四国山中で、ドングリの調査を開始しました!


WWFが四国自然史科学研究センターと共同で取り組んでいる、四国のクマプロジェクトでは、クマの生態と同時に、生息環境の調査も行なっています。その一つが、クマにとって秋季の重要な食物であるドングリの調査。四国の森ではドングリがどれくらい実るのか。これらがわかれば、クマの保護管理についてより具体的な提案・提言が可能になります。2012年度はその予備調査を実施しています。

四国で唯一のツキノワグマ生息地

四国で唯一、ツキノワグマの生息地となっている剣山(つるぎさん)山系。標高1,955メートルの剣山を中心に、1,500メートル級の山々が、徳島県と高知県にまたがり連なります。ここに生息するツキノワグマは、十数頭~数十頭といわれ、国内で最も絶滅が危惧される地域個体群です。

それにもかかわらず、保護のために必要な情報は限られ、有効な対策が十分に取られてきませんでした。そこで、NPO法人四国自然史科学研究センターとWWFジャパンでは現在、詳細なデータの収集と蓄積をめざし、共同で調査プロジェクトを展開しています。

このプロジェクトでは、クマの生態はもちろんのこと、クマの生息地についても調査を行ないます。「生息地における堅果類の現存量調査」と題したこの調査は、クマにとって重要な食物であるドングリが、四国の森ではどのくらい実るのか。その生産量について調べるものです。

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調査の中心となるのが、四国自然史科学
研究センターの山田孝樹さんです。
手に持っているのは、ドングリのサンプルを
回収する袋。

剣山山系のドングリ

ツキノワグマにとって、ドングリは秋季の最も重要な食物です。
四国自然史科学研究センターの調査では、四国のクマも本州のクマと同様に、冬眠(冬ごもり)することが確認されていますが、これは、クマが冬眠に入る前、栄養価の高い食物をたくさん食べて、大量の脂肪を蓄えなければならないことを示しています。

冬眠中、クマは、この蓄えを少しずつエネルギーに変えて、冬を乗り切るのです。

剣山山系では、山奥までスギやヒノキの人工林が広がっており、標高の低い場所に見られるコナラなどのドングリを実らせる木は、あまり多くありません。

しかし、標高1,000メートル以上にはわずかながら、自然林が残されています。その中心は、北日本で広く見られるブナやミズナラの自然林。四国でもこれだけ高い標高になると、冷涼な気候になり、こうした森が形成されています。

そこで、四国のクマは、ブナ、ミズナラ、コナラのドングリに依存していると考え、調査の対象を3種に絞りました。

これらの樹種は、森の中に比較的まとまって生育している上に、その実であるドングリは果実が大きく、栄養価が高いという特徴を持っています。つまり、クマとしては、食いだめして太らなければならない「食欲の秋」に、最も頼りになる食糧なのです。

今後どのくらいの生息環境を整備しなければいけないのか、を判断するためには、具体的に今ある森林で「どのくらいのドングリが実るのか」を調べ、クマの生息地として評価を行なう必要があります。

つまり、ドングリが森の豊かさをはかる、重要な指標となるわけです。

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調査地から、剣山山系の「丸石」を望む。

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剣山山系、標高1,000メートル以上の自然林に残るブナの大木。

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ブナの実。毛が生えた殻の中には蕎麦の実に似た形の実(果実)が2個入っています。なお、ブナの実はドングリと見なさない場合もありますが、ここではブナの実もドングリとしました。

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ミズナラの実。
多くの人がイメージする「ドングリ」。

シードトラップの設置

このドングリ調査は、2012年8月から始まりした。
2012年は予備調査という位置づけですが、本番さながらの調査を行ない、改善点などを洗い出していきます。

その調査は、シードトラップを使って行ないます。「シードトラップ=SEED(種)TRAP(罠)」とは、その名の通り、木から落ちてくる種をキャッチする仕掛け。

設置方法は、まず調査対象となる木を見上げ、枝がよく茂って、隣の木の枝と重なっていない箇所を選びます。そして、その真下にシードトラップを設置。すると、対象木からドングリが落ちてきたとき、上手くキャッチできるという単純な仕掛けです。

調査機材は、ホームセンターなどにあるごく普通の材料で作ります。ネットだけは、特殊な形状なので、今回の調査に協力していていただいている高知大学のアドバイスのもと、裁縫屋で作りました。これらの材料を調査地まで担ぎ上げ、山中で組み立て、設置していくのです。

今回のドングリ調査では、対象木を絞って、その木の下に2カ所ずつシードトラップを設置する方法と、調査区を設けて一定の間隔でシードトラップを設置する方法の2通りを試しています。

設置した調査区は50メートル×50メートル。
その中に10メートル間隔で、36個のシードトラップを設置しました。

それが山中に2カ所。

単木ごとに設置したシードトラップは、ブナに98個(49本)、ミズナラに106個(53本)、コナラに20個(10本)です。合計で、296個のシードトラップを設置しました。

 

設置も回収も大変?シードトラップ

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とんがり頭巾の形をしたネットの中にビニール製のパイプを通してシードトラップを組み立てる。

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シードトラップを、園芸用のポールを使って固定して、設置する。

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ブナの木の下に設置されたシードトラップ

しかしこのシードトラップ、設置するのも大変でしたが、中に入った種を回収する作業もまた大変です。各トラップは2週間ごとに、見回り・回収を行ないます。それは、雨が降ろうが風が吹こうがやらなければならない作業です。

そして、強風で壊れたトラップは補修しなければなりません。今回の調査では、風当たりが強い地形に設置したトラップは、かなりの割合で壊れ、補修しなければならなかったそうです。これは2013年度以降の課題です。

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雨の日には、カッパを着て回収作業をおこないます。単純作業だけに、シンドイ仕事です。

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強風によって壊れたシードトラップ。左側にあるのが対象木(ピンクのマーキングテープが巻いてある)。

また、ドングリは、実りが良い年(豊作)と悪い年(凶作)、いわゆる豊凶があり、特にブナは、数年に一度しか豊作の年がなく(5~7年毎とも言われる)豊凶の差が激しい樹種です。

2012年、日本では全国的にはブナの凶作が伝えられていますが、ここ四国の剣山山系では、ブナの実がなりました。豊作とまではいかないまでも、並作以上の実りです。

ブナの実やミズナラ・コナラのドングリがどんどん入ってくるシードトラップ。
回収したドングリは、山田さんが、家庭用の布団乾燥機を購入し、自宅でドングリを乾燥してくださっていますが、サンプルの保管場所にも困っているとのこと。これも2013年度以降の課題です。

現在はひたすらにドングリの回収とサンプル蓄積の作業が続けられています。今後の進捗状況については、またご報告する予定です。

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シードトラップに入っているドングリ

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枯葉と一緒にブナの実が入っていました

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枯葉と一緒にブナの実が入っていました

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