被災地・宮城県志津川湾での海洋汚染調査


2012年3月3日、WWFジャパン「暮らしと自然の復興プロジェクト」のモデル地域の一つ、宮城県の志津川湾で、県漁協志津川支所戸倉出張所の養殖業者に依頼し、水産物の汚染を検査するためサンプリング調査を行ないました。採集したサンプルは、愛媛大学の沿岸環境研究センターで解析する予定です。

震災から始まった汚染

2011年3月に発生した東日本震災は、地震、津波の被害だけでなく、福島第一原子力発電所の大事故をも誘発させました。原発から流出(放出)、拡散した放射性物質による、環境や農林水産物の汚染が、今も懸念されています。

そのため、各地域では、自治体をはじめ、漁協や農協、民間企業などによる独自の検査が行なわれ、毎日のように新しい情報や課題が公表されるようになりました。

特に、全国的な関心事となっているのは放射性物質汚染ですが、一方で、あまり話題に上らない別の海洋汚染問題も懸念されています。

それは、津波によって工場等から海に流出した化学物質や、廃棄物の焼却処理等によって発生する化学物質、大量のがれきから溶け出す化学物質が引き起こす影響です。

これらの化学物質は環境中に長く滞留し、食物連鎖を通じて魚や海藻類の内部で生物濃縮され、それを食べる人の健康被害にもつながりかねません。

宮城県志津川湾の調査

今回、WWFジャパンでは、被災地の宮城県志津川湾で、この海洋汚染の調査を実施しました。養殖しているマガキ、ホタテ、ワカメ、ならびに養殖施設に付着しているイガイを採取し、その汚染実態を調査するものです。

「暮らしと自然の復興プロジェクト」の、もう一つのモデル地域である福島県相馬市においても、すでに相馬双葉漁協ならびにNPOはぜっこ倶楽部に、松川浦の主要水産物であるノリとアサリならびに底質(海底の泥など)、さらに相馬沖のアイナメやカレイなどの主要魚類のサンプリングを依頼。
集めたサンプルの汚染検査を、愛媛大学の沿岸環境研究センターの田辺信介教授に委託し、分析が進められています。

田辺教授はWWFジャパンが過去に沖縄周辺で実施した「南西諸島における野生生物の化学物質汚染調査」のプロジェクトリーダーとして協力いただいた方で、環境省の海洋環境緊急モニタリング調査検討会の委員もつとめていらっしゃいます。

沿岸環境研究センターでは、福島第一原子力発電所の事故が起きる以前の三陸沖を含めた、世界各地の生物や土のサンプルを保有していることから、現状の汚染物質の数値だけでなく、事故によってどのように汚染レベルが変化し、どの程度のリスクがあるのかを、総合的に解析いただく予定です。

未来の海のために

このような海洋汚染に関する情報の公開は、確かに新たな憶測を生み、地域の水産業の復興の妨げとなる可能性をはらんでいます。目下深刻な海洋汚染により自主休漁に追い込まれている、福島県の漁業者にとって、それはさらに大きな重圧になりかねません。

しかし、志津川湾を擁した南三陸町、福島の相馬市、いずれの漁業関係者の皆さんも、一つの明確な考えを持ち、WWFの「暮らしと自然の復興プロジェクト」に参加されています。

それは、自らが正確な海洋汚染についての情報を把握し、適切に発信していくことが、地域の水産業の復興に必要な道筋なのだ、と考えていることです。

WWFジャパンとしても今後、検査対象を徐々に広げつつ、関係者と対話を重ねながら、この深刻な海洋汚染問題にいかに向き合い、そして自然と漁業の復興を進めてゆくべきかを検討していきます。

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多くのがれきが海中に流出

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流出した油や化学物質などによる、生態系への影響が懸念される

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海から引き上げられたホタテ

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カキの選別

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サンプルの箱詰め作業

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