ベトナムのジャワサイが絶滅


2011年10月25日、WWFとIRF(International Rhino Foundation)は、ベトナムに生息していたジャワサイが絶滅したと発表しました。最後まで生き残っていたジャワサイを襲ったのは、密猟者の銃弾でした。このベトナムの個体群が絶滅したことにより、世界に生き残っているジャワサイは、ジャワ島西部に生息するおよそ50頭のみとなりました。

ベトナムで生き残っていたわずか数頭のジャワサイ

ジャワサイはかつて、インドシナ半島およびスマトラ島、ジャワ島の熱帯林に生息していました。しかし、森林の消失と、薬の原料として中国や東南アジアで珍重される角を狙った密猟により減少。スマトラ島およびインドシナ半島の大半のエリアでは、絶滅しました。

その中でわずかに生き残っていたのが、インドネシア・ジャワ島西部のウジュンクーロン国立公園と、ベトナムのカティエン国立公園の2カ所の保護区です。

このうち、ベトナムの個体群はとりわけ数が少なく、1988年までは絶滅したとも言われていました。

その後、確かな生存の情報が確認され、1992年にベトナム政府はサイの保護区を設立。後にこの保護区は、より大規模なカティエン国立公園に併合され、広く生息域の保全が図られることになりました。

WWF も1998年からベトナム政府に協力し「カティエン国立公園保護プロジェクト」を展開。翌年5月には、自動カメラを使った調査で、インドシナ半島に生き残るジャワサイの写真を、世界で初めて撮影することに成功しました。

しかし、こうした一連の調査の結果、ベトナムのジャワサイの推定個体数は、わずかに8頭前後であることがわかり、まさに絶滅寸前の危機にあることが明らかになりました。

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調査用の自動カメラで撮影されたベトナムのジャワサイ

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アジア大陸最後のジャワサイが生息していたベトナム・カティエンの森

迫る絶滅の足音

現地での保護活動自体も難航しました。
5年にわたるベトナム政府との「カティエン国立公園保護プロジェクト」は、一定の成果を挙げたものの、その終了後は、燃料用の薪や狩りを目的に、人が公園内に入り込んだり、保護区自体も農地開発に圧されて縮小されるなど、現地の活動が停滞。

2004年にカナダのクイーンズ大学が調査した際には、少なくとも2頭の生存が確認されていましたが、生息数についても、精度の高い情報が得られない状況が続きました。

2009年にWWFは再びカティエンで訓練された犬を使った調査を開始、2010年4月までに22の糞のサンプルを入手しました。また、足跡の調査も行ない、ジャワサイの生存を確認していました。

ところが、この足跡は2月上旬を最後に、見られなくなったのです。
4月、公園内で一頭のジャワサイの死体が見つかりました。角は切り取られ、脚の骨からは銃弾が見つかりました。

WWFが、このサイと採集した糞の遺伝子を調べたところ、全て同じであることが分かりました。調査では、他の遺伝子を持つ糞は見つかっていません。おそらくベトナム最後の、またアジア大陸最後の個体であろうジャワサイは、密猟の犠牲になりました。

「ベトナムからはサイは姿を消してしまいました」WWFベトナムのディレクター、チャン・チーミン・ヒェンは言います。
「保護活動に大きな努力と資金を注いだにもかかわらず、この希少な生きものを救えなかったことは痛恨です。ベトナムは、貴重な自然の遺産を一つ、失いました」。

インドシナの自然を守るために

このジャワサイを絶滅に追い込んだ問題は、今も続いています。
WWFではその原因の一つとして、カティエンにとどまらず、ベトナムの国内で、希少な野生生物の保護や、保護区の管理が十分に行なわれず、法律が守られていない点を指摘しています。

また、ベトナムは野生生物の違法取引のホットスポットにもなっています。2010年には南アフリカで300頭のサイが密猟されましたが、ベトナムと中国はこうした犯罪行為によって得られたサイの角の市場の一つです。

WWFではベトナムのこの現状が、インドシナトラやアジアゾウ、サオラ、トンキンシシバナザルといった、他の希少な野生生物を間違いなく追い詰める大きな危機をはらんでいることを警告するレポートを作成。保護活動への増資と、人材の育成を早急に行なうよう提言しました。また、ベトナム国内の消費のあり方も変える必要があることも指摘しています。

インドシナ半島のWWFの活動の中心である、WWFメコン・プログラム・オフィスの野生生物保護担当ニック・コックスは、このレポートの発表を受けて次のように述べています。
「ベトナムのジャワサイの悲劇は、さまざまな野生生物がさらされている危機の象徴なのです」。

絶滅を繰り返さないこと

今回、ベトナムでの絶滅を受けて、ジャワサイの生息地は、ついに世界でただ1カ所、インドネシア、ジャワ島のウジュンクーロン国立公園のみとなりました。

推定個体数は50~60頭。近年の保護活動の成果を受けて、微増の傾向が見られるとはいえ、今も世界で最も数の少ない、大型哺乳類の一種に数えられています。

何より、サイを狙った密猟は、ベトナムだけの問題ではありませんし、ジャワサイだけの問題でもありません。スマトラ島とボルネオ島、マレー半島の熱帯林に生き残っている、スマトラサイの生息数も、推定で300頭あまりと、ごくわずかです。

WWFでは今、ウジュンクーロンでの保護調査を継続すると共に、そのノウハウをスマトラ島のスマトラサイ保護に活かす試みを進めようとしており、WWFジャパンでもその取り組みを支援しています。

ベトナムで起きたジャワサイの悲劇は、東南アジアの自然が、その豊かさ、多様さを損なう出来事となりました。これを、ジャワやスマトラで繰り返すことは、決して許されません。

WWFはトラフィックや各地域の団体・機関と協力しながら、密猟や違法な取引の規制強化を各国に求め続けると共に、サイの生息地の現場での取り組みを、今後も続けてゆきます。

 

報告書

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国立公園内で改修される密猟用の罠。密猟者は国境を越えて侵入しているケースもあるとみられる

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ジャワサイ調査用に訓練された犬

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2011年4月に公園内で見つかった、ベトナム最後のものと思われるジャワサイの骨格

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骨からは撃ち込まれた銃弾が見つかった

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