被災地の戸倉中学校で特別授業を実施


2012年2月8日、WWFジャパンは「暮らしと自然の復興プロジェクト」の支援地域の一つである、宮城県南三陸町の志津川自然の家において、宮城県立戸倉中学校の生徒の皆さんに、出前授業を実施しました。震災から、どのように水産業と地域を再生していくのか。その道を進み始めた南三陸の町の未来を担う子どもたちに、海との共生についてより深く考えてもらうことを目的としたものです。

被災地の中学校での特別授業

2011年10月、WWFジャパンは、「暮らしと自然の復興プロジェクト」を通じて、戸倉中学校の谷山教頭先生から、学校の取り組みと子どもたちの様子を聞く機会をいただきました。

この戸倉中学校は約20メートルの高台にありましたが、2011年3月の東日本大震災の折、津波の被害を受け、現在は隣の登米市の空き校舎に仮移転し、授業を再開しています。

この戸倉中学校では、以前から一つの活動に注力してきました。地域を知るための「海の体験授業」です。

志津川湾での養殖の様子

南三陸町に限ったことではありませんが、身近なものほど実はよく分かっていない、あるいは関心が薄いといったことは、多くの地域で見られます。そのため、地域の基幹産業である漁業と、その母体である海との暮らしについて、より深く学んでもらう機会として、この体験授業が行なわれてきました。

もともと戸倉地区では、県外の学校を対象として、漁業者が海の体験活動の受け入れを行なっていましたが、2011年、その活動をまさに地元の中学校でも展開しようとしていた矢先に、大震災が起こり、状況は一変してしまったのです。

それでも、学校の関係者の皆さんは、この体験活動を再会する決意を固めてこられました。そして、戸倉中学校の2学年が「戸倉の海と漁業の復興」をテーマに、ワカメの養殖を学ぶ体験学習をスタートさせたのです。大人の心配をよそに、海の体験授業をうける子どもたちは笑顔であふれたそうです。

宮城の海と沖縄の海

今回、WWFジャパンで実施した特別授業も、その一環として行なわれました。

講師はWWFジャパンの水産担当、そして、沖縄県石垣島・白保地区にあるWWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」のスタッフと、同じく白保から同行してくださった、地元の方です。

授業を始めるにあたり、WWFが取り組んでいるさまざまな活動と、地域の自然環境を代表する、「志津川湾の特徴と保全」について、まずお話ししました。

そして、「しらほサンゴ村」のスタッフと白保地区の方より、WWFが白保の住民の方々と進めている活動について紹介してもらいました。

自分たちの土地の環境や、産業の特性を知るためには、他の地域との比較があって、初めて実感できるものだからです。

宮城県の戸倉地区と沖縄県の白保地区も、一見すると風土も文化も全く異なり、共通性はないように見えますが、白保で現在WWFが進めている、その土地の文化・風習・歴史と共に、自然環境の持続可能な利用と保全管理を目指す取り組みは、戸倉でもまさに始まろうとしていた試みでした。

実際、戸倉地区では今、震災前の水産業のあり方を見直し、地域の海の環境の収容力に見合った密度と規模の養殖のあり方を、新たに模索しています。

 

未来の戸倉・志津川のためにできること

特別授業の最後に、まとめとして、参加してくれた子どもたちに、「わたしたちが戸倉、志津川湾のためにできること」を考え、発表してもらいました。

その中には、「海岸を清掃する」といった身近にできる内容と共に、「地域おこしをする商品の開発をする」「伝統芸能を通じて戸倉のことを多くの人に知ってもらう」など、より踏み込んだ、さらに未来を見た発表も見受けられました。

何より、子どもたちに今、このテーマを真剣に考えてもらう、ということの意味は、戸倉をはじめ、被災地の未来を考える上で、きわめて大きいものです。

震災からの復興を目指すその途上で、被災地の人たち、特に子どもたちが、津波をきっかけに海から目をそむけてしまったら、海が担っている機能や、その価値、生態系がもたらしてくれる、さまざまなサービスについても、正しく理解するのは難しくなります。



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白保の海でのサンゴ礁の保全活動

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宮良操さんによる、石垣島のお話

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「しらほサンゴ村」スタッフによる発表

 

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生徒の皆さんの発表

そして、今、戸倉の大人たちが目指そうとしている、新しい海との暮らし、沿岸域の生物多様性の保全や、水産資源の持続的な利用が、停滞あるいは後退してしまうかもしれません。

震災から11カ月を迎え、現地では地域をどのように復興させてゆくのかが、より切実な課題となっています。その道のりの中で、どのように水産業と地域を再生していくか。まさにこれからが正念場といえます。

WWFジャパンとしても、今までの活動の知見と経験を活かしつつ、復興支援にどれくらい貢献できるのか、挑戦を続けてゆきます。

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