2009年【COP15/CMP5】国連気候変動コペンハーゲン会議


2009年12月7日~18日にかけて、デンマークのコペンハーゲンで国連気候変動枠組条約第15回締約国会合(COP15)、および京都議定書第5回締約国会議(COP/MOP5)が開催されました。2007年12月のバリ会議で採択されたバリ行動計画により、コペンハーゲン会議において、京都議定書の次の枠組みに合意し決定書を採択することが決まり、その後2年間、各国の間で検討が行なわれてきましたが、いよいよその集大成として、法的拘束力のある国際合意をつくりあげるべき時が来ました。

ポスト「京都議定書」の行方を決める

「京都議定書」の第一約束期間(2008年~2012年)が終わる2013年以降、国際社会は、どのような国際協定のもとに、温暖化問題の解決に取り組んでいくのか。
「京都議定書」に続く、その「第二の枠組み」に合意できるかどうかが、今回のコペンハーゲン会議の最大のポイントです。

新しい議定書などの「法的拘束力のある合意」は困難であり、暫定的な「政治的合意」を目指すべき、という主張も見られますが、そのようなことになれば、ますます将来の世代に温暖化のツケを残してしまう可能性が高まります。

世界中の人々が自然と共に豊かに暮らすことができる「緑の地球」を残せるかどうか。世界はコペンハーゲンにおいて、地球の未来を左右するほどの、一つの重要な選択をすることになります。

コペンハーゲン会議 10のステップ

WWFは、コペンハーゲン会議を成功させる上で、以下の10のステップが必要であると考えます。

  1. コペンハーゲンでは、京都議定書の改訂と、新たなコペンハーゲン議定書との二つを策定し、法的拘束力のある枠組みを構築しなければならない。それは、国そのものの存続から、文化や生態系の保全を確保し、低炭素社会への道筋を明らかにするものである。
  2. 世界の排出量を2017年までにピークアウト(減少に向かわせること)させ、地球の平均気温の上昇を、危険な温暖化を招く閾値である2度未満に抑え、できるだけ早い時期に1.5度未満に下げること。
  3. 先進国全体として、排出量を2020年までに1990年比40%削減することを約束すること。
  4. 途上国は2020年までに、削減努力をしなかった場合と比較して、排出量を少なくとも30%削減するための大幅な削減行動をとることに同意すること。
  5. 先住民や地域コミュニティの権利を考慮しつつ、森林減少と劣化による排出量を減らし、2020年までに、森林による吸収量とバランスをとること。
  6. 特に脆弱な国や生態系に対して、保険や補償を含めた即時の適応行動のための枠組みを設置すること。
  7. 革新的な資金メカニズムによる資金源などを通じて、途上国への適応や緩和のために、公的な資金援助が年間1600億USドルの規模で提供されること。
  8. 戦略的に、低炭素社会と適応に必要な技術を途上国へ移転するための支援を、大幅に増加させるメカニズムをUNFCCCCの下に設置し、さらに市場をも誘導することが可能となる、地球規模の技術移転目標が合意されること。
  9. 透明性ある民主的な手段で、緩和と適応の行動を実施に移し、資金の配分を行う新たな組織がUNFCCCのもとに設置され、なおかつ遵守を確保すること。
  10. 加盟国が、カーボンマーケットや森林・土地利用、緩和努力と(技術)革新などの重要な項目について、透明で比較可能な指標に合意し、国際航空と船舶による排出量制限のための手段に合意すること。

日本政府には、「鳩山イニシアティブ」の下に、途上国支援の枠組みについて具体的な案を提示し、交渉をリードしていくことが期待されます。


2009年【COP15/CMP5】国連気候変動コペンハーゲン会議 関連情報 まとめ

  • COP15:コペンハーゲン会議終了! (2009年12月21日)
  • 国連気候変動コペンハーゲン会議(COP15・COP/MOP5) 詳細報告(2009年12月21日)
  • COP15:コペンハーゲン合意について(2009年12月21日)
  • COP15会議報告:ハイレベル会合の結果(2009年12月19日)
  • 気候変動との戦いに人々の声を!ピープルズ・オーブのメッセージ(2009年12月16日)
  • COP15:各国が提案している削減目標ではまだ足りない!?(2009年12月18日)
  • 参考資料:先進国の削減目標の抜け穴について(2009年12月17日)
  • COP15:新議定書の代わりの「政治合意」がすでに準備されている?(2009年12月9日)
  • 国連気候変動バルセロナ会議がまもなく開幕(2009年10月30日)
  • 地球温暖化防止に一票!「VOTE EARTH!」キャンペーン(2009年10月23日)
  • 国連気候変動ボン会議が開幕 行き詰まる交渉の政治的進展へ道を開くべき!(2009年8月10日)
  • 世論調査を実施「日本の有権者は高い削減目標を求めている」(2009年6月2日)
  • 各国代表は野心的な次期枠組み合意へ向けて交渉テキストを強化すべき(2009年6月1日)
  • 「Earth Hour」とボンでの国連会議(2009年3月30日)
  • 関連した国連会議(2009年)

COP15:コペンハーゲン会議終了! (2009年12月21日)

2007年12月のバリ会議以降、2年間におよんだ国際交渉を受け、開催された、コペンハーゲン会議(COP15/COPMOP5)が終了しました。世界が温暖化防止に向け、初めて交わした約束「京都議定書」の、第一約束期間が終わる2013年以降、国際社会がどのような目標を定め、約束するのか、その枠組みについて、確かな合意は実現されませんでした。


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積極的な削減合意を求めて抗議!
WWFデンマークが実施した
「Burning Pandas」パレード

紛糾と対立の中で

京都議定書に続く、大きな温室効果ガス排出削減のための約束が、いよいよ交される会議、と目されてきた、今回のコペンハーゲン会議。
世界から押しかけた3万人あまりの人々に加え、後半に入ると、今までの、温暖化防止会議では例のない、110人以上におよぶ各国の首脳陣が参集しました。

会場には警備員が立ち並び、厳重警戒の体制。会議第一週までは、自由に立ち入っていたNGOのスタッフたちも、外に締め出され、コペンハーゲンの町には、人が溢れかえりました。

そして迎えた最終日、会議は結局収束されず、当初予定されていた終了日の金曜日を丸一日過ぎた、翌土曜日の現地時間午後3時半になってようやく閉幕しました。

温暖化の脅威を避けるために必要な削減レベル、として科学が示した数値に届かない、先進国の目標。そして、削減行動を国際的に約束することを拒む途上国。

両者の間の対立は容易に埋まらず、会議は最後の最後まで紛糾しました。

何が得られたのか?

結果的に、会議はほぼ破綻という形で幕を閉じました。

会議終盤、アメリカや中国を含めた、先進国ほか20あまりの国々が、話し合いと譲歩を重ね、ようやっと先進国の削減目標と、途上国の自主的な削減目標を含んだ宣言文書「コペンハーゲン協定」をまとめましたが、その進め方について、文書の取りまとめに参加していなかった、他の多くの国々が反発。「協定」は事実上、意味をなさなくなってしまったのです。

そして無論、今回の会議の最も重要な課題だった、「法的な拘束力を持った削減目標を定めた新たな議定書」の採択も、先送りされていました。

今回の会議について、WWFの気候変動プログラム・リーダーのキム・カーステンセンは次のように言っています。

「コペンハーゲン会議は、リーダーシップの乏しさと、信じ難いほどの消極的な姿勢によって、失敗の一歩手前で終わりました。2年間の交渉の末に、私たちは、内容が曖昧で不十分な「協定」を、手にしただけでした。アメリカの気候変動法案成立の可能性と、途上国に対する資金援助開始の可能性が開けたことを除けば、実効性のある温暖化対策の妨げになっている政治的な障害は、全く取り除かれませんでした」。

温暖化防止の必要性は理解していても、約束の中身が伴っていなければ、地球を危険な気候変動から守ることはできません。豊かな国々と貧しい国々が、従来にない、全く新しい方法で協力しないと、この危機は乗り越えられないでしょう。

実際、今回の会議の結果は、数百万を超える人々の暮らしや命、数千億ドルの資金、そして多くの機会損失の未来を、大きく左右することになります。今後、内容が曖昧な「コペンハーゲン協定」の詳細を、交渉を通じて、どれだけ具体化できるかが、大きなカギとなります。


国連気候変動コペンハーゲン会議(COP15・COP/MOP5) 詳細報告(2009年12月21日)

条約と議定書 開催された2つの会議

2009年12月7日から19日まで開催された、国連気候変動コペンハーゲン会議は、正確に言えばCOPとCOP/MOPの2つの会議が同時に開催された会議でした。

それぞれの意味を説明すると、まずCOPは、「締約国会議(Conference of the Parties)」の略で、国連気候変動枠組条約の締約国会議という意味です。今回は、その第15回目に当たったので、COP15と呼ばれました。

も う片方のCOP/MOP(もしくは更に縮めてCMPとも書きます)は、「締約国会合として機能する締約国会議(Conference of the Parties serving as the Meeting of the Parties)」の略で、京都議定書の締約国会議という意味です。今回は、その第5回目に当たっていたので、COP/MOP5もしくはCMP5と呼ばれ ました。

2つのAWG(アドホック・ワーキング・グループ)とその役割

さらに、これら2つの会議の他に、条約AWG(AWG LCA)と議定書AWG(AWG KP)という2つの作業部会も開催されました。

これらは、それぞれ、上の2つの会議の下に作られた作業部会に当たり、通常は年に1回しか開催されないCOPやCOP/MOPに加えて、追加的に必要な議論を行なう場として、これまで開催されてきました。

今回の会議では、形式上は、途中まで条約AWGと議定書AWGの議論が継続され、その作業結果の報告をCOPとCOP/MOPが受取り、そして、それを踏まえた決定をCOPとCOP/MOPが下す、という形式がとられました。

条約AWGと議定書AWGの2つの交渉プロセスは、共に2013年以降の国際的な枠組みを作るためのプロセスです。これらのプロセスは、別々の時期に発足し、それぞれに異なる役割を持っています。

条約AWGは、2007年の国連気候変動バリ会議(COP13・COP/MOP3)の際に、バリ行動計画の中で設立された交渉プロセスです。条約AWGは、議定書AWGよりも幅広い論点を扱うプロセスで、特に、

  1. 京都議定書を離脱したアメリカがどのように2013年以降の枠組みに参加するのか
  2. 途上国は、どのような形で2013年以降の枠組みに参加するのか

という論点を議題に含んでいるため、より大きな注目を集める会議体でした。そして、バリ行動計画の中では、条約AWGは今回の会議までに合意文書を作る予定となっていました。

これに対し、議定書AWGが取り扱う議題は限定されており、その最終目的は、京都議定書に参加した(アメリカ以外の)先進国の2013年以降の削減目標を決 めることです。このプロセスは、2005年のモントリオール行動計画において設立が決定され、以後、約4年間にわたって議論されてきました。

議定書AWGおよびCOP/MOPの議論については、以下で詳しく解説します。

2つのプロセスの"進め方"をめぐる意見の対立

先進国と途上国の意見相違

それぞれのプロセスは、多数の争点を含んでいますが、まず先進国と途上国の間では、これら2つのプロセスの"進め方"自体について意見が対立しています。先進国側は、

  1. 京都議定書にはアメリカが参加していないこと
  2. 成長著しい途上国がどのような対策をとるのかも踏まえなければ、温暖化防止にはつながらないこと

等を理由に、2つのプロセスを一本化するか、もしくは両方のプロセスを同時並行で議論するべきとの主張をしています。

一方、途上国側は、温暖化を引き起こしてきた歴史的責任は先進国にあり、まずは先進国が対策をリードするべきであることを理由に、議定書AWGの議論を先行させて、先進国の削減目標を先に決めるべきであるという主張をしています。

こうしたプロセスに関する意見の不一致は、時としてそれぞれのプロセスの中身である、種々の論点に関する議論にも影響を及ぼしてきました。

今回のコペンハーゲン会議でも、こうしたプロセスの進め方に対する意見の不一致から、議論が膠着状態に陥ることが幾度かありました。

今回のコペンハーゲン会議では、それぞれのプロセスで得られた結果を基に、総合的な合意を生み出すのが1つの理想形でした。しかし、結果から言うと、残念ながらそれは果たせませんでした。

総 合的な合意は、会議の公式な予定での最終日であった12月18日(実際には翌日まで延長された)に、約100カ国の首脳が集まり、作り出されようとしてい ました。しかし、今回の会議では、実際には約30カ国に絞られた一部の国々による合議という形で、その議論が行なわれ、その結果が、「コペンハーゲン協定 (Copenhagen Accord)」という名前でまとめられました。

この結果、議論が一部の国々の中だけで行なわれた過程と、最終合意について検討する十分な時間が与えられなかったことを不服とする一部の国々の間から、最後に強い反対が起こることになりました。

そして、「コペンハーゲン協定」は、協定を作る過程に参加した国々の間だけでの合意、として扱われることになり、今回のCOP(およびCOP/MOP)全体の合意としては、扱われないことになってしまったのです。

条約の本会議は最終的に、コペンハーゲン協定について「留意する」(take note)という形で決定し、正式に「採択する」(adopt)ことはできませんでした。

最後の2日間の議論については、以下のページでより詳しく解説します。

会議の外で:NGOの参加について

内容的にも大きな課題を残した今回の会議は、他にもさまざまな点について問題が指摘されました。その一つは、世界中から参加していた、NGOメンバーの扱いです。

今回のコペンハーゲン会議は、3万人以上の人々が参加を登録する大会議となりました。通常、この類の国際会議の参加者は1万人程度ですから、これは群を抜いた規模です。
ところが、条約事務局と議長国の不手際もあって、実際に準備された会議上の収容能力は最大で1万5,000人どまり。さらに2週目に入ると、NGOメンバーの会場へのアクセスが、極端に制限されるという、異例の措置までとられました。

ハ イレベル会合が始まった2週目、増えつつあったNGOメンバーの会場へのアクセスは9,000人に限られました。事前に団体ごとに厳格に配られた入場パス を持っていても、アクセスが制限され、雪の舞う厳寒の中、10時間以上も会場の外で待たされるという事態の揚句、入場を拒否されるケースが続出したので す。

とりわけ混乱したのは、各国の環境大臣をはじめ、世界の首脳陣が100人以上参加した、最後の3日間です。会場の警備も厳重を極めま したこの3日間、参加可能なNGOのメンバーは、9,000人からさらに90人まで制限され、実質的に、これまでの交渉で大きな役割を果たしてきたNGO が不在という形での会議となってしまいました。

そのような中、コペンハーゲン市内で行なわれたパレードで、一部の参加者が暴徒化するケースが発生しましたが、まるでNGO全体が暴徒化したような報道が日本の一部でなされ、誤解を招いていることは残念でなりません。

現実には、気候変動枠組条約会議の会場に参集して政策提言を続けるNGOのスタッフたちは、理不尽に厳寒の中で待たされる事態にも、辛抱強く対応していたのでした。

そ もそもNGOは、国の利害を超えて地球益のために活動している市民社会の代表であり、これまでの気候変動の会議では重要なステークホルダーとして位置づけ られ、その声は各議長や各国政府の交渉官にも尊重されてきた存在です。そのNGO不在の今回の会議は透明性を欠くものであり、このようなことは繰り返され てはならない事態です。

 

条約AWGおよびCOPでの議論の報告

すべてのドラフト作成は、すべてインフォーマルな場でスタート

AWG LCA初日の2009年12月7日に、会議のクタヤール議長は、今まで5つのコンタクトグループと、6つのワーキンググループに分かれて話し合われてきた内容を、一つのコンタクトグループでまとめて話し合う、と発表しました。

こ れまでは論点ごとにグループに分かれて議論してきましたが、締約国の意見の隔たりがいまだに大きいため、文書は論点ごとにまとめられたノンペーパー(まだ 公的文書になっていないテキスト)の状態だったのです。このペーパーは、2年間の交渉を経てもまだ集約される気配を見せず、合計では200ページにもなる 膨大な文書でした。

この200ページから妥協点を探って、最大着地点を目指しながら数十ページの国際協定に落とし込んでいく作業を、一週間で行なう交渉がスタートしたのです。

もっとも、一つの場に統合されても、200ページものノンペーパーを、実際の協定の下書きに落とし込んでいく作業を、全体会合で行なうことはできません。そこで結局、論点ごとの非公式会合で、ドラフト作りが行なわれることになりました。

翌 日8日から、論点ごとに会合の議長がまとめた、「たたき台」が出始めました。これは、今までの2年間の交渉と異なり、ノンペーパーではなく、ドラフトテキ スト(公的な下書きであると認められたもの)であるため、さまざまな不協和音があちこちで起こりましたが、ともかく、このドラフトを元に、実質的な交渉が スタートしたのです。

会議5日目にAWG LCA クタヤール議長案が提出される

1週目の終わりの金曜日の朝に、AWGLCAのクタヤール議長が、各論点ドラフトの要点を集めてAWGLCAのドラフト統合文書とし、議長案を提出しました。
これが「コペンハーゲン議定書」のドラフトか、という期待と不安が渦巻き、朝からどの締約国も熱心に議長案の吟味に入りました。
WWFも内容の論点ごとに、担当者たちが集まり、一文ずつ文章を検討していきます。クタヤール案に関する交渉は、各締約国の吟味が終わった夕方6時から非公式の形で行なわれました。

この議長案は、一言で言えば、今まで2年間の交渉を反映した、バランスのよいものになっていました。

言葉を選ばずに言えば、「先進国、途上国双方痛み分け」のぎりぎりのラインを保っていた、ように思われる内容です。これは、京都議定書の第2約束期間で「附属書1国(アメリカを除く先進国)は、個別の削減約束を持つこと」を仮定して構成されていました。

先進国の目標は、全体として1990年比で2020年に25%から45%の間で、各国は選択肢で選ぶようになっており、京都議定書に入っていないアメリカは、他の先進国と同じ法的拘束力を持つ削減目標を持つことを定める文言があります。

そして途上国は、成り行きケースよりも15%から30%削減が選択肢に入っていますが、それは先進国の資金と技術援助で行うことになっていました。また、途上国が自主的に行なう削減行動にも言及されていた点が、ポイントの一つとなっていました。

し かし肝心の「資金援助」については、必要な予算額にも触れておらず、「新規で追加的な資金が必要であり、そのために革新的な資金メカニズムが必要になる」 という弱い表現に留まっていました。ただ2010年からすぐに必要となる資金については、新しい合意の附属書に、先進国ごとに資金援助額を書き込む形が整 えられました。

議長案をめぐる論争

12月11日夜の非公式な交渉に続いて行なわれた、12日の公式本会議において、各締約国から、クタヤール案に対する、さまざまな意見が噴出しました。

総じて、ブラジルをはじめとする途上国側は、「不足はあるが、新合意のたたき台としていいスタートだ」と評価。それに対し、EUその他の先進国は、「途上国(特に中国など主要途上国)に有利な内容であり、バランスを欠いている」として、反対に回りました。

WWFから見ると、国内法が上院で可決されることが大きな鍵となる、アメリカを引き込むために必要な要素をぎりぎりで確保し、その他の先進国、途上国には、双方ともに有利・不利な点がバランスよく点在している、と判断しましたが、先進国側からは不満が続出していました。

中でも日本は、締約国が決めるべき合意の形(議定書か、単にCOP決定のセットか、はたまた政治宣言になってしまうのか)について、議長が勝手に京都議定書の存続を前提としたとして、会議場から議長を強く攻撃しました。
AWG KPにおいて、京都議定書の存続に先に合意することに強く反対していた日本政府の態度は、交渉の進展を妨げる恐れがあるものとして、懸念されていました。

議定書AWGおよびCOP/MOPでの議論の報告

今回の議定書AWGは、基本的に、これまでの議論をそのまま継続しました。具体的には、4つの分野が対象となりました。

  • 1つ目は、このAWGの主要議題である先進国の削減目標です。この分野は、削減の「数値」目標を議論するので、通称ナンバーズ(numbers)と呼ばれています。
  • 2 つ目は、先進国が目標達成のために使うことができる柔軟性メカニズム(排出量取引、共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM))、吸収源、そし て、新しい温室効果ガスの種類等についての議論です。これら3つの分野は合わせて、「その他の争点」(Other Issues)と呼ばれていました。
  • 3つ目は、温暖化対策がとられることによって生じうる波及的効果です。これは「潜在的帰結」(potential consequences)と呼ばれました。
  • 4つ目は、議定書の改正に関わるさまざまな法的問題を取り扱う「法的事項」(legal matters)です。

これらの分野ごとに、コンタクト・グループと呼ばれる分科会が作られ、議論が進められました。

ただし、2つ目の「その他の争点」に含まれるメカニズム・吸収源・ガス等の方法論は、個々に大きな論点であったため、実質的には時間を分けて別々の論点として扱われました。
また、4つ目の「法的事項」のグループは、他の分野の議論の中で、必要なときにのみ議論されることになっていました。

以下では、4つの分野のうち日本に特に重要であった、先進国の削減数値目標の議論について解説します。

また2つ目の分野の「その他の争点」のうち、メカニズムに関する議論のみ、別の報告書でより詳細にご紹介します。もちろん、残りの3つの分野も決して重要でなかったわけではありませんが、残念ながら、全ての議論をここでご紹介することはできません。

先進国の削減数値目標の議論

議定書AWGの議論は、4年前に設立された時から、最終的には先進国の目標を決めることを目的として行なわれてきました。その意味では、本来、このプロセスが持つ役割はシンプルなはずです。しかし議論は、4年という時間経過の割にはあまり進んでいません。

前回のバルセロナ会議までに、主要な先進国のほぼ全てが、温室効果ガス排出量削減の中期目標を自主的に発表していました。したがって、個別の国の目標に関して議論を開始しようと思えば、できる状況にはなっていました。

しかし先進国は、この議定書AWGの議論のみが先行してしまうことに、大きな危機感を抱いています。

議 定書AWGの議論は、あくまで「京都議定書に参加している」先進国の目標しか対象にできないため、アメリカの削減目標や途上国の削減行動について議論でき ません。したがって、ここでの議論が先行して、京都議定書に参加している先進国の目標のみが改定されると、アメリカの目標や途上国の削減行動の議論が停滞 してしまう可能性があります。オーストラリア、日本、ニュージーランド、EUなどは、この危機感から議定書AWGの議論を先行させることに消極的でした。

他方、途上国は、ここでの議論が進展すること自体が、先進国が歴史的な責任をきちんと取ることの象徴だ、と考えるようになっていました。また京都議定書の条文自体に、この議論を進めるべき明確な根拠があると、再三に渡って強調してきました。

こうした先進国・途上国の対立は、なかなか解消されないまま、議論の進展を遅々としたものにしていました。

届かない「野心のレベル」

もう1つ、議論の進展を妨げた要因があります。それは、先進国が自主的に発表してきた目標が、途上国が要求していた水準よりはるかに低かったことです。

途上国はこれまで、先進国全体の目標として、2020年までに1990年比で40%以上の削減を主張してきました。小島嶼国連合(AOSIS)や後発開発途上国(LDC)グループは、これより更に踏み込んで、少なくとも45%以上の削減が必要だと主張してきました。

この「40%」という数字の根拠は、IPCCの第4次評価報告書にある、大気中の温室効果ガス濃度を450ppmに抑制するシナリオの上で、先進国に必要な削減幅である「25~40%削減」の上端をとったと理解されています。

一 般的にこのシナリオは、地球の平均気温上昇を産業革命前と比較して「2℃未満」に抑えるのに、必要な水準として理解されています。AOSISやLDCグ ループが主張する「45%」は、さらに踏み込んで、温度上昇を「1.5℃未満」に抑えるために必要なシナリオで必要とされる数値です。

先進国がこれまで自主的に発表した目標は、前提条件が異なったり、EUのように条件づけをしたりしているケースもあるので、全体の目標数値を計算するのは難しくなっています。

し かし、AOSISが行った試算によれば、吸収源を除外した数字では、先進国全体で11~19%の削減にしかなりません。研究機関や研究グループが行ってい る試算も似たようなものが多く、総じて、先進国の「野心」が、途上国が必要と考えるレベルには届かないことは明らかでした。

しかし、先進 国としては、現状で目標を引き上げることは、ほとんどの国にとって選択肢として存在しませんでした(ノルウェーのように、前回の会議で引き上げた国もあり ましたが)。ましてや、巨大排出国のアメリカの目標と一体で議論しなければ、現実的な議論はできないと主張していました。

このように、先 進国の削減目標数値の具体的な議論は、なかなか進められない状況があり、どちらかといえば、削減数値目標そのものに関するよりも、削減数値目標「周辺」の 議論に集中しました。具体的には、前回のバルセロナ会議でも議論になった、基準年や約束期間の長さ、そして、オフセットや吸収源利用の割合に関する議論で す。

基準年

基準年について議論になったのは、1990年を「法的拘束力のある」基準年とするのか、その他の年も基準年の選択肢に入れるのか、という問題です。

日 本やカナダなどは、1990年を「法的拘束力のある」基準年としてしまうと、自国目標の基準年を2005年としているアメリカが参加する障害になると考 え、その他の年も選択できるようにすることを主張しました。これに対し途上国グループは、京都議定書と同じ1990年を、公式基準年とするべきことを主張 しました。

基準年の議論は、理論上はそれほど大きな意味は持たないはずです。

たとえば、「1990年と比較して10%削 減」という目標を、「2005年と比較してX%削減」と換算しなおすことは、データさえあれば容易だからです。またデータの厳格性から見れば、なるべく最 近の年にした方が良いという考え方もあり、実際、先進国はそのように主張します。

しかし、実際にはこれが対立点となるのは、途上国が京都 議定書からの継続を特に重視しており(目標が上がっているのか、下がっているのか、一見して分かるようにという意味で)、先進国が基準年の変更を主張する のは、1990年以降の排出量増加を覆い隠したいと考えているからだ、という不信感を持っているからです。

実際、排出量を1990年から増やしてしまっている日本のような国は、もし基準年を2005年にずらせば、実際の削減量はそのままで、目標数値は大きくなります。

逆に排出量を減らしている国は、実際の削減量は保っても、削減数値が小さくなってしまいます。実質的な削減量に比べ、対外的な「イメージ」は随分と変わります。

日 本にとっては、前政権では2005年を基準として自国目標を発表したため(2005年比15%削減)2005年に固執した面がありましたが、新しい目標は 1990年比25%削減であり、大きな争点にはなりません。しかし上述したように、アメリカの再参加に少しでも障害になりうる争点は外した方がよいという 観点から、2005年も基準年として選択可能な主張をしているようです。

この対立は前回の会議でも見られましたが、結局今回も合意に至りませんでした。

約束期間の長さ

現在、先進国の目標として議論されているものは、全てが「2020年」を目標年次として発表されていますが、実際に各国が削減目標として負うことになる約束の期間の長さは、必ずしも一致するとは限りません。

約束期間の長さについては、5年(2013~2017年)を主張する途上国と、8年(2013~2020年)を主張するEUや日本の間で意見が対立しています。こちらも、前回以前から続いている議論ですが、今回も対立は解消されませんでした。

途上国側が5年にこだわる理由は、京都議定書からの継続を重視するという点と、もう1つは、目標の立て直しのタイミングを早くできるという点があります。既に述べたように、先進国の「野心」はこのまま行けば、あきらかに必要なレベルに達しません。

そ こで、5年という短い時間で、新しい科学的知見を基に目標を強化するタイミングを早く作りたいとの思いが、特にAOSISや後発開発途上国にはありました。2014年にはIPCCの第5次評価報告書が発表される予定になっており、これを議論の根拠とすることを、これらの国々は念頭においています。

他 方、EUや日本などの先進国が8年を主張するのは、第3約束期間の目標を再交渉するまでの期間があまりに短く、現実的でないと考えているからです。 2014年に第5次評価報告書が出たとして、翌年の2015年に交渉を開始しても、決着を2015年中につけなければ、新しい目標を含む合意の、批准に必 要な時間の確保が難しくなります(2016年に必要国が批准完了→2017年発効)。こうした実際上の難しさもあるため、先進国は8年の期間をとるべきと 主張しています。

本質的な意見対立というより、実施上の問題であるため、歩み寄る余地が残されていそうなのですが、他で築いてしまった相互不信もあるせいか、なかなか議論が進まない状況にあります。

オフセット/吸収源の利用割合

先進国が自主的に発表した2020年までの中期目標では、それぞれどれくらい国内で削減し、どれくらいオフセット(海外削減)に頼り、そして、どれくらいを 吸収源に頼るのかの想定がはっきりしていません。独自の想定を置いているため横並びの比較が難しく、目標の適切さが正しく把握しにくい状況があります。

ここから、各国が目標のどれくらいまで国内削減するのかを明らかにすべきだという要求が、主に途上国からあり、その情報を前回から各国が提出し、条約事務局が整理するという流れになっていました。

し かしここにも、オフセットの使用量を事前に確定するのは難しいという国(EUやニュージーランド)や、吸収源のルールによって採用できる数字も変わるとい う国(EU、オーストラリア、ニュージーランド)、国内の議論が進んでおらず、具体的な内訳を決定できていない国(日本)など、さまざまな事情があり、情 報は徐々に出てきてはいるものの、奇麗に比較できる状況にはありません。

表 1は、条約事務局が12月8日の時点で整理した表を転載したものです。吸収源とメカニズムの利用に関する情報は、中身を数字で出している国がある一方、単に使用することを宣言しているだけのところもあり、バラバラです。

表 1:先進国各国の削減目標と吸収源・メカニズム利用の割合

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先進国全体の目標

議定書AWGの議論は、第2週目の半ばからは、多くの会合が非公開で行なわれました。
その中で、上述の3つの論点に関する議論の他に、若干議論があったとされるのが、2020年もしくは第2約束期間の先進国全体の目標に関する議論です。

京都議定書では、先進国は全体として、2008~2012年の第1約束期間の間に、少なくとも1990年比5%の削減をしなければならないと第3条1項に書かれています。先進国全体の削減目標の議論は、具体的には、この条文をどう改正するかという形で行なわれたようです。

しかし、議論は平行線のままで、テキストには他の箇所と同様に複数の選択肢が並列される形となりました。

前 述の通り途上国は、先進国全体で40%以上の削減を求めており、中でもAOSISやLDCグループは45%以上の削減を求めています。交渉途中のテキスト には、この45%削減という数字や、ボリビアなどの国々が求めている2013~2017年に49%削減という数字、EUが提案している30%削減という数 字、そして合意ができていないことを示すX%という標記などが残っています。

余剰割当量(Surplus AAUs)

以上の議論は、過去の会議論点の継続という面が強いのですが、今回新たにクローズアップされた論点もあります。それは、一部の先進国で生じる余剰割当量の扱いという問題です。

ロシアや一部の東欧諸国は、1990年以降の経済停滞により、温室効果ガス排出量が大幅に減っています。この排出量の減少により、これらの国々は特段の対策をとらずとも、京都議定書の目標を達成するどころか、大量の余剰割当量が発生しています。

この余剰割当量は俗に「ホットエア」と呼ばれますが(「ホットエア」には「たわ言」の意味があり、空気(排出量)のエアにかけたもの)、このホットエアを、2013年以降の第2約束期間に持ち越してもよいかという問題です。

こ の余剰割当量の大きさがそれほど大きくなければそれほど問題にはならないのですが、AOSISの試算によると、その量は100億トン(CO2換算)にもの ぼると言われています。100億トンという数字は極めて大きな数字です。日本の年間の排出量が約14億トン、アメリカの年間排出量が約70億トン程度であ ることを考えれば、その影響が極めて大きいというのがわかると思います(ただし、この100億トンは1年間の数字ではなく、第2約束期間全体での量で す)。

これがもし第2約束期間の先進国の目標に使われるようなことがあれば、最悪のケースでは、先進国の排出量は1990年よりも削減どころか増加になってしまうと、AOSISは警告しています。

こ の問題について、具体的にどのような議論がされたのか(あるいはされなかったのか)、残念ながら非公開であったために詳しい様子は分かりません。議論の経 過を示すものとして出てきた文書には、この点についてほとんど語られていません。これは、第1約束期間に作り出された負の遺産が、文字通り第2約束期間に 引き継がれることを意味するため、非常に重要な問題です。

1つの解決策は、余剰割当量を次の期間に持ち越せないようにする("バンキン グ"を禁止する)ことです。ただし、これにはロシアを始めとした国々が当然反対するのに加え、難しい問題も孕んでいます。なぜなら、「ホットエア」のよう に元々の目標が緩すぎて余ってしまった割当量と、目標は適切であり、かつその国が頑張って削減努力をしたが故に割当量が余ったケースとを、客観的に区別す るのが難しいからです。

後者のケースはむしろ奨励されるべきなので、それまで禁止してしまうと、頑張れるはずの国が頑張らなくなってしまうという結果を招いてしまうかもしれません。これには、バンキングはしてもよいが、他国への売却は禁止するなどの形での、対処が必要になるでしょう。

いずれにしても、今回の議論では、この問題については結論を出すことができませんでした。

結末:たどり着けなかった個別の先進国目標についての議論

前節の冒頭で述べたように、議定書AWGの議論は、そもそもこの議論が先行するべきかどうか自体について、先進国と途上国の意見に不一致があり、議論の「本丸」である個別の先進国目標の議論まではたどり着きませんでした。

途 上国側は、当然、この議論に到達することを望んでいたわけですが、先進国側としては、条約AWGの議論との統合が図れない現状で、こちらの議論を先行させ るわけにはいかないので、両者の主張は真っ向から対立してしまっています。その対立を解消できないまま、時間切れとなってしまいました。

本来ならば、第2週目の前半で議定書AWGには一応の結論が得られ、その結論がCOP/MOPに報告された後、COP/MOPが何らかの決定を下す、というのが形式上の理想型でした。

しかし現実には、一応、議定書AWGは第2週目の水曜日に終了し、その結果はCOP/MOPの総会で報告されたものの、中身はとても決定に繋げられる段階ではなかったので、実質的な議論は以下のように、再び議定書AWGと同じ枠組みで続けられました。

議長国のデンマークは、議定書AWGおよび条約AWGの議論をベースに、独自の新しい合意文書案を出したいと考えていたようでした。しかし、その「案」の作成を一部の国々の間で行なったことで、途上国の一部からはプロセスが不透明だという非難の声が挙がってしまいました。

そして結局、議長国としての「案」は公式に提示されることはなく、あくまで議定書AWGおよび条約AWGの既存の文書をベースに議論は進められるべき、という多くの途上国の主張が通りました。

これにより、COP/MOPの議長であるデンマークのラスムセン首相は、第2週目の木曜日(17日)、条約AWGと議定書AWGそれぞれのテキストを引き続き議論する、コンタクト・グループを作ることを宣言しました。

そこで議定書AWG側のコンタクト・グループにおいて、再び、1)先進国の目標、2)吸収源、3)メカニズム、4)新しいガス等の方法論、5)潜在的帰結という5つの分野について、ドラフティング・グループと呼ばれる作業部会を作り、議論をすることになりました。

このグループで非公式に議論は継続されましたが、どの論点も合意を得ることはできませんでした。この後の議論をどの形でやっていくのかの検討も行なわれましたが、議論はきれいな決着を見ないまま、次回に全てが持ち越しになってしまいました。

し たがって、形式上は議定書AWGが継続することになっており、議論のベースは、16日の段階で報告されたFCCC/KP/AWG/2009/L.15とい う文書になると考えられます。しかし、上述のように、議定書AWGがCOP/MOPに公式報告をした後にも議論は継続したため、実際の交渉官の手元には、 また別のテキストが存在しているかもしれません。

今後、どのような議論が、何に基づいて行なわれるかはっきりしないまま、議定書AWGとCOP/MOPは終了したことになります。

コペンハーゲン合意に至るまでの会議の経過

今回の会議の進行は、まずAWGLCAとAWGKPが1週目に行なわれ、その結果報告(ドラフト)をCOPとCMPが2週目の2日目に受け取って採択します。
交渉官レベルで決められなかった内容は、ドラフトの中でカッコつきで選択できるように入っており、2週目の3日目から始まるハイレベル会合(通常は環境大臣レベル)でカッコの中から選択し、最終的にCOPとCMPで、コペンハーゲンの決定として採択されるはずでした。

さらに今回のコペンハーゲンでは、環境大臣レベルでは決められない内容を含むことになるので、最終3日間には、アメリカのオバマ大統領や日本の鳩山首相、中国温家宝首相など世界の首脳陣100人以上が集結して、最後の判断を下すことになっていました。

プロセスの不備:一週目の終わりに募ったCOP15議長国に対する不信感

コペンハーゲン会議の総議長はデンマークの気候変動エネルギー相のコニー・ヘデガー氏でしたが、デンマーク首相であるラスムセン氏は、国連の交渉外で、事前に決着点を 図っているとうわさされていました。実際に、コペンハーゲン会議の事前会合で、ラスムセン首相は、ラスムセン案を数カ国に示したようで、会議のホスト国か らの首相案とあって、WWFも不透明なプロセスに懸念をもちながら、内容を追いかけていました。

内容は、当初から法的拘束力のある議定書 をあきらめて「政治合意」を目指したもので、他国から非難を浴びては、少しずつ形を変えてきたようですが、2050年に世界全体で50%削減を目指し、先 進国は80%削減など、今までG8などで宣言された内容を繰り返しているだけで、野心的な内容とはなっていなかったようでした。

何より、国連の場で世界190カ国あまりが2年もかかって交渉してきたプロセスを全く無視して、議長国の首相がごく狭い範囲で交渉し合意案を持ってくることは、国連プロセスそのものを軽視していることになります。

結局、イギリスのガーディアン紙が、12月8日に、どこかから手に入れたラスムセン案を暴露してしまい、世界に知られることとなりました。
当然、締約国のほとんどは、交渉プロセスを飛ばして合意案を出す議長国に対して不快感を示し、ラスムセン首相は、翌日になって、「そんな文書は存在しない」と、ラスムセン案そのものの存在を否定する発表をする羽目となりました。

会議1週目にして、議長国が信頼を失ってしまったこの残念な出来事で、コペンハーゲン会議の間中、不信感が尾を引く結果となってしまいました。

AWGLCAとAWGKPの結果報告がされるまで

ツバルをはじめとする島嶼国と後発開発途上国の必死の交渉

ツバルは会議当初から、「G77+中国」の途上国の一員の結束を破ってでも、より野心的な協定をコペンハーゲンで確保することにかけてきました。第一週目の 終わり、AWGLCAとAWGKの結果報告をするためのCOPとCMPの本会議で、途上国側のタブーであった提案を行いました。 

ツバルは小さな島国で、国土の消滅の危機に瀕して、もっとも気候変動の影響を受けている島嶼国の一つです。今までも2度未満をめざすのではなく、1,5度未満をめざすべき、など、最新の科学に基づいた真の温暖化対策を主張してきました。
この集大成となるべきコペンハーゲン会議において、ツバルは、新しい議定書の採択を目指して、それを話し合うべきコンタクト・グループの設置を提案したのです。

これは途上国に新たな義務が課せられる可能性を持つ、新議定書の誕生を強く嫌っている途上国側からでる提案としては、衝撃的な出来事でした。
会議場は水を打ったようにシーンとなって、ツバルの発表が終わった後は、大きな拍手が沸きあがりました。しかし、当然、中国、ブラジル、インドなどの途上国の大国は大反対。本会議場ではめったに見られない途上国対途上国の戦いが繰り広げられました。

ツバルの交渉官は、この国際交渉を京都議定書のときからフォローしている有名な交渉官イアン・フレミング。大国途上国の攻撃にもひるむことなく、堂々と、真に野心的な合意を目指す持論を展開していきました。

続いて行なわれた京都議定書の本会議でも、ツバルは、世界の30%の排出量しかカバーしていない京都議定書を強化するための、改定京都議定書を話し合うコンタクト・グループの設置を主張しました。こちらも当然物議をかもしました。

以上二つのコンタクト・グループの提案は、いずれも大きな反対を受け、会議は進まなくなってしまいました。結局、総議長であるデンマーク気候変動エネルギー相コニー・ヘデガーは、ツバルの提案を話し合うことを先送りし、非公式に話し合うこととして、会議は中断しました。

世界の市民社会は、国益優先の先進国の態度に対し、途上国内の亀裂をも恐れず、野心的な協定の合意を主張するツバルの姿に大いに感銘を受けました。
今回の会議では国際交渉でヒーローとなった国に贈る「本日の宝石賞」を新設しており、栄えある第一回「本日の宝石賞」はツバルに贈られ、ツバルの真のリーダーシップに世界の400NGOは、最大限の賞賛を贈ったのでした。

しかし、ツバルの思惑は新興途上国には受け入れがたく、究極の善意の提案は、むしろ2週目に入って時間がなくなったCOPとCMPの議論をストップさせてしまう事態に発展してしまいました。
ヘデゴー議長に対しあくまでも強くコンタクト・グループの設置を要求し続けたツバルは、議事の進行を妨げるとして非難が集中したようで、2回目に開催され たCOPの場でヘデゴー議長に対し、「ツバルは議事の進行を妨げ、ヘデゴー議長を困らせるために提案を行ったのではない。真に海に沈みゆく祖国を憂えてい るのであり、祖国を救う合意を持ち帰りたいという一心なのだということを理解してほしい」と涙ながらに訴える場面もありました。

宙に浮いたAWGLCAとAWGKPの結果

ツバルの抗議もあってヘデゴー議長の議事進行が進まない中、突然議長の交代が発表されました。
表向きは首脳陣が参加する会議となるので、議長も環境大臣レベルではなく、一国の首相レベルであるべきということで、ヘデゴー大臣からラスムセン首相に交代しました。

しかし、1週目ですでに締約国に、透明性に疑念を抱かせているラスムセンに対し、議事は進まず本会議も開かれず、結局2週目の2日目には、非公式会合も開かれている気配が止み、いったい今AWGの議論はどうなっているのか、よくわからないままとなってしまいました。

結局AWGLCAのクタヤール議長は、単にAWGLCAを予定通り終わらせてCOPの報告へ上げることを優先し、カッコだらけのドラフトのまま2週目の2日目に結果を採択し、そのままCOPへとあげてしまったのです。
そのような中、各国の環境大臣が到着し、別会場で大臣の演説が延々続き、会議は分断されたまま、首脳級レベルの会合へと突入していきました。

ハイレベル会合から首脳陣会合による合意に至るまで

今回の会議はどこで議論が行われているのが、大変見えにくい会議でした。
本来中心になるべく、2年間交渉が続けられていたAWGLCAとAWGKPは、多くのカッコがついたドラフトをあわただしく採択して終わり、大臣たちは別会場で演説しながら、COPとCMPの本会議に参加して発言していました。

そして本当の交渉は、首脳陣が到着してから、大量排出国と主要な国々、それに地域グループの代表からなる20数カ国の首脳だけで、密室の合意案作成交渉として始まりました。

最終日2日前からドラフト案を漏れ聞いていましたが、そのドラフトは、めまぐるしく書き換えられていった模様で、次々と弱められてあとからあとから出てきました。

当初は、法的拘束力のある協定をなるべく早く作るという文言が入っていたり、2050年に世界全体で半減、先進国で80%削減、さらに先進国からの短期の資金援助は各国別に附属書に書き込むなどの案がはいっていましたが、次々と抜け落ちていきました。

密室の中のトップレベルの交渉なので、誰がどのように反対してこのテキストになったのか、表には出てきませんが、噂としてもれ聞こえた内容を記しておきます。

コペンハーゲン合意が本会議場に出てきた後に巻き起こった大反対

なんとか妥協の産物であるコペンハーゲン合意が首脳陣の手によってまとめられ、最終日の18日金曜日、首脳は続々と帰国の途につきました。

そして、コペンハーゲン合意のドラフトは、ラスムセン議長によって、他の160カ国が待つCOPの本会議へと持ち込まれました。

しかし、ここでもデンマークは議事運営の不備を露呈しました。他の160カ国に対し、たった1時間でこのドラフトに目を通して賛成するかどうかを決めろ、と迫ったのです。
時間が無いのでやむをえないところもありましたが、やはり結果は思わしくないものとなりました。案作成にかかわれなかった他の160カ国の一部は、その場で強く抗議し、会議は延長して続けられることになったのです。

こうして、さらに時間の猶予が与えられました。
その後再開されたCOPの本会議において、まずツバルが「これはツバルの存続を脅かす内容である」として、受け入れ拒否を表明しました。

このコペンハーゲン合意の中に2010年かから2012年にすぐに300億ドルの援助が入っていることに対し、ベテラン交渉官イアン・フレミング゙は、「ツバルの未来は売り物ではない」と演説し、会場から感動の拍手を誘っていました。

そ の後も途上国は次々と拒否を表明しましたが、中でもスーダンは、このコペンハーゲン合意を「ナチスのホロコーストにたとえ、アフリカを大量虐殺するもの だ」とまで激しい言葉を使って糾弾し、「いくらなんでもいいすぎだ」といっせいに先進国、途上国双方から反発を浴びました。

スーダンは、この会期中ずっとこのような眉をひそめさせる発言を繰り返しており、主張はともかく、コペンハーゲンでの合意を妨害する明確な意図があるようにまで感じられました。
またベネズエラなどラテンアメリカ諸国の一部も強く反対し、ぎりぎりの妥協の産物であるコペンハーゲン合意ですら採択されず、会議は決裂するのかと、議場は絶望に包まれました。

会 議は夜を徹して行われ、交渉官たちが絶望で顔を覆う中、激しい言葉の応酬が繰り広げられました。いらだったイギリスのミリバンド大臣は、「これは少なくと も温暖化交渉を前へ進める合意であり、これに合意すれば、たった今から必要な資金が途上国へ流れるのである。受け入れなければ資金も流れない」と発言し、 途上国の賛同を買収するつもりかと、また反発を強められる場面さえありました。

また島嶼国内でも意見が分かれ、グレナダは島嶼国を代表し て(グレナダは案作成に加わっていた)、「このコペンハーゲン合意は確かにあまりにも弱いもので、私たちの必死の交渉を考えると忸怩たる思いがある。しか しこれが唯一の今回の交渉の成果なのである。だからどんなにつらくとも受け入れて、ここから前へ進めていこう」と必死で、仲間に訴えました。

そ の後、話し合いが行なわれた模様で、最終的には、ツバルも「とてもつらいが、決裂よりもこれを受け入れて、前へ進んでいくほうを選ぶ」として、賛同に回っ たのです。島嶼国の主張していた1.5度未満に気温上昇を抑える可能性は、コペンハーゲン合意の最後に、レビューのときの考慮として付け加えられることで 決着しました。

最終的にコペンハーゲン合意は、各国の主張を少しずつ取り入れて、なんとか採択に持ち込めるかと思われましたが、スーダン やベネズエラが相変わらず強く反対し、ラスムセン首相はとうとう全会一致が必要な採択をあきらめ、賛同する国だけが「留意する」という形での決着を図りま した。ラスムセン首相は、二晩を徹しての交渉に最後まで付き合うこともできず、途中から議長は副議長に交代しました。

第2週目に、2年間締約国の根回しを丁寧に行ってきたヘデゴー氏が、突然降板してから全く姿を見せなくなり、また交代したラスムセン首相も最後は顔を見せず、本会議は首脳陣も帰国したあとに、疲れ切った交渉官が詰まった会議場で粛々と行なわれました。

最後の最後に、コペンハーゲン合意は、賛同する国だけが1月31日までに「留意する」リストに名を連ねることになり、コペンハーゲン会議は、会議延長の翌日午後3時になってようやく幕を閉じたのです。

バリ行動計画から2年間に渡って続けられてきた交渉の、あまりにも弱い結末に、WWFのスタッフたちもすっかり肩を落としてしまいました。しかし、2010年末のメキシコ会議まで交渉が続けられる今、再び地球が必要とする強い国際協定をめざしての挑戦が続きます。


COP15:コペンハーゲン合意について(2009年12月21日)

コペンハーゲン合意 全文

コペンハーゲン合意(Copenhagen Accord)の主な内容

  • IPCCのAR4の科学的知見を踏まえ、世界の気温上昇が2℃を下回るべきと認識し、世界の排出量を大幅に削減する必要があることに合意。
  • 適応とリスポンスメジャースはすべての国に対する挑戦。特に後発開発途上国や小島嶼国における適応が急務であること。
  • 先進国(附属書Ⅰ国)は、2020年に全体または個別に、経済全体に対する削減目標を実施することとし、2010年1月31日までに附属書1に記載するべく提出する。京都議定書の批准国は、京都議定書の目標を更に強化する。削減目標の実施状況と途上国に対する資金援助は、COPにより測定・報告・検証(MRV)される。
  • 途上国(非附属書Ⅰ国)は、削減行動を実施することとし、2010年1月31日までに、附属書2に記載するべく提出する。削減行動は、国内のMRVを経て、結果は2年に1回の国別報告書で通報され、国際的な協議や分析も行われる。支援を受ける削減行動については、関連する技術・資金・キャパシティビルディングと合わせてレジストリ(登録簿)に記録し、附属書2のリストに追加記載され、国際的なMRVを受けることとする。
  • 先進国は、2010~12年の間に300億ドルの新規かつ追加的な資金による支援を行い、また2020 年までに、先進国合同で年間1,000 億ドルの資金を目指して、途上国の需要に応えるべく動員することを約束する。
  • COPの下にハイレベルパネルを設立し、このゴールを満たすために、代替的な資金ソースを含む資金源を検討する。
  • REDDplus、適応、キャパビル、技術開発と移転を含む、途上国における緩和に関する政策や活動を支援する、条約の下における資金メカニズムの運営組織として、「コペンハーゲン・グリーン気候基金」を設立する。
  • 2015年までに、条約の究極の目標を含んで、本合意の実施の評価をする。それには、1.5℃の気温上昇に関連するものを含む、科学が示す様々な事柄を参照し、長期目標の強化の検討を含む。

解説

コペンハーゲン合意(以降CAと記す)の意味するところ

1. CAの位置づけと「留意する」の意味について

1-1. CAは、正式にはUNFCCC外の文書。

【解説】「採択する(ADOPT)」ではなく、「留意する(TAKE NOTE)」とされたCAは、COP決定として採択されたものではない。したがって正式な位置づけはUNFCCC外の文書となる。次の会議において、CAを交渉文書の下地としていけるかどうかも、未知数である。CAを交渉の下地とすることは、各締約国が賛同すれば可能となるが、まずはその話し合いから必要となることになる。

1-2. 賛同する締約国だけがリストに名を連ねる。

【解説】気候変動枠組条約ではコンセンサス方式であるため、最後にわずか数カ国の反対で採択されなかったCAは、賛同する国だけが、CAの最初のページに名を連ねることで、かろうじて会議の決裂を免れたというところである。しかし、多くの締約国が賛同すれば、それだけCAの政治的価値はあがると考えられる。

 

2. 先進国の削減目標と途上国の削減行動について

2-1. アメリカを含む先進国が、国別に付表に総量目標を書き記すことになった。

【解説】 CAでは、先進国が、国別総量目標を付表に書き込むことになっている。この先進国にはアメリカも含まれる。今までは、各国が自主的に発表した目標に過ぎなかったものが、付表に目標が記載されることによって、国際的な約束へと位置づけられたといえる。しかし、CA自体には法的拘束力はなく、したがって目標達成へ向けた推進力は弱い。
また、最大の欠点は、各国それぞれの自主目標を国際的に約束するボトムアップであるため、科学が必要とする削減幅へ向けた、交渉そのものが行われない形であること。したがってCAをベースとするなら、国連の交渉の場に持ち込み、科学の示す幅とのギャップを埋めなければならない。

2-2. 途上国がはじめて削減行動を国際的に示すことになった。

【解説】コペンハーゲン会議の前に、ブラジル、中国、インドと、相次いで2020年の国内目標を発表していた。自主目標とはいえ、途上国が削減行動を国際的な合意の中に書き込むことに賛同したのは、今までのかたくなな態度を思えば、歴史的な転換ともいえる。ただし、新興国(or中国)は、CAの中に、いずれ法的拘束力を持つ協定となる、という文章が入ることを強く拒んだと伝えられており、今後法的拘束力が確保されるか不透明である。

2-3. 途上国の国内削減努力分も、国際的に報告されることになった。

【解説】今回の争点の一つとして、先進国(特にアメリカ)がこだわったのが、途上国における国内削減努力を国際的に算定、報告、検証させることであった。そもそも主要途上国は、自助努力で削減を進めるべきと考える先進国側は、強く自助努力の透明化を要求したのである。それに対し途上国側は、先進国からの資金と技術援助を受けて行う削減行動分については、国際的な算定、報告、検証に応じながら、自助努力分を国際的に算定、報告、検証されることには強く抵抗してきた。今回のCAでは、国内自助削減分は、途上国内だけで、算定、報告、検証することになったが、2年ごとに国連に提出される国家報告書(排出量の報告書)でもその結果を報告することになり、COPで合意された国際的なコンサルテーションと分析の対象となった。これはアメリカ(及び日本を含む他の先進国)の望むぎりぎりのラインをなんとか確保したといえる。

2-4. 先進国の削減目標と、途上国の削減行動の結果は、COPによって確立される(既存も含む)ガイドラインによって、算定、報告、検証がされる。

【解説】これで、少なくとも先進国、途上国それぞれに統一された算定スタンダードが確立されるので、基準年も目標も使用する目標達成手法もばらばらの各締約国の、削減の野心レベルが比較できる可能性が高い。ボトムアップの目標の積み上げにとどまっている現状で、野心のレベルが比較できることは、今後の目標引き上げの交渉に有効なツールとなるので、2010年に早急に確立していくべき課題である。

3. 途上国への資金について
3-1. 新規で追加的な資金を途上国へ提供する。先進国合同で、2010~2012年に300億ドルと、2020年までに毎年1000億ドル動員するというゴールを約束する。

【解説】今まで交渉官レベルでは口の端にも上らなかった資金規模が、首脳レベルの合意ではじめて国際的に言及されたことの意義は大きい。また2010年から2012年に数百億ドル、2020年に1000億ドルという資金の水準は、理想的とは言わないまでも、それなりの意義を認めることができる水準である。しかし、詳細が明らかではないために評価が難しい部分もある。
特に2010年から2012年の資金に関して、資金が真に新規で追加的な資金であるかどうか、単にすでに約束された資金のリサイクルでないかを見極める必要がある。2020年の資金は1000億ドルを動員するという約束であるため、特に気候変動の影響に脆弱な途上国に、必要な公的資金がどの程度カバーされるのか(カーボンマーケットからの資金が大部分であったりしないかなど)、詳細をつめていく必要がある。

3-2. 先進国からの資金援助は、COPによって確立される(既存も含む)ガイドラインによって、算定、報告、検証される(4)

【解説】先進国からの資金援助が算定、報告、検証されることは、途上国が強く望んできたことであり、バリ行動計画に沿った内容である。詳細は未定である。

3-3. ガバナンスについての「ハイレベルパネル」が、COPからのガイダンスとCOPへの説明責任を持って設立され、「コペンハーゲン・グリーン気候ファンド」が、条約の下の運営組織をもった資金メカニズムとして設立される。(9,10)

【解説】COPの下に新たに設立されることは評価できるが(次回開催国のメキシコの資金提案を考慮した?)、ガバナンスを従来の世銀などにまかせたい先進国と、途上国側の意向を対等に扱う新組織を立ち上げたい途上国のギャップはすべてあいまいなままであり、今後にゆだねられている。

コペンハーゲン合意:全体評価

そもそも会議最終日3日前に出たCAのドラフトは、もっと強いものであった。
「法的拘束力のある協定を(一つ、あるいは複数)採択すると硬く決意することを確認し、この決定はなるべく早く、遅くともCOP16/CMP6とする。」と入っていたのである。
それがまず数カ国の首脳会談中に落ちてしまった。しかも最終的には数カ国の反対でCOP決定として採択すらされずに、かろうじてCOPが「留意する」という形で決裂を免れた。

結果としてCAは、正式にはUNFCCCの枠外に追いやられ、同意する国だけの政治合意と位置づけられることとなった。COP決定として採択されていれば、今後のUNFCCCの交渉のベースとなっていただろうが、今後どのように扱っていくのか、あいまいなままである。

また当初は、2050年に世界全体で排出量を半減、先進国は80%削減と入っていたが、それも抜け落ちている。

一方、先進国、途上国双方の国別目標、あるいは削減行動が国際的に示され、統一した算定ルールが確立され、途上国の自助努力も一定の透明性を確保し、また資金援助の額と資金の使い方が算定・報告・検証されることを定めているのは評価できる内容であり、コペンハーゲンにおいて、HOSレベルにおいてのみ妥協したとはいえ、合意できた点は評価できると考えられる。

つまりCAは、ほぼすべての締約国が賛同し、UNFCCCの交渉のベースとされ、あいまいなままの上記の点に真に野心的な肉付けをしていくならば、次のメキシコにおけるCOP16において、野心的な協定になりうる文書になっていると言える。と同時にCAは、政治合意に過ぎず、法的拘束力のある協定になる約束もなく、非常に荒い骨組みでしかないので、全く約束が果たされない弱い合意になりうる可能性もあるのである。
すべては今後の締約国の政治的意思にかかっている。

今後のプロセスの注目点

1. 1月31日:各国が数値目標を(提出先は国連か?提出先すらあいまいなままで、1月中に締約国と条約事務局が話し合うと思われる)提出する期限である1月31日が一つの試金石。

何カ国が賛同するか?

  • まずは、何カ国が留意するか、会議の最終日に反対したスーダンなどの数カ国を除いて、ほぼすべての締約国が留意したならば、CAの価値は高まることになり、交渉の下地となりうる可能性が高くなるだろう。
  • 1月31日、先進国、主な途上国の双方が、きちっと国別削減目標及び削減行動を書き込んでくるか。それがCAに対する各国の真剣度を測る尺度ともなり、CAの"政治的拘束力"を高めることになる。
  • 個別の注目点は、日本は国内の反対派の声に屈することなく、2020年25%削減目標を後退させずに国際的に約束できるか。またコペンハーゲン会議において、ついに野心のレベルをあげなかったEU(20%から30%へ)とオーストラリア(5~15%から25%へ)が、1月31日に目標を引き上げることができるか。

2. 6月SB(2010年5月31日~6月11日)

  • CAをUNFCCCの交渉の下地とすることが確保されているか。2010年は、6月と12月の通常会議以外に、今のところ中間会合の開催は決まっていない。2010年の最初の会議は、6月となる可能性が高く、ここではじめてCAの位置づけを議論すると思われる。CAをUNFCCCに持ち込み、UNFCCCの交渉プロセスがメインであることを確認することが大切である。また、メキシコにおいて法的拘束力のある協定に合意すべく、議論の方向性を絞ることが望まれる。
  • アメリカが中間選挙(2010年11月)の前に、上院において、法的拘束力のある数値目標が入った、温暖化法案を可決できているかどうか。温暖化法案が上院で可決されれば、アメリカは国際的に次期枠組みにおいて同等の約束を行うことが確実になると思われ、他の締約国に安心感を与え、交渉を前進させることにつながる。

3. 9月/10月ごろ

  • 12月のメキシコにおけるCOP16に向けて、交渉を加速するべく中間会合が開催されることになっているか。

4. 11月/12月 メキシコCOP16

  • 次のホスト国で、重大な役割を果たすメキシコが、2010年の前半から積極的に交渉をまとめようと動いているか。

COP15会議報告:ハイレベル会合の結果(2009年12月19日)

今回のコペンハーゲン会議(COP15/COPMOP5)の会期は、2009年12月7日から2週間行なわれ、2週目に来る大臣級のハイレベル会合までに、事務レベルで技術的なところはまとめておき、最後の判断をハイレベル会合にゆだねる形で進められました。

米中の歩み寄り

まずイギリスのブラウン首相が12月16日に会場に入り、翌日は日本の鳩山首相、中国の温家宝首相など続々と入ってきました。
最終日の18日には、アメリカのオバマ大統領が登場。デンマークのラスムセン首相を中心に、20数カ国の首脳が集まって、コペンハーゲンで採択すべきドラフトの議論に入りました。

そして、18日の終わりになって、帰国を延ばしたオバマ大統領が、最後に自ら手を入れたドラフトが出来上がりました。
その内容は、基本的にすでに各国が発表していたものを並べたものとなっていましたが、歴史的に排出責任のある先進国からの途上国の適応と緩和に必要な資金について、2012年までに先進国は300億ドル、2020年には1000億ドル単位で供与することを努力するという文面が入り、今までの事務官レベルの交渉では絶対に入らなかった資金規模が文面に入りました。

また、先進国、特にアメリカが中国に対して強く望んでいた、途上国の削減行動の結果を国際的に明らかにすることについても、中国からの譲歩があり、個別の先進国の削減目標を書き込んだ附属書と、途上国の自主的な削減目標を書き込んだ附属書がつき、短期の資金の約束も明記された附属書が続く形となりました。
一番大きな対立点について、なんとか妥協を見出し、宣言文書の体裁にこぎつけた形となったのです。

先送りされた議定書

しかし、肝心の法的拘束力を持つ議定書になるかどうかは、先送りされてしまいました。
宣言文書のまとめを手がけた20数カ国に対し、他の国々が強く反発したためです。

弱いながらも世界の首脳が話し合ってまとめた宣言文書が出来上がり、交渉は終わるかと思われた最終日の夜のことです。この宣言が、世界の有力国20数カ国だけでまとめられたことに対し、他の国々の間から、プロセスに対する不満が噴出。192カ国が参加する本会議の場で、文書は受け入れられず、会議は紛糾してしまいました。首脳陣がすでに、帰国の途についた後の出来事です。

こうして、18日の夜を徹して、19日の午後まで継続して続けられた会議で、文書の内容は、結局さらに弱められ、会議での正式な決定としても採択されず、各締約国がこの文書を「take note」(留意する)という表現だけにとどまってしまいました。しかも、この文書を支持する国だけが、リストを作り、名前を載せる、という、とても国際的な合意からは遠い形のものです。

そして、メキシコへ

午後4時にはとっぷりと暮れたコペンハーゲン。
ここでは非常に珍しいという雪に覆われたこの町で、流れる川もすっかり凍りつき、氷点下の風が吹きすさぶ中、2年間にわたった交渉の末、手にした結果の有り様に、世界から集まったNGOのメンバー、市民の代表たちは、すっかり肩を落としてしまいました。

世界の190カ国が集まり、国連のルールである、全会一致で行なわれる国際交渉の難しさを、誰もが改めてかみしめました。

しかし、温暖化との戦いはまだ続きます。
今回の会議の結果を受け、国際交渉は、2010年末に予定されている、メキシコ会議(COP16/COPMOP6)まで続けられることになりました。
再び地球が、未来の世代が必要とする、世界の強い協力と約束を目指した道のりが続きます。


記者発表資料 2009年12月19日

COP15:コペンハーゲン協定:内容が曖昧で不十分な文書

【デンマーク、コペンハーゲン】国連気候変動コペンハーゲン会議は、危険な気候変動に対処する上で、あまりにも貧弱な結果に終わり、完全な失敗の一歩手前であるとWWFは考える。

WWFの気候変動プログラム・リーダーのキム・カーステンセンは言う。
「コペンハーゲンは、リーダーシップの乏しさと、信じられないような野心レベルの低さによって、失敗の一歩手前の結果となった」

「志はよくても及び腰の約束では、われわれの地球を危険な気候変動から守るには、断じて不十分である。豊かな国々と貧しい国々が、従来にない全く新しい方法で協力しないと、この危機は乗り越えられない」

世界の政治家たちは、気候変動の深刻な悪影響を避ける上で、平均気温の上昇を2度未満に抑えることに対して、理屈の上では合意しているように見える。しかし、実際には、世界のリーダーたちが提示した削減目標を足し合わせると、WWFの推計では、3度またはそれ以上の気温上昇につながるものである。

「発言と実際の行動(気候変動対策)との食い違いによって、数百万人の生命と、数千億ドルの資金、そして多くの機会損失が、左右されるのである。今後は、内容が曖昧なコペンハーゲン協定の詳細を書き入れていく交渉作業へと注力していかなくてはならない。また、より前向きな方向性として、低炭素経済の構築に動き出している国々や都市、企業、地域社会による様々な取り組みへの注力も重要である」

WWFが作成した、10のポイントで会議の成功を判断するスコアカードを基に、今回の会議結果を分析すると、平均気温の上昇を2度未満に抑える目的を満たす上で必要となるポイントのどれもが(一部の部分的合致を除き)満たされることがなかった。

コペンハーゲン協定の草案は、確固たる気候変動対策に必要な法的拘束力のある枠組みへと発展させていくには、長い道のりが必要である。

「議定書は、今この場で必要なものであった。遅くとも今後半年の間にその実現を目指していく」とキム・カーステンセンは言う。

「(2007年12月のバリ会議から)2年間の交渉の末に、われわれが手にしたものは、内容が曖昧で不十分な文書である。米国の気候変動法案成立と途上国に対する資金援助開始の可能性を除き、実効性のある気候変動対策に妨げとなっている政治的な障害は全く解決されなかった」

内容が曖昧というのは、たとえば、世界の排出のピークアウト(増加から減少に転じさせること)の年を、「なるべく早く」という言葉であらわしていることに象徴される。2007年のIPCC第4次評価報告書が、2017年までのピークアウトの必要性を示しているにもかかわらず。

排出削減の約束は、依然として必要とされるレベルをはるかに下回っている。リークされた条約事務局の分析によると、数多くの抜け穴(森林吸収源やCDMオフセット他)が全く起こらないと仮定しても、このギャップによって、気温上昇は3度に達してしまうと示されている。

「われわれは非常に落胆しているが、まだまだ戦いは続く」とキム・カーステンセンは言う。「市民社会は、今回の最終交渉の場から、全くといっていいほど締め出されてしまった。最後になるほど、その程度はひどくなった。
WWFは、市民社会とともに、今後継続される交渉の全てに関与していくことを、世界に約束する」


気候変動との戦いに人々の声を!ピープルズ・オーブのメッセージ(2009年12月16日)

世界的な消灯キャンペーン「アース・アワー (Earth Hour)」のスペシャルイベント「ホーペンハーゲン」が、国連気候変動会議(COP15)の開催中のコペンハーゲンで行なわれました。午後7時から約1時間の消灯が終わり、明かりが戻された時、国際連合のビジェイ・ナンビアール官房長は「気候変動問題は、私たち一人ひとりにとっては、大きすぎる問題かもしれません。しかし、私たちが力を合わせれば、乗り越えられるでしょう」と述べました。

手渡されたピープルズ・オーブ

女の子から国連事務総長代理に手渡された ピープルズ・オーブ

「ホーペンハーゲン(Hopenhagen:Hope=希望とCopenhagenをかけた造語)」は、2009年3月に世界の88カ国、4000の都市や町から数百万人が参加し、温暖化防止へ積極的な取り組みを呼びかけた、WWFのグローバル・キャンペーン「アース・アワー」を再現したものです。 2009年12月16日、コペンハーゲンでこのイベントが行なわれた際、WWFインターナショナル事務局長のジェームズ・リープと、デンマーク出身の10歳の少女、アン・カトリンは、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の代理としてこのイベントに参加していたビジェイ・ナンビアール氏に、キラキラと輝く地球を象徴した銀色の球体「ピープルズ・オーブ(The People's Orb)」を手渡しました。

子どもたちとパンダによるパレードも行なわれた

この「ピープルズ・オーブ」は、地球温暖化への対策に関する世界的な取り決めが、コペンハーゲンで合意されるよう、さまざまな気候や環境の下で暮らす、世界中の全ての大陸の人々からの、希望、夢、そして彼らの経験が、350ギガバイトのデータとして込められています。

ここには、「350.org(350ドットオルグ)」や「tcktcktck(チクタク)」、そして、WWFの「ボート・アース(Vote Earth)」キャンペーンを通じ、世界中から集められた、何百万人もの人々の署名などが入っています。
いわば、さまざまな温暖化防止を求めるキャンペーンのパワーが集結したシンボルです。

オーストラリアのシドニーからスタートし、たくさんの人々の手により、世界中をリレーしてきたオーブは、温暖化対策として鉄道の利用をアピールする「The Climate Express(気候特急)」で、コペンハーゲンに到着しました。

ビジェイ・ナンビアール氏は、会場のシティホールスクエアに集まった家族連れやメディア、そして政治家を前に、「世界中の人々の気候変動問題への熱意が、私に希望を与えてくれました。このオーブとみなさんの声で、世界のリーダーたちに地球とそこに住む人々を守ってくれるように求めます。コペンハーゲンが、世界が一丸となり地球を新しい希望の時代へと導いた場所となるよう、力を合わせましょう」とスピーチしました。

地球温暖化の問題は、これまで長い間議論され続けてきました。そして今、人類がどのような決断をするのかが、問われようとしています。

世界の人々が自信を持って、自分たちが地球を守り、地球がより安全でクリーンで、健全な未来へと向かっているのだと感じられるような決断を、私たちは世界のリーダーに向かって訴えてゆかねばなりません。

「Vote Earth」キャンペーンについて

「Vote Earth」は、「Earth Hour(アース・アワー)」に参加した何百万という人々、企業や団体が、コペンハーゲン国連気候変動会議(COP15)で、温暖化防止のための新たな合意が交わされるよう、世界のリーダーたちに訴えるキャンペーンです。世界中から約560万票のVoteが集まりました。


COP15:各国が提案している削減目標ではまだ足りない!?(2009年12月18日)

デンマークのコペンハーゲンで開かれている、気候変動枠組み条約会議「COP15」。12月17日に条約事務局が内密に実施した分析結果によると、現在までに、先進国と一部の新興国から提示されている排出削減目標を全て足し合わせてみても、温暖化による深刻な悪影響を回避するには不十分であることが分かりました。厳しい状況の中で、より高い目標の合意と、途上国援助のための仕組み作りが求められています。

2度未満には抑えられない?

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温暖化による深刻な影響を回避するためには、世界の気温の上昇を「2度未満」に抑える必要があります。しかし今回、条約事務局が行なった分析によれば、提示されている全ての排出削減目標が達成されたとしても、気温は少なくとも3度以上、上がることが分かりました。 しかもこの分析は、下のような楽観的な前提に基づいて計算されたものです。

先進国の掲げる目標値が最も高い場合を想定している

例えばEUは、2020年までに(1990年比で)「20%の削減目標」を掲げていますが、他の主要排出国が、削減に前向きな姿勢を見せた場合は、この目標を「30%削減」に引き上げるとしています。今回の分析のケースでは、この「30%削減」を前提に計算を行なっています。

途上国の削減も十分な援助が前提

途上国が掲げている目標についても、先進国から十分な資金的・技術的な援助が行なわれ、最も高い数値で、削減が達成されることを前提としています。
例えば、「26%の排出抑制」を掲げるインドネシアは、先進国からの十分な資金援助があればこれを「41%」に引き上げるとしていますが、条約事務局は今回の分析に「41%」という数値を計算に用いています。

厳しい現状の中で求められる合意

しかし、コペンハーゲン会議で目下行なわれている交渉では、先進国・途上国ともに、高い削減目標が選択するのは、非常に厳しい現状です。

もし、高い目標が合意されなければ、気温の上昇は3度を大きく上回ることになり、気候変動による深刻な悪影響が、将来の世代に及ぶことになるでしょう。

これを回避するためには、先進国がより高い、野心的な削減目標を提示し、途上国が化石燃料に頼らない経済成長を実現できるよう、資金や技術を援助する仕組みが欠かせません。また、この資金援助は、従来のODAなどの看板を掛けかえたものではなく、新たに行なう必要があります。

12月16日、日本の小沢鋭仁環境大臣が発表した、鳩山イニシアティブによる2012年まで150億ドル(約1兆7500億円)の途上国支援や、12月17日に、アメリカのクリントン国務長官が提示した、途上国に対する長期の資金援助は、この新たな試みにつながる、大きなきっかけとなるものといえるでしょう。

この動きをさらに大きなものとする一方、各国がより高い排出削減目標を提示できれば、今回のコペンハーゲン会議での合意の可能性は、まだ十分に残されています。


参考資料:先進国の削減目標の抜け穴について(2009年12月17日)

コペンハーゲン会議で先進各国が削減目標の数値を提示しているが、排出削減のルールに関する内容が不明確なまま、交渉文書が合意されてしまうと、先進国の排出削減を疎かにするような抜け穴が生じ、先進国の国内主要産業セクターからの大幅削減が阻害される。その結果、危険な気候変動を回避する上で不可欠な、タイムリーなピークアウト(排出が増加から減少転じること)が難しくなる。

抜け穴には以下の5つのタイプが考えられる。各々の抜け穴が、排出削減の実効性をどの程度損なうかについては様々な試算があるものの、抜け穴の利用が進むと、実際には排出が減っていないにもかかわらず排出削減量としてカウントされるケースなどが増え、各国が提示している削減目標の実効性が間違いなく損なわれることになる。

この問題点について、以下に要約する。

1.先進国における森林吸収源の算定

運用ルールが適切なものとなれば、森林吸収源は、持続可能な森林管理と環境保全型の農業の実現に貢献することができる。しかしながら、現在の京都議定書と同じグロス・ネット・アプローチ(森林が吸収する全CO2量を先進国の削減目標にカウント可能)が第2約束期間にも継続された場合、先進国における産業からの排出削減が疎かになり、その量は2020年までにCO2換算で10億トンにのぼると見積もられる。地球全体の排出を減らすという観点から見れば、森林が吸収する全CO2量ではなく、基準年からの吸収量の増加分、つまり吸収源を通じて真の排出削減に貢献した量のみがカウントされるべきである。

2.ホット・エア

ロシアや東欧諸国において、経済活動の低迷などにより、削減努力無しに生じる排出削減目標に対する達成余剰分をホット・エアと呼び、CO2換算で合計80~100億トン分のクレジットが次期約束期間に繰り越される可能性がある。仮に第2約束期間が2013~2020年となった場合、年間10億トンにのぼるクレジットがオフセットに活用される可能性があり、先進国の国内における実質的な排出削減量を減少させることになる。

3.CDMオフセット

先進国は、現状のCDM(クリーン開発メカニズム)の下で、途上国においてプロジェクトベースの排出削減を行い、その削減分を自国の排出削減義務量に充当することができる。このようなプロジェクトベースのCDMが2013年以降も継続された場合、先進国は、2020年までにCO2換算で15億トン分のオフセットを利用すると予測されている。EUだけで5億トン分を利用することを表明している。途上国においては排出が削減されるが、その分をオフセットとして活用した先進国においては、自国内における実質的な排出削減量が減少し、地球全体で見れば、プラスマイナスゼロとなる。

4.国際船舶・航空

国際船舶および航空燃料からの排出量は、第1約束期間においては排出削減目標にカウントされておらず、BAUでのCO2排出量は先進国全体で19億トンに達すると見られる。これらセクターの排出量が2013年以降の合意に盛り込まれなければ、抜け穴となる。米国の気候変動法案には国際船舶および航空燃料からの排出が含まれており、欧州の排出量取引制度にも航空燃料からの排出が含まれているが、それらを考慮しても抜け穴は13億トンにのぼると見積もられる。

5.2020年削減目標に対する出発点の排出量

先進国の新たな排出削減目標に対し基準とすべき出発点の排出量としては、

  1. 第1約束期間と同じ1990年の排出量
  2. 2012年における実排出量、あるいは
  3. 京都議定書の下での排出目標

の少なくとも3通りが考えられる。第1約束期間において京都議定書の目標を達成する国とそうでない国があると考えると、上記三択のいずれを選択するかによって、2020年に同じ目標を達成しても、1990年から2020年の間に大気中に蓄積されるCO2の量は異なる。
例えば、第1約束期間の実質的な排出量が目標を上回ってしまった国は、目標を達成した場合に比較すると、2020年までに、より多くのCO2を大気中に蓄積させたことになる。しかし2020年の削減目標を達成したかどうかという視点のみから捉えると、この蓄積分は、排出増加としてはカウントされずに済んでしまう。

排出削減のルールに関する内容が不明確なまま、交渉文書が合意されてしまうと、以上のような抜け穴が起こりうる。各々の抜け穴が、排出削減の実効性をどの程度損なうかについてさまざまな試算があるものの、抜け穴の利用が進むと、実際には排出が減っていないにもかかわらず排出削減量としてカウントされるケースなどが増え、各国が提示している削減目標の実効性が間違いなく損なわれることになる。


記者発表資料 2009年12月16日

COP15:WWF、新たな資金提案を歓迎しつつも長期の資金提案の重要性を訴える

【デンマーク、コペンハーゲン】コペンハーゲン会議の交渉が激化する中、各国から短期的な資金提案が新たに提示されているが、依然として欠けているのは長期の資金提案である。本日、日本の小沢鋭仁環境大臣が、鳩山イニシアティブによる2012年までの短期的な途上国支援として150億ドル(約1兆7500億円)を拠出することを発表した。それに先立ち、オーストラリア、フランス、日本、ノルウェー、イギリス、アメリカからも、REDD(森林の減少・劣化からの排出の削減)のために35億ドルの公的資金を拠出するとの共同声明が出された。

「WWFは、気候変動対策の国際合意を実現したいという思いが現れた、これらの新提案を歓迎している。しかし残念ながら、交渉において核となる、信頼できる長期の資金提案については、いまだに封印されたままである。先進国と途上国の間の壁を打ち破る上で、鍵となる要素であるのだが」とWWF気候変動プログラム(Global Climate Initiative)リーダーのキム・カーステンセンは述べている。

110億ドルの公的資金を含む、日本の150億ドルという提案は、明らかに、先に打出された92億ドルよりも上積みされたものである。

「日本は間違いなく交渉を進展させようとしている」とカーステンセンは付け加える。

さらに、オーストラリア、フランス、日本、ノルウェー、イギリス、アメリカは、REDD(森林の減少・劣化からの排出の削減)のために3年間で35億ドルの公的資金を拠出するとの共同声明を出した。

「この短期的な35億ドルという資金援助は、森林の消失を減少させ、最終的には止めるための、より大きな取り組みに向けた歓迎すべき第一歩である。6カ国が共同で取り組む点も重要である。ただし、今日発表されたこれらの資金援助が、既に約束されている他の開発援助に対して、どの程度新規で上乗せされたものであるかについては、いまだ明らかにされていない」

REDDの非公式作業部会は、今後3年間で約90億ドルが必要であるとしているが、今回の6カ国による提案額は、それを下回っている「他の国々も早期に資金援助を打ち出し、この差を埋めなくてはならない」。

「短期的な資金援助は、合意の可能性を高める上で極めて重要だが、確実かつ予測可能な新規の中長期的資金援助に代わるものであってはならない。中長期的な資金援助は、途上国におけるREDDなどの気候変動の緩和行動や脆弱な国々の適応行動を支援する上で必要不可欠である。長期の資金援助の重要性は疑いようがない。合意と地球の未来はそれにかかっているのだ」とカーステンセンは訴えた。


記者発表資料 2009年12月15日

COP15:大きな抜け穴だらけで低い削減目標が世界に災いを

【デンマーク、コペンハーゲン】WWFは本日、コペンハーゲン会議において各先進国が提示している排出削減目標は、抜け穴だらけの状態で合意の中に盛り込まれようとしている、と警告した。

「先進国は、真の排出削減から逃げることはできても、気候変動の災いから逃げることはできない」とWWF気候変動プログラム(Global Climate Initiative)リーダーのキム・カーステンセンは述べている。

「先進国が、あるものについては排出としてカウントしなかったり、ダブルカウントをしたり、あるいはおかしなやり方でカウントするような、巧妙な算定方法の下に自分達は削減していると主張し、しかし実質的には排出量を増やすような方法を見出した場合、それが現実となってしまう」

WWFの分析では、様々な抜け穴によって先進国全体の排出量は、2020年までに1990年よりも4~10%増加する可能性がある。これは、コペンハーゲン会議でこれまでに提示されている先進国全体の削減目標である15~19%とは著しい相違である。

抜け穴の中で最も大きなものは、排出削減がどこで行われるのか、つまり、先進国自身が国内で削減するのか、あるいは排出算定がそれほど厳密でない途上国におけるオフセットとして行うのか、それを規定する条項がないことである。WWFの試算では、この抜け穴によって、約15億トン分の排出削減が危うくなる可能性がある。

現在の国連のクリーン開発メカニズム(CDM)は、真の排出削減を可能にしているが、同時に、途上国においてプロジェクトを実施した先進国はクレジットを得てしまう。
「ゼロサム・ゲーム(世界全体でプラスマイナスゼロ)を回避するために、先進国の排出削減の大部分は、国内で行われるよう、WWFは求めている」 とキム・カーステンセンは言う。

各国が排出削減クレジットを次の約束期間に繰り越した場合は、もう一つの抜け穴が表面化する。特に、京都議定書の交渉期間中にロシアと東欧諸国に大量に与えられた「ホット・エア*」の条項である。そのようなホット・エアの購入を全て足し合わせると、2020年までに最大で年間14億トンの見せかけの排出削減へとつながる。森林吸収源に関する手抜きのルールや、増加の一途をたどっている国際船舶・航空からの排出をカウントしないようなことになれば、さらなる抜け穴が生じる。

WWFは、各国政府代表団と協力し、ルールの強化によって、これらの抜け穴を埋めようとしている。また、新たな抜け穴が生じないよう、継続して会議の動向を報告している。

*ホットエア:ロシアや東欧諸国において、経済活動の低迷などにより、削減努力無しに生じる排出削減目標の達成余剰分のこと


COP15:新議定書の代わりの「政治合意」がすでに準備されている?(2009年12月9日)

2009年12月8日、イギリスの新聞「ガーディアン」紙は、コペンハーゲン会議での「政治合意」の草案を入手したとして、その内容を公表しました。同紙によれば、これは会議の議長国であるデンマーク政府が作成したもので、「新議定書の採択は不可能」という前提に立った消極的な行動として、反発の声も上がっています。

新議定書の代わりを想定

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コペンハーゲンでの会議(COP15)が始まった翌日の2009年12月8日、イギリスの新聞「ガーディアン」紙は、この会議での「政治合意」の草案(Adoption of The Copenhagen Agreement Under the United Nations Framework Convention on Climate Change)を入手したとして、その内容を公表しました。

同紙によれば、この「政治合意」は、会議の議長国であるデンマーク政府が作成したもので、当初見込まれていた「京都議定書」に続く、法的拘束力を持った新しい議定書の採択が出来なかった場合、その代替案として示されるはずだったものだ、とされています。

つまり、この草案の作成は、会議の開催以前から聞かれていた、「コペンハーゲン会議では新議定書の採択が困難である」という論調を先取りし、新議定書の採択を先延ばしにしようという、いわば消極的な態度をデンマーク政府が示したもの、といえます。

世界のリーダーは、新議定書の採択を!

今回のコペンハーゲン会議において、新たな議定書を採択することは、2007年12月のバリ会議(COP13)で採択されたバリ行動計画により、決定されたことです。
そして、その後2年間、ポズナニ会議(COP14)や各準備会合(AWG、SB)などにおいて議論が続けられ、少しずつではあるものの、交渉文書がつくりあげられてきました。

この交渉文書を、新議定書として取りまとめることこそが、コペンハーゲンでの会議の最大の目標であり、意義に他なりません。

しかしながら、デンマーク政府が作成したとされる草案は、新議定書の採択を来年以降の会議に先延ばしにし、COP15では「政治合意」のみに留めようというものでした。
コペンハーゲンでの採択が容易でないとはいえ、議長国が初めから妥協案を検討しているようでは、参加国の意識は下がり、ますます合意が困難なものとなってしまうでしょう。 

キム・カーステンセンのコメント

WWF気候変動イニシアチブ・リーダーのキム・カーステンセンは、この報道があった同日、次のようなコメントを発表しました。

「デンマーク政府が水面下で行なっている交渉戦術は、公平で野心的な解決策を求めている国々に応えるよりも、むしろ裕福で力のある国々(つまり先進国)を満足させることを念頭においた、不透明なアプローチです。

私たちは、貧しく力ない国々の草案に対する失望を、理解し、共有しています。デンマーク政府には、ただちに姿勢を改め、協力的な姿勢で、各国の声によく耳を傾けるよう、強く要請したい。そのような姿勢こそ、コニー・ヘデガード元気候変動エネルギー大臣(デンマーク)が、会議初日のスピーチで述べたメッセージのはずです。

すでに会議が始まった今、デンマーク政府の草案に気を取られていては、本番の交渉が妨げられてしまいます。これまで、2年間を費やしてきた協議は、議論されてきた交渉テキストに集中されるべきです。一部で議論されている別の文書(草案)に注力すべきではありません」。  

キム・カーステンセンのコメント(原文):

"The behind the scenes negotiations tactics under the Danish Presidency, have been focusing on pleasing the rich and powerful countries rather than serving the majority of states who are demanding a fair and ambitious solution."

"The Danish Prime Minister´s proposed text is weak and reflects a too elitist, selective and non-transparent approach by the Danish presidency."

"We understand and share the frustration of the poor and vulnerable countries. We urge the Danish presidency to change its style and move to a cooperative and listening mode. We also believe this was one of the political signals sent by COP President Connie Hedegaard in her opening statement yesterday"

"Focus on the Danish text right now is a distraction from the negotiations that have just come underway in Copenhagen. Talks must focus on the text that has so far been negotiated and not on new texts that are being negotiated in small groups."


記者発表資料 2009年12月7日

COP15:世界の声に従って行動する時が来た

裕福な人も貧しい人も、黒人も白人も、北半球の住人も南半球の住人も、誰もがコペンハーゲンで法的拘束力のある合意が成されることを望んでいる。コペンハーゲンの中心議題は、山積みの書類をどうするかではなく、今を生きる私たちと子孫の未来をどうすべきか、ということである。

地球を救うために残された12日間を、私たちすべてが有効に使わなければならない。特に、決定を下す権限を持つ人間には、計り知れない責任がある。

「公平で野心的、かつ法的拘束力のある次期枠組みに署名することは、世界中の数え切れないほどの人々の声に応えることであり、逆にそれを拒否すれば、世界の声を無視することを意味し、大きなつけを残すことになる」とWWF気候変動イニシアチブ・リーダーのキム・カーステンセンは言う。

世界各国の指導者たちにとって、今回のコペンハーゲン会議は、気候変動の大きな脅威から地球を救うために必要な公平な次期枠組みを求める、世界中の人々の声を尊重して行動する上で、またとない機会になる。

「次期枠組みへのゴーサインは手に届くところにあり、指導者たちは今こそ、一歩を踏み出さなければならない。私たちは、資金や文章、文言の修正についてばかりでなく、自分たちや他の人々の生命、そして子や孫たちの生命に関わる議論しているのだということを、日々心に留めなければならない」

次期枠組みへの合意は、各国の指導者たちにとって、政治が次の議会選挙や政党間の争いよりもさらに先を見据えていることを示す上で、極めて貴重な機会であるとWWFは考えている。政治が公平なものであり、人々の要望に応えられるということを示すことができるのだ。

「野心的な次期枠組みによって、各国の指導者たちは、真のリーダーシップを発揮し、世界中で持続可能な経済的、市場的機会をもたらすことにより、有権者の信頼を勝ち得るまたとない機会を得ることができる」

市民やマスコミ、NGO、企業、教会その他あらゆる関連団体が、政治家たちが正しい選択をすることを支持し、それを促している。コペンハーゲンは、そういった声に応え、行動を起こす時なのだ。

コペンハーゲンで合意される次期枠組みは、先進国が大幅な排出削減をすることを確実にし、同時に、気候変動による悪影響から貧しい国々を守り、低炭素型の開発へと移行させるための、予測可能で追加性のある長期的な資金援助を保証するものでなくてはならない。また、途上国の排出を抑制する野心的な気候変動対策を可能とする新たな支援の仕組みを提供するものでなければならない。

インドのシン首相やオバマ大統領がこの会議への参加を表明し、非常に好ましい前兆が見られる。

「インドが気候変動と対峙するための目標を提示したことは大きな前進だ。また、私たちは、オバマ大統領が、会期中の極めて重要な時期にコペンハーゲンに滞在する決断をしたことを高く評価する。このニュースによって、コペンハーゲンで次期枠組みへの合意を確実なものにできるのではないかという楽観的な見方が明らかに流れている。」とキム・カーステンセンは言う。

途上国が排出量を削減し、気候変動による悪影響に対処するために必要な資金提供が、世界の合意形成の重要な鍵となる。


「私たちは、オバマ大統領が短期的、長期的な資金援助の両方について議論を行うことを歓迎している。この二つは、コペンハーゲンの成功の決めてであり、不可欠なものである」とキム・カーステンセンは述べる。


各国代表は野心的な次期枠組み合意へ向けて交渉テキストを強化すべき

記者発表資料 2009年6月1日

【ドイツ、ボン】今回新たに気候変動枠組み条約事務局が提示した交渉テキストは、交渉の基礎としてしっかりしたものであり、強化すれば、気候変動の悪影響を最小限にする協定として合意できるものになる。

科学者らは自らの予測を再検討しており、気候変動はこれまでの予測を大きく上回る、警戒すべきスピードで進んでいると発言している。交渉テキストが目の前にある今、各国代表らは、これ以上、時間を無駄にすべきではない。各国政府には、行動を取り膠着状態を打開する以外に、選択肢はない。

WWF気候変動イニシアチブ代表のキム・カーステンセンは言う。

「今、十分な数の解決策が交渉の場に載せられている。いくつかの意見の相違はあるが、交渉テキストは良いスタート点であり、それによって世界が野心的な段階に到達する可能性がある。そこには世界で最も危険な脅威の一つに立ち向かうチャンスがある。

野心的な協定を作るために、交渉担当者らは、この交渉テキストを活用できるのである。仮に骨抜きにしてあまり野心的でない案を求めるようなら、意味のない協定に終わってしまう」

国連が提示した交渉テキストは3つの個別の文書から成る。全部で68ページに及び、排出量削減のレベル、適応、技術、資金、炭素市場、森林からの排出削減などといった、主要課題を提起する方法についての選択肢の全体像を示している。これらの文書は、今年12月の合意に向けた交渉の基礎となる。このとき交渉担当者らはコペンハーゲンに会し、2012年までの排出削減について規定している現在の枠組み条約と京都議定書を基礎に、次期枠組みを作り、合意することになっている。

各国代表には、交渉テキストにある優れた提案を強化し、あまり野心的でない提案を削除してもらいたいと、WWFは考えている。今では多くの国々、特に最も気候変動に脆弱な国々が、気温の上昇を産業革命以前に比べ2℃未満に押さえるための排出削減に向けた大志に、国際社会が合意することを期待している。

「工業国による大きな削減目標が必要である。WWFは先進各国に対して、2020年までに、1990年レベルより先進国全体で少なくとも40%の排出削減目標に合意するよう求めている」とキム・カーステンセンは言う。京都議定書の非締約国として、米国は、この先進国全体としての削減目標に貢献するために、(締約国の削減目標と)比較可能な削減を受け入れることが期待されている。

また、国連気候変動枠組み条約の下に、途上国での排出削減と気候変動の影響への適応に必要な支援を提供する、資金源の充実した新組織を設立することに関して、交渉テキストの文言を強化し、肉付けする必要がある。

6月1日から開幕するボン会議は、12月のコペンハーゲンでの合意を目指して、次期枠組みの野心的な草案を作り上げる、今年の一連の会合の第2回目にあたる。

WWFメディア向けイベント・活動

6月1日(月) 会議開幕に際してのWWFプレスリリース
6月2日(火) 日本の中期目標に関するNGO合同記者会見(ボン国連会合の場において)
6月3日(水) ニューヨークでの金融危機に関する国連総会ハイレベル会合の結果に関するプレスリリース
6月5日(金) 世界環境デー2009。会期前半の状況に関するプレスリリース
6月6日(土) NGO合同によるイベント。何百人もの人による巨大なメッセージ、the Maritim Hotel (UN Conference Centre)への行進など。The Bonn Rheinauenで写真撮影の機会あり。
6月8日(月) NGO合同によるサイドイベントとプレスリリース。NGO Treatyの提案発表(午後7:30~9:00、TRAM room)。
6月11日(木) NGO合同による Climate Hearing(気候変動の現状に関する公聴会)の開催(午前10:30)
6月12日(金) 会議閉幕に際してのWWFプレスリリース

参考資料

Press Pack: All related backgrounders, press work, reports and other material will be posted on

Copenhagen Expectations Paper: WWF position paper outlining key issues for new global deal -

Media Blog: Several times a day WWF posts brief news for media in Bonn and elsewhere to stay up to date:



国連気候変動バルセロナ会議がまもなく開幕(2009年10月30日)

記者発表資料 2009年10月30日

合意できるか?ではなく、せねばならないのだ!

【スイス、グラン】急速に進行する気候変動に対するアクションが、一日また一日と遅れることで、今の我々と将来世代は困難な状況に追い込まれるだろう。来週(11/2~6)のバルセロナ会議に参加する各国政府代表団は、自国の首脳に、会議が進展し得ることと、地球環境を守る野心的な次期枠組に合意することができるというだけでなく、合意しなくてはならないということを示すべきである。

コペンハーゲンで次期枠組みに合意することは困難で、合意がいつになるかわからないと示唆する政治家がいるが、それは無責任である。気候変動問題への対策をやめ、消極的な対策ですませようとする国が、次々追従するというドミノ効果を爆発的に引き起こす可能性がある。

温暖化対策に取り組むつもりのない首脳らには、気候変動問題の混沌とした現状に対する責任がある。公式な国際機関の権威を弱め、最終的には、これまでの交渉によって野心的で拘束力のある結論が出ると信じる世界中の有権者の信用を失うという現状である。

「コペンハーゲンで野心的な次期枠組に合意すべきか、それとも合意を遅らせるべきかと問うことは、自分に向かって迫ってくる巨大なトラックを素早くよける道を選ぶか、それとも悪影響が出るのを座視して待つのかを討論することに匹敵する」と、WWF気候変動プログラム(WWF Global Climate Initiative)リーダーのキム・カーステンセンは言う。

「もし野心的で拘束力のある協定に合意しなかったら、私達は、何十億ドルもの大金をクレジットカードで浪費し、環境破壊を拡大し、現代の最も扱いにくい難問に立ち向かうために何もしなかった世代として、記憶されるだろう。きっと各国首脳の誰一人として、このように記憶されたいと思っているはずがない」とカーステンセンはコメントする。

来週バルセロナに政府代表団が集まる時には、各国の首脳たちが、気候変動から世界を救う可能性のある政治的合意に向けた動きをする権限を、代表団に与えているかどうかが一目瞭然になるだろう。この会議で、政策的な必須事項について政治的合意へ向けた素早い野心的な進展があれば、次期枠組への合意は可能だという強いシグナルを世界へ送り返すことになる。

「次期枠組への合意が遅れるという噂を消すよう、WWFは代表団に求める。代表団は合意できることを示し、政策的必須事項について合意したいという意志を示さなくてはならない」とカーステンセンは言う。

またWWFは、各国首脳らに、コペンハーゲン会議に先だって集まり、コペンハーゲンでの話し合いを進展させるための、新しく誠実で強力な政治的な弾みをつけるように求める。米国において、国内法の成立に向けたプロセスが進み、米国や他の主要国がそれぞれの役割を果たして、その他の国が野心的な温室効果ガス削減や十分な規模の資金提供の約束をするよう促す必要がある。

次期枠組に法的拘束力があるかどうかの論争は、役に立たない。必要なのは強力な次期枠組であり、コペンハーゲン会議は、必要とされる中身のある政治的合意に達することによって、次期枠組の合意へ向けた方向づけをしなくてはならない。

「これだけの年月を議論と交渉に費やした後で、今、すべてこれはただの非公式なおしゃべりだったよと言うことはできない」と、カーステンセンは言う。

「多くの政治的な機運が、コペンハーゲン会議に近づくにつれて高まってきている。世界は首脳らが勇気を示しコペンハーゲンで合意するよう期待している。合意を遅らせようとする議論は、どれも非常に危険である。なぜなら、それは合意へ向けたプレッシャーを無くしてしまうからである。

地球温暖化を食い止めることは、もはや、あなたがどの政党に所属するか、ドアの向こうにあなたに圧力をかけるロビイストが何人いるか、あなたが救済する必要がある銀行はいくつあるか、などに左右されている場合ではない。地球環境が最悪の状態になることを避けるためには、世界規模の気候変動の協力部隊が必要なのだ」と、カーステンセンは述べる。


WWF MEDIA ACTIVITIES IN BARCELONA:

Mon 2 Nov:    WWF media stunt with Vote Earth message and WWF key asks. This will involve handing ballot papers to delegates to cast their votes for a legally binding treaty.  
Wed 4 Nov     Side event on ‘How can we plan for the transition to a low carbon and climate resilient     future?’  19.45 – 21.15h
Thu 5 Nov:      Launch of WWF report rating policies and measures funded through economic recovery budgets.  The report will be simultaneously launched in Barcelona, London, Scotland, and other relevant locations and focus on the climate finance message tied to the UNFCCC process.
We will have a press conference at the UNFCCC meeting venue in Barcelona, 1100am. It will be web cast live.

MATERIALS FOR THE MEDIA:

Press Pack: All related backgrounders, press work, reports and other material will be posted on
http://www.panda.org/climate/press
Media Blog: Journalists interested in exclusive real-time WWF updates from inside UNFCCC can check out the WWF media blog at: http://blogs.panda.org/climate/category/press-information
NGO Treaty: The perfect Copenhagen Treaty, a blueprint by NGOs, and supporting materials can be found at: http://www.panda.org/climate/treaty
Pocket Guide: A handy Copenhagen Pocket Guide with a helpful overview and basic introduction to the international climate negotiations is at: http://www.panda.org/climate/pocketguide
WWF Positions: Find WWF Position Papers at http://www.panda.org/climate/positionpapers, especially our Copenhagen Expectations Paper at: http://www.panda.org/climate/expectations

WWF MAIN DEMANDS FOR A COPENHAGEN DEAL:

  1. Create a legally binding framework with the Kyoto protocol linked to a new Copenhagen Protocol
  2. Keep overall warming well below the 2°C danger threshold, and global emissions need to start decline before 2017
  3. Industrialized countries commit to reduce their emissions by 40% by 2020, compared to 1990 levels
  4. Developing countries agree to significant action making emissions at least 30% lower than Business-As-Usual by 2020.
  5. Tropical forest countries reduce emissions from forest destruction by three quarters (75%) by 2020.
  6. Agreement on a framework for immediate adaptation action, especially for the most vulnerable countries and ecosystems - this includes special insurance provisions
  7. Public finance in the order of US$160 billion per year will be provided to developing countries for both adaptation and mitigation, especially to the ones most in need
  8. A mechanism to strengthen technology transfer and cooperation and providing incentives for research, development and dissemination of low-carbon technologies
  9. A new institutional set-up under the UNFCCC, allowing for coordination, support and implementation of the provisions, in a transparent and democratic way
  10. For specific topics such as carbon markets, forests and land use, and compliance procedures clear standards are agreed, based on the Kyoto Protocol.

地球温暖化防止に一票!「VOTE EARTH!」キャンペーン(2009年10月23日)

2009年12月、デンマークの首都コペンハーゲンで、2013年以降の地球温暖化防止に向けた世界の取り組みについて、各国が新たな合意が交わすための、地球の未来が問われる歴史的な会議が開かれます。この会議に向け、WWFは、温暖化の防止が世界中の人々の願いであることを各国首脳に示すため、「VOTE EARTH!」キャンペーンを実施。日本でも、そのためのキャンペーンサイトを開設しました。

「歴史的な会議」に向けて!

2009年12月、世界各国の代表がデンマークの首都コペンハーゲンに集結し、温暖化防止のための国連会議(COP15/MOP5)に臨みます。
この会議は、2013年以降の温暖化防止に向けた世界の取り組みと、具体的な政策の道筋について、各国が新たな合意が交わせるかどうか、まさに今後の地球の未来が問われる歴史的な会議となります。

この会議の場において、各国が一致団結し、合意に達することを願うWWFは、温暖化の防止が世界中の人々の願いであることを各国首脳に示すため、現在、「VOTE EARTH!」キャンペーンを実施しています。

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これは、「温暖化する地球」ではなく、「緑の地球」を選びます! という、たくさんの人々の意思を、「VOTE=投票」するという形で明らかにし、それを集めて、コペンハーゲンでの国連会議の場に届けるものです。
WWFは、WWFの国際的なネットワークを活かし、各国で「VOTE」を集めるグローバルなキャンペーンを展開。インターネット上で、このキャンペーンへの参加を呼びかけています。

日本でもいよいよスタート

日本では10月20日から、日本語版「VOTE EARTH!」のキャンペーンサイト(http://voteearth.jp)がスターしました。
このキャンペーンサイトにアクセスし、ご自身を登録していただくと、その後、さまざまなアクションへの参加や、「VOTE EARTH!」のマークを使った、PR活動への参加呼びかけなどが届きます。

WWFジャパンでは、この参加者の数を、日本での「VOTE」として、コペンハーゲンでの合意へ向けた意思表示として集約し、会議に届けます。

また同時に、このキャンペーンに連動した新しいmixiアプリ「little planet」(http://wwflittleplanet.com)を公開。
国内初の、地球環境問題に関するmixiアプリとして、環境問題と個人が貢献できる可能性を「体験・実感できる」コミュニケーションの機会を提供することにしました。

一人でも多くの人の声をコペンハーゲンに届けるため、ぜひキャンペーンにご参加ください!

*キャンペーンは終了しました

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記者発表資料 2009年10月22日

国連気候変動コペンハーゲン会議に向け、WWFジャパン「VOTE EARTH!」キャンペーンをスタート

「温暖化する地球」ではなく「緑の地球」に 一票を!

【東京発】地球温暖化の解決を目指して、2009年12月、世界各国の代表がデンマークの首都コペンハーゲンに集結します。そこで開催される国連会議(COP15・COP/MOP5)では、京都議定書の第一約束期間が終わる2013年以降の国際な取り組みのあり方が、新しく合意されることになっています。破滅的な地球温暖化を回避するための具体的な対策を取る道筋を、合意という形で世界に示すことができるのかが問われる歴史的な会議となる予定です。

この会議で、世界は、地球の未来を左右するほどの、一つの重要な選択をすると言っても過言ではありません。世界中の人々が自然と共に豊かに暮らすことができる「緑の地球」か、それとも、人や自然から多くのものを奪う「温暖化する地球」か。人類は大きな選択を迫られることになります。

WWFは、この歴史的な会議COP15に結集する世界のリーダーたちが、一致団結して直ちに地球温暖化への対策に取り組むことに合意することを切に望んでいます。同時に、それは世界中のすべての人々が望んでいることでもあります。それを世界のリーダーたちに示すため「温暖化する地球」ではなく、「緑の地球」を選択してくださいという声を「VOTE」=「投票」という形で、インターネット上で集めることにしました。WWFの世界中のネットワークを活かし、各国から「VOTE」を集めるグローバルなキャンペーンです。

日本では10月20日から日本語の「VOTE EARTH!」キャンペーンサイトを立ち上げました。国内の多くの方から「VOTE」を集め、COP15に届けます。VOTE(投票)のためには、まずキャンペーンサイトでの登録が必要で、その後、サイトで提供される様々なアクションへの参加やロゴマークを使った何らかの自主的アクションが呼びかけられます。これらへの参加がVOTEとして、コペンハーゲンでの合意へ向けた意思表示として集約されていきます。

これと同時に、日本最大のソーシャルネットワークサービス(SNS)であるmixi内で可動するmixiアプリを、WWFジャパンとして10月20日に立ち上げました。「little planetと名づけられたこのアプリは、国内初の地球環境啓蒙アプリとして「ちいさな、ひとりひとりの行動が集まって、大きな力になる」をコンセプトに、環境問題と個人が貢献できる可能性を「体験・実感できる」コミュニケーションプラットフォームです。mixi 会員なら誰でも「little Planet」に参加でき、このアプリ上からも「VOTE EARTH!」キャンペーンサイトにアクセスできます。こうした間接的なアプローチによって、mixiユーザー間にもコペンハーゲン会議の重要性を伝達していき、日本からより多くの「VOTE」を集めることを意図しています。

一人でも多くの人の声をCOP15に届けるため、ぜひ、貴紙(誌)およびウェブサイトでご紹介ください。

*キャンペーンは終了しました


国連気候変動ボン会議が開幕 行き詰まる交渉の政治的進展へ道を開くべき!

記者発表資料 2009年8月10日

【ドイツ、ボン発】本日より開幕する国連の気候変動に関するボン非公式会合(8月10~14日、ドイツ ボン)で、各国政府代表団は、9月に予定されている首脳級の政治的会合を待つことなく、責任をもって交渉を進展させるべきである。今回の国連気候変動枠組み条約のもとで開催される非公式会合で何も進展がなければ、9月に米国で開催される国連総会とG20金融サミットでの一連のハイレベルな政治的会合において、十分に満足のいく結果を得て、資金援助の議論を進めるのは極めて困難である。

「家を建てるという決定は、首脳たちが下すものだが、実際に家を建てるのは、実務レベル者たちである。それと同じように、各国の交渉担当官たちは、首脳会合を座して待つのではなく、今回のボン会合で、議論を前へ進めなければならないのである。」と、WWFグローバル気候イニシアティブ・リーダーのキム・カーステンセンは言う。

WWFは、ボン会議が先進国と途上国の間にある不信感を最小限に抑えるために活用されるべきと考えている。また、会議に提案されている文書草案をまとめたり、レベルの低い箇所を消去することに集中するべきである。「もし各国政府代表団が、野心的な選択肢を整理して位置づけ、各国が提出した案を統合したならば、それは交渉の進展であり、コペンハーゲンにおける合意に向けた良いベースとなるだろう」と、カーステンセンは言う。

イタリア・ラクイラでのG8サミットとMEF以来、地球の平均気温の上昇を2℃未満に抑えることは、地球を守るための新しい公式となった。WWFはこれを歓迎するが、小さな島嶼諸国と生態系に生存の機会を残すには、気温上昇のレベルを2℃よりかなり低く押さえなければならないことを強調する。
「大量排出国である先進国と主要途上国の両方が、2℃未満に抑えるということに合意した今、新しい条約案の冒頭に、これが明示されるべきである」とカーステンセンは主張する。

地球温暖化を2℃未満に抑えたいという同じ先進諸国が、3~4℃の地球温暖化を招くような2020年の排出削減目標を提案しているという現状を、WWFは指摘する。これは世界中の人々と自然を、暴走する地球温暖化の重大な危機に直面させる行為である。
「地球温暖化問題のリーダーであると自負する先進諸国は、2℃未満というビジョンを実際の行動で裏打ちするため、2020年までに1990年に比べて40%排出量を削減することを約束しなくてはならない」とカーステンセンは言う。

そして、米国は、京都議定書の下で努力してきた他の先進国と同程度の絶対量での法的拘束力のある排出削減目標を掲げ、2度未満が達成できるような中長期の目標や途上国の緩和の支援なども示すべきである。

重要課題

危険な地球温暖化から地球を救う力のある国際協定に合意するためには、各国政府代表団は以下のことを実行しなくてはならない。

  • 将来の平均気温上昇を、産業革命以前に比べて、危険な閾値の2℃より可能な限り低く抑えるというビジョンを共有すること
  • 2050年までに世界の排出量を1990年レベルに比べて少なくとも80%削減することを目指して、CO2排出量が2020年以前のなるべく早くにピークを打ち、その後速やかに減少することを保証すること
  • 先進国が全体として、1990年レベルに比べて、2020年までに少なくとも40%削減し、2050年までに少なくとも95%削減することに合意すること。米国は、京都議定書の下で努力してきた他の先進国と同程度の絶対量での法的拘束力のある排出削減目標を掲げ、2度未満が達成できるような中長期の目標や途上国の緩和の支援なども示すべきである。
  • 途上国における地球温暖化への適応努力に資金援助する方法を明確にする
  • 温暖化防止技術を世界に普及・移転させるための国際的な技術行動プログラムを通じて、世界の低炭素経済への移行を促すこと
  • 新興経済国や他の途上国が、低炭素型の開発に向けた行動の強化を公約することができるように、それらの国々に対して、クリーン・テクノロジーと適切な規模の基金へのアクセスを提供すること
  • コペンハーゲン合意を実行に移すために、国連気候変動枠組み条約のもとに新しい組織を創設すること。WWFは、国連事務局に提出した新条約案(NGO条約案)の中において、「コペンハーゲン気候ファシリティ」の創設を提唱している。
  • 森林保護のための重要な措置と、2020年までに森林減少を差し引きゼロにするという目標を支持すること
  • コペンハーゲン会議で合意する内容は、京都議定書の改定と、新たなコペンハーゲン議定書の二つ(2議定書アプローチ)であるべきであるとWWFは考える。速やかに必要とされる国際協力に基づいた行動が起こせることを保証するためである。

WWF発表予定

  • ボン会議閉幕に際してのプレスリリースとCAN(気候行動ネットワーク)の記者会見。CAN記者会見はウェブサイト(http://unfccc.int/)で生中継の予定。(いずれも8月14日)
  • ボン会議のAWG-LCAとAWG-KPでの討議・交渉される予定の文書草案について、WWFとしての分析について、記者向けにブリーフィング
  • 適宜プレスリリースを発表の予定。WWFメディアブログは以下のアドレスを参照。http://blogs.panda.org/climate/category/press-information/
  • その他の関連資料は、WWFインターナショナルのウェブサイトを参照。
    http://www.panda.org/

その他関連資料


世論調査を実施「日本の有権者は高い削減目標を求めている」(2009年6月2日)

WWFジャパン、アバーズ、気候ネットワークなどのNGOは、日本の世論調査を共同で実施し、回答者の6割以上が「2020年に25%以上の排出量を削減する」、高い目標を支持していると発表。ドイツ・ボンで開かれている国連気候変動会議に合わせ、「麻生首相はヒーローになれるか?」と題した、全面意見広告展開しました。

より積極的な削減目標を求める声

国際的に著名な世論調査会社グリーンバーグ・クィンラン・ロズナー(GQR)が、2009年5月に実施した世論調査によると、国内の多くの人々が積極的な地球温暖化対策を支持しており、同時に、麻生内閣の現状の対策については不満を抱いていることがわかりました

この世論調査は、WWFジャパン、アバーズ、気候ネットワークなど、国内外のNGOの依頼によって実現したもので、日本国内の976名の有権者を対象に行なわれたものです。

調査結果によれば、6割以上の人々が「2020年に25%以上の排出量を削減する」目標案を支持しており、同時に6割以上の人々が、「麻生内閣はさらに多くの温暖化対策をするべきだ」と答えいます。

さらに、より積極的な中期目標(2020年の目標)を日本政府が設定することは、日本経済にとってもプラスになると考えている人も、全体の6割以上を占めました。

党を超えた国民の意思

また、自民党、民主党いずれの政党を支持しているかに関係なく、積極的な地球温暖化政策を支持していることも調査の結果分かりました。麻生首相率いる自民党の支持者の過半数までもが、政府の姿勢とは対照的に、より高い排出削減目標の達成に賛成しています。

WWFグローバル気候変動イニシアチブのリーダーである、キム・カーステンセンは次のように言っています。
「今回の調査は、日本の市民が、科学者が示す警告に応え、積極的な地球温暖化対策の実施を求めていることを示しています。(中略)それでももし、麻生首相が低い目標を選択するならば、その理由は、多くのCO2を排出し、利益を挙げている企業におもねることくらいしか、考えられません」。

実際、麻生首相は現在、2020年までの排出量削減目標として、1990年比+4%から-25%までの範囲で6つの選択肢を設け、その内容を検討しています。

その中で、経団連は、経済への打撃を理由に、「1990年比+4%」という最も低い目標を支持。一方、民主党は「1990年比-25%」という最も高い目標を支持しています。

戦え! 麻生ロボ
2009年6月2日付けの、日本経済新聞に掲載された意見広告。【拡大画像
麻生首相がこのマンガのようにヒーローになりたければ、-25%、あるいはそれ以上の削減を2020年目標に設定することこそが、そのチャンスです!

広告キャンペーンも展開

なお、この世論調査の結果発表は、国際的な政策提言団体アバーズ、および温暖化防止キャンペーン『tcktcktck.org(チクタク)』による、メディアキャンペーンの一環として行なわれました。

キャンペーンでは6月2日、ドイツ・ボンでの国連気候変動会議に合わせ、日本経済新聞の全面広告と、フィナンシャルタイムズ・ヨーロッパ編で、全面意見広告を展開。
日本経済新聞には、マンガのキャラクター「麻生ロボ」を操縦する麻生太郎首相が、地球温暖化と経済危機の双子のモンスターと戦っているデザインの広告が掲載されました。この広告では、麻生首相に、最良の武器、すなわち「25%削減」を使って、モンスターたちを打ち倒してくださいと求めています。

アバーズのエグゼクティブ・ディレクター、リケン・パテルは、今回のキャンペーンについて、次のように述べています。
「今回の調査は、麻生首相および経団連の想定が大きく間違っていたことを示しています。日本の一般市民は、野心的な温暖化政策が、環境に良いだけでなく、日本の国際的な評判や日本経済にとっても極めて重要であることに気付いています。一般市民は、自らの利益しか考えない排出企業に、騙されたりはしないのです」。

日本の未来と、世界の温暖化の行く末に、大きな影響を及ぼすことになる、日本の中期目標。麻生首相は6月中旬に、その具体的な目標を発表する予定です。


共同記者発表資料 2009年6月2日

麻生政権の温暖化対策は不十分 新しい世論調査示す

新しい世論調査とマンガによる意見広告キャンペーンが、総選挙が近づく中、日本の有権者は2020年の中期目標として25%以上の排出量削減を求めていることを訴える

今回実施された全国の976名の有権者を対象とした世論調査によると、多くの人々が野心的な地球温暖化対策を支持しており、反対に、麻生内閣の現状の対策については不満を抱いていることがわかった。

この世論調査は、国際的に著名な世論調査会社であるグリーンバーグ・クィンラン・ロズナー(GQR)によって5月に行われた。調査結果によれば、6割以上の人々が2020年に25%以上の排出量を削減する目標を支持している(63%)。また、同じく6割以上の人々が、麻生内閣はさらに多くの温暖化対策をするべきだと答えており(62%)、さらに、野心的な2020年目標は日本経済にとってもプラスになると考えている(61%)。より詳細な結果および調査方法の説明は、グリーンバーグ・クィンラン・ロズナーの参考資料にまとめられている。また、特筆すべき点は、自民党、民主党支持者にかかわらず、野心的な地球温暖化政策を支持していることで、しかも麻生首相率いる自民党の支持者の過半数が、野心的な地球温暖化対策に賛成であることである。

「本調査は、麻生首相および経団連の想定が大きく間違っていたことを示している。日本の一般市民は、野心的な温暖化政策が、環境に良いだけでなく、日本の国際的な評判や日本経済にとっても極めて重要であることに気付いている。一般市民は、自らの利益しか考えない大規模排出者によって騙されたりはしないのだ」とアバーズ(Avaaz.org)のエグゼクティブ・ディレクター、リケン・パテル(Ricken Patel)は述べている。

麻生首相は、2020年までの排出量削減目標として、1990年比+4%から-25%までの範囲の6つの選択肢を検討している。主要経済団体としての経団連は最も低い1990年比+4%の目標を推している。他方で、民主党は25%を支持している。世界中の科学者は、2℃以上の気温上昇を伴う壊滅的な気候変動を防ぐためには、日本のような先進国が全体として2020年までに1990年比25~40%の排出量削減をすることが必要であると述べている。麻生首相は6月中旬に中期目標を発表する予定である。ちなみに総選挙は9月(遅くとも10月上旬)までには実施される見込みである。

「今回の調査は、日本の市民が、科学の要請に応える積極的な地球温暖化対策の実施を求めていることを示している。麻生首相がもし低い2020年目標を選択してしまえば、自らを不利な状況に追い込み、民主党に対して有利な条件を与えてしまうことになる。地球温暖化への積極的な取り組みを支持する声が自民党支持者の中でも多いにもかかわらず、もし麻生首相が低い目標を選択する理由があるとすれば、それは、排出量が多く、儲かっている企業におもねることくらいしかない」とWWFグローバル気候変動イニシアチブのリーダーであるキム・カーステンセン(Kim Carstensen)は述べている。

この世論調査の結果発表は、世界的な政策提言団体アバーズ(Avaaz.org)、それに国際的温暖化防止キャンペーン『tcktcktck.org(チクタク)』による日本の2020年目標をめぐる主要メディアキャンペーンの一環として実施された。このキャンペーンによって、6月2日に、日本経済新聞の全面広告と、フィナンシャルタイムズ・ヨーロッパ編の全面広告が同時に行われた。これはドイツ・ボンにおいて6月1日から12日に開催されている国連の気候変動会議に合わせて実施されたものである。意見広告については、次のURL参照:www.avaaz.org/japan_climate_poll

日本経済新聞の広告では、マンガのキャラクター「麻生ロボ」を操縦する麻生太郎首相が、地球温暖化と経済危機の双子のモンスターと戦っている。広告では、麻生首相に、最良の武器、すなわち“25%削減”を使って、モンスターたちを打ち倒してくださいと求めている。麻生首相は、マンガ好きで知られている。今回の広告キャンペーンは、6月10日まで継続し、この日には、マンガ雑誌「ビッグコミック」誌にもこの広告が登場することになっている。「このメッセージはとても重要なので、確実に麻生首相に届くようにと、マンガ雑誌にも掲載することにした。もし、麻生首相がこのマンガのようにヒーローになりたければ、25%あるいはそれ以上の削減を2020年目標に設定することこそがそのチャンスだ」とパテル氏は言う。

この世論調査は、アバーズ(www.avaaz.org)、気候ネットワーク(www.kikonet.org)、WWFジャパン(www.wwf.or.jp)など、日本および国際的な市民社会グループによって調査会社に依頼され、実施された。なお、日本が、科学に基づく野心的な2020年目標を持つことを、192カ国から25万2千人以上のアバーズ会員が支持している。コペンハーゲンで期待される合意および温暖化に関する国際交渉についてのより詳細な情報はwww.tcktcktck.orgを参照されたい。

グリーンバーグ・クィンラン・ロズナー(GQR)による調査


「Earth Hour」とボンでの国連会議

3月28日、世界約4,000の町や都市で、1時間にわたり照明を切る世界的なイベント「Earth Hour(アース・アワー)」が開催されました。WWFは、イベントに参加した世界の人々が、各国政府の首脳に対し、温暖化防止を実現する前向きな約束に合意するよう訴えている、と、現在ドイツで開かれている国連の温暖化防止会議でその成果をアピールしました。

開催された「アース・アワー」

3月28日、世界88の国で、約4,000の町と都市が、それぞれの現地時間で午後8時30分、およそ1時間にわたり照明を切り、地球温暖化の問題に対する懸念を表明しました。
この「Earth Hour(アース・アワー)」は、京都議定書に続く、世界の新たな温室効果ガスの削減目標が決定される2009年に、WWFが国際社会を主導する各国の首脳たちに、温暖化問題への取り組みがいかに重要なことであるかを示し、市民の関心がどれだけ高いかを示すために呼びかけ、行なわれたものです。

3月29日には、ドイツのボンで、温暖化防止のための国連会議が始まりましたが、この会議の開始にあたって、国連気候変動枠組み条約(温暖化防止条約)事務局長のイボ・デ・ブア氏は、「アース・アワー」の行動に言及。
「世界中で、何千の都市にすむ何百万人もの人が、私たちに気候変動に対応した行動を求めている」として、約190カ国の政府代表に対し、温暖化防止を実現するための、積極的な交渉に挑むよう求めました。

始まったボンでの会議

4月8日までの日程で開催されている、ボンで始まったこの会議は、2009年中に開かれる4回、もしくはそれ以上になると見込まれる、一連の国際交渉の皮切りとなる会議です。
同年末に開催が予定されているコペンハーゲン会議では、京都議定書に続く、2013年以降の国際的な排出削減の枠組みが合意される予定で、その中では、日本を含む国々の新たな温室効果ガスの排出量削減目標も明らかにされます。

また、今回の会議は、アメリカがオバマ新政権となってから、初めて正式に参加する、国連気候変動会議でもあります。アメリカという、世界で最も地球温暖化問題に重い責任を持つ国が、実質的な意味で、国連気候変動会議の議論に、どのように「再参加」するのか。また、今後の議論にどのような影響を与えるのかも、注目されます。
WWFでは各国からスタッフが集まってこの会議に参加し、議論の動向をチェックしながら、各国政府代表への働きかけを行なっています。

オリンピックの会場となった、中国・北京の「鳥の巣」スタジアムにて。写真上は消灯前。下は消灯後の様子

子どもたちと、WWFのキム・カーステンセン(写真右)から、イボ・デ・ブア事務局長に手渡された、世界の「Earth Hour」参加者たちの声。


関連した国連会議(2009年)

2009年 国連気候変動バンコク会議

2009年 国連気候変動バルセロナ会議

2009年 国連気候変動ボン会議 1st

2009年 国連気候変動ボン会議 2nd

2009年 国連気候変動ボン会議 3rd


2009年 国連気候変動バンコク会議

2009年で4回目の国連会議

2009年は、12月までに今回も含めてあと2回の国連会議が開かれることになっています。そして、年末のデンマーク・コペンハーゲンで最後に開催されるCOP15・COP/MOP5において、2013年以降の国際的な枠組みについて最終的な合意がされる予定です。

日本では、9月に鳩山進政権が誕生し、選挙中の公約どおり、2020年に1990年比で25%削減することを、事実上国際公約しました。今まではとかく国 際交渉に後ろ向きであると評価されてきた日本が、野心的な目標を掲げてから、はじめての国連の気候変動に関する国際交渉デビューとあって、注目が高まって います。次期枠組みの合意に達するべきコペンハーゲン会議まであと3ヶ月を切った今、日本のリーダーシップが期待されます。

2つの会合

前回までと同じく、今回の会議も、具体的には2つの会合から構成されています。1つは、国連気候変動枠組条約の下に作られた条約AWGです。条約AWG は、京都議定書を批准していないアメリカや、京都議定書の元で削減義務のない中国などの途上国を含む、2013年以降の将来の枠組み全体を話し合う場で す。

条約AWGでは、前回のボン会議(8月/9月)に議長が用意した「交渉テキスト」を、より整理した文書を中心に議論が再開 します。この文書は、いずれ12月にデンマーク・コペンハーゲンで開催される会 議で採択される予定の合意の元になる文書です。ただし、現時点ではこの文書は、各国の主張の隔たりを列挙した内容であり、まだまだ約200 ページの長大な文書です。

今回の会議では、前回までの「適応」「緩和」「技術の開発と移転」「資金」「共有ビジョン」という5 つのグループに加え、「キャパビル」の6つのグループに分かれて、これらの中の2つのグループずつ、同時並行で交渉テキストの確認と議論が行われる予定で す。年末の合意へ向けて、隔たりの大きい論点をどれくらい整理していくことができるかが重要な課題となります。

もう1つの会合 は、京都議定書の下に作られた議定書AWG(特別作業部会)です。この会合は、日本を含む京都議定書の締約国の、2013年以降の新しい温室効果ガス排出 量削減目標を決定することを最終目的としています。これに関連して、先進国が目標を達成する際に、国家間の排出量取引、共同実施(JI)、クリーン開発メ カニズム(CDM)などの柔軟性メカニズムをどれくらい、どのような形で利用して良いのか、また、それらの仕組みをどのように改善するのかしないのかと いった点や、森林吸収源をどのように活用してもよいのかといった点も議論の対象となっています。

これら2つの会合での議論は重複する部分もありますが、様々な事情から、現時点では形式上、別の会議として議論されています。コペンハーゲンでの合意に至るどこかの段階では、これら2つの会議の成果を融合する作業が必要になります。

期待される日本政府のリーダーシップ

今までの日本は、先進国としての日本は野心的な削減目標を持たないまま、途上国側に強く削減行動を迫る姿勢が強く、交渉の進展を妨げるシーンが多くありま した。しかし、温暖化対策に積極的な鳩山新政権の誕生で、今までよりも、世界の交渉をリードして行く力を持ったといえるでしょう。

ただ、まだ日本政府は、いかにこの目標を達成するのか、また途上国での温暖化対策や適応対策(温暖化の被害に対応するための対策)への資金援助の仕組みについて、具体策を出していません。早急に建設的な提案を示して、議論をリードしていくことが必要です。

今回の会議では、中期目標や資金援助の枠組みについて重要な結論が出るわけではありませんが、これら2つの重要論点において、日本政府が積極的に貢献していくことがのぞまれます。

2009年 国連気候変動バンコク会議報告

日本の25%削減目標発表!

タイ・バンコクでの国連気候変動会議(2009年9月28日~10月9日)は、日本の鳩山新政権にとって、初めてとなる温暖化防止のための国際会議です。

2009 年6月にボンで開かれた同じ国連の会議で、当時の自民党の麻生前政権は、日本の中期目標を「2005年比15%削減(1990年比では8%の削減目標。京 都議定書の目標6%から、その後の8年間で2%削減を増やしたのみ)」と発表、国際社会からは失望の声が上がっていました。

その後、誕生した鳩山民主党政権は、選挙中の公約通り、2020年に「1990年比で25%削減する」ことを早々と公表し、9月22日の国連気候変動サミットにおいて、世界に向け、その目標を正式に発表しました。

日本へのまなざしは変わったか

今回のバンコク会議では、この日本の新しい25%目標が、世界(特に途上国)の国々からどのように受け止められるか、そして、迫る12月のコペンハーゲンでの合意までの交渉に、どのような影響を与えるかが、大きな注目点の一つとなりました。

バンコク会議初日の9月28日、AWGKP(京都議定書の下の特別作業部会:京都議定書に参加している先進国の次の目標を決める場)の本会議、途上国の集まりであるG77の各グループに所属する、ほぼすべての途上国は、日本の決断を高く評価しました。

「日本の新政権が発表した「2020年に1990年比で25%削減」を歓迎する。他の先進国は日本を見習って、野心のレベルを上げるべきである」。
同様の発言が、G77全体グループ、小島嶼国グループ、アフリカ・グループ、低開発途上国グループ、インド、ブラジルの各国代表からありました。

日本政府の発表も期待されましたが、時間切れで、午後のコンタクトグループでの会合に移りました。そして、このグループで日本代表は、「新政権の方 針で、 日本は目標を2020年に1990年比で25%に上げた」と発表。しかし、この発表に際しても、代表団は、「これは他の大量排出国のすべてが参加する効果 的な枠組みが前提である」と念を押していました。

変革がもたらしたもの

この、「日本の25%は、他の大量排出国の参加が前提」というフレーズは、日本代表団が発言のたびに、くどいほど幾度も繰り返している主張です。まるで、日本だけが突出して高い目標を持つことを、ひどく恐れているかのようです。
実際、今回のバンコク会議に臨む日本の政府代表団(通常100人規模の外務省、経済産業省、環境省の官僚)は、前政権時とメンバーが基本的に全く代わっていません。

会議3日目、日本の政府代表段は、途上国の激しい質問に対しても強硬な物言いを続けましたが、翌日になると、「日本は25%削減を発表した。それは他の大量排出国の参加を願ってそれを促すものである」と、和らいだ表現に立ち戻りました。
おそらくこちらの方が、新政権の交渉姿勢をあらわすものと考えられます。

いずれにしても、政治のリーダーシップによる変化が、ここでも見受けられました。前政権までの日本政府は、気候変動の国際交渉には非常に後ろ向き で、削減 から逃れるための議論にエネルギーの大半を注いできましたが、今回のバンコク会議では、その代表団も一気におとなしくなったように見受けられました。

むしろ、待っていたのは、世界の温暖化防止をリードする、ヒーローの座。今までのように、「基準年を1990年から2005年に変えるべき」などという主張に声を張り上げる必要もなく、日本を激しく責める発言も、途上国の間からはほとんど聞かれなくなりました。

国際舞台での期待

先進国が野心的な削減目標を持つと同時に、もう一つ大切な課題は、途上国が受けている温暖化被害の「緩和」と、影響への「適応」をサポートする資金の話を進めることです。

鳩山首相は、国連気候変動サミットにおいて、「相当量の新規で追加的な公的、私的資金が必要である」新たな資金メカニズムは「国連の気候変動に関する枠組みの下で」と語りました。これも、今までの日本の交渉姿勢にはなかった新たなリーダーシップです。

そして、日本政府代表団は、一週目の最後の中間報告で、25%の目標と合わせて「日本は資金や技術のサポートについてもリードしていく」と発表しました。
鳩山首相の発表から一週間しかたっていない、このバンコク会議の時点では、実際の資金サポートの提案までは望めませんが、早急な対応が期待されています。

そして、バンコクでの会議は前半の1週間が終わった時点で、日本は「化石賞」(毎日、温暖化防止に後ろ向きな国に贈られる不名誉な賞)を、一つもとっていません。これまで、交渉を妨げる常連国だった国が、一週間の間、この賞を一つもとらなかったのです。

政治主導による交渉のこれから

いずれにせよ、今回の日本の鳩山政権の誕生は、政治のリーダーシップというものが、どれほど、日本の方向性を変える力があり、世界からも正当に評価されるものであるかを明らかに見せ付けるものとなりました。
これまでの日本は、野心のない提案を出しながらも、それが野心的であると言い立て、世界の交渉団から久しく酷評を浴びてきました。それが今、変わろうとしています。

また今回の会議では、世界の温暖化防止に取り組むNGOの間からも、日本のNGOのメンバーが、拍手を浴びて「おめでとう!」と言われ続けています。

交渉は、これからが真の政策提案の場となります。WWFをはじめ、各NGOのメンバーも、政治のリーダーシップの威力を強く感じ、高揚した気分の中で、改めて気を引き締めています。

AWGKP報告

2006年から議論が始まった、AWGKP(京都議定書の下の特別作業部会:附属書1国の次期枠組みにおける削減目標を決める場)では、すでに細部にわたった議論が進んでいます。

一番肝心な附属書1国(主に先進国)の削減目標を交渉する、「ナンバー」のコンタクトグループでは、会議初日の9月28日に、日本が鳩山政権に変 わって、 目標を2020年に1990年比で8%から25%へと大幅に引き上げたことが発表され、途上国からも高い評価を受けました。

翌29日には、日本の新目標を入れた、附属書1国全体の目標が、新たに条約事務局から発表されました。
それによると目標は、森林吸収源をいれずに、森林減少からの排出(現行の京都議定書のルールに従って)を入れた計算では、附属書1国全体で16~23% の削減、吸収源を入れた計算では15~22%となります。目標値に幅があるのは、国によって条件付けをしており、目標に幅を持たせているためです。

日本が目標を引き上げたことによる効果は、全体幅のほぼ1%引き上げにつながったようです。結論として、まだまだ科学が温暖化の影響を食い止めるために必要だとしている「25~40%の削減」には、到底届いていません。

途上国グループはこぞって日本を賞賛しながら、他の先進国が続いて野心のレベルを上げることを強く迫っていました。対して先進国は、アメリカのいな い場で 先進国全体の幅を議論することの無意味さを強調。AWGLCAと統合し、議論を進めていくことを強く主張しました。このように、議論は相変わらず同じとこ ろを回り続けており、解決の糸口は見いだせていません。

他方、4日目に開催された同じ削減目標に関するコンタクトグループでは、基準年と約束期間の長さが話し合われました。
前政権までの日本は、2005年を基準とした15%の削減目標を掲げていた(1990年よりも大幅に排出を増加させている日本は、基準年を直近にした方 が削減数値を大きく見せられる)ため、複数の基準年を設置することを主張、1990年を主張する途上国やEUと対立していました。しかし、新政権に移った 日本が、1990年に基準年を変更したことにより、議論の雰囲気は一変。締約国は次々と、1990年を基準年とすることに合意しました。

残るは、2006年を基準年とするカナダのみ。1990年よりも20%近く排出を増加させているカナダは、事実上、京都議定書の目標達成を断念しています。そのため2006年比で20%の削減目標を公表しており、1990年比に合意することに強く反対しています。

 途上国から「計算上2006年比を1990年比に直すことは可能であるのだから、1990年比で附属書に記載することにしてはどうか」という質問に対し、カナダ代表団は「それでは国内の了解が得られない」と苦しい抗弁を行ない、各国から集中的に責められていました。
わずか2カ月前まで、日本も同様の主張を繰り返してきたことを考えると、政治のリーダーシップ一つで、これほどまで一つの国の方向性が変わるものなのかと、感慨を禁じえません。

結局、カナダの反対で、締約国は合意に至ることができず、約束期間の長さとともに次の話し合いに持ち越されました。
その他AWGKPでは、「吸収源」「市場メカニズム」などが引き続きコンタクトグループで議論されています。これらのいずれもが、どのようなルールを採 用するかで、削減目標値を大きく左右することになります。従って、目標値について合意する前に、ルールが決まることが望まれています。

AWGLCA報告

アメリカや途上国を、新しい温暖化防止の枠組みに参加させるための、AWGLCA(気候変動枠組み条約の下の特別作業部会:京都議定書に参加してい ないア メリカ、および、京都議定書の下で削減義務を負っていない途上国の双方を含めた次期枠組みの話し合いの場)。ここでは、議長が今回の会議のために用意した テキストを、締約国全体で吟味して、意見の合うところをまとめ、コペンハーゲンでの合意に向けて、新枠組みの条約のドラフトを作ることをめざしています。

これまでの締約国の提案と、数回の会議における議論をまとめたテキストは、6月のボン会議の時点で、50ページにまとめられましたが、さらにそこへ各締約国が意見の挿入を重ねた結果、再び膨れ上がり、200ページになりました。

各締約国の言い分を羅列したこの200ページのテキストは、今回のバンコク会議では、少なくとも、各附属書(Annex)ごとに文書がまとめられ、 議論を 進めやすいテキストとなって登場しました。そして、会議では、各附属書ごとにワーキンググループに分かれ、テキストの統合に取り組むこととなりました。
しかし、このテキストはまだ181ページもあり、これをなんとか半分以下のページ数に縮小できるかどうかが今回の大きな課題となっています。

テキストは「バリ行動計画」で定められた、5つのビルディングブロック(共有ビジョン、緩和、適応、技術移転、資金)に分けられ、そこへ今回は、途上国から要望の多かったキャパシティ・ビルディングが加わりました。
重要な「緩和」の問題に関しては、さらに5つのワーキンググループに、内容が分けられ、1bi(先進国の緩和), 1bii(途上国の緩和), 1biii(森林減少防止), 1biv(セクター別行動), 1bⅵ(対応措置)となっており、それぞれに議長が決められ、議長にテキストを縮小することが期待されました。
このうち、一番重要な共有ビジョンと先進国と途上国の緩和は、LCA全体議長のクタヤール議長が担当しました。それぞれの議長は以下の通りです。

 

Shared Vision: Michael Zamit Cutajar (Chair of LCA)

Mitigation Overall:

  • 1bi and ii): Cutajar first, then Margaret Mukahanana-Sangarwe (Zimbabwe) and Thomas Becker (Denmark) in closed sessions
  • 1biii REDD : Tony La Vina (Philippines)
  • 1biv COOP SECTORAL and SECTOR-SPECIFIC ACTIONs: Farrukh Iqbal Khan (Pakistan)
  • 1bv MARKETS:TBD
  • 1bvi RESPONSE MEASURES: Mamadou Hondia (Burkina Faso) and Mama Konate (Mali)

Finance: Luis Figueiredo, Brazil (Co-chair of LCA)

Technology:Kunihiko Shimada (Japan) and Kishan Kuarsing (Trinidad and Tobago)

Adaptation: William Kojo Agyemang-Bonsu (Ghana) and Thomas Kolly (Switzerland)

CapacityBuilding: Fatou Ndye gaye(Gambia) and Georg bosting (Norway)

 

共有ビジョンの議論の進展

まず、共有ビジョンにおいては、議長がテキストを縮小するため、まず、「中期目標に関する緩和の話し合いは、共有ビジョンではなく、1biと1biiの緩和のワーキンググループ(以降WGと記す)に輸出する」ことを提案しました。

しかし、アメリカが、先進国と途上国の緩和を分けて議論することに、強い反対を示しました。緩和全体の共有の議論の場として、「共有ビジョンの中 で、その 話し合いを進めること」を主張していた途上国は、これに当然猛反発し、議論は紛糾しましたが、議長は結局、「中期目標の話は、1biと1biiの緩和に移 すこと」とし、共有ビジョンは、2050年の長期目標や、新枠組みの究極の目標を中心として議論することになりました。

4日目には議長の提案(Non-paper No.5)により、議論を整理できる可能性のあるところ、資金や適応などへ議論を振り分けられるところなど、少しテキストが整理されてきました。

レビューのオプションは3つに分かれており、小島嶼国が提案するオプション1(5年ごとの科学的レビューと政策実施レビュー)、オプション2(2度 未満を 究極目標とし、それを10年ごとに0.2度目標と分配して、評価していく)、日本が提案するオプション3(約束期間の5年前に科学に沿ったレビューを行な い、先進国の目標の見直しと、途上国の削減行動の見直しを行なう)を検討しましたが、結論は出ず、先送りとなりました。

 

緩和の1biと1biiの議論の進展

先進国の「緩和」を議論する1biと、途上国の「緩和」を議論する1biiは、今回の気候変動会議のコアを成すものです。
大枠を説明すると、まず1biは、一言で言うならば、アメリカを議論する場。途上国は、25%へ中期目標を挙げた日本を賞賛しながら、アメリカに大幅な 目標を掲げることを迫りました。しかし、アメリカの代表団は、まず先進国の緩和だけを話し合うことを拒否し、先進国、途上国共有の緩和を議論する場を設け ることを要求しました。

上記の共有ビジョンで、その全体の緩和を話し合うことを確保できなかったアメリカは、この緩和の場でそれを求めましたが、他の先進国はその意見には賛成するものの、願いはかなえられませんでした。

途上国の多くは、AWGKPで条約事務局が示した先進国全体の削減幅表を、このAWGLCAでも出すように求め、いまだ明らかにされていないアメリカの削減目標を入れた全体削減表を事務局が出すように要求しました。

確かに、アメリカ国内の下院を通過したワックスマン・マーキー法案、そして10月1日に乗員に提出されたボクサー・ケリー法案には、全米を対象とし た排出 量取引制度提案が含まれており、そこには目標数値が入っています。これらの法案は、まだアメリカの上院を通過していないため、その内容に書かれた数値を公 とすることには、大きな無理がありますが、途上国、そしてEUは、あえてそれの明示を求めたわけです。
果たして、削減幅表が出てくるのかどうかは、会議2週目に持ち越されることになりました。

なお、今回の会議で、アメリカの扱いは、さらに複雑さを露呈してきました。アメリカは、6月に条約事務局に"Implementing Agreement"(協定を実施すること)と題した、新議定書案を提出しています。アメリカによれば、「これは議定書と同じ効力を持つ協定案」というこ とになっています。

しかし、その中には、国際交渉によって目標数値を決めるというよりも、"In accordance with domestic law"(国内法と一致する形において)と示されているように、アメリカの国内法で定められたことを、国際条約に持ち込むとしか解釈できない部分がありま す。つまり、アメリカの中期目標は、国内法が決まってからしか、国際条約で約束できない、ということを意味しているのです。

それを意識してかどうか、アメリカ代表団は、今回MRV提案を強く推している。MRVとは、"measurable, reportable, and verifiable"の略で、計測、報告、検証可能な排出量測定方法を意味します。つまり、このMRVを国際的に共通の手法にすることによって、新協定 の削減目標を掲げることや、遵守の代わりにしよう、という主張と思われます。

アメリカの国内法は世界でも非常に強い部類に入るから、MRVが国際的に約束されれば、アメリカの遵守を確保できる、ということなのかもしれません。

いずれにしても、即座に中期目標の数値を示すことは、少なくとも今回のバンコク会議では期待できるものではなく、従って、先進国全体の削減目標を図ることも、もちろん望めるものではありません。

この問題は、緩和のコアであるだけでなく、次の枠組みの形にかかわる大きな問題です。コペンハーゲンで新しい議定書になるのか、京都議定書の改定に なるの か。それとも、アメリカの国内法を尊重したやり方にするのか。先進国の緩和1biは、アメリカの国内事情を注視しながら進めていくことになると予想されま す。

さらに、もう一つの注目点として、オーストラリアが6月に提案した議定書の中で展開している「スケジュール方式」があります。これは、各締約国が2050年に向けた道筋を、各約束期間ごとに、削減行動を定義していく、というものです。

この案では、削減行動は、先進国は国全体の総削減目標(QELRC)に、途上国は当該国にとって適切な削減行動(NAMA)に基づいて進められ、全 締約国 は低排出開発戦略を提出することになっています。そして、各約束期間ごとに、削減のベースラインと、削減量の推定を提出するというものです。オーストラリ アはこれを積極的に展開しており、アメリカにも勧められるとしているようです。

その他

技術移転はテキストの統合がうまく進んだようで、一週目の終わりに19ページに縮小することに成功したほか、「適応」についても、縮小が終わり、ODAの追加になるかどうかが議論されている模様です。

すべてについて合意はまだ出来ていませんが、会議一週目の進展としては、合意を物語るテキストが形を整えつつあるといえます。


記者発表資料 2009年10月9日

国連気候変動バンコク会議終了:交渉テキストのページ数は減ったが、難題はふえた

2009年9月28日から10月9日まで、バンコクでの交渉に参加した各国代表団は、長くて難しい交渉を終えた。技術的な点で多少の進展があったものの、交渉団に本国から十分な権限が与えられていなかったため、12月の合意に向けて大きく前進するために必要とされた現状打破はできなかった。

数百ページの交渉テキストを検討して、ざっくり半分に削ったことは、交渉官たちにとって大変な作業であっただろう。しかし、資金提供の実施やその機関、排出削減目標、次期合意を法的にどう位置づけるかなど、殆どの重要課題については、進展させることができなかった。

「今回の会議の結果、交渉テキストの長さは短くなったが、中身はそれほど改善されなかった」WWFグローバル気候変動イニシアチブ・リーダーのキム・カーステンセンは評する。

「どこに政治的な障害があるかが以前より明らかになり、交渉官より首脳たちこそが、その障害を調整する必要があることがわかった。12月のコペンハーゲンでの気候変動会議の前に、再度、各国首脳は一堂に会すよう、WWFは求める」と、キム・カーステンセンは強調した。

「コペンハーゲン会議までに、交渉日程としてはたった5日間しか残されておらず、交渉団に十分な権限がないことで時間を浪費するわけにはいかない。交渉官は必ず、11月のバルセロナ会議には、新しくて明確な政治的指示を携えて臨まなくてはならない」とカーステンセン。

バンコク会議において京都議定書の将来が脅かされる場面があり、またいくつかの先進国は京都議定書を葬り去ろうとしていることが分かった。今や、すべての参加国の責任ある政治的行動が求められているのである。

「京都議定書をないがしろにして、全く新しい国際約束に置き換えることが出来るという提案は、現時点では生産的ではない。京都議定書を完全に置き換えるという道筋は、とても時間がかかり、しかもそれによって果たして何が達成されるかもわからない。おそらくその過程は、より悪いほうへ悪いほうへと状況が流れていくという事態を招くだけだろう」とカーステンセンは言う。

バンコク会議は、米国上院で法案が成立していないことが、依然として、話し合いの進展の大きな障害となっていることを示した。そして、リーダーシップと明確な意思を示すことが出来ていないEU(欧州連合)が会議の進展を妨害するという、憂慮すべき徴候も見えてきた。

「米国上院で法案が成立していないということは、皆が暗黙のうちに気にしている大きな課題であることは間違いない。しかし、そうした課題は、いまや複数ある。私たちは、それらの課題に本格的に取りくむ時期に来ているのだ。 資金提供とその制度についての明確な立場を示せないなら、もはやEUを気候変動交渉のリーダーと呼ぶことはできない。その主導的立場は日々失われつつある。10月末の欧州閣僚理事会は、この状況を修正するための明白な機会だ」とカーステンセンは述べた。


2009年 国連気候変動バルセロナ会議

2009年12月のコペンハーゲン合意を控えた最後の交渉機会として、11月2日~6日の日程で国連気候変動会議が、スペインのバルセロナで開催されました。 今回もこれまでの会合と同様、条約AWGと議定書AWGの2つの特別作業部会(AWG)が同時並行で開催され、議論が戦わされましたが、「本番前最後の交渉機会」であったにもかかわらず、切迫感の欠ける会議となりました。その中で、会議の動向として注目に値する、4つの点について取り上げてみます。

「政治的合意」か「法的拘束力のある合意」か

会議の冒頭、ホスト国の大臣やUNFCCC事務局長らのスピーチがあるのが通例です。今回は、それらと同時に、次回コペンハーゲン会議をホストするデンマークから、コニー・ヘデガー気候・エネルギー大臣のスピーチがありました。

コペンハーゲンでの合意が厳しいという憶測が飛び交う状況を憂いてか、ヘデガー大臣のスピーチの中には、以下のような発言がありました。
「来春、1年後になれば、合意をするのが容易になると、本当に言えるのでしょうか?」
ヘデガー大臣のスピーチは、全般的には、遅々として進まない交渉状況に対する危機感の表れた良いスピーチだったといえます。

しかし、この日、デンマークという国自体が、環境NGOから「本日の化石賞」を受けることになってしまいました。それは、デンマークのラスムセン首相が、コペンハーゲンにおける「政治的合意」を唱えていることに対しての授賞でした。
そして、この「政治的合意」という言葉こそ、コペンハーゲンでの合意が無理であること、を前提とした言葉だったのです。

この「政治的合意」という言葉は、これまでコペンハーゲンでの合意が目指されてきた「法的拘束力のある合意」と対置して使われるようになってきた言葉です。
つまり発言の意図は、コペンハーゲンの段階で、新しい議定書などの「法的拘束力のある合意」はもう無理であるから、それまでの間をつなぐものとして、「政治的合意」を達成することを、今の段階から目指そう、ということになります。

これは、コペンハーゲンでの大きな合意が無理そうだ、と言うことに対する、現実的な対応であると同時に、コペンハーゲンに対する期待値を下げて、大きな合意が出来なかった時の政治的なダメージを抑えよう、という動きでもあります。

この「政治的合意か、法的拘束力のある合意か」という問いは、会議場の中でおおっぴらに語られることは、これまで多くはありませんでしたが、会議の間のカフェテリアの雑談で、会議後の各国代表らのプレス会見のちょっとした一言で、また、非公式な会合の中で、人々の口の端に上ってきていました。

現状、コペンハーゲンでの議定書の締結など、最終的な合意がかなり厳しくなってきているのは事実です。しかし、会議の前から、期待値を下げるようなそぶりを見せるホスト国に対し、NGOは危機感を募らせました。
今回の会議に、今一つ切迫感が無かったのも、こうした「最終的な結末」 に対する不明瞭さと不安感が、会議の個別議題の議論にも影を落としていたためだったといえるかもしれません。

アフリカ・グループの怒り

会議での交渉は、初日から紛糾しました。
2つの作業部会(条約AWG・議定書AWG) のうち、議定書AWGにおいて、予定されていた吸収源およびメカニズムに関するコンタクト・グループ(分科会)の会合が急遽キャンセルになったのです。

その理由は、アフリカ・グループが、同コンタクト・グループでの交渉継続を拒否したからでした。より正確に言えば、アフリカ・グループは、議定書AWGの下で進められているコンタクト・グループのうち、先進国の削減目標に関するグループのみに議論を集中させることを要求し、その他のグループについての交渉継続を拒否したのです。

この背景には、3年以上に渡り議論が続けられてきたにもかかわらず、目立った前進を示すことができなかった議定書AWGの交渉に対する、同グループの強い憤懣があったようです。

この紛糾を解決するため、議長を含めた非公式での調整が進められ、結局、議定書AWGの再開には一日以上を要することになりました。
当初は、途上国グループの中でもこうしたアフリカ・グループの行動については多少の異論もあったようですが、非公式会合で決まった妥協案についての発表が行なわれた議定書AWGの臨時総会では、途上国グループは一致して、アフリカ・グループの主張を支持。
最終的に得られた妥協点は、今後の交渉時間の6割を先進国の目標に関する議論にあて、残りの4割をその他の議論にあてる、という内容となりました。

結果として、貴重な交渉の時間が失われてしまったので、果たしてアフリカ・グループが意図した結果が得られたのかどうかは判断の割れるところですが、先進国の目標に対する不満が交渉に大きな影響を及ぼし得ることが、あらためて確認されました。

鳩山イニシアティブ

日本について、今回の会議で最も注目を集めると、当初から思われていたのは「鳩山イニシアティブ」でした。
この「鳩山イニシアティブ」は、2009年9月の国連気候変動サミットで、国際的に宣言された、日本の途上国支援の枠組みです。9月の時点では、原則が述べられただけだったので、今回の会議までにより具体的な案が示されることが、期待されていました。
このイニシアティブ、原則の段階で、新規かつ追加的な資金の必要性の認識など、比較的よい内容が盛り込まれていたため、期待が集まっていたのです。

そのようなわけで、会議初日の午後に開催された条約AWGの資金に関するコンタクト・グループでも、日本政府代表団からの「発表がある」、と事前に聞いていたNGOのメンバーも、コンタクト・グループの会場に参集し、どのような発表がされるのかに注目していました。

ところが、その発表は拍子抜けするほどあっけないものでした。日本政府からの発表は、資金のグループで議論しているノンペーパーと呼ばれる文書へのインプットとして行なわれましたが、そもそも、内容を説明した紙すら、発表の時点では会合参加者には配られなかったのです。
「文書は条約事務局に提出した」ということで、発表は口頭でのポイント説明だけでした。今回のバルセロナ会議の会議場は、音響が極めて悪く、個々の発言が聴きにくかったこともあり、提案の内容自体が、この「発表」のタイミングで参加者にどれほど伝わったか定かではありません。

そして、提出された内容をコンタクト・グループ終了後に確認して見ると、NGOが期待していた内容はほとんど盛り込まれておらず、残念な内容であったことも分かりました。

この内容について、NGOが注目していたポイントは3つあります。

1つ目は、資金の規模。日本の提案は、3つの基金の設立を提唱していますが、資金の規模は明らかにしませんでした。

2つ目は、資金源。気候変動に対する取り組みを継続的に支援していくためにも、安定的かつ予測可能な資金源の確保が課題であると考えられています。しかし、日本の提案は、この点についても、期待に応える内容ではありませんでした。また、3つの基金うち、適応基金については、柔軟性メカニズムの収益の一部を活用することが提案されていますが、その他の2つの基金については、自主的拠出を受け入れる、ということしか示されていません。自主的拠出に頼るということは、従来型の基金と変わらず、再び、充分な資金が集まらない可能性があることを物語るものです。

3つ目は、資金を管理する制度的・組織的体制について。資金拠出国の意向ばかりが重視されることなく、公平なガバナンスが求められる、という点です。そのためには、意思決定機構を、国連の枠組みの下に置くことが望ましいといえます。しかし、日本の提案は、「COPのガイダンスの下で」という言葉は入れながらも、基本的には既存の機関による管理下にそれぞれの基金を置くことを示唆するものでした。

9月の国連サミットの場で、「25%削減目標」と共に、鳴り物入りで発表された鳩山イニシアティブ、当然、NGOの期待も高まっていたため、日本提案の不充分な内容には失望感が漂う結果となりました。
しかし、日本政府は、鳩山イニシアティブの全容については徐々に明らかにしていく方針であるようなので、まだ、提案の内容は改善されて行く可能性は残されています。そこに、一縷の望みがかかっている、といえるでしょう。

小さな前進

今回のバルセロナ会議は、普段と比べ、密室での非公式会合が多い会議でした。
議定書AWG・条約AWG共に、オブザーバーが参加出来ない密室での会合が連続し、会議の状況が、なかなか分からない事態が続きました。

そのような中、比較的、表にも議論が出てきたのが、議定書AWGの先進国の削減目標に関するコンタクト・グループでした。

そして、そのコンタクト・グループでは、進展が乏しかったこのバルセロナでの会議において、小さな前進が見られました。とても「ブレークスルー」と呼べるような内容ではない、地味な進展ではありましたが、今後の交渉に、小さいながらも希望を持たせる内容でした。

その内容は、先進国の次期目標の約束期間と基準年、オフセット・吸収源の使用割合などの論点について、選択肢が徐々に絞られ、かつ情報が少しずつ明らかになってきた、というものです。

まず、約束期間について。
現在の京都議定書の約束期間は、2008~2012年の5年間となっています。
他方、次期枠組みにおける約束期間の長さについては、現時点ではいくつかの考え方があります。
1つは、京都議定書と同じように5年間とする、つまり2013~2017年とする考え方。
2つ目は、8年間、つまり2013~2020年までを約束期間とする考え方です。
さらに3つ目として、5年間を2回、つまり2013~2017年、2018~2022年までとして、第3約束期間まで決めてしまおう、という考え方です。

日本やEUは8年間を支持し、途上国は5年間、もしくは5年間を2回支持していました。
日本やEUが8年間を支持するのは、その更に先の第3約束期間を見据えた場合、交渉の期間や国内体制の整備等を考えると、5年間ではキツいという理由からでした。
途上国グループが5年間を支持したのは、2014年に出るIPCC第5次評価報告書の知見を早期に反映させるためにも、5年間という短い期間にしておいた方が良いということがありました。

交渉は、主に8年間もしくは5年間という2つの選択肢の間で議論され、5年間を2回という案はまだテーブルの上には残っているものの、徐々に絞られてきた感があります。

基準年については、1990年を基準年として決める方式と、1990年の他に各国が好きな年を基準年として選択できる方式の2つの間で議論がなされました。
後者を支持したのは日本やカナダ、そしてニュージーランド。日本は、鳩山政権下での新目標は1990年比で立てているので、本来、基準年が1990年でも問題はないはずですが、主にアメリカに対する配慮から、カナダと共に特にこの点を強調したようです。

この背景には、アメリカで現在議論がされている法案が、いずれも2005年を基準年として目標を提示していることがあります。そして、議定書批准国でないアメリカは、議定書AWGの議論には、今のところ参加していません。したがって、ここでの交渉結果が、今後「アメリカ参加」の障害となるような状況を作り出したくない、というのが、これらの国々の考える理由になっているのです。

もっとも、アメリカという国がどれほど2005年という基準年にこだわりを見せるかは、分かりません。
ただ、1990年を一番基本的な基準年とすることには、多くの国が合意をしていることから、問題は、それ以外の基準年を採択の自由がどれくらいあるか、1990年という基準年を法的拘束力のあるものとして扱わなければならないのか、といった点に議論が収束してきた感があります。

この論点については、南アフリカを中心とする非公式なグループによって、個別協議が行なわれ、妥協案が次回会合で提示されることになりました。

最後に、オフセット・吸収源の割合について。
以前から、途上国の側より、先進国がすでに発表している目標のうち、一体どれくらいが国内削減で、どれくらいがオフセットや吸収源などに頼る削減なのかを明らかにせよ、との要望があがっていました。
今回の会議で、この論点が再び上がってきた1つの背景には、個々の先進国の目標を積み上げた先進国「全体」での目標が、「1990年比で10~17%程度にしかならない」ということを受け、いかにして目標の水準を引き上げるかを検討するよう、途上国が強く要請したことがあります。

そして、その1つの可能性として「オフセットの利用を拡大したら、どうなるのかについても検討して欲しい」との発言が、小島嶼国連合(AOSIS) や南アフリカから出されました。
オフセットという仕組みについて、従来厳しい意見を持っていたAOSISの立場からすれば、やや意外な発言ではありましたが、それだけ、目標に関する危機感があるのかもしれません。

この流れを受け、会議最終日前日の11月5日に、先進国が既に発表している個々の自主目標のうち、オフセット・吸収源の割合について、現状わかっている範囲の情報でよいから情報を出し、それを条約事務局がまとめ、最終日にペーパーとして参加者に配布されることになりました。

各国が発表している目標は、あるものは吸収源の利用を想定しており、またあるものは京都メカニズム等のオフセット・メカニズムの利用を想定しています。それぞれの想定のおき方についてもバラバラであるため、現状では各国の目標を横一列に並べて比較するのは難しいと言わねばなりません。その中で出た途上国からの要請は、それを可能にするための情報がほしい、というものでした。

しかし、これについて、先進国側はあまり積極的な態度を見せていません。
たとえば、オフセットの利用について、EUやニュージーランドは、どれくらい利用することになるかは事前に決まっているものではないので、難しいと渋る態度を見せました。また、日本のように、そもそも内訳についてはまだ決定していない国もありました。

結局、各国とも出せる情報は出したものの、数値的な情報を出せた国はさほど多くはなく、カナダ、EU、ノルウェー、ベラルーシなど、一部に留まりました。オーストラリア、スイス、ニュージーランドなども情報は提出したものの、定性的な表現に留まり、日本にいたっては、国内の議論がまだ進んでいないため、オフセットおよび吸収源いずれの情報についても、提出ができませんでした。

それでも、こうした情報が、まがりなりにもそろい始めたことによって、目標に関する具体的な議論が開始される兆しが見えてきたといえます。

以上のように、今回のバルセロナ会議では、それぞれの論点について、決して大きな進展があったわけではありませんが、会議場での議論は意外なほどに建設的な雰囲気で、先進国目標にかかわる個別論点についても、徐々に整理が進みつつあります。
おそらく、目標値という数字の議論は、最終局面にならないとなかなか決まらないと予想されますが、その周辺の「形式」に関する議論は、可能なだけでも進めておこう、という各国の姿勢が垣間見えました。

コペンハーゲンでの合意へ向けて

上記に述べてきた以外にも、他の個別論点でもさまざまな議論がありました。
中でも、部分的には進展と呼べる展開があったようです。しかし、会議全体として見たとき、着実な前進を見せたとは言いがたいその最大の理由は、コペンハーゲンでの最終的な合意のイメージがなかなか見えてきていない、ということです。

その不透明感は、今回の会議の成果のまとめ方にも影を落としました。
今回の会議の成果をどのようにまとめるのかについては、会期中から関心の的でした。

理想の型としては、現在、分割してバラバラに交渉をしている各分野の「ノン・ペーパー」を呼ばれる交渉文書を再度統合し、1つの文書に纏め上げて、次回のコペンハーゲン会議に送る、ということが考えられました。
しかし、結局、条約AWG、議定書AWG双方ともに、そのような統合形式で結論を得ることはできず、現状の文書はバラバラのままで扱われることになりました(条約AWGでは、今回の会議の報告の中に、形式上はまとめて入れ込まれるが、内容が統合されるわけではない)。

最後にそれぞれの総会で議長がアナウンスしたところによると、次回の会議では、「議定書AWGは、現在と同じ構成でコンタクト・グループを途中まで続け、第1週のある地点で1つのコンタクト・グループにまとめていく」ということのようです。
これに対し、条約AWGは「これまで複数のコンタクト・グループに分かれていた議論を、当初から1つのコンタクト・グループの下で行なっていく」ことにしました。

いずれも、コペンハーゲンで最終的な合意を目指すとなれば必要な作業ではありますが、交渉の現状を考えると極めて野心的な作業プランであるように見えてしまう点は否めません。
交渉が行き詰まる原因となっているような争点については、政治的な判断が必要なものもあるため、次回の会議に、どれくらい政治的な判断を下せる閣僚級、そして首脳級が乗り込んでくるかが、交渉のデッドロックを乗り越えていく際の鍵になりそうです。

なお、日本については、今回は世界の期待に応え切れませんでした、資金についての案を、少なくとも練り直してくることが1つの大きな課題になりそうです。

残された時間はわずかですが、政治や世間の関心は高まってきています。その勢いを活かし、総合的な合意を達成することができるか。交渉は、いよいよ正念場を迎えることになります。


2009年 国連気候変動ボン会議 1st

2009年3月29日から4月8日まで、2009年で初めての国連気候変動会議が開催されました。2009年は、今回を皮切りに、12月開催のコペンハーゲン会議まで、合計4回(5~6 回に増える可能性もあります)の国連気候変動会議が開かれることになっています。

009年 2ボン会議(第1回目)について

コペンハーゲンへ向けた「交渉」の始まり

2009年12月のコペンハーゲンの会議では、2013年以降、世界がどれくらい温室効果ガスの排出量を削減するのか、その枠組みが合意される予定で、中には日本を含めた国々の、京都議定書に続く、新たな温室効果ガス排出量削減目標も含まれます。

今回の会議は、そのコペンハーゲンで合意を目指しての交渉を始める会議です。2007年のバリ会議において「バリ・ロードマップ」が採択され、 2009年末での合意を目指すことが決まって以降、国々はさまざまな分野についての意見交換と議論を重ねてきました。しかし、2009年は、年末の合意を目指して、本格的な「交渉モード」に突入していくことが必要です。

2つのAWG

今回の会議では、大きく言って、2つの会合が開かれます。

条約AWG

1つは、国連気候変動枠組条約の下に作られた条約AWGです。条約AWGは、アメリカや途上国を含む、2013年以降の将来の枠組み全体を話し合う場です。

前回のポズナニ会議の際には、各国の意見提出を元に議長が120ページ超の通称「アセンブリ(編纂)・ペーパー」をまとめ、さらに議論を行ないましたが、今回の会議にあわせて、議長はさらに意見の集約が見られるところと、まだ隔たりが見られるところに分けた「フォーカス文書」を作成しました。

今回の会議は、この文書を土台として議論を行ない、6月に予定されている本格的な「交渉テキスト」(最終的な合意の下書きになりうる文書)の交渉へとつなげていくことが課題です。

議定書AWG

もう1つは、京都議定書の下に作られた議定書AWGです。この会合は、日本を含む京都議定書の締約国が、2013年以降の新しい温室効果ガス排出量削減目標を決定することを最終目的としています。

これに関連して、先進国が目標を達成する際に、国家間の排出量取引、共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM)などの柔軟性メカニズムをどれくらい、どのような形で利用して良いのか、また、それらの仕組みをどのように改善するのかしないのかといった点や、森林吸収源をどのように活用してもよいのか(だめなのか)といった点も、議論の対象となっています。

今回の会議では、予定では「先進国全体」の2020年までの目標を決定することが期待されていますが、日本のように、個別の国でまだ中期目標に関する考え方をまとめきれていない国もあるため、どれくらい進展を示すことができるかが課題です。

二つのAWGの関係

この2つの会合(条約AWGと議定書AWG)の議論は、会議が作られた背景がそれぞれ違うため、現在は別々に議論をされていますが、議論の中身は密接に絡み合っています。

たとえば、一つの例としては、先進国としては、議定書AWGでの議論を先に進めて、アメリカを除いた先進国の目標だけを決めるということは避けたいと考えていますが、途上国としては、議定書AWGでの議論に進展がない(=先進国が責任を果たしていない)段階で、条約AWGのトピックの1つである将来的に途上国がどのような削減行動を行なうのかという議論を進めることはできないという事情があります。

また、条約AWGでは、温室効果ガス排出量削減テーマだけでなく、気候変動の影響に対応するための「適応」や、排出削減・適応それぞれに関する資金的・技術的な援助といった重要なテーマも議論されており、これらの議題についても進展がない限り、全体としての議論の進展が難しい状況です。

アメリカの参加

今回は、アメリカが新政権になってから、初めて、正式に国連気候変動会議に参加する会合でもあります。世界で最もこの地球温暖化問題に対して責任が重い国の、実質的な意味での、国連気候変動会議の議論への「再参加」が、今後の議論にどのような影響を与えるのか。これも注視する必要があります。

12月のコペンハーゲン会議までの時間は、あまり残されていません。このドイツでの会合は、2009年初めての会合として、条約AWGと議定書AWGの双方で明確な進展を示し、年末へ向けての交渉の勢いを作り出すことが求められています。

会議報告:2009年の国際交渉マラソンがスタート

2008年末のポズナニ会議で約束されたように、これまでの「意見交換」から一転して、2009年は「交渉モード」に入り、最終的な合意へ向けてよりスピーディーかつ具体的に議論を進めて行くことが必要とされています。

議論は2つの特別作業部会(AWG)の場で進められ、具体的な議論はその中でさらにコンタクト・グループと呼ばれる個別グループに分かれて議論がされました。2つのAWGは、それぞれ「条約AWG(AWG LCA)」「議定書AWG(AWG KP)」と呼ばれています。

▼2つのAWGの役割分担
議定書AWG 2013年以降の、先進国の新しい削減目標を決めること
条約AWG 議定書に批准をしていないアメリカの削減目標や、議定書の中で義務を負っていない途上国の削減行動、そして、条約の下での義務である先進国から途上国に対する資金・技術援助のあり方について議論をする場

条約AWGの動向

アメリカの「再参加」 /定まらない議論の焦点 /いくつかの具体的な提案 /ユースの声明

議定書AWG

議題をめぐる対立 /「先進国全体の目標」に関する議論の紛糾 /その他の議題

日本の主張と果たすべき役割

条約AWGの動向

アメリカの「再参加」

会議初日、条約AWGの総会において前進へ向けての希望が見えました。

政権交替後初の参加となるアメリカの登場です。
アメリカ気候変動特使トッド・スターンが、コペンハーゲンへ向けた国連交渉への協力の精神を極めて前向きなトーンで宣言をすると、会場はアメリカの「カムバック」を歓迎する盛大な拍手の音に包まれました。今回のようなインターセッショナルと呼ばれる比較的重要性の低いとされる会合に、他国で言えば閣僚級に近い代表を送り込んでくること自体、アメリカがこの問題を真剣にとらえているとのアピールであったことは間違いありません。

スターン特使は発言の中で、オバマ大統領が掲げた排出量削減目標である、2020年までに2005年比15%以上(90年比0%)、2050年までに2005年比80%以上(90年比80%)に言及しました。

アメリカの後に発言したツバルが、「レトリックが現実のものとなることを願っている」ときちんと刺す釘を刺す場面もありましたが、ほぼ全ての国が、とにもかくにもアメリカが「再参加」を歓迎している様子でした。

これに呼応するかのように、31日、アメリカ議会下院においてワクスマン・マーキー法案という、より野心的な温室効果ガス排出量削減目標、キャップ&トレード、再生可能エネルギーに関する目標等を含んだ包括的なクリーン・エネルギー安全保障法案の議論が始まったことを知らせるニュースがアメリカ本国から届きました。国連交渉の場に来ているアメリカの交渉代表の発言と、アメリカの議会がこのような一種の連携プレーを見せるということ自体が、アメリカの本格的な「再参加」を示すものと言えます。

スターン特使が帰国した後、アメリカ代表団の中で実質的な交渉におけるトップとして議論に参加しているジョナサン・パーシング氏は、その出身が世界資源研究機関(WRI)という環境系シンクタンクであることもあり、この国連会議の交渉関係者の間では既によく知られた人物です。4月1日に開かれたワークショップの中での発言でも、「中国において多大なる削減努力が行なわれていることに感銘を受けた」といった発言によって、交渉の場の建設的な雰囲気を努めて作りだそうとしている様子が窺えました。

おそらくアメリカ・オバマ政権のこの交渉に対する立場が固まってくる次回6月の会議の際には、より厳しい交渉姿勢が見られることになると思いますが、こうしたアメリカによる一連の建設的な発言は、これまでとは確実に違ったダイナミズムをこの国連交渉に吹き込み始めていることは確かです。

定まらない議論の焦点

今回の会議に先立ち、条約AWGの議長は通称「フォーカス文書」と呼ばれる文書をまとめました。この文書は、各国が昨年のポズナニ会議の前からこれまでに提出したり、発言したりした意見を集約し、意見がまとまっている部分と意見の差異がまだ大きいところを見極める試みとして、議長の責任において作られた文書です。

今回の議論は、この「フォーカス文書」を土台として行なわれる予定でしたが、条約AWGで行なわれている議論では、なかなか各国の意見が集約されるところまでは行きませんでした。

条約AWGは、「緩和」、「適応」、「技術・資金援助」、「共有ビジョン」という4つの分野に分かれて議論が行なわれました。それぞれについて、コンタクト・グループと呼ばれる分科会が作られ、その中でも細かい議題が順番に議論されていきました。当初は、これら4つの分野におけるコンタクト・グループの下に、さらに小さな分科会の「スピンオフ・グループ」を作って議論をしようというアイディアも議長から出されましたが、議論があまりに細分化されると、交渉団として派遣している人数の都合がつかなかったり、グループ内部での意見調整に不安があったりする途上国グループが反対をして、そのアイディアは採用されませんでした。

それぞれの分野での議論を簡単に振り返ると、まず「緩和」の議論で特に注目が集まったのは「登録簿(registry)」というアイディアです。これは、主に途上国における削減行動をどのように進めて行くのかという議論の文脈で、途上国自身の中から出されてきたアイディアであるため、議長もこの議論を積極的に扱いたいという意志を前回の会議から示していたものです。

このアイディアは、まだ詳細は詰められていませんが、簡単に言うと、国際的な登録簿を作成し、そこに各国が行なう排出量削減対策を登録していくというものです。そして、その登録簿に登録された削減対策と先進国からの技術・支援策をマッチングさせてはどうかという案も出ています。

もともと、ポズナニ会議の前に提出した個別の意見文書の中で、韓国や南アフリカといった国々が偶然同時にこのアイディアを意見に含めたことが、このアイディアが注目を集めることになったきっかけですが、今回は、このアイディアについてサウジアラビアが独自の考え方を展開するなど、議論に広がりが出てきました。サウジアラビアは、この仕組みに、S.A.M.(Support and Accreditation Mechanism)という名前を付けて、登録簿に登録される活動との資金・技術援助のマッチングに加え、先進国が目標達成に使えるクレジットの創出を前提とした登録もありうること、技術移転に関する特別な組織を作ることなどを盛り込んだ全体像を、会期中に行なわれたワークショップで示しました。

ただし、具体的にどのような削減対策を登録するのか、登録された対策の扱いはあくまで自主的なものなのか、それとも何らかの義務的な意味を持ってくるのか、CDMのように削減クレジットを発生させることをできるようにするのか、などの論点については、各国の意見にまだまだ隔たりがあるようです。

また「緩和」の議論には、この他にも、(京都議定書に入っていない)アメリカとその他の先進国の間での排出量削減目標の厳しさの水準揃えるという意味での「比較可能性(comparability)」という議論も重要な議題としてあります。削減にかかるコストの面から考えると考え方、過去の累積排出量という歴史的な責任を重視する考え方など、いろいろな面から、この「比較可能性」を確保する(水準を同じレベルにする)考え方が示されましたが、今回は深い議論はされませんでした。

さらに、「緩和」には、「途上国における森林減少・劣化からの排出量削減(REDD)」という分野があります。これは、世界の排出量の2割近くを占めると言われる森林減少・劣化からの排出量を減らすことを、温暖化対策の一分野として位置づけようという考え方です。その重要性はどの国も認めるもののいくつもの難しい論点を含んでいます。途上国の中でも、パプアニューギニアなどは、特にこの分野に強い関心を示しています。今回は、「緩和」のコンタクト・グループの議論の後半に、一度議論をする機会がありましたが、目立った進展はみられませんでした。

次に「適応」の分野については、どのような枠組みの中で、適応対策を進めて行くべきなのかについて議論がされました。既存の仕組みを活かすべきだという一部の先進国の意見や、地域センターのようなものを作るべきであるとする途上国の意見がありました。さらに、後発開発途上国は、現在2億ドルしかない後発開発途上国基金(LDCF)を20億ドルまで拡大するべきだという主張をしました。

いくつかの具体的な提案

「資金・技術援助」の分野では、従来から続く対立に加え、すでにいくつかの国々から出ている具体的な提案について、若干の意見交換がされました。

たとえば、資金の分野については、従来からある「民間資金と公的資金のどちらに重点を置くべきか」という点で、先進国と途上国の間で議論が分かれました。先進国は主に、気候変動対策に必要な資金を全て公的資金で賄うことが不可能であることを指摘し、民間資金の流れをどのように引き起こすのかを重視すべきであるという主張が繰り返されました。他方で、途上国は、公的資金でなければカバーできないものや、民間資金の流れを引き起こすためにも公的資金が必要であることを主張し、公的資金の重要性について重点を置くべきであるとの主張が繰り返されました。

この他、具体的な提案として以前から出ているノルウェー提案、メキシコ提案、スイス提案などについて、若干の意見交換がされました。
ノルウェー提案は、削減目標が決まった後に、先進国が受け取る「排出をしてもよい量」としての「割当量(AAUs)」から一部を徴収し条約下の何らかの組織に集め、それを売却することで資金源にするというアイディアです。これについては、小島嶼国などの途上国から、「昨今の炭素市場の価格の動向を見ていると、予測可能な(predictable)資金源とはならない」との懸念が示されました。メキシコ提案は、GDP、人口、排出量などの指標に応じて、途上国も含めた全ての国々がグリーン・ファンドへの拠出の責任を負うというアイディアです。少なくとも部分的には途上国にも資金拠出の責任が生じるこのアイディアについては、一部の途上国から懸念の声が挙がりました。スイス提案は、国際的な炭素税というべき性質のものでしたが、ブラジルなどの国々から「歴史的責任を踏まえない」との批判が出されました。議論の収束は残念ながら見られませんでしたが、具体的な案についての意見が出始めたことは、前回から比較するとやや前進した部分かもしれません。

技術の分野についても、日本は、専門家から成り必要な技術の特定をするワーキングループと資金・技術支援の具体的なニーズについて特定を行なうワーキングループの2つからなる「アドバイザリーグループ」の設置を提案しました。途上国グループの側からも、「技術パネル」を条約下に設置するべきとする意見を出しました。2つの案は似ている部分もありますが、途上国の一部からは、より「実施」面に重点が置かれるべきとの意見が出ました。

「緩和」、「適応」、「資金」、「技術」の4分野を総じて導くものとしての「共有ビジョン」については、どの要素に焦点を当てるべきかについて、先進国と途上国の間に意見の違いが見られました。一方で、先進国は総じて、「温室効果ガスの安定化濃度」や「世界全体の排出削減量」、「低炭素社会への移行」などを長期目標として掲げ、それを「共有ビジョン」とするべきという意見を述べたのに対し、途上国は、そうした「緩和」的要素だけに絞るだけでなく、「適応」、「資金」、「技術」といった全ての基盤的要素を「共有ビジョン」に入れるべきであるとの主張をしました。この議論についても、議論は収束をみませんでした。

こうした4つのコンタクト・グループでの議論を経て、条約AWGは特に大きな波乱もなく最終日の総会を迎えました。条約AWGの今回の目的は、次回の会議までに作成される「交渉テキスト」の土台となる議論をすることでした。逆に言えば、今回の会議そのもので何か特別な結果を出すことは期待されていなかったといえます。しかし、今回の議論の状況を見る限り、まだまだ意見の集約が図れておらず、また論点も多数存在しているため、この議論をどのように「交渉テキスト」にまとめていくことができるのかということについては、若干の不安を感じさせる内容でした。

ユースの声明

3月31日に行なわれた条約AWGのワークショップの最後に、世界のユース(若者)の代表が声明を発表する場面がありました(オブザーバーにも、限られた形ではありますが、このように発言の機会が与えられます)。

ユースの代表は、「私は、2050年には66歳になっています」という言葉で、意識はされども忘れられがちな「世代間」の視点を会場に吹き込みました。また、温室効果ガス排出量の大幅削減の必要を訴えた後、アメリカ、日本などの先進国の名を読み上げ、それらの国々が検討している中期目標について「率直に言わせて頂ければ、バカみたいです」と痛烈に批判し、先進国全体として40%以上の削減の必要性を強調しました。途上国の側からの協力が不可欠であることにもふれつつ、「今下される決定を実施するのは私たち」であること、そして、「私たちの世代の眼をみて、確信を持って、将来の地球が住むことができる星であることを保証して下さい」と訴えました。

こうした、一見無謀とも言えるほどの理想論に彩られたユースの声明は、凝り固まった「交渉」になりがちな会場にやや明るい雰囲気をもたらし、2050年に引き継ぐべきものという意識を呼び起こしました。
この時、ユースの代表が着ていた「Think 2050」というTシャツは、そのあと会場で(有料でしたが)配布され、最終日には、条約AWGの議長や一部の事務局職員、果ては一部の政府代表までもが着用して議事に臨んでいました。こうした、ちょっとした遊び心とユーモアも、この国連会議が固い雰囲気になり過ぎないための重要な要素です。

議定書AWG

議題をめぐる対立

広範な議題を扱わなければならない条約AWGに比べると、議定書AWGで議論される議題は、比較的はっきりしています。これは、この議定書AWGの最終目的が、先進国の新しい排出量削減目標を決めることであると明確に決まっているからです。

ただし、その決定にあたって、どれくらい他の論点も議論しなければならないのかについては、先進国と途上国の間で大きな差があります。今回の会議の冒頭では、その意識の差が厳しい対立という形で表面化しました。

今回の議題は、以下の5つが主な内容でした。

  • 先進国の削減目標の規模について結論を出す
  • 京都議定書の改正草案についての結論を出す
  • 京都メカニズム(排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズム)の将来について議論をする
  • 森林吸収源(LULUCF)の扱いに関するルールについて議論をする
  • その他の関連論点(削減の対象とする温室効果ガスを増やすかどうか等)について議論をする

これらの5つのうち、途上国は特に最初の2つ、1と2に焦点を当てるべきであるということを強く主張しました。既に述べた、議定書AWGの最終目的に相当する部分です。議定書AWGは2005年12月に設立が決定されて以降、過去3年間議論が続けられていましたが、ラスト1年になっても先進国の目標についての実質的な議論に辿り着いていない状況について、途上国はグループとして極めて強い失望感を示し、1と2について今回はきっちりと結論を出すべきだという主張をしました。特に重視されたのは、先進国「全体」としての2020年までの目標について結論を出すことです。

このために、途上国グループは1と2以外の議題についてのコンタクト・グループを置くこと自体に反対し、議論の焦点を絞ることを要求しました。

他方、先進国は、3や4といった議論も、目標を決定する上では重要な要素であることを強調しました。たとえば、EUは、森林吸収源(LULUCF)による吸収量がどれだけルールの中で削減量として認められるかという問題は、実質的な削減目標の意味を変えるので重要であり、京都議定書の時のように、そのルールを後から決めて、目標の持つ意味が事後的に変わってしまうのは避けるべきだという主張をしました。

こうした対立があったため、これら3と4の議題については、コンタクト・グループは作られたもの、会合を行なう回数が減らされました。

「先進国全体の目標」に関する議論の紛糾

このような経緯を経て、議論は開始されたものの、主要な議題となった「先進国全体の目標を決める」という議題は、先進国と途上国の間で議論が平行線をたどり、膠着状態に陥りました。

一方で、途上国は、過去3年間も議論をしてきたのだから、今回はこの議論について決着をつけるべきだという主張をしました。多くの途上国は、先進国に対して、IPCCの知見を引用して「25~40%」か、もしくはそれ以上(40%以上)の削減目標を先進国全体として掲げることを求めました。

他方で、多くの先進国は、議定書AWGの場で先進国全体の目標を議論すること自体に難色を示しました。その理由は、(京都議定書の締約国ではないため)アメリカがいないこの議定書AWGという場で目標の議論を進めることに限界があることや、排出量の大きい途上国の削減行動の議論も同時にやらなければ、先進国全体の排出量削減の議論だけを先に進めることができないということです。日本、オーストラリアなどがこれらの点については特に強く主張をし、EUも途上国に対する配慮からやや遠慮がちながらも同調していました。

このような中、小島嶼国や一部の中南米・アフリカ諸国を代表して、ミクロネシアが「先進国は、2020年までに1990年比で45%以上の排出量を削減し、2050年までには同95%以上の削減をするべきだ」とする声明を発表しました。気候変動による影響に特に脆弱な小島嶼国やその他の途上国は、従来から、先進国全体による排出量は、2020年までに1990年比で40%以上削減しなければならないということを主張していました。今回の声明は、その要求をさらに厳しくしたものといえます。

なぜ、これらの国々は、今回さらに厳しい要求を出してきたのでしょうか。それは、彼らが同時に行なっていた別の主張を聞くと理由が分かります。彼らは、目標を厳しくすることとは別に、こうした目標の検討に際して、IPCC第4次評価報告書以降の最新の科学的知見も取り入れるようにと主張していました。
IPCCの第4次評価報告書が発表されたのは2007年ですが、それ以降にも、気候変動に関する科学的な研究成果の発表は相次いでいます。その中には、同報告書で示された気候変動に関する予測よりも、さらに大きな影響が短期間で出てくることを示唆するものもあります。これらの国々は、こうした新しい知見を根拠に、より早期かつ大胆な対策をとることを求めているのです。

「45%以上」という数字は、IPCCの「25~40%」という数字でさえ難しいといわれる日本国内の議論からすれば、突拍子もない数字に見えるかもしれません。
  また、先進的なオバマ米政権ですら、アメリカの排出量削減は「2020年までに1990年比0%」というのが限界であると言われる状況下では、相当に難しいといえます。ですから、こうした国々の主張を「非現実的」と切って捨てるのは簡単です。しかし、同時に、この「声」を挙げているのは、ただ単に将来の気候変動の影響に憂えるだけではなく、自国民の移住も含めた気候変動への適応を今から検討せざるをえないような国も含む、50を超える国々であったことを理解しておく必要があります。

この先進国全体の目標に関する先進国と途上国との対立は議論が堂々巡りになる様相を呈していたため、議長はなんとか議論を進める1つのアイディアとして、先進国各国がそれぞれに自主的に掲げている中期目標集めて、一覧表のようなものを作り、そこから議論を深めてはどうかという案を出しました。これには、先進国・途上国各国とも了承し、議長の依頼を受けた事務局が、各国から情報を集め、先進国の目標を比較した一覧表が作られました。しかし、この一覧表はついぞ日の目を見ることはありませんでした。

議定書AWGの議論の後半は、そのほとんどが非公式協議(informal consultation)という形で行なわれたため、その全容はNGO等のオブザーバーにはほとんど分かりません。しかし、最終日前日になって開かれた公開のコンタクト・グループで出てきた議長提案の最終結論文草案には、これまでに議論を行なってきたことが書いてあるだけで、先進国全体の目標に関する数字についての言及はもとより、新しいことは一切書いてありませんでした。
唯一、新しいことと言えるものとしては、最後の段落に、「350 ppmに温室効果ガス濃度を安定化させるためには、先進国全体として温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で少なくとも45%、2050年までには少なくとも95%削減しなければならない」という「情報に留意する」という一文が入っていたことだけでした。「情報に留意する」と書いてあるだけでは、特に何の拘束力もありません。しかも、この段落には、反対する国があって合意ができていないことを示す括弧が付いていました。

その後、再び、非公式協議が行なわれた後、最終日の午後になって再度コンタクト・グループが開かれました。この段階で再びの修正を経て出てきた議長提案の最終結論文草案からは、その「45%」への言及も消え、新しい事項は一切無くなっていました。しかし、議長は、紙には書かれていない追加の1段落が、現在非公式協議の中で検討中であることを説明しました。その段落では、先ほどの「350 ppm~45%」等への言及に関する議論がされているとのことでした。
この議論に関連して、南アフリカなど、途上国の側から「今回の会議で先進国全体の目標の数字に関する議論が進んでいるという明確なシグナルを出すべきだ」という主張がされました。このまま、全く何も新しい事項に言及がないままこの議定書AWGの結論が採択されてしまうと、まるで議定書AWGの議論が進展しないことが既成事実化されてしまうことを恐れてのことだと考えられます。こうした主張が、コロンビア、セネガル、ザンビア、中国などの国々に支持されました。

こうした議論の紛糾を経て、再び議論は非公式協議へと潜り、そのまま、結論が最後の総会に上げられることになりました。

4月8日夜20時半すぎから開始された議定書AWGの最後の総会において、最終的な最終結論文草案が示されました。事前の非公式協議の中で、各国の合意がとれていたようで、総会の中自体では大きな議論はなく、最終案はそのまま採択されました。
最終案では結局、具体的に新しい内容は何もないまま採択されてしまいました。わずかに最後の3段落に、議論の後が見られました。その3段落のうち、1つ目の段落には、過去の決定の中でIPCCの「25~40%削減」という文言について言及した段落を「想起する」ことが述べられ、この数字がまだ議論の中に残っていることを示しました。
2つ目の段落は、今回の会合の事前ワークショップの報告書に言及し、IPCC第4次評価報告書の中で検討されたシナリオ以上に厳しいシナリオが存在することに留意する旨が書いてありました。そして3つ目の段落は、次回の会議での焦点が、先進国全体の目標に関する議論であることに合意する内容でした。いずれの段落の内容も具体的ではなく、決定的な内容は含んでいませんでした。

最後の議定書AWG総会では、先進国の側からは、日本の発言を皮切りに、議定書AWGと条約AWGにおける「整合性のあるアプローチ」(coherent approach)が重要であることを主張する声が相次ぎました。これはつまり、両方のAWGを一緒に行なうべきであるとの主張です。ロシア、オーストラリア、トルコ、ウクライナ、バングラデシュ、クロアチア、ニュージーランド、カナダ、ベラルーシといった国々が、日本の主張に同調しました。EUも、やや弱い言い方にはなりましたが、「両AWGにはシナジーがある」という言い方で、同調の姿勢を示しました。

こうした先進国の姿勢や、何も結果が示せていないことに、途上国は大きく反発しました。

途上国グループを代表して、スーダンが今回の議定書AWGでまたしても小さな進展しか示せなかったことに深い失望を示しました。バングラデシュやボツワナ、小島嶼国を代表してのグレナダなどがそうした声に同調し、インド、南アフリカなどは、先進国が主張した2つのAWGの統合について、「2つのAWGの役割が違うことはバリの時に合意済みの内容のはずだ」と強い口調で反論をしました。
特に強い口調で反論を行なったのは中国で、「議定書AWGが、結論がないことに結論を出すのはこれが初めてではない」とし、さらに「一部の国々が、2つのプロセスを結びつけようとして故意に進展を遅らせようとしている」、「次回の会合までにはより高い意識を持って望むべきだ」と、強い口調で先進国の姿勢を批判しました。

なお、この最後の議定書AWG総会では、こうした議論の前に、環境NGOの連合体であるCANインターナショナルを代表して、日本の気候ネットワークの平田さんが声明を読み上げ、先進国の野心的な排出量削減目標が、合意へ向けては不可欠であることを強調して、会場から拍手を受けていました。

WWFは会議の閉幕した4月4日に、「友好的な雰囲気をもとらしたが、進展は乏しい」とするプレスリリースを発表しています。


記者発表資料 2009年4月8日

ボン会議が閉幕、友好的な雰囲気をもたらしたが進展は乏しい

【ドイツ、ボン】ボンでの気候変動に関する交渉は、結果的に、代表団の間に友好的な雰囲気をもたらしたが、排出量削減や資金支援といった重要な問題については何ら進展しなかった。

昨年のポズナニ会議に比べて、各国代表団はより積極的でオープンな姿勢を示したが、細部における進展と対照的に、12月のコペンハーゲン会議での合意に不可欠な分野においては政治的な意味で際立った前進を見せられなかった。

WWFグローバル気候変動イニシアチブのリーダーであるカーステンセンは言う。

「友好的な発言は確かに役立つが、CO2削減のための真剣な公約や拘束力のある削減目標がなければ、この脆弱な地球を、押さえがきかなくなった気候変動から守るには、断じて不十分である。

ボン会合の雰囲気はよくなったかも知れないが、現実の気候変動は依然として制御不能なまま進行している。きれいな言葉ではなく、それを我々の前に立ちはだかる強大な脅威に取り組むための積極的な行動へと変えていかなくてはならない。」

各先進国が、先進国全体として2020年までに少なくとも40%の排出量削減をもたらすような削減目標を公約することが、コペンハーゲン会合で合意に必要であると、WWFは指摘している。

また先進国は、途上国における低炭素型の開発と適応策に融資するための十分な資金を提示するべきである。

米国の新しい代表団の気候変動問題解決に対する前向きな姿勢は、途上国グループらの野心的なポジションとともに、交渉にとって有益であった。現在では、各国が議論の各重要課題に対しそれぞれの立場を表明しており、状況が以前よりもはるかに明確になっている。つまり、真の交渉の基盤ができあがっている。

「厳しい排出削減目標こそが新しい国際合意の心臓部であり、技術と適応のための資金が血液である。しかし、未だ心臓は鼓動しておらず血液も流れていない。なぜなら、ボンでは骨組みといくらかの筋肉を構築し、各国を国際合意の全体構造と仕組みに関わる合意へと近づけるのがやっとであったからである」とカーステンセンは述べている

後発開発途上国のグループは、自身の適応計画の実施に対し20億米ドルを要求している。

このわずかな金額の支援を次回6月のボン会議に間に合うよう提供することが、現時点における先進国からの正しいシグナルになるとWWFは見ている。

「今日、地球環境を汚染している産業や経営悪化した銀行の再建に数十億ドルの資金が費やされているにもかかわらず、国連の気候変動交渉の破綻を防ぎ、気候変動の悪影響に苦しんでいる人々を救うための資金支援策が存在しない。

オバマ、メルケル、ハーパー、麻生、あるいはブラウンいった豊かな国々の指導者なら誰でも、国際合意と低炭素社会へ向けた賢明な投資を確保するために、気候変動政策にとっての「景気回復策」を提案することを重要課題と捉えなくてはならない」とカーステンセンは述べる。


議定書AWGのその他の議題

これまでは、今回の議定書AWGの主要議題であった先進国全体の目標に焦点を当てて説明をしてきましたが、その他の議題はどうだったのでしょうか。

まず上述の「先進国全体の目標」の議論と最終的には一緒に議論されることになった議題として「法的事項」という議題がありました。
これは、具体的には議定書をどのように改正するべきか、その文言のあり方も含めた議論を指します。

ただし、これは先進国の目標が決まらないことには当然、最終的な文言など決まるはずもなく、議論の多くは、上述の先進国全体の目標の議論と重なる部分がありました。周辺の論点として、若干議論されたのは「約束期間の長さ」や「目標の表し方」などがあります。

前者は、京都議定書では2008~2012年の5年間であった約束期間について、次期枠組みでは何年間にするのかという議論です。ツバルや南アフリカなどの国々は、現状通り5年間で続けるべきであるとしましたが、多くの国々はより慎重に議論をしたいとの意向を示しました。
後者の「目標の表し方」の議論というのは、現状の京都議定書の目標が基本的に「1990年比○○%削減」ということになっているのを、どのように変更するのか(しないのか)という議論です。
日本といくつかの先進国は、1990年比だけでなくて複数の基準年比で表示し、かつ、パーセンテージだけでなくて、絶対量(○○トン)で表示すべきだとの主張をしました。この点についても、特に結論が出るわけではなく、意見交換に終始しました。

メカニズムの改善については、今回は大きくは議論は進みませんでした。議論は主に、「論点のリスト」の扱いに集中しました。
2008年のボンやアクラでの会議の際に作られた論点のリストは、その後のポズナニ会議において議長のペーパーに整理され、今回の会議においても再整理された議長のペーパーに掲載されていました。
具体的には、「CDMの中に二酸化炭素回収貯留事業をいれるか」といった論点や「(個別の小さなプロジェクトではなく、セクター(部門)全体を対象とするような)セクトラル・クレディティングを導入するか」といったような論点を含みます。こうした論点のリストを、今回は、より集約していくことを議長は試みましたが、なかなかうまくいかず、結局ほとんどリストはそのままの形で残りました。

先進国における森林吸収源(LULUCF)の扱いについての議論も、大きな前進があったとはいえませんが、やや具体的な議論がされました。
特に注目を集めたのは、EUが提案してきた「バー」(bar)という提案です。これは、各国が森林吸収源による吸収量を排出量削減として算入できる量を予め一定の基準を用いて定めておく(「バー」を定めて置く)という内容でしたが、具体的にどのようにしてその「バー」を定めるのかについては明らかにされず、各国に大きな裁量の余地を残すかも知れないとして、環境NGOからは警戒の声が挙がりました。

メカニズムや森林吸収源の議論については次回の会合でも引き続き議論が続けられる予定です。

日本の主張と果たすべき役割

日本が今回の会議の中で、繰り返し強調していた主張には大きく分けて2つあります。

1つは、将来の枠組みの中では、排出量の大きい途上国も義務を負うべきであるということ、そしてもう1つは、条約AWGと議定書AWGの2つの場を統合することです。これらの主張は、他の先進国も(特に後者については)主張していましたが、日本は特に強い口調で、これらの点を強調していました。

こうした主張には、一定の理があることは事実です。将来枠組みにおいては、義務的なものが適切であるかどうかはともかく、排出量が大きくなる途上国の協力を欠くことはできません。また、条約AWGと議定書AWGで行なわれている作業の多くは、重なる部分が多く、相互に密接している争点が多いのも確かです。

しかし、問題はそれを日本が自らの責任を果たす前に主張していることにあります。

日本の排出量は、2007年から2008年にかけては景気後退を受けて減少していることが予想されるものの、2006年度の段階では1990年比6%増で、6%減にしなければならない京都議定書の目標からはかけ離れています。
また、2020年へ向けての中期目標についてもなかなか態度を明らかにしてきませんでしたが、今回示された検討中の選択肢には、京都議定書からの逆行を示す「+4%」を含む「+4%~-25%」という範囲で議論がなされていることが示されました。

また、途上国が重視している資金援助の分野でも、特に新しい提案を出す様子が見られません。このような中、「途上国も義務を負うべきだ」と主張したり、「2つの場で一緒に議論しなければ、目標は決められない」と主張したりしているため、途上国からの不必要な反発を招く結果となっています。
特に今回の会議では、一部の国を名指しで批判するなど、やや行きすぎた発言が見られる部分もあり、建設的な交渉ムードに貢献しているとは言い難い状況です。

「2つの場で議論を一緒にすべき」というのは、一見もっともな主張に聞こえますが、つまるところは、自国の責任は棚上げにして、途上国の出方を待ってから自国の立場を決めようとしていると見られても仕方がない状況にあるのです。

「先進国としての責任をとり、リードをとる」ということには、日本も合意しており、発言の中でもそのことを述べています。そうであれば、その本当の意味を噛みしめ、野心的な目標を掲げ、具体的な資金援助や技術支援の案を持って、次回6月の会議に参加することが必要であると考えられます。


2009年 国連気候変動ボン会議 2nd

2009年6月1日から12日まで、ドイツのボンにおいて今年2回目の国連気候変動会議が開催されています。今回の会議は、前回に引き続き、議定書AWGと条約AWGの2つの特別会合に加え、例年開催されている補助機関(SBs)会合も合わせて開催されます。

2009年 ボン会議(第2回目)について

2009年2回目の国連会議

今回の会議は、今年末のコペンハーゲン会議で合意される予定の京都議定書の次の国際枠組みについて、国々がその具体的な姿を少しずつ議論していくことになっています。というのも、今回の会議では、条約AWGと議定書AWGの双方において、重要な「原案」が議長から示されることになっているからです。

条約AWGの「交渉テキスト」

前回までの会議では、議長は、各国からの意見をもとに、国々の間で合意のある点や意見の違いが大きい点をまとめた文書をベースに議論を進めていました。今回は、そこから更に一歩踏み込んで、最終合意の原型になるような「交渉テキスト」を議論する予定になっています。

ただし、議長が会議に先立って準備した交渉テキストは、まだまだ意見が異なる部分が多いことを反映して、各項目に複数の選択肢が並び、合意ができていないことを示す括弧が数多く残る内容で、まだまだ道のりが長いことを示しています。しかし、交渉のスタート地点としては優れたものであり、ここから意味のある最終合意を作っていくことは十分に可能です。今回からは、前回は政権として準備が整っていなかったアメリカも本格的に交渉に臨んでくると予想され、難しい議論になることが見込まれています。

議定書AWGでの議定書改正提案

現時点では、コペンハーゲンでの合意がどのような形式で採択されるのかは決まっていません。京都議定書の改正という形をとるのか、それとも新しい議定書を採択するのか・・・。いくつか選択肢がありますが、それぞれに長所短所があり、それ自体が議論の対象になっています。

ただし、仮に京都議定書の改正をしようとした場合は、議定書そのものの規定により、6ヶ月前にその改正原案が示されている必要があります。

まだ議定書の改正という形式をとると決まったわけではありませんが、現時点でその選択肢の可能性を消さないため、そして、今後の交渉を本格化させる意味も含めて、今回の会議では、議定書改正案が議論されます。

議長は、今回の会議に先立ち、最も要となる先進国の次期目標部分の文言案について、各国の提案を元に複数案を併記した議長案を作成しました。また、その他の問題についても、論点をまとめたり、各国からの文言案を併記したりした文書を用意しました。今回の会議では、これらの議長案をもとにして議論がなされる予定です。

対立の壁を乗り越えられるか

コペンハーゲンまでの時間はいよいよ半年を切りました。世界の命運を決するといっても過言ではない会議へ向けて、時間はあまり残されていません。

しかし、先進国は、先進国全体としてどのくらいの削減をするのかを示すことができていません。また、途上国の削減対策や温暖化影響への適応対策のための資金的・技術的な援助のあり方もまだ示すことができていません。

途上国の側は、そうした先進国に不信感を抱きつつ、将来の枠組みの中でどのような対策を行なっていくのか、なかなか一歩踏み込んだ議論ができない状況になっています。今回の会議からは、この状況を先進国と途上国の両方からのリーダーシップによって打開していくことが必要です。
日本が、野心的な中期目標を掲げて交渉をひっぱることは、この文脈においても極めて重要です。


2009年 国連気候変動ボン会議 3rd

2009年8月10~14日にドイツ・ボンにおいて2009年で3回目となる国連気候変動会議が開催されました。この会議は「非公式会合」という位置づけのため、公式な決定は特になされません。前回に引き続き、2013年以降の国際的な温暖化対策のあり方についての議論が行なわれました。

2009年 ボン会議(第3回目)について

2009年3回目の国連会議

2009年は、12月までに今回も含めてあと3回国連会議が開かれることになっており、デンマーク・コペンハーゲンで最後に開催されるCOP15・COP/MOP5において、2013年以降の国際的な枠組みについて最終的な合意がされる予定です。

2つの会合

前回までと同じく、今回の会議も、具体的には2つの会合から構成されています。1つは、国連気候変動枠組条約の下に作られた条約AWGです。条約AWGは、アメリカや途上国を含む、2013年以降の将来の枠組み全体を話し合う場です。

条約AWGでは、議長が用意した「交渉テキスト」と呼ばれる文書を中心に議論します。この文書は、いずれ12月にデンマーク・コペンハーゲンで開催される会議で採択される予定の合意の元になる文書です。ただし、現時点ではこの文書は各国の主張を一通り万遍なく取り入れた内容であるため、約200 ページの長大な文書となっており、中身も決して整理されている状況とはいえません。

前回の会議では、参加国全体での「交渉テキスト」を確認していく作業が行われましたが、今回の会議では、「適応」「緩和」「技術の開発と移転」「資金」「共有ビジョン」という5つのグループに分かれ、これらの中の2つのグループずつ、同時並行で交渉テキストの確認と議論が行われる予定です。年末の合意へ向けて、膨らんでしまった交渉テキストの中身をどれくらい議論を整理することができるかが重要な課題となります。

もう1つの会合は、京都議定書の下に作られた議定書AWG(特別作業部会)です。この会合は、日本を含む京都議定書の締約国の、2013年以降の新しい温室効果ガス排出量削減目標を決定することを最終目的としてしてます。これに関連して、先進国が目標を達成する際に、国家間の排出量取引、共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM)などの柔軟性メカニズムをどれくらい、どのような形で利用して良いのか、また、それらの仕組みをどのように改善するのかしないのかといった点や、森林吸収源をどのように活用してもよいのか(だめなのか)といった点も議論の対象となっています。

こちらも、議長が用意したいくつかの文書について議論がされます。前回の会議では、森林吸収源について集中的に議論が行われたので、今回の会議では柔軟性メカニズムの議論にやや重きを置いて議論が行われる予定となっています。

これら2つの会合での議論は重複する部分もありますが、様々な事情から、現時点では形式上、別の会議として議論されています。コペンハーゲンでの合意に至るどこかの段階では、これら2つの会議の成果を融合する作業が必要になります。

日本政府の動き

日本政府は、前回の国連気候変動会議の途中で2020年へ向けての温室効果ガス排出量削減の中期目標を発表しました。2005年比で15%を削減する(1990年比8%削減に相当)という目標は、温暖化の被害を最小限に抑えるために必要な水準には到底足りず、国際社会からは失望を持って迎えられました。

また、日本政府はこれまでのところ、途上国での温暖化対策や適応対策(温暖化の被害に対応するための対策)への資金援助の枠組みを明らかにしておらず、他国がすでに出してきている提案についても明確な考えを示していません。

今回の会議では、中期目標や資金援助の枠組みについて重要な結論が出るわけではありませんが、これら2つの重要論点における日本政府の消極的な立場は、交渉全体がスムーズに進むための阻害要因になっていることは明らかです。

今回の会議では議論の整理に積極的に貢献し、日本国内での選挙が終わり新しい体制が整った次回以降の会議においては、より積極的な立場を打ち出していくことが、日本政府には求められています。

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