粘性のあるシルト状で、見た目は泥そのものでした。G-1は赤土等の堆積が見た目でわかるものの、砂質を確認できました。SPSS法に基づく分析結果は表の通り。

表1.轟川河口北側海域4地点におけるSPSS値とランク

地点 SPSS(kg/m3) ランク 5月調査 3月調査
E-1
1164.2
8
78.7
(6)
12.2
(5)
787.2
8
E-2
726.2
8
64.8
(6)
435.1
(8)
998.7
8
F-1
689.7
8
260.6
(7)
39.4
(5)
937.6
8
G-1
79.8
6
108.5
(6)
49.3
(5)
53.8
6

「しらほサンゴ村」では、同海域で、5月、3月にも同様の調査を行っていますが、3月調査ではE-2において約4年半ぶりにランク8を記録したものの、その後の5月調査では平均的な数値に落ち着いていました。

今回、3地点においてSPSS値の大幅な増加が見られたことは、新たに多量の赤土が流入したことを示しています。特にE-1における1,164.2kg/m3という数値は、2000年秋季調査の1,222.7kg/m3以来の高い数値であるが、ランク8が400kg/m3以上であり、その他のランク8の記録がほぼ600kg/m3以下の範囲に収まっていたこと鑑みると、異常とも言うべき高い値であることが判ります。

サンゴの白化

今回E-2において、サンゴを観察したところ、コブハマサンゴ、枝状コモンサンゴの白化群体が確認されました(写真3)。海中の透明度が極めて悪かったことからその範囲や被害状況は把握できませんでしたが、底質の状況から赤土の流入が白化の原因となった可能性は高いとみられます。

ただし、白化は高水温、淡水の流入などさまざまなストレスによって引き起こされることから、白化が見られたサンゴの分布状況、水深、その他海底の様子などをみて、総合的に判断する必要があると思われます。

関連情報


ふるさとの海をまもるための交流事業 第二回 in しらほ(2008年4月21日)

WWFジャパンが協力し、佐賀県鹿島市の市民団体「水の会」が主催した、第2回「ふるさとの海」メッセージコンクールで、最優秀賞を受賞した10名の子どもたちが、2008年3月28日から31日まで石垣島・白保を訪問。地元の子どもたちとの交流会に参加しました。

こども交流隊、白保へ!

WWFジャパンは、豊かな海を誇る国内の沿岸地域で、地域の多様な関係者と協働で持続可能なまちづくりのモデルとなる活動を行なっています。地域同士の交流を通じて、地域の活動のさらなる発展を支援することがWWFジャパンの役割です。

その取り組みの一つとして、WWFジャパンでは、2006年に引き続き、九州・有明海に面した佐賀県鹿島市の市民団体「水の会」が主催する、第2回「ふるさとの海」 メッセージコンクールを支援。その受賞者の子どもたちに参加してもらう、「ふるさとの海 子ども交流隊(旧称:美しい海をまもるための交流会)」を実施しています。

これは、日本最大級の干潟のある有明海の鹿島地域と、世界最大級のアオサンゴの群落がある石垣島・白保地区の住民と子どもたちが交流し、同じ日本の中の異なる海を体験するというもの。2008年3月28日から31日にかけて、石垣市白保で行なわれ、メッセージコンクールで入賞した、鹿島市の小学校5年から6年生までの10名が参加しました。

今回の交流隊は、白保の子どもたちが鹿島の町を訪問した、2007年8月の交流会に続き、住友生命保険相互会社の支援を得て実施されたものです。
「ふるさと」の海を守るためには、その海をふるさととしている、地域の人たちの自主的な取り組みが欠かせません。WWFは、この交流隊を通じて、地域主体の海の保全活動がより広まることを期待しています。


石垣島・白保の海で重度の赤土汚染(2008年4月7日)

WWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」では、2008年3月2日に石垣島・白保海域で、冬季赤土調査を実施し、このたび、その調査結果を発表しました。今回の冬季調査では、5年半ぶりに、汚染度がもっとも高い、「ランク8」が一部の海域で記録されました。

冬の調査で汚染度ランク8を記録

サンゴ礁の環境に多大な悪影響をおよぼす、赤土問題。
2008年3月2日、沖縄県石垣島にあるWWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」では、白保海域で、冬季赤土調査を実施。このたび、その調査結果を発表しました。

これは海底の砂を一定量採取し、その中に含まれる微粒子による水の濁り具合を測定することで、海底に沈殿している赤土の量を推定するもの。赤土の量が少ないランク1から、見た目は泥そのものと言えるランク8までの、8つの階級に分けて、海域ごとに評価を行ないます。
一般にサンゴが健康に生育できるのはランク4~5以下と言われており、ランク6以上は人為的な赤土の流出の影響とされています。

「しらほサンゴ村」で2000年から年4回実施してきた赤土調査の結果によると、赤土の沈殿量は季節変動をしながらも年々減少傾向にあることが判明しています。特に、最も汚染のひどいランク8の記録は、2003年夏季調査以降記録されていませんでした。
ところが、今回の冬季調査では、5年半ぶりにランク8が記録されました。記録されたのは轟川河口から沖に300メートルほど離れたポイントです

今回確認された大量の赤土の流入の原因について、いくつかの要因が考えられています。ひとつは、この季節がサトウキビの刈り入れ時期と重なり、裸地が増えること。裸地が増えると、そこに注ぐ雨が畑の赤土を洗い流し、それが川や水路を伝って海に流れ込むため、サンゴ礁が汚染されます。
もう一つの要因は、風向きが北風になるため、サンゴ礁内に流れ込んだ赤土が、外洋に排出されにくくなることです。

赤土は、溜まっても排出される限りは、サンゴ礁を全滅させるようなことはありませんが、長期的には、サンゴの生命力を弱らせ、その生態系を劣化させる、大きな脅威になります。
世界的にも貴重な白保のサンゴ礁を保全するため、WWFでは引き続き、赤土の流入傾向を調査しながら、県や地域とも協力し、赤土を防ぐための対策に取り組んでゆきます。


緊急レポート 白保サンゴ礁でサンゴが大量白化(2007年8月8日)

1998年の大規模白化を上回る被害か?

WWF サンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」は、8月4日に沖縄県石垣島の白保地区沿岸海域で、定例の夏季赤土調査を実施し、その際、大規模な高水温による白化現象を確認した(写真1)。翌5~6日の補足調査結果とあわせて報告を行なう。

今回の調査範囲はトゥールグチから白保集落南の海域(図1)で、27の地点で確認を行なった。白化したサンゴは海岸付近から沖合の礁原(ピー)付近までほぼ全域で、いずれの水深でも確認された(礁池内の最大水深はおよそ5m)。白保海域で見られるほぼすべてのサンゴ分類群で白化が確認された。目視によるおおよその白化率は、以下の通り。

  • ハナヤサイサンゴ科:
    90%以上。わずかに赤味の残る群体も見られたが、ほぼすべてが白化。藻類が付着し死亡している群体も見られた(写真2,3)。

  • コモンサンゴ属:
    50~70%。枝状群体は完全に白化しているものが見られたが、被覆~複合状群体では、淡色化しているものが目立った(写真4)。

  • ミドリイシ属:
    90%以上。白化もしくは淡青色化しているものが多く、正常な群体は確認できなかった。一部は藻類が付着していた(写真5,6)。

  • ハマサンゴ属:
    30~50%。塊状ハマサンゴは白化しているもの、淡色化しているもの、白化の症状がみられないものが混在していた。塊状ハマサンゴは直径2m 程度の大型群体でさえ全体的に白化しているものが見られた。ユビエダハマサンゴは淡色化しているものが目立ったが、中にはすでに藻類が付着しているものもあり、特にアオサンゴ群落周辺では死亡した群体がまとまって見られた(写真7,8)。

  • キクメイシ科:
    50~70%。キクメイシ属、ノウサンゴ属、カメノコキクメイシ属、ルリサンゴ属などで白化、もしくは淡色化を確認(写真9)。

  • アオサンゴ属:
    5%未満。群体の一部で明らかな淡色化が見られ、そのような部位ではポリプの伸長が見られた(写真10)。

 

全体的に、白化してまだ日数が経っていないためか、死亡にまで至っている群体は少なく、付着藻類が確認できたのは、白化が確認された群体のうち5%程度であったが、今後も高水温傾向が続けば大量死に繋がる可能性は大きい。

2007年、白保サンゴ礁で高水温によるサンゴの白化を確認したのは6月24日。この時白化は、轟川河口周辺のごく一部の海域で、干潮時に浅瀬で熱せされた水塊が潮流で移動した際に起こった偶発的なものと考えられた。その後7月20日には、後方礁原付近でトゲサンゴを中心とした小型の群体で白化が確認されているが、礁岩上部の水深の浅い海域に限られていた(図1)。

白保サンゴ礁に設置した水温ロガー(水深4~5m)の記録をみると、沖縄県で梅雨明けが宣言された6月21日付近から最高水温が30度を越えるようになり、7月23日以降は一日を通じて30度を下回らないようになり、このころ白化の被害が礁池全体に広がり始めたものと思われる(図2)。観光業者の話ともほぼ一致する。

また30度以上を記録した積算時間をみると、2003年からの記録と比べ、4倍以上の長時間を記録しており、いかにサンゴにとってストレスが高かったかを示している(図3)。この異常高水温の主な原因として考えられるのが、降水量の少なさである(図4上)。

2007年の梅雨時期の降雨量は平年の94%と少なかったことに加え、台風の接近も4号の1回のみである。また、2007年の平均気温は世界的規模の大量白化がおこった1998 年を上回る推移を見せており(図4下)、このまま降雨量の少ない状態が続くと、かつてない規模の白化がおこる可能性がある。

事実、1998年には白化がおこらなかったとされるアオサンゴですら、わずかではあるが白化(淡色化)が確認されているほか、地元海人の話でも1998年の白化はこれほどひどくなかったという。

白保海域はここ数年、台風によるかく乱の影響を受け、サンゴが大きく減少、その後の回復が思わしくない状態が続いていたが、一部の海域ではミドリイシやコモンサンゴなどでやや回復の兆しがみられてきた時期だけに、今回の大量白化は白保サンゴ礁に深刻な危機を与えるものと考えられる。

WWF サンゴ礁保護研究センターでは、今後も研究者、関係機関と情報交換をしながら、調査、監視を続けていく予定である。

白化したサンゴ群落

図1:サンゴの白化確認地点および範囲

図2:白保サンゴ礁(ポイントC-3)における水温の推移(2007年4月1日~8月4日)

図3:7月31日までに水温30度以上を記録した積算時間(ポイントC-3)

図4:石垣島地方気象台データによる平均気温ならびに降水量の変化(平年値は1997年から2006年)

写真資料


写真2:白化したトゲサンゴ(わずかに赤味が残る)

写真3:白化したショウガサンゴ

写真4:白化したコモンサンゴのなかま

写真5:白化したミドリイシのなかま

写真6:ミドリイシ類の枝先に藻類が付着したようす

写真7:白化した塊状ハマサンゴ(直径約2m)

写真8:白化し藻が付き始めている
ユビエダハマサンゴ

写真9:白化したコトゲキクメイシ

写真10:白化(淡色化)したアオサンゴ

 


アオサンゴの全貌を調査 ~2006年度エコパートナーズ事業始まる(2006年7月10日)

2006年から名称を「エコパートナーズ」に変え、新しくスタートしたWWFジャパンの自然保護助成事業。これは、WWFジャパンがすすめる自然保護プロジェクトに、積極的に外部パートナーに参加して頂くことで、活動を広げ、成果を寄り深めていくためのものです。

この事業の一環として、石垣島の白保で実施されることとなったのが、サンゴ礁地形の専門家と協力して行なう、アオサンゴ群落の分布調査です。

アオサンゴは世界各地でみられますが、白保の群落は特に大きく北半球最大とも言われ、白保サンゴ礁のシンボルとなっています。しかし、2004年に危機的な状況が起こりました。猛烈な台風で海底から巻きあげられた大量のサンゴ礫(死んだサンゴの破片)が、アオサンゴ群落に多いかぶり、広域におよぶサンゴ礁の群落が打撃を受けたのです。このときの台風では、最低でも10トンの礫が移動したとみられています。

WWFでは、これを単なる自然災害のひとつとして終わらせることなく、地域の人たちが海のことを考えるきっかけとして、海を守るための活動につなげていきたいと考えています。そのためにアオサンゴのこと、その海のことをもっと知り、伝えていく必要があります。アオサンゴがどの範囲にどのくらい分布しているのか? サンゴ礫の被害はどの程度なのか? この事業では、まずはそこから始めていきます。

第1回目となる7月初旬の調査では、分布図のもとになる空中写真の補正のための測量を海と陸で実施。大まかにしか分かっていなかったアオサンゴ分布の現状を明らかにするため、続く第2回目ではサンゴの分布を実際に測定する予定です。


沖縄県石垣島白保サンゴ礁海域における赤土堆積量の時空間的分布について 要旨(2004年12月1日)

安村茂樹・前川聡・佐藤哲
WWFジャパン サンゴ礁保護研究センター

サンゴ礁環境へ影響を及ぼす要因の一つである土壌流出に関して、沖縄県石垣島白保サンゴ礁礁池における赤土堆積状況を把握するため、礁池内に32定点を設置し、底質中懸濁物質含量(SPSS)を調べた。2000年8月から2003年5月までの3年間、3ヶ月に1回の頻度で試料採取を行った。礁池内全体の3年間のSPSS平均値は14.8kg/m3で、一年ごとの対数値の平均に有意な差はなかった。海岸線(12定点)、礁池中央(10定点)、礁嶺(10定点)領域ごとのSPSS平均値は、陸域から離れるほど減少する傾向があった。礁嶺領域の定点群のSPSS値については、轟川河口の北東部に位置するモリヤマグチ(礁嶺の切れ目)に近い1定点の3年間の対数値の平均が他の9定点中7定点より有意に高かった。赤土の主要な流入源と考えられる轟川の河口およびその北側周辺の4定点では、SPSSの3ヶ年平均値が50kg/m3以上であり、人為的な影響を受けていると考えられる堆積が恒常的に続いていることが確認された。これら4定点の季節ごとの平均SPSS値は秋にもっとも大きく、冬から夏にかけて減少する傾向が見られた。礁池全体では季節毎の堆積量に有意な差はなかった。

白保礁池に堆積する赤土は、主に夏から秋(8-10月)にかけて集中する降雨により轟川から流入するものと思われる。赤土は、海岸線付近、特に河口北側周辺に偏って堆積する傾向が高く、人為的流出による恒常的な堆積がサンゴ礁生態系に負の影響を与えているものと推察される。赤土の堆積分布から推測すると、河口からの距離、クチなどの地形や底質状況が拡散・堆積・再懸濁に影響を与えているものと思われる。河口北側周辺の赤土は秋以降に徐々に減少することから、河口北東に位置するモリヤマグチから恒常的に排出されている可能性が高いと考えられる。


台風による石垣島白保海域におけるアオサンゴ群落へのサンゴ礫の堆積(2004年11月26日)

2004年は「台風の当たり年」と言われ、気象庁の資料によると1951年の観測以降、上陸数が過去最多を記録した(表1)。

また石垣島に接近した台風の数は9回と、過去10年間の平均の4.4回を大きく上回っている。このような異常気象の影響が白保サンゴ礁にもあらわれている。

世界で最大最古と言われる白保のアオサンゴ群落が、台風の強い波浪により海底から舞い上がったサンゴ礫(死んだ枝サンゴなどの破片)に覆われ、一部でアオサンゴが白化するなどの被害が出ていることが分かった(写真1) 注1 。

サンゴは土砂や礫に覆われると、体内の共生藻の光合成が阻害され白化現象をおこし、長期間その状態が続くと衰弱し死亡してしまう。

注1)アオサンゴは骨格が青いため色素をもった共生藻が抜け出すと青く変色する

写真1:サンゴ礫に覆われた、白化したアオサンゴ。 2004年11月14日撮影

表1:台風の上陸数および石垣島への接近数

上陸とは台風の中心が北海道、本州、四国、九州に達することをいい、接近とは台風の中心が気象台を基点として 300km 以内に達した場合をいう

サンゴ礫の被覆の被害を受けた地域は、アオサンゴ群落のリーフに近い場所( N24 ° 21 ' 、 E124 ° 15 ' )で少なくとも 3カ所が確認されている(写真2)。2004年11月12日に、堆積状況を確認するために、礫に覆われた範囲と、被害を受けたアオサンゴ群体の上部、中部、下部において、長さ60センチの鉄杭を礫に挿し、その深さを測定した。また、積もった礫の供給場所を推定するために、礫サンプルを採集し、後日その長径、直径、乾燥重量を測定し、運ばれた礫の大きさを求めた。

写真2:サンゴ礫による被覆のあった位置と現況

表2 サンゴ礫による被覆状況

礫に覆われた範囲は、礁嶺につづくためその境界は不明瞭であるが、長さ(南北方向) 13~19メートル、幅(東西方向)11~13メートルに及び、礫のつもった厚さは、もっとも厚いところで60センチ以上に達していた(表2)。

いずれの場所も、礫は礁嶺より西側もしくは南西側に流れるように覆い被さっていた。また、300個のサンプルから求めた礫の大きさは、長径5~172ミリ、直径1~50ミリ、重量にして0.1~87.3グラムであった(図1)。

図1 サンゴ礫のサイズおよび重量

これらの礫はアオサンゴ群落の東北東側にある枝サンゴ礫帯に由来するものと推測された。

白保の遊漁船業者、海人によると、このような現象は昨年も起こっているが、今年たてつづけに発生した台風 21号(9/26)、23号(10/19)、24号(10/25)の影響により被害の規模が拡大しており、特に23号の影響は大きかったという。

石垣島気象台による台風 23号のデータでは、石垣島は10月18日から20日の48時間、強風圏内にあり、最大瞬間風速は34.8m/s(北北東 10/18 17:11)、最大風速21.5m/s(北北西 10/19 02:00)であった(図2)。

図2 台風23号( 2004/10/18 ~ 20 )による石垣港における潮位(折れ線)と石垣島気象台における風向および風速(矢印)

また、強風域にあった18日21:00には満潮(21:19 179.7cm)と重なり、石垣港における潮位が299cmにも達しており、このころ被覆が拡大したものと推定される。

白保のサンゴ礁は、轟川からの赤土の流入による汚染、畜舎排水、家庭排水などが原因と思われる富栄養化、レジャー利用の増大による負荷などによって弱くなっている。 また、環境の悪化によるサンゴの被度の低下、死亡率の増大が、サンゴ礫の供給を増加させている可能性もある。

現在のところ、白保海域の一部でしか確認されていないが、今後、地球温暖化に伴い台風の進路に変化が起き続ければ、他の海域でもサンゴ礫による被覆とサンゴの死滅が起こることが懸念される。

WWFサンゴ礁保護研究センターでは、今後アオサンゴ群落の定期的な観察を行い、再生状況などを監視していく予定である。

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