2008年 【COP14/CMP4】国連気候変動ポズナニ会議


2008年12月1日から13日にかけて、ポーランドの工業都市ポズナニにおいて、国連気候変動枠組条約第14回締約国会合(COP14)、および、京都議定書第4回締約国会議(COP/MOP4)が開催されました。この会議の最大の目標は、各国の主張を「交渉テキスト」の形にまとめ、2009年のCOP15(コペンハーゲン)に向けた本格的な交渉の「足がかり」を作ることです。

「京都議定書」に続く「第二の約束」に向けて

京都議定書の第一約束期間が始まった2008年。この年の12月1日から13日にかけて、ポーランドの工業都市ポズナニにおいて、国連気候変動枠組条約第14回締約国会合(COP14)、および、京都議定書第4回締約国会議(COP/MOP4)が開催されます。

参加する各締約国は、前年2007年12月のCOP13(バリ会議)で採択された、バリ行動計画に基づき、「2009年のCOP15(コペンハーゲン)において、2013年以降の次期枠組みに合意すること」が求められています。

つまり、京都議定書の第一約束期間(2008年~2012年)が終わる2013年以降、国際社会がどのような国際協定で、温暖化問題に取り組んでいくのか。京都に続く、その「第二の枠組」に合意するということです。

バリ行動計画には、京都議定書から離脱してしまったアメリカや、京都議定書のもとでは削減義務を負っていない途上国を含めた、次期枠組みの議論の場(条約AWG)が立ち上げられました。そして、今回のポズナニ会議の開催に先立ち、2008年には計3回の交渉会議がすでに開催されています。ポズナニ会議では、それらの議論の場で話し合われてきた内容を、いち早く「交渉テキスト」の形にまとめ、2009年に向けた本格的な交渉を開始する「足がかり」を作ることが最大の目標です。

合意に向けた交渉のゆくえ

国際社会が、京都議定書の時の轍を踏まないようにすることは、ポズナニ会議が役割として負っている大きな課題です。

京都議定書の場合は、1997年に京都で議定書が採択された後、排出削減のルール作りに4年(2001年のマラケシュ合意)、発効(2005年)までに8年という年月を費やしました。

コペンハーゲンで採択される予定の次期枠組みが、第一約束期間と時間的な空白を空けることなく、2013年からスタートするためには、各締約国が、批准のための手続きや、運用ルール作りなど、採択後に必要とされる一連の作業を、3年間という短期間で終えなければなりません。すでに、残された時間は非常に限られています。

ポズナニ会議で、どれだけ議論を進展させることができるかが、大きな勝負となります。

ポズナニ会議で期待される成果

ポズナニ会議に期待される成果としては、次の内容が挙げられます。

  • コペンハーゲン合意に向け、残り1年間となる交渉の具体的な作業計画を作成すること
  • 二つのAWGの結果を受けて、アイデアを議論する段階から、交渉する段階へと移行できる具体的な交渉テキストに落とし込んでいくこと
  • 温暖化が危険な閾値である2度を大きく下回るようにするために必要な長期の排出削減ビジョンに対して、各国の共通理解が進み、先進国全体の中期の排出削減目標の範囲について科学に基づいた共有化が図られること
  • 途上国の緩和や適応をサポートする資金メカニズムや技術移転の議論の進展

ポズナニで行なわれる会議について

気候変動問題に対する国連会議には、以下のような種類があります。ポズナニ会議においても、COP、CMP、SBI、SBSTA、AWGLCA、AWGKPの6つの会議が平行して開かれます。次期枠組みに関わるAWGLCAおよびAWGKPにおける議論の結果はCOPおよびCMPに報告され、終盤の12月11日~13日に閣僚レベル会合が開かれます。

通常会議

気候変動枠組条約締約国会合:COP(Conference of the Parties to the Convention)

最高意思決定機関として、国連気候変動枠組条約(UNFCCC:United Nations Framework Convention on Climate Change)を批准する国々により開催される締約国会議。年1回開催

京都議定書締約国会議:COPMOP(CMP:Conference of the Parties to the Convention serving as the meeting of the Parties to the Protocol)

京都議定書を批准している国々による締約国会議。2005年以降、COPに併せ年1回開催

補助機関会合: SB(Subsidiary Body)

締約国会議をサポートするための会合。実施に関する補助機関(SBI:Subsidiary Body for Implementation)と、科学的・技術的な助言に関する補助機関(SBSTA:Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice)の2つがある

次期枠組みの交渉のために時限的に設置された会合の場

長期的な協力的行動に関する特別作業部会(条約特別作業部会):AWGLCA(Ad hoc Working Group for the Long-term Cooperation Action)

京都議定書を離脱した米国や削減義務を負わない途上国をも含み、長期的な協力的行動に関する議論を行なう特別作業部会。条約のもとに設置

京都議定書特別作業部会:AWGKP(Ad hoc Working Group to the Protocol)

先進国(附属書1国)の更なる削減目標に関する特別作業部会。京都議定書のもとに設置

AWGにおける議論のポイント

ポズナニ会議で開催される、2つの作業部会の会合においても、それぞれ議論の成果が期待されます。

AWGLCA:条約AWG

長期的な協力的行動に関する特別作業部会(条約特別作業部会)

COP13(バリ会議)で採択されたバリ行動計画に基づき、気候変動枠組条約のもとで2013年以降の次期枠組みについて交渉を行なう場として設置された特別作業部会。

条約AWGは、京都議定書を離脱した米国や京都議定書では排出削減義務を負っていない途上国をも巻き込んだ交渉の場です。条約の基本原則「共通に有しているが差異のある責任」に則り、条約の究極目標「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を達成するために、条約AWGで2年間検討を継続し、COP15においてその成果について合意し、決定書を採択することとなっています。

このコペンハーゲン合意に向けて条約AWGでは、特に「共有ビジョン」、「緩和」、「適応」、「技術移転」、「資金」の5つの項目が重要な項目として挙げられ、議論が行なわれています。
  2008年3月の第1回条約AWG会議(バンコク)で2008年の作業計画が決まり、6月の第2回条約AWG会議(ボン)では、各国から資金メカニズムに関する提案が行なわれました。また、8月の第3回条約AWG会議(アクラ)では、途上国の排出削減について初めて国連交渉の場で議論が開始しました。途上国をグループ分けし、段階に応じた緩和策をとるという「途上国の差異化」という議論が始まり、資金メカニズムに関しても、ノルウェーやメキシコ、スイス等の提案をもとに議論が行なわれました。

 ポズナニ会合では、議長が共有ビジョンや途上国差異化、資金メカニズム等に関する各国提案をまとめた「アセンブリーペーパー」(各国が正式に表明した提言を文書にまとめたもの)が出され、交渉テキストへの落とし込みのための議論が継続されることが期待されます。

AWGKP:議定書AWG

京都議定書特別作業部会

京都議定書発効後に初めて開かれたCMP1(2005年モントリオール)において、京都議定書第3条9項「附属書1国の次期枠組みにおける削減目標の議論を第一約束期間終了の7年前までに開始する」に基づいて設置された特別作業部会。

議定書AWGの最終的な目的は、先進国の次期目標を決めることですが、京都議定書を批准している国々による交渉の場であるため、米国などは参加していません。

2007年に削減ポテンシャルと削減目標の範囲について検討を行ない、2008年6月の第5回議定書AWG会議の2回目(ボン)では、削減目標の達成に使う手段の分析を開始しました。また、8月の第6回議定書AWG会議1回目(アクラ)では、手段による環境・経済・社会面への潜在的影響について議論を開始しました。
この手段が決まらないと、先進国の削減目標値が決まりません。京都議定書のケースでは、先に削減目標値が政治的に決定し、それを達成するための手段(ルール)が後から決まりました。しかしその結果、削減目標値の意味合いが大きく変わってしまいました。たとえば、6%の削減義務を負っている日本は、森林吸収源のルール(マラケシュ合意)を日本とロシアだけに特別に上限をあげてもらうことにより、実質的には2.2%の削減を行なえばよいことになりました(森林吸収源:-3.8%。 しかも日本は、京都メカニズムの利用でこのうち1,6%をまかなうことにしているため、国内で行なう削減は実質的には0.6%です)。

このようなマラケシュ合意の教訓を受け、次期枠組みにおいては、まず先に手段を決めようとしているわけです。しかし、自国の削減ポテンシャルに大きく影響を及ぼす項目であるため、各国の利害への思惑から議論が思うように進展していません。

ポズナニ会議では、先進国の目標達成を助ける手段について、議長が各国提案をまとめて交渉テキストを作成し、合意に向け議論を継続する予定です。これは、手段について合意することになっていた、2008年8月の第6回条約AWG会議1回目(アクラ会議)が、各国が目標達成にどうしても必要と考える項目を絞り込む段階で終わってしまったためです。
  また、2007年9月の第4回条約AWG(ウィーン会議)において厳密な合意に至ることができなかった、先進国の削減ポテンシャルと削減目標の範囲に関しても、ポズナニではワークショップを開催し、改めて議論を行なう予定です。こちらについても、合意に達することが期待されます。

その他にも、削減対象とする温室効果ガスの見直しに関する検討や、京都議定書では削減対象外となっている国際航空・船舶からの排出などに関しても検討が行なわれます。

この先進国の次期目標を決める議定書AWGでは、条約AWGより一年先行しているだけあって、より具体的な議論が展開されています。次期枠組みにおいては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等の科学的知見を踏まえた削減目標を設定することが不可欠であるため、条約AWGにおけるアメリカとの比較可能性を確保しながら、この議定書AWGでは、より議論をリードして先進国の野心的な中期目標を決めていかなければなりません。

議定書9条の議論

AWGの他、次期枠組みの骨組みを決める重要なトラックとしては、京都議定書の見直しを定めた議定書9条の議論があります。第2回京都議定書会議のナイロビ会議において、9条に基づく第一回目の見直しが行なわれましたが、そのときに決まったのは、第2回目の見直しを、第4回目に行なうということだけでした。

その第4回目に当たるポズナニ会合では、京都メカニズムの改善などが話し合われることになっています。この9条の議論は、次期枠組みを議論する場としては、条約AWGが立ち上がった今、やや関心が薄れているようですが、次期枠組みの資金メカニズムや途上国の緩和の方策など、論点が議定書AWGや条約AWGと重複する点も多々あり、やはり注目に値する重要議論であることは間違いありません 。


WWFポジション・ペーパー「COP14で気候変動の難題を解決する」 概要

温暖化のクルミ(Nuts=難題)を砕こう!

WWFは、ポズナニ会議が始まった12月1日、会議場の入口外に巨大なクルミ割り器を置き、小さなクルミ割り器とクルミを各国代表に手渡しました。これは、「Nuts(クルミ)」に、「難題」という意味があることにかけたもの。各国代表に、温暖化の「難題」を砕き、国際交渉を進展させるよう求めたアピールです。

人類の将来を決めるコペンハーゲン会合をわずか1年後にひかえ、ポズナニ会合(COP14)は、温暖化による壊滅的な気温上昇を防ぐために必要な国際合意形成に向けた大変重要な道しるべである。

本会合において、2009年12月の野心的で公平な国際気候変動合意へとつながる成熟した議論へと進展するよう、大臣達は断固たる姿勢で望まなくてはならない。温暖化が危険な閾値である2℃を大きく下回るようにするためには、国際社会は協力して温室効果ガスの排出を減らすような合意に至らなくてはならない。

2009年コペンハーゲン会合において成功を得るためには、2008年ポズナニ会合における進展が必要不可欠である。
米国のバラク・オバマ次期大統領の言葉を引用すれば、「...次月に世界中からポーランドに参集する代表者達に送る言葉:あなた方の仕事は地球にとって極めて重要です。今こそこの難題に立ち向かい決着をつけるときです。先送りという選択肢はありません。拒絶という態度はもはや受け入れられません。事は重大です。影響は深刻なのです」。

【WWFの見解】ポズナニ会合からは、アイデア出しの段階から交渉へと切り替わるべきである

ポズナニ会合の成功の鍵となる項目

  1. 大臣達は、アイデア出しの段階から、交渉テキストに基づいて真剣に交渉する段階へと転換すること
  2. 2013年以降の枠組み合意に向けた交渉のためのオプションと概念が、公平で科学にもとづいた取り決めをもたらすようなものであること
  3. コペンハーゲン合意が、以下のような条件を満たし、公平・適正で法的拘束力があり批准しやすいものとなるよう、大臣達は共有のビジョンを描くこと
    ・温暖化が危険な閾値である2℃を大きく下回るようにするという長期ビジョンに向けて、世界の排出量が2020年よりも早期に確実にピークを打つ必要性を踏まえた合意であること
    ・野心、緊急性、公平性を踏まえた協力行動の原則を実践するような合意であること
    ・先進国が緩和と適応に関する適切な実施手段を途上国に提供するということを踏まえた合意であること
  4. 2012年以前の期間にも、各締約国は、(1)適応、及び(2)エネルギー及び森林関連の対策を通じた温暖化の緩和 に関する途上国の制度構築の能力向上を行うプログラムにさらに協力すること
  5. 大臣達は、気候変動問題が依然として政府の最重要課題であることを明確に示すこと。各国政府は、経済危機と並行して気候変動の危機にも取り組み、コペンハーゲンにおいて野心的な気候変動合意に達するための取組みが頓挫しないようにすること
  6. そのために、特に先進国の大臣達は、2009年内にも、新規且つ強化された排出抑制策の迅速な実施を、野心的な2012年以降の次期枠組み目標の準備に役立つように発表すること

先進国と途上国双方のリーダーシップと、真剣な取り組みが成功の鍵

交渉の成否は、これまで以上に、前向きな結果を得るために偽りの無い真剣な取り組みをしようという各国の意欲に大きく依存している。国連気候変動交渉に創造的なアイデアや革新的なコンセプトを提案したり、国内で先進的な気候変動政策を実施することによって、交渉プロセスを前に進めようと努力している国々もある。特に、G77の途上国やメキシコ、そしてノルウェーのような先進国は、まさに交渉プロセスが必要としているようなリーダーシップを示してきた。

WWFの見るところでは、国内対策においても国際交渉においても十分にリーダーシップを示していないのは、大きな先進諸国である。
例えばEUは、幾つかの加盟国が過去に排出削減に成功し、京都議定書の目標を守っているが、現在では、建設的な2013年以降の次期枠組み政策への合意に関して、総じて動きが見られない。これは特に、ポーランドやイタリアなどによる否定的な立場が原因である。
ドイツやフランス、英国、オランダ、チェコ、ハンガリー、その他の主要各国も利己的な行動をとり、必要なリーダーシップを発揮せず、それどころか重要な条項の内容を乏しいものにしようとしてきた。EUの気候・エネルギー政策提案が、見る影も無く存在感の無いものになりつつあることが、それを示している。

EUはポズナニ会合に合わせて決断をとろうとしており、12月は重要な月であるといえる。
WWFは、EUが以前公約した通り、他の先進諸国がともに行動するなら30%の排出削減(これはIPCCが推奨している削減範囲とも整合がとれている)を掲げるという約束を守り、なおかつ途上国の温暖化に対する緩和と適応に必要な資金が得られるようにすることを強く要請する。米国ではオバマ新政権が主要閣僚の任命を進めており、気候変動問題を最重要課題とすることを約束している。WWFはEUと米国の指導者達に対し、世界の模範となるような政策の実施によってリーダーシップと勇気を示すよう、継続して要請していく。

気候保護は、世界の3大危機(貧困・金融・気候変動)の解決に不可欠な要素

金融破たんが起きている現在、世界の自然に対する間違った管理と世界規模の景気後退へと飛び火した金融恐慌の間には共通点が見られる。双方ともに、壊滅的な結果となるまでに背負いきれる負債には限りがあるということを示している。しかしながら、自然界の破綻に対しては、緊急援助を行うことはできないのである。

金融危機は最終的には、ただでさえ限られた経済基盤と生活を更に蝕むことによって、気候変動の悪影響にもっとも脆弱な人々にも、大きな脅威をもたらす。したがって、適応戦略に対する急を要する支援が、ますます重要となっている。

金融危機の中にあって有望な兆しの一つは、経済の専門家や銀行関係者、科学者らの間で環境価値は経済発展の障害ではないというコンセンサスが高まっていることである。各国政府は、経済的および生態学上の負債を減らすのに役立つような再生可能エネルギーやエネルギー効率向上技術への投資などの戦略を導入する一方、環境に優しい経済成長を実現しなくてはならない。


関連情報

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  • 会議終了!ポズナニ会議報告(2008年12月15日)
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  • 報告:クリーン開発メカニズム(CDM)を中心とする「メカニズム」関連議論の動向(2008年12月9日)
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  • ウインター・スポーツ界からのメッセージ(2008年12月5日)
  • 気候変動政策と産業の競争力に関しての報告書を発表(2008年12月3日)
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  • 国連気候変動ポズナニ会合に向けて:これまで以上に進展が期待される会合(2008年11月26日)
  • ポズナニ会議に向け、斉藤鉄夫環境大臣に書簡(2008年11月26日)
  • 2008年 国連気候変動アクラ会議(2008年8月21日)
  • G8関連情報:【緊急声明】主要経済国首脳会合は、全く時間の無駄だった(2008年7月9日)
  • 2008年 国連気候変動ボン会議(2008年6月2日)
  • バンコク会議 条約の下でのAWG 報告(2008年4月7日)

【資料】COP14/CMP4におけるCDMをめぐる議論の要約と分析(2009年1月22日)

2008年12月1日から13日までの、ポズナニ会議でのクリーン開発メカニズム(CDM)をめぐる議論は、第1約束期間における改善点をめぐる議論が主であり、将来(2013年以降)のCDM(もしくはそれに代わる仕組み)についての議論は次回に持ち越された。第1約束期間における改善点については、いくつかの決定が出された。項目としては、たとえば、指定運営機関(DOE)の役割の強化、追加性審査およびベースライン決定における客観性の強化、プロジェクト分布の地理的不均衡問題の是正などが含まれる。ただし、今回出された決定は、いずれもCDM理事会に対して作業を求める形式となっており、即時に効果が現れるような決定は少ない。将来の議論については、2月6日までに各国からの意見提出を募り、それを基盤として議論が行なわれる予定である。

背景

今回、CDMに関する議論は以下の4つの議題項目に関して設置されたコンタクト・グループにおいて、並行して行われた。

AWG KP議題項目「手段の分析」:

今回のAWG KP会合の議題には、先進国が目標達成に使用することが可能な「手段」(means)の分析が含まれていた。これは、既に2008年内に行なわれた3つの会議でも継続的に議題として挙がっていた項目で、具体的には、柔軟性メカニズムおよび森林吸収源の将来枠組みにおける扱いなどがこの議題項目には含まれる。CDMは、3つの柔軟性メカニズムの1つであるため、この項目に当然含まれる。以下の4つの議題項目と異なるのは、ここでの議論は主に将来(2013年以降)に焦点があるということである。

COP/MOP議題項目「CDM関連争点」:

この議題項目は、もともとCDM理事会の報告を年1回COP/MOPが受け取るという毎年のCOP/MOPで恒例の項目である。それに合わせてCDMに関する一般的な事項を議論することが慣例になっている。今回も、例年と同じように、CDMの運営に関わる様々な議論が行なわれた。

COP/MOP議題項目「議定書9条に基づく見直し」:

この議題項目は、2006年のCOP/MOP2で行なわれた第1回に引き続き、第2回目の京都議定書全体の見直しを行なうべく設定されたものである。2007年末のCOP/MOP3において、今回の見直しにあたって重点を置くべき事項5つが確認された(FCCC/KP/CMP/2007/9/Add.1)(*1)。その5つの中に、柔軟性メカニズムの範囲・有効性・機能が含まれるため、CDMに関する議論も対象になっていた。

SBSTA議題項目「二酸化炭素回収地中貯留プロジェクトの扱い」:

2006年のCOP/MOP2の決定において、二酸化炭素回収地中貯留プロジェクトのCDMでの扱いについては、今回の会合までに決定を出すことが合意された。そして、SBSTAが今回の会合までにCOP/MOP決定についての提案を準備する予定となっていた。

以下では、基本的にこれら4つの場それぞれの議論の概要を示すが、今回、「CDM関連争点」と「議定書9条に基づく見直し」の2つの議題項目に含まれる論点では、いくつか重複が見られた。たとえば、両方の議題項目とも、プロジェクト分布の地理的不均衡の問題について議論をする予定となっていたし、追加性審査・ベースライン決定の問題についても、両方の場で議論が可能であった。このため、COP/MOP議長は、これら2つの議題項目において扱うべき論点についての仕分けを行い、特に、地理的不均衡の問題については、「CDM関連争点」において優先的に議論すべきという提案をした。ただし、全ての国がそれに納得をしたわけではなく、実質的な議論では、重複は若干残った。

  • (*1)5つの項目とは、1)CDMプロジェクトからのCERの一部("収益の一部"(share of proceeds))をとり、適応基金の資金源にするという仕組みを、他のメカニズム(共同実施(JI)・排出量取引)にも拡大するという提案の検討、2)附属書I国の中にあり、まだ目標を持っていない国が排出量削減数値目標を持つための手続きの簡易化の検討、3)議定書関連機関に勤める個人の特権・免除の検討、4)柔軟性メカニズムの範囲・効果・機能(プロジェクト分布の地理的不均衡を含む)についての検討、5)気候変動の悪影響の検討である。

CDMの将来に関する議論

2013年以降、CDMをどのような形で継続していくのか(いかないのか)という問題や、その代替となるような仕組みについての議論は、理論的には2つの場で起き得る。1つは、AWG LCAであり、もう1つはAWG KPである。

AWG LCAにおいては、「緩和」(mitigation)の議論の一部としてこれらの論点を議論することができる。途上国における削減行動の議論、すなわち、「当該国にとって適切な緩和行動」の一形態として、CDMの継続や、CDMに代わる仕組みの議論が存在しえるからである。ただし、現在までのところ、AWG LCAでの議論はカバーされる領域が非常に広いため、CDMの将来に関する個別具体的な議論は起きていない。各国からの提出意見をまとめたいわゆる「アセンブリー・ペーパー」(assembly paper)には、CDMの将来および代替の仕組みに関するアイディアも多く含まれているが、会議場での詳細な議論、そして具体的な交渉にまでは発展していないのが現状である。アセンブリー・ペーパーは、ポズナン会議の期間中に一度再編された(FCCC/AWGLCA/2008/16/Rev.1)が、今後、2009年2月6日までに再度意見提出を募り、次回会合では、再び議長が土台となる文書を準備する予定である。したがって、次回以降の会議で、議論がこちらでも本格化していく可能性はある。

しかし、現状では、CDMに関する議論は、先行して議論が行なわれてきたAWG KPにおいて具体化している。上述した通り、「手段の分析」という議題項目の論点の1つとして、CDMは重要な位置を占めている。

1つ前のアクラでのAWG KP会合では、2つの論点のリストが、AWG KPの結論に対する附属書という形で採択された(FCCC/KP/AWG/2008/5の附属書IおよびII)。2つのリストの違いは、附属書Iのリストに載っている方の論点はやや詳細な選択肢が示されており、附属書IIのリストに載っている方の論点は、純粋な論点の羅列になっている点である。一般的な理解としては、附属書Iのリストに載っている論点の優先度がより高い。今回の会議に先立ち、議長が論点をさらに整理・詳述した文書を準備した(FCCC/KP/AWG/2008/INF.3;以下、INF文書と略す)。

今回の会議では、この「手段の分析」を議論するための非公式協議の場が設けられた。この非公式協議は非公開であったため、議論の全容を知ることはできなかったが、実質的な議論はあまりされなかったようで、最終的には今後の日程についてのみ合意がされた。その日程は、他の日程とともにAWG KPの作業計画として採択された。それによると、2009年2月6日までに、各国は上述の2つのリストおよび議長の準備したINF文書を踏まえての意見を提出することになっている(FCCC/KP/AWG/2008/L.19の第7段落)。関連して重要なのは、同じ作業計画の中に、「セクター単位での排出量を対象としたアプローチ」についても、2009年2月15日までに意見を提出することになっている点である(前掲文書の第12段落)。この「セクター単位での排出量を対象としたアプローチ」という議題項目は、国際航空・船舶という「セクター」を対象とした削減の仕組みについての議論が含まれるが、同時に、セクターを対象としたCDM(いわゆるセクターCDM)のような考え方も、議論の対象として混在している。

CDMの運営上の改善点についての議論(議題項目「CDM関連争点」)

今回の会議では、CDMの運営上のいくつかの改善点が議論になった。最終的な決定は、FCCC/KP/CMP/2008/L.6にある(*2)。

  • (*2)厳密には、L.xという番号の付くL文書は、各会議の総会に提出される最終決定草稿文書であり決定文書そのものではないが、多くの場合はそのまま採択される。今回も特に変更はなく採択された。正式な決定の文言が今回の会議の報告書に含まれるまでには時間がかかるため、本稿ではこの文書をそのまま使う。

指定運営機関(DOE)の役割(第26-27段落)(*3):

ポズナニ会議の直前に開催されたCDM理事会において、世界でも有数のDOEであるDNVの資格停止が発表された。ここ数年、本来であればCDMプロジェクト承認プロセスにおける最初の評価者としてのDOEが、その責任を十分に果たしておらず、結果として非追加的なプロジェクトが多く発生することの遠因になり、かつCDM理事会本体のプロジェクト評価に関わる業務量超過の原因になっていることが批判されてきた。

DNVの資格停止は、そうした文脈の中で発表されたため、この問題の深刻さを端的に示したことになる。こうした事態をうけて、主にEUが、DOEのパフォーマンスを評価するため体制を強化する提案を行なった。交渉のある地点では、現状、プロジェクト実施者がDOEを選択し、支払いを行なう形式となっているのを改めて、条約事務局がDOEを割当て、支払いを行なう形式で行なうことの検討をするという案も議論されたが、最終的な合意文書には反映されなかった。

これは、現行の形式では、DOEにとってプロジェクト実施者は「顧客」であり、厳しく審査して、プロジェクトの有効化を行なわなかったり、時間をかけてコスト高になったりすれば、顧客を失うことにつながる可能性があるため、そうしないようにするインセンティブが構造的に存在するとの批判から生まれてきた考え方である。

最終的なCOP/MOP決定は、CDM理事会に対し、以下の3つを行なうことを指示している。第1に、DOEのパフォーマンスを監視する仕組みを作ること。第2に、DOEが要件を満たすことを保証する仕組みを作ること。第3に、DOEの「公平性および独立性」(impartiality and independence)に関する分析を行ない、その結果を次回のCOP/MOP5にて報告すること、である。

  • (*3)括弧内は、最終決定草稿文書(FCCC/KP/CMP/2008/L.6)における該当段落。

追加性審査およびベースライン決定における客観性の強化(第36-37段落):

CDMのプロジェクト審査において、追加性審査およびベースラインの決定は鍵となる部分だが、その実践については多くの批判がされてきた。一方では、追加性審査が、様々な問題から結果として多くの非追加的なプロジェクトを生み出していると批判している。WWFが専門家に委託して行なった調査では、実に20%のCDMクレジットが、非追加的なプロジェクトから発生したクレジット(つまり削減になっていない)であるという推計もされており、問題は深刻である。

他方で、現状の追加性審査は、「プロジェクトがCDM無しでも実施されたかどうか」ということを審査するため、プロジェクト実施者の主観に関わる部分(例:どれくらいであれば十分投資に値すると判断するか)を判断したり、審査の中で使う指標の統一性がなかったりして、審査の透明性を損ねているという批判がされている。後者の批判について注意すべきは、この批判は、追加性審査をより強化したいと考える環境NGOや専門家も主張しているが、追加性審査をより簡易にかつスムーズにしたいと考えているプロジェクト実施企業や専門家、コンサルタントも主張しているという点である。

こうした2つの全く異なった思惑から、結果としては、似たような提案、すなわち、追加性審査の客観性を高めるという提案が出てきている状況はやや皮肉といえる。今回の議論の中では、各国の間で、なんらかの形でより「客観性」を導入するということ自体については意見の違いが少なかったようだが、そのあり方については意見が分かれた。客観性の強化を主に主張したのは、EU、アルゼンチン、ニュージーランドであった。
この議論の中でポイントとなったのは、「ベンチマーク」という言葉の使用であった。EUとアルゼンチンはベンチマークの使用を導入することに前向きであったが、多くの途上国(ブラジル、インド、南アフリカ、韓国等)はこれに反対した。その主な理由は、ベンチマークというのが、先進国によって「強制された」基準を示唆するからであった。

最終的には、「ベンチマーク」という言葉の使用は避けられる形で合意がされ、追加性審査の中の重要要素である投資分析(investment analysis)、障害分析(barrier analysis)、一般慣行分析(common practice analysis)の各分野において、客観性の導入を強化することをCDM理事会に求める決定がなされた。

プロジェクト分布の地理的不均衡(第51-54段落):

2009年1月現在、CDMのプロジェクトとして国連に承認・登録されているプロジェクトの数は約1300件あるが、その4分の3が、上位4カ国(インド、中国、ブラジル、メキシコ)に集中しており、アフリカは地域全体でも全体の2%程度にしか満たない。
こうしたプロジェクトの地理的不均衡の問題の改善については、過去の会議でも議題に挙がっていたが、今回は特に集中的に議論が行なわれた。

コンタクト・グループの議長が最初に出してきた決定草稿文書の中では、いくつかの優遇措置のようなもの実施をCDM理事会に求める内容になっていた。
具体的には、CDMプロジェクトの承認プロセスを迅速化したり、(一番難しい部分とされる)方法論の開発を促進したりすることを、CDM理事会に求めることが提案されていた。

問題となったのは、その優遇措置の適用範囲であった。議長の当初の提案では、2つの条件が付けられていた。1つ目は、「(CDM理事会で承認・)登録されたプロジェクトの件数が5件未満」の国という条件である。2つ目は、「特に、後発開発途上国、小島嶼国およびアフリカの」国という条件である。これらについて、一部の途上国、特に、コロンビア、ボリビア、ペルーらが、自国にもこのような優遇措置が適用されるように条件を変更することを主張した。

提案された修正の一例としては、先の1つ目の条件を「登録されたプロジェクト総数の5%未満しか件数を持たない国」というものがあった。もし仮にこの条件が適用されると、これは事実上、上位4カ国以外全ての国にこの優遇措置が適用されることを意味した。また、上述の国々は、2番目の条件に関する文言を消去することも主張した。こうした修正が適用されれば、おそらく、中程度に発展している国々のプロジェクト件数は増加するかもしれないが、本来の目的である最貧国やアフリカでのプロジェクト件数の増加にはあまりつながらない可能性があった。こうした修正については、EUや日本は基本的には反対していた様である。

最終的な決定文書での文言は、CDM理事会に対して、「登録されたプロジェクト件数が10件未満の国々、特に後発開発途上国、小島嶼国、およびアフリカ」についてはCDMに関するプロセスを迅速化することを求めると同時に、「CDMに十分に参画できていない国々」("countries underrepresented in the CDM")のニーズに対応して、方法論の開発・承認を促進することが求められている。

CDM理事会決定の根拠(第12段落):

CDM理事会の決定は、しばしばその根拠が不透明であったり、一貫性が無かったりするという批判が多くのプロジェクト実施者や国々から上がっていた。
EUは、過去の決定を整理された形で「分類し、索引を付け、公表する」ことと、各決定の決定根拠を公表することをCDM理事会に対して求めることを提案した。ブラジルやコロンビアはこうした提案、特に後者についてはあまり好ましくないという意見を示した。最終的には若干の条件が付けられる形で妥協がはかられ、CDM理事会は決定根拠を発表することを求められた。

植林・再植林CDM(AR CDM)の適格性を「枯渇した植林地」(Planted Forests in Exhaustion; PFE)に拡大する(第42段落):

これは、ブラジルが提案した考え方である。基本的には、産業植林などで、植林と伐採のローテーションが何回か繰り返されて生産性が落ちた地域で、再度別種の植林を行なうようなケースを、CDMプロジェクトとして認めるべきであるという主張であった。
植林がされた土地は、当然ながら定義上「森林」なので、対象地域が森林でないことが条件になっているAR CDMの適格性は満たさない。しかし、ブラジルの主張は、人為的な関与がなければ生産性が落ちた(枯渇した)地域での適切な植林は行われないので、一概に非適格としてこのようなケースを排除すべきではないという考えであった。

森林の自然な成長等の問題については、追加性審査やベースライン決定において判断すればよいという立場である。この提案は多くの国々よって反対されたが、ブラジルは固執したため、後述する二酸化炭素回収地中貯留の問題とともに閣僚級会合に最終決着が託された。しかし、最終的な結論は出ず、妥協として次回のCOP/MOP5に決定が先送りされた。

二酸化炭素回収地中貯留プロジェクトの扱い(第41段落):

この問題は、後述するように元々はSBSTAの議題項目として設定された。しかし、SBSTAでの議論が決着を得ることをできずに、再び結論を先送りにしたことで、サウジアラビア、カタール、アルジェリアなどの産油国は、この問題を「CDM関連争点」および「議定書9条に基づく見直し」の双方の議題項目において盛り込むことを強く主張した。
「議定書9条に基づく見直し」の議論では比較的早くこの問題は消えたが、「CDM関連争点」の決定層公文書におけるこの問題の該当文言は、上述のブラジル提案のPFE問題とともに、閣僚級会合にまで議論がもつれ込んだ。

最終的には、PFE問題とともに、妥協として次回のCOP/MOP5に決定が先送りされた。これら2つの問題は意図的にパッケージ化されたようである。その理由は、おそらく、二酸化炭素回収地中貯留プロジェクトをCDMプロジェクトとして認めることに反対をしている国の急先鋒がブラジルであることと関係がある。

CDMの組織構造上の課題を中心とした議論(議題項目「議定書9条に基づいた見直し」)

CDMの組織構造上の課題は、主に「議定書9条に基づいた見直し」という議題項目の下で設置されたコンタクト・グループで議論された。今回の議定書9条に基づく見直しには、前述の通り5つの論点が含まれていたが、そのうちの1つがCDMを含む柔軟性メカニズムの範囲・有効性・機能が含まれていた。論点は、柔軟性メカニズム全体、つまり、CDMだけでなく共同実施(JI)や排出量取引も対象としていたが、議論はほぼ全てCDMを念頭においたものであった。

この議定書9条に基づく見直しの決定草稿文書では、CDMに関係する文言は最終的には合意はできていたが、他の部分、特に、いわゆる「収益の一部」拡大問題において合意ができず、議論は閣僚級会合まで挙げられた。しかし、閣僚級会合においても合意ができなかったため、最終的には文書は全く採択されず、完全な決裂という形で終わってしまった。このため、ほぼ合意ができていたCDMの部分も結局流れてしまった形になる。以下は、CDMに関する争点の一部を、この「ほぼ合意」ができていた文書に基づいて示したものである。便宜上、「合意された」という説明をしているが、決定には含まれていない。

事務局への一部作業の委任:

現在、未承認・登録のものも含めたCDMプロジェクトの総数は、4,000以上になっている。すでに承認・登録されたプロジェクトの数は約1,300あるので、2,700のプロジェクトが今後承認プロセスに入ってくる可能性がある(*4)。

過去に承認してきた1300というのは、2001年からの累計数であるので、2,700という数字は極めて大きい。しかも、最終的な承認を行なうCDM理事会は、多くて1~2月に1度しか会合を開かないことになっているため、理事会が許容しうる作業量を超えてきていることは間違いない。これについては、CDM理事会を常設化するなどの案もあったが、今回、議論の中心となったのは、議長が決定草稿提案に示した、事務局に一部作業を委任するという案であった。

特にEUは、プロジェクトの技術的な問題を評価する作業は事務局に委任し、理事会はより管理的な作業に専念すべきとの提案を示した。これには、中国が強く反対をした。その理由は、ドイツ・ボンに拠点を置き、スタッフの人員もヨーロッパ色が強い事務局に対する不信感が大きかったようである。
日本も、これによって問題が解決するとは考えておらず、事務局の非効率性が是正されないと効果は薄いと考えていたようである。こうした対立があったため、最終的には「補助機関の役割を強化することで、意思決定過程を迅速化する」ということをCDM理事会に求めることで妥協が図られた。また、その結果について、次回のCOP/MOP5において報告を行なうことを勧告している。

  • (*4)提案はされていても、最終的には登録が申請されないプロジェクトもあるため、2,700が全て登録申請される可能性は少ない。他方、今後、プロジェクトの数が増える可能性もある。

TORおよび行動規範(code of conduct):

EUは、CDM理事会構成員の行動規範およびTORを設定することを提案した。これもまた、中国からは強く反対された。日本も、CDMの役割は過去のCOP/MOP決定によって定められており、何か足りないとすればそこを見直すことから開始すべきであると反対した。この点に関して具体的にどのような議論が起きたのかの詳細は不明だが、最終的には、CDM理事会に対して行動規範の作成とその暫定的な適用を求める形で妥協が成立した。

CDM理事会の決定に関する控訴の仕組み:

一部の国々から、CDM理事会の決定に対して控訴を行なうことを可能にする仕組みを作るべきだとの提案がされた。これについても、具体的な議論の詳細は不明である。合意された文言では、CDM理事会が行なう分析に基づいて、COP/MOP5において検討を行なうことが述べられていた。

二酸化炭素回収地中貯留プロジェクトの扱い(SBSTA議題項目)

2006年にナイロビで開催されたCOP/MOP2において、二酸化炭素回収地中プロジェクトをCDMで認めるかどうかについては、今回のCOP/MOPで決定するという決定がされていた。

しかし、過去2年間の議論において、この問題に関する賛成派と反対派の対立の溝は埋まっていなかった。一方では、ブラジル、インド、小島嶼国連合(AOSIS)が、かたくなにCDMとして認めることに反対していた。
その理由としては、CDMは再生可能エネルギーや省エネルギープロジェクトを優先すべきということや、大量のクレジットが出てくることによる市場へのインパクト、そして何より、技術としての安全度・信頼度について十分な試行がされていないことなどが挙げられていた。

他方で、サウジアラビアを筆頭とする産油国、EU、カナダ、ノルウェイ、日本らの国々は全てCDMに入れることに賛成の立場をとっていた。EUは過去の会議において、とりあえず試行期間を設け、その期間内はプロジェクトのクレジット期間や発行クレジット量に条件を設定する形でテストをしてみてはどうかという立場をとっていた。今回の会議でも、両者の溝は埋まらず、SBSTAの決定文書では端的に今回決定に至らなかったことが述べられている(FCCC/SBSTA/2008/L.21)。

会期の日程上、このSBSTAにおける結論は他のCDM関連の議題項目よりも先に出された。このことが、サウジアラビア、カタール、アルジェリア等の産油国の他の議題項目での態度を硬化させる要因になったようである。

まとめ

以上で見てきたように、今回の議論の主要な部分を占めたのは、CDMの運営ルール上の様々な課題と、組織構造上の議論であった。CDMは、京都議定書の他の制度と異なり、2001年時点から運用が開始されているため、議論の性質も、実践の中から発生してきた課題に対応するかなり具体的な性質を持ったものとなってきている。中でも特筆すべきは、DOEの役割強化、追加性審査での客観性強化、そしてプロジェクト分布の地理的不均衡是正のための措置であろう。

まず、DOEの役割強化は、CDMが仕組みとして適切に機能していくためには極めて重要な事項であるため、今回、それへ向けての決定が出たことは歓迎すべきである。DOEによって十分にプロジェクト評価が行われないことが、結果的にCDM理事会に大きな負担をかけ、承認プロセスの遅延を招く要因の1つとなっていることも考えると、CDMという仕組みを改善していくにあたっての1つの鍵を握る部分であるといえる。いかにそれを達成していくべきかについては、今後の理事会での議論を見ていく必要がある。

追加性審査の客観性強化についても、より基準がはっきりしてくるという意味では基本的には好ましいと考えられる。しかし、これに関しては、追加性審査をより緩くさせるための機会ととらえる関係者もいるため、却ってCDMの環境十全性が損なわれる結果とならないよう、注視していく必要がある。

プロジェクト分布の地理的不均衡の是正については、弱いながらも2つの措置が注目に値する。1つは、承認プロセスの迅速化であるが、具体的に何を行なうのかが不明であるため、現時点では判断がつかない。もう1つの方法論開発に関する措置は、対象となる国の定義("underrepresented in the CDM")がいかになるかという点がポイントになる。

いずれの論点についても、理事会に対して作業が求められたことになるので、具体的な影響は今後に発生してくると考えられる。むしろ、注目すべきは今回の地理的不均衡に関する議論が引き起こした対立の難しさであるかもしれない。今回の議論は、地理的不均衡を是正するための特別措置について、どの国が適格性を有するかを議論したということから、これからより広い文脈でおきると予想される途上国の差異化の議論を先取りした部分がある。その議論が、今回の会議全体が最終日に深夜までもつれ込む要因の1つになるほどの対立をもたらしたというのは、今後の議論にとっても示唆的である。

今回は本格的な議論にはならなかったが、CDMの将来についての議論も、今後本格化していくと考えられる。特に、2月6日が締め切りとなっているAWG KPに関する意見提出や、2月15日が締め切りとなっているAWG LCAに関する意見提出をベースとして、今後、どの程度議論が収束していくのかが見どころである。これまでにも、セクトラル・クレディティング・メカニズムやノールーズ目標などの新しいメカニズムの考え方や、CDMクレジットの割引(ディスカウント)、持続可能性評価の取り入れなど、様々なアイディアが出されているが、メカニズム全体がどういう仕組みになるのか、そして、それがより大きな「緩和」への取り組み全体の中でどのように位置づけられるのかを示した提案というのはほとんど無い。コペンハーゲン合意までに、どの程度詳細が決定されなければならないのかという問題と共に、今後、CDMの将来が、将来枠組み全体の中でどのような位置づけになるのかについての議論が必要となってくると考えられる。


会議終了!ポズナニ会議報告(2008年12月15日)

12月13日、ポズナニ会議は最後に開かれた閣僚級会合を含め、全て終了し、閉幕しました。実質的な削減に向けた実のある前進はほとんど無かったものの、2009年末のコペンハーゲン会議に向けた作業プランは一応確保され、合意に向けた下準備は整えることができました。

条約AWG報告

2週目が始まって、条約AWGの下に設置された4つのうちの、3つのコンタクトグループ(緩和、適応、技術移転)が開催されました。その一つ緩和(排出削減)のコンタクトグループでは、途上国の削減行動に議論が集中しました。

途上国からの積極的な提案

途上国側は、バリ行動計画で、「その国の状況に応じた適切な削減行動」をとる(nationally appropriate mitigation action(省略してNAMAsと呼ばれている) と規定されています。

このポズナニ会議の開催に先立ち、各国はそれぞれ提案を出していましたが、中でも途上国の削減行動について、具体的で有望な提案を出していたのは、南アフリカと韓国でした。 期せずしてこの二つの国は似た仕組みを提案しています。それは「途上国が自主的に削減行動を登録する場を、気候変動枠組み条約の元に解説して、その削減行動に対して、先進国が資金的、技術的サポートを行なうことによって、途上国での排出削減を実現する」というものです。

議長は議論の集約をはかろうと試み、この二つの有望な提案を出した南アフリカと韓国に対して、「仕組みを統合して共同で提案を作ってはどうか」と、誘うことで会議を締めくくりました。 またアルゼンチンがやはりこの登録制度に似た仕組みを提案しているので、アルゼンチン、そして他にも興味のある国も共同提案に参加するようにと呼びかけました。

途上国の削減行動をいかに次期枠組に入れ込むかは、一つの大きな柱です。2009年末のコペンハーゲン会議に向け、議論をなんとか加速させ、方向を見つけていきたいという議長の意気込みが感じられるセッションでした。

出来上がった下文書

こうして、この条約AWGのために議長が当初用意したアセンブリーペーパーに、ポズナニ会合における各国の発言を加える形で、2009年の交渉テキスト作成のための下文書ができあがりました。その総量は、121ページの厚さとなっています。

また、今回のポズナニ会合において、最大の課題と目されていた今後の作業プランも、条約AWGでは比較的スムーズに決定されました。おおまかな流れは以下の通りです。

  • 2009年1月25日までに各国からのさらなる提案を受け付ける
  • 2009年3月にドイツのボンで開催される次の会合までに、議長が下文書をもとに、提案の中で似た内容を統合し、違った考え方を並列で示した新たな文書を示す
  • その文書を元に、さらに議論を重ね、2009年6月の会合で、いよいよ交渉テキストの形で提案する

これによって、2008年の1年間に重ねてきた議論から、交渉テキストをもとに、実際の交渉を行なう2009年への道筋が確保されたといえます。

議定書AWG報告

京都議定書AWGは、2週目に入ると、ほとんどの交渉がインフォーマル会合に移され、NGOメンバーも傍聴できない中で、進められていきました。

消極的な先進国の姿勢

一週目の最後に出された議長テキストには、バリ合意の「IPCCが示した先進国の削減幅25から40%という情報を『認識する』」という表現よりも「IPCCが示した先進国の削減幅25から40%という情報を『受けるべきである』」という強い表現が入っていました。

しかし、月曜日に示されたテキストには、この数値を入れた段落がすべてが落ちる可能性が出てきた挙句、最終的には『認識する』に戻っていました。

結局、各国代表により、水面下で何度か激しくインフォーマル会合が行われた結果、バリ行動計画の表現をそのまま使ったものになってしまったということです。CO2の排出削減に、積極的な姿勢を見せようとしない先進各国の意図が、表れた形となりました。

これは、「バリ行動計画よりも後退はしなかったが、進展もない」という焦燥感を生むことになります。

先行きの見えない展開

しかし、今回のポズナニ会合で、実質的に最も成果をあげなければならなかったのは、2009年の作業プランの決定についてです。

世界がアメリカのオバマ政権の参加を待って交渉を停滞させている中、2009年末までに合意に至るために必要な、しっかりとした日程と内容のつまった作業プランを成立させることは、今回のポズナニ会合における議定書AWGの最大の課題でした。

とにかく、自国の次期目標の発表の準備ができていない、一部の先進国など(アンブレラグループ)の反対で、交渉は難航。言葉をあやふやにすることで決着することになりました。 特に曖昧のまま残った課題は、中期目標を発表する時期についてです。

最初に議長が出した作業プランのドラフトでは、

  • 2009年2月15日までに各国から、附属書1国(加盟している先進国)全体の削減幅、森林吸収源、法的解釈などについて提案を募り
  • 3月のボン会合において、先進国全体の削減幅と、各国別の削減目標を発表する

ことになっていました。

しかし、おそらくアンブレラグループの強い反対によって、その表現は「次期目標に関する情報を提出することを歓迎する」と弱められてしまいました。これは、日本など、まだ次期目標を発表したくない国に、検討状況を報告するだけでよい、という逃げ道を作るものです。

2009年に向けた作業プラン

また、2009年3月のボン会合では、「附属書1国全体の温室効果ガス排出削減幅と、各国別の削減量について」のワークショップが開催されることになりました。

この時点ではまだ、世界が熱い期待で待ち望んでいるアメリカのオバマ政権も、提案を出せるほどに本格的には始動できていないだろう、という大方の予測の元、作業プランも3月までの曖昧なままで決着したといえます。

しかし、そうはいっても、5月までには、

  • 削減幅についての情報を提出し
  • ワークショップを開催し
  • 議長がいよいよコペンハーゲン会合で採択すべきテキストを作るためのノートを準備する

ことは決まりました。作業プランは最低限、コペンハーゲンで合意するための道筋を描くことまでは、できたといえます。

こうして、CDMや適応基金についてなどの議題が閣僚級会合に一部残されたものの、肝心な2つのAWGは、閣僚級会合が始まる前に終幕。合意でもめることが常の温暖化会合では、異例ともいうべき決着を見ることになりました。

閣僚級会合報告

12月11日、12日には、各国の大臣級が参加するハイレベル会合(閣僚級会合)が始まりました。この会合では、各国大臣のスピーチが行なわれる本会議場とは別に、午後4時からは、「共有ビジョン」に関するラウンドテーブルも開催されました。

途上国が掲げた国内削減目標

本会議場でのスピーチは、各国大臣の順番も決まって、スピーチもあらかじめ準備されたものですが、ラウンドテーブルでは、あらかじめ、緩和、適応、資金にわけて6つの質問が用意され、各国大臣が自由に発言する形式で行なわれ、注目を集めました。

世界の100カ国あまりが発言した中、目立ったのは、主要な途上国が「国内削減目標を持つ」ことを発表したことです。 メキシコは2050年までに50%減、南アフリカはすでに発表していた通り2020年から2025年までに排出を減少に転じさせ、2050年に50%減、パプアニューギニアは、2020年までに50%減し、2050年にはカーボンニュートラルという野心的な目標を発表しました。

それに比べ、EUと他のヨーロッパ諸国を除いた他の先進国各国は、今回の会議で「次期枠組における先進国全体の削減目標の範囲に合意する」はずになっていたにもかかわらず、消極的な姿勢に徹し、いずれも中期目標を発表しませんでした。

世界の足をひっぱるアンブレラグループ

日本は、「2009年のしかるべき次期に発表する」といったのみ。ポズナニ会議の後に、中期目標を発表するのではないか、と期待されていたオーストラリアも「2009年末のコペンハーゲン会議前には発表する」と発言し、世界を失望させました。

カナダを含めた、アンブレラグループと呼ばれるこれらの国々は、会議の最後まで交渉に後ろ向きで、世界400団体のNGOの集合体、CANから「交渉を妨げる国々」に贈られる「化石賞」を、会議期間中、何度も受賞することになりました。

このような展開に対し、ベネズエラや南アフリカといった国々は、途上国側を代表し、「途上国はすでに大変な温暖化の被害に苦しんでいる。今起きている温暖化に責任のある先進国が、40年以上も先の2050年の削減目標だけに熱心で、現実的な2020年の目標をないがしろにしているのは許せない」と、抗議する発言を行ないました。

その他に特筆すべき発言は、スウェーデンが「適応(温暖化の影響への対策)のため、5億ドル拠出する」と発表したことです。 もっとも、この表舞台での交渉姿勢とは別に、日本の斉藤環境大臣は以前から「90年比で2020年に25~40%削減すべき」と発言していることから、今後の日本を引っ張るリーダーシップも期待されます。

ポズナニ会議全体評価

今回のポズナニ会合は、進展と呼べる内容はなかったものの、結果としては、条約AWGと議定書AWGで、2009年末のコペンハーゲン会議へ向けた作業プランが確保できたため、合意に向けての下準備は整えることができたといえます。

しかし、適応基金のための『収益の一部』徴収制度を、CDM以外の他の京都メカニズムに拡大する議論にも象徴されるとおり、途上国側と先進国側の対立が際立つ場面も目立ちました。

この問題では、途上国側の強い主張にもかかわらず、先進国側がそれを拒絶し、結論が出されませんでした。 温暖化の被害をすでに受け、早急に資金を必要とする途上国側と、各国別の削減目標をアメリカの政権と主要途上国の動向次第とし、なおかつ途上国への資金提供に極めて消極的な先進国側との対立。結果として、ぎりぎりのところで、決定的な対立は避けられ、すべては2009年にゆだねられる形で終了しましたが、問題が解決したわけではありません。

>>>関連記事:象徴的な意味を持った「収益の一部」問題

あまりにも遅々とした歩みで、焦燥感が漂う国際交渉ですが、世界の合意へ向けた大きな歯車を動かしていく国際交渉は、忍耐が試される場でもあります。 あきらめることなく、人類の英知を信じて行動していきたいものです。

日本は、2009年の早いうちに自らの野心的な中期削減目標を発表して、まず自らが行動することを宣言してから、次期枠組における資金や技術移転などの仕組みを提案し、それから途上国の削減行動を議論していくべきでしょう。


象徴的な意味を持った「収益の一部」問題(2008年12月15日)

今回のポズナニ会議後半において、最後まで合意ができず、閣僚級会合まで議論がもつれた問題として、「収益の一部(share of proceeds)」の徴収範囲拡大問題があります。

「収益の一部」とは?

現在、CDMプロジェクトを行なうことで発行される削減クレジット(CER)は、その2%が徴収されて適応基金の資金源に回されています。言ってみれば、適応対策のために、CDMのクレジットから源泉徴収をしているようなものであるといえるでしょう。 CDMクレジットという"収益"の一部分を徴収するという具合にこの仕組みを定めた決定文書に書かれているため、一般的にこれを「収益の一部(share of proceeds; SoP)」問題と呼びます。 これを、共同実施(JI)や国際排出量取引などの他の京都メカニズムから出てくるクレジットや排出割当量ついても拡大するべきという案が途上国から出てきていました。

この案は、京都議定書の9条に基づいて、京都議定書全体の仕組みを見直すという議題項目があり、その文脈で出されてきたものです。2007年の国連気候変動バリ会議(COP13・COP/MOP3)の際に今回の会議で議論することが決定されていました。

問題の背景

こうした案が出てくる背景には、途上国での適応対策に必要な資金を、なるべく早期にかつ予測可能な形で生み出す資金源が必要とされているということがあります。

現在、適応に関する基金は3つあり、それぞれ、気候変動特別基金(SCCF)、低開発途上国基金(LDCF)、適応基金(AF)と呼ばれています。 このうち、SCCFとLDCFへの資金の拠出は先進国各国の任意に任されており、必要な資金がどれくらい入ってくるかは予測できません。

たとえば、2008年3月の時点で日本はSCCFには資金を拠出しておらず、LDCFについてのみ25万ドル(2500万円)しか出していません。これに対し、唯一、「自動的に」お金が入ってくるのが適応基金で、上述のようにCDMクレジットからの「収益の一部」を資金源としているため、CDMのプロジェクトが増える限り、継続的かつ予測可能な形で資金が入ってきます。

国連気候変動条約事務局がこの会議の前に出した試算では、仮にこの第1約束期間からこの徴収範囲拡大を適用し、CDMの場合と同じ2%を徴収するとすれば、最大で年間85億ドル(8500億円)の資金を生むことになると見積もられています。次期枠組みでの削減目標に適用した場合は、年間で最大75億ドル(7500億円)の資金を生むと見積もられています(2013~2020年の期間を仮定)。 後者の方が前者よりも金額が小さくなるのは、将来の方が目標が厳しくなるはずなので、それが翻って徴収するもとになる排出割当量を小さくすることになるからです。

先進国と途上国の溝

この「収益の一部」拡大案を途上国は重視しており、交渉の場では南アフリカや小島嶼国などが強く主張していました。 一方、日本やEUなどの先進国は、この問題について今回結論を出すことに難色を示しました。「収益の一部」をとられるということは、目標が若干厳しくなることを意味する上、他の資金援助の議論も含めた中でまとめて議論をしたいという意向があったからです。

このため、議論の場を、議定書9条に基づく見直しの場ではなく、将来の資金・技術援助を議論している条約AWGの下で議論することを主張しました。 しかし、条約AWGで議論をしているのは2013年以降の枠組み全体であるため、こちらで議論するということになると、この「収益の一部」の拡大が新たな資金源となるのは早くても2013年以降となってしまう上、この話自体が色々な議論の中に埋没しかねないという懸念が途上国の側にはありました。

最近では、問題によっては途上国の中でも意見が分かれることが決して珍しくはないのですが、この問題については、途上国の立場はほぼ一致しており、従来からの先進国と途上国の溝が再びくっきりとあらわれてしまいました。

埋まらなかった溝とこれが持つ象徴的な意味

この問題は、実務レベルの交渉官同士の交渉では対立が解消できず、11日からの閣僚級の会合の議題として取り上げられました。 しかし、長い交渉を経ても結局対立は最後まで終わらず、日付が13日に変わってしばらくしたころ(公式の会期は12日まで)、COPMOPの総会において議長が今回合意ができなかったことを宣言しました。

その後、コロンビア、南アフリカ、コスタリカ、インド、ガボン、パキスタン、ボリビア、モルディブらの途上国政府代表から、この問題について合意ができなかったことについての失望の思いを語る発言が相次ぎました。

この問題は、一見、個別の議題であるように見えますが、その実、現在の交渉全体にとって象徴的な意味を持っています。それは、途上国が絶対的に必要としている適応対策の資金援助について、先進国が極めて消極的であるということのまた1つ重要な事例となってしまったということです。

2008年末に予定されているコペンハーゲン合意において、適応対策への資金援助のあり方はまず間違いなく重要な要素の1つになりますが、それについて、すでに途上国からはいくつかの案が出ていますが、現在のところ先進国からはそれらへの反応も、そしてどのような形であるべきかの明確な案も出てきていません。

主として先進国によって引き起こされてきた温暖化問題によって影響を受け始めている途上国での適応対策への支援について、先進国がこうした消極的な姿勢を見せることは、先進国全体としての削減目標を未だに合意できなかったり、京都議定書での目標達成自体が危うかったりすることと加わって、途上国の側の不信感をより強め、コペンハーゲンでの合意をより難しいものとしてしまっています。


ゴア元米副大統領、演説!(2008年12月13日)

2007年にノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア前米副大統領が、ポズナニ会議最終日の12日に登場、本会議場で演説し、会場を沸かせました。
ゴア氏は、難航している国際交渉に気がめいることの多い交渉関係者に対し、次のように言葉を向けました。

イエス・ウィー・キャン!

「次期枠組へ向けての交渉は、ときにあまりにも歩みが遅くて、絶望する気分になることもあるかもしれないが、今から16年前を振り返って考えると、われわれは、世界で合意して京都議定書を成立させ、ここまで進んできた。

交渉が成立するはずが無いという悲観論よりも、必ずわれわれは地球が必要としている合意に達することができるという楽観論のほうが信じるに足る。

中国や他の途上国は、10年前にわれわれの誰もが想像できなかった温暖化対策をすでに国内において進めている。

そしてアメリカにはオバマ政権が誕生した。オバマ次期大統領の言葉通り、対策を先送りしたり温暖化を否定したりする時代は終わったのだ。アメリカ政府が再び精力的に取り組む」。

そして、「イエス・ウィー・キャン(私たちは、必ずできる)」(オバマ氏のスローガン)と強調して、満員の会場から、大喝采を浴びていました。

最終日とあって、長く、遅々として進まない国際交渉に、2週間を費やした1万人の交渉関係者の間には、疲労と焦燥感が色濃く漂っていましたが、ゴア氏の言葉に、あらためて生き返った気分になった人が多かったようです。そうです!必ず私たちにはできますとも!


「本日の化石賞」日本は世界で2番目に温暖化防止に後ろ向きな国(2008年12月13日)

残念ながら日本という国は、世界の温暖化防止ための国際交渉を、進展させている立場とは到底いえない国のようです。それはポズナニでの国際会議の場で、さらに明らかになってきており、世界のNGOたちから非難を浴びることが多くなっています。

日本は「化石賞」の受賞大国!

ポズナニ会議が開催された2週間の間に、日本政府は、4回も「本日の化石賞」を受賞してしまいました。

この「化石賞」は、世界の気候変動に関する400以上のNGOの集合体CAN(Climate Action Network)が、その日その日の会議において、「化石(温暖化の原因になる、石炭・石油などの化石燃料にもかけてある)」のような、古い消極的な姿勢で、国際交渉をもっとも妨げていると見られる国に贈る、きわめて不名誉な賞です。

ポズナニにおける日本の受賞暦

このポズナニ会議期間中で見ると、日本はカナダに次いで、2番目に多くこの不名誉な賞を受けました。
この評価は、会場に詰め掛けている世界のNGO300人以上で決めるものである以上、世界の市民社会の評価といっても差し支えありません。

日本は、今回の会議において、2日目にオーストラリアやカナダ、アメリカ、ロシアなどと共に、3位を受賞したことに続き、連日「化石賞」を受賞し続けています。

12月3日

1位 :受賞理由

条約AWGの会合において、「2050年までに排出量の半減を」と、途上国も含めた世界全体での目標を共有することを強く主張するも、その基準年は、「京都議定書で定められた1990年ではなく直近年である」と発言。基準年をずらすことで、求められる削減量を減らそうという目論見が酷評された。

2位 :受賞理由

同じく条約AWGにおいて、日本政府が、気候変動対策としてライフスタイルの変化をあげたことに対して、途上国政府から「日本は国民運動を対策としており、シャワーの時間を短くする、などの対策を挙げているが、それで対策といえるのか」という質問があった。これに対し、日本政府を代表して発言した担当者は「個人的には汗かきなので、シャワーを7回くらい浴びるが、それを地球のために3回にした。こうした発想の転換が、対策の基本」と発言した。途上国は「シャワーを浴びること自体が贅沢なのに」と反発を強めた発言であった。結果、1位と同時に2位も受賞。

12月4日

1位 カナダ、ロシアと共同受賞 :受賞理由

今回のポズナニ会議での焦点は、先進国が次期枠組における削減範囲に合意すること。つまりIPCCの科学が示した、先進国全体に求められる「2020年に1990年比で25%から40%の削減範囲」に合意することである。京都議定書AWGはまさにそのことを議論する場。しかし受賞したこの3国は、全く自国の中期目標について明らかにすることは無かった。日本は「2009年のしかるべき次期に発表する」と発言するにとどまった。

12月5日

2位 カナダ、オーストラリアと共同受賞 :受賞理由

京都議定書AWGにおいて、日本は、「京都議定書で定められた1990年という基準年は不公平である」として、基準年を1990年ではなく、複数年にしてあらわすことを提案。オーストラリアが賛同する姿勢を見せ、カナダも検討に値する提案であると追随した。

12月9日

1位 カナダ、オーストラリアと共同受賞 :受賞理由

日本、カナダ、オーストラリアの3国が、2日間にわたって、先進国の次期目標を決める議定書AWGの交渉において、2020年の先進国全体の削減範囲25%から40%(1990年比)に反対し続けたことによる。バリ行動計画にはすでにIPCCへのこの野心的シナリオ(25%から40%)を認識するという言及があるにもかかわらず、それを進展させること無く、さらにこれを後退させようとした。一方で、目標を後退させることに熱心ではあったものの、3カ国が増加させ続けてきた排出を後退させることには、熱心ではなかった。

ポズナニ会議を含めた、一連の過去の気候変動の国際交渉全体を通して見た場合、日本は悪評高いアメリカと、京都議定書の約束を守らないことを宣言したカナダに続き、堂々3位に入っています。

交渉においては、自らの中期的な削減目標を明らかにすることもなく、基準年ずらしやセクター別アプローチによる積み上げ方式など、自国の目標を低くすることばかり主張しているのが、世界から非難を浴びている原因です。

また国内においても、いまだ環境税も排出量取引制度など実効力のある政策もなく、排出を増加させる一方であることが、世界から疑念を持たれる一因になっています。
日本政府には、先進国としての責任をきちんと果たし、国際交渉をリードしてほしいものです。


豊かで出し惜しみする先進国首脳に直接アピール(2008年12月12日)

国連気候変動ポズナニ会議(2008年)は前半が終了しましたが、これまでのところ、次期枠組みに向けた交渉は、ほとんど進んでいません。先進国の受身かつ出し惜しみするような、消極的な姿勢がその原因です。WWFは12月11日に始まった閣僚級会合の朝、各国の閣僚に直接抗議を行ないました。

「しみったれ」の豊かな国々

会議の前半が終了しましたが、先進国の後ろ向きな姿勢によって、次期枠組みに向けた交渉はなかなか前進をみていません。

とりわけ、日本やカナダ、ロシア、オーストラリアは、あろうことか、いまだに先進国の削減目標を弱めようとしています。この国々は、決議文に「2020年までに25~40%削減が必要という IPCCの指摘を踏まえたものであるべき」という表現を盛り込むことにも終始反対。このためポズナニ会議は今のところ、2007年のバリ会議からほぼ進展のない結果となっています。

その中で、12月11日に始まった閣僚級会合のため、先進各国の大臣たちがポズナニ入りしました。
大臣たちには、二つの課題があります。すなわち、

  1. 野心的な次期枠組みの構築に向けて先進国が真剣に取り組んでいることを途上国側に示すこと
  2. 先進国は、途上国の排出削減に必要な資金と技術の提供を明確に示すこと

WWFグローバル気候イニシアティブ代表のキム・カーステンセンは次のように述べています:
「先進国の大臣たちが、土壇場で途上国の提案に応え、先進国の責務を果たすことを約束すれば、合意に向けて前進し、絶望的な決裂は回避できるだろう」。

先進国の大臣たちによる、野心的な削減目標の設定と、途上国への十分な支援提供の提示。展開は厳しいものの、閣僚級会合でこれが実現すれば、会議前半の膠着状態は打開できる可能性が残されています。

世界はあなたたちを見ているぞ!

閣僚級会合が始まる12月11日の朝、WWFのメンバーは、会議場へと向かう各国閣僚たちに対し、目玉おやじみたいなかぶりものをかぶってアピールを行ないました。メッセージは「世界はあなたたちを見ているぞ!」。会議前半の停滞が、閣僚級会合で挽回されることが期待されます。

Press Release:Stop the stinginess, WWF tells ministers from rich countries

11 December 2008

Poznan, Poland- The passive and stingy approach displayed by rich countries over the first half of UN climate talks in Poznan threatens to ruin negotiations about a new global climate treaty, says WWF. The global conservation organization calls on rich countries to ease irritations among poor countries about a lack of financial and technological support for climate-friendly growth and adaptation to dangerous impacts.

As ministers arrive in Poznan, WWF stresses their two biggest challenges: convincing developing countries that they are seriously pursuing an ambitious climate deal, and providing certainty that they will be delivering finance and technology for emission cuts in developing countries. Ministers from the North must break the paralyzing silence of the first week and signal that they are willing to set tough targets for themselves and provide sufficient support for the South.

"While developing countries have inspired Poznan with relevant proposals, industrialized countries came here fainthearted and empty-handed", says Kim Carstensen, Leader, WWF Global Climate Initiative. "If ministers from the North finally responded to proposals from the South and pledged to deliver their share of the effort, agreement would be at hand and a devastating split avoidable."

Despite the urgency of the climate threat, countries like Japan, Canada, Russia and Australia still aimed to weaken rather than strengthen emission targets for industrialized countries. They blocked the inclusion of a strengthened reference to 25 to 40% emission cuts by 2020 in the Poznan conclusions, which would have gone beyond the agreement made at talks in Bali last year. However, governments managed to agree a work plan for 2009 which is meant to result in clarity on reduction targets in time for Copenhagen next December.

"Scientists tell us that a catastrophe is looming, and people across the globe demand quick action, but irresponsible countries still advocate regress where the planet needs progress", says Carstensen. "The world is watching and demands to see the opposite: solidarity instead of selfishness, ambition instead of apathy, and solutions instead of stalemate."

In order to remind ministers that all eyes are on them, WWF supporters welcome them today with a theatre of giant eyes observing the negotiations. They urge governments to solve some of the most pressing issues in order to finish Poznan on a positive note and to lay the groundwork for a concrete negotiation text and a constructive debate in 2009.

"Poznan must give the UN a clear mandate to draft text for the new global climate treaty, which would provide the next round of talks in March with a strong basis", says Carstensen. "Pending decisions about starting the fund for adaptation in vulnerable countries can also not be delayed, because climate impacts hitting faster and harder are putting affected nations increasingly at risk."


【記者発表資料】弱気なEUと動きの遅い国々によって国連の気候変動交渉が窮地に(2008年12月12日)

【ポーランド、ポズナニ】本日閉幕の国連気候変動ポズナニ会議は進展のない不本意な結果に終わり、2009年のコペンハーゲンでの次期枠組みの合意に向け、重要な機会を逸してしまったと、WWFは発表した。今回の進展の行き詰まりは、主に欧州連合(EU)のリーダーシップの崩壊と、交渉を楯にとった他の先進国による進行の妨害によるものである。

WWFグローバル気候イニシアチブ代表のキム・カーステンセンは言う。
「今回の会議は、真の指導者たちが一歩前進し、経済と気候変動の危機に同時に闘いを挑む立場を表明する場となるはずであった。しかし先進国は、ポズナニ会議の総会の場では、地球温暖化防止の重要性を唱える一方で、自国内では温暖化防止政策が不十分であったり、そのような政策を批判するなど、深刻な偽善行為を露呈することになった」

 次期政権への移行期にある米国が会議の中心から大きく外れる中、EUのリーダーシップに対する期待は打ち砕かれてしまった。ブリュッセルのEU首脳会議において、経済を活気づけるクリーンエネルギーの開発を中心に据える代わりに、域内の気候エネルギー包括法案の内容を骨抜きなものにしてしまった。対照的に、途上国は建設的な精神と提案を携えて交渉に臨んだ。特に、中国の見事なリーダーシップとメキシコによる2050年までに50%削減という宣言は素晴らしいものであった。

カーステンセンは言う。「ポズナニで、受け身のEUは、米国と同様、実質的に役に立たない状態となり、一方、カナダ、日本、ロシア、サウジアラビアは、公然と交渉の進展を妨害した。これらの国々は、自国の経済を本気で環境負荷の小さいものにする必要があり、ノウハウ、資金、技術を途上国に提供しなくてはならない。さもなければ、次期枠組みへの展望は曖昧なままである」

ポズナニ会議では多くの好機が無駄になってしまった。中でも、重大な生物多様性の問題と先住民の権利が、森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減(Reducing Emissions from Deforestation and Degradation: REDD)に関する最終文書に盛り込まれるべきであった。他方、適応基金については前向きな決定がなされ、適応基金理事会が動き始めるようである。気候変動の危険な影響を回避するための最貧国の取組みを支援する資金の流れが、いよいよ始まることが期待される。

今回のポズナニ会議で各国政府は、会議を単なる話し合いから交渉へと前進させる上で必要な作業計画を決めるという最低限の意思決定だけは行なった。その作業計画では、先進国は2009年の早い時期に、2020年までの排出削減目標を公表することが求められている。WWFは先進国に、今度こそその目標を定め、1990年より少なくとも25~40%削減することを目指すよう要求した。この中期目標の発表は、途上国に対する資金的・技術的支援と共に、世界中の人々が期待する国際連帯のしるしである。

キム・カーステンセンは言う。「ポズナニ会議では大きな前進がなかったが、2009年のコペンハーゲンでの国際合意への余地はまだ残っている。しかし、丸1年を戦略や実施策の妨害に浪費すれば、時は瞬く間に過ぎてしまう。指導者たちはこれから、より懸命に、より素早く、自らの職務を成し遂げなければならない。国連の気候変動交渉プロセスの問題ではなく、先進国の政治的意志の問題である」

▼記者発表資料のオリジナルはこちら

Feeble EU and group of laggard countries stymie UN climate talks - WWF

12 December 2008, For Immediate Release

Poznan, Poland - WWF says the disappointing lack of progress at UN climate talks in Poznan is a major missed opportunity towards reaching a new global climate treaty in Copenhagen in 2009. The stalemate was largely the result of a collapse in European Union leadership and obstructionism by other industrialized countries taking the negotiations hostage.

"This was a moment in time when real leaders would have stepped up and taken the positions that would combat the economic and climate crisis at the same time," said Kim Carstensen, Leader of the WWF Global Climate Initiative. "Instead, industrialized countries preached sermons about the importance of climate protection in the Poznan plenary while lacking or attacking policies to make it happen at home - a serious sign of climate hypocrisy."

With the US largely sidelined amid the transitioning presidential administration, the hope for EU leadership was dashed as Heads of States meeting in Brussels watered down the block's climate package instead of moving clean energy development center stage for invigorating the economy. In contrast, developing countries arrived in Poznan with a constructive spirit and proposals to match, highlighted by China's impressive leadership and Mexico's pledge to cut 50% of emissions by 2050.

"A passive EU, in effect, joined the US as the second lame duck in the Poznan pond, while Canada, Japan, Russia, Australia and Saudi Arabia openly undermined progress", Carstensen said. "These countries need to get serious about greening their economies and they need to provide know-how, funding and technology to developing countries. Otherwise, any prospects for a new global climate treaty will remain dim."

WWF said many opportunities were wasted in Poznan, among them the inclusion of crucial biodiversity issues and the rights of indigenous peoples in the final text on the issue of Reduced Emissions from Deforestation and Degradation. It is likely that one positive decision will be to put the Board of the Adaptation Fund into operation, with the hope that money can finally begin to flow to support the poorest countries in their efforts to stem dangerous climate impacts.

Governments managed to at least make procedural decisions on a work plan that will advance the UNFCCC from just talking into negotiating. According to that plan, industrialized countries are expected to announce emission reduction targets for 2020 in early 2009. WWF urged rich nations to finally set these targets and to aim at cuts of at least 25 to 40% below 1990 levels. Together with financial and technological support for developing countries, such targets will be the signal of solidarity that people all over the world want to see.

"Despite the lack of major steps forward in Poznan, the door to a global climate treaty in Copenhagen in 2009 remains open," said Carstensen. "But with an entire year lost to blocking strategies and other maneuvers, time is running out quickly. Leaders must now work harder and faster to get the job done. It's not a problem of the UNFCCC process, but one of political will among industrialized countries."


温暖化問題に対するドイツとポーランド首脳の姿勢に抗議(2008年12月10日)

国連気候変動ポズナニ会議(2008年)に参加している、WWFを含めた複数の環境NGOは12月9日、気候変動対策に対するドイツのメルケル首相とポーランドのトゥスク首相の姿勢に、大きな問題があることを指摘。政策の転換と積極的な二酸化炭素(CO2)の排出削減を訴えました。

ドイツの方針転換に抗議

EUでは、現在検討している新しい気候エネルギー法案「気候変動とエネルギーに関する包括的法案」の中で、CO2削減のための方策を議論しています。しかし、CO2の排出が大きな石炭へのエネルギー依存度が高いドイツとポーランドは、この法案の内容を積極的なものにすることに抵抗。EUの排出削減政策の足を引っ張っています。

とりわけドイツは、当初この法案の作成において中心的役割を果たしていたにもかかわらず、2008年になって政策を180度転換。石炭による発電の拡大を図り、メルケル首相も業界を擁護するような発言を続けています。

1年前は、世界の気候変動防止のリーダーと目されていた、ドイツのメルケル首相の背反。

世界の環境NGOから、その姿勢を指弾されたドイツは10日、ポズナニ会議における「本日の化石賞」を1位で受賞しました。
この「化石賞」は、地球温暖化に取り組む世界のNGOの集合体CAN(Climate Action Network)が、その日の国際交渉をもっとも妨げた、温暖化の防止に最も否定的な国に対して贈る、不名誉な賞です。

会議の第一週目に192カ国の11万4,347人が署名した嘆願書は、メルケル、タスク両首相と、他のヨーロッパのリーダーに対し、強力な気候エネルギー法の成立を求めています。

また、WWF、グリーンピースおよびオックスファムインターナショナルの代表たちは、メルケル首相に、世界の気候変動対策のリーダーとしてもう一度戻ってくることを求めました。これらの環境NGOは、EUが強力な気候変動対策を実施することが、経済的な競争力を強化し、より多くの雇用を創出すると考えています。

Press Release:Merkel and Tusk's Climate Reputations Go Up In Smoke

9 December 2008

International Manifestation Denounces German, Polish EU Climate Positions

Warsaw, Poland - At a manifestation outside of today's summit between German Chancellor Angela Merkel and Polish Prime Minister Donald Tusk, green groups from around the world called on both leaders to stop their obstruction of a strong package of new EU climate and enegy laws.

The manifestation, attended by green campaigners from more than 20 countries from every world region, was organised by a spontaneous coalition including Avaaz, Greenpeace and WWF in reaction to Poland's and Germany's attacks on the EU talks in recent days. Representatives of more than 100 NGOs woke before dawn today to take an early train from the UN talks in Poznan down to Warsaw and air their protest.

"If Merkel and Tusk succeed in weakening the EU climate package, they will undermine the global negotiations in Poznan as well," said Ben Wikler, campaign director for Avaaz.org. "Just last year, Merkel was a global climate leader. Does she want to be remembered as one of the world's biggest climate obstructionists?"

Campaigners particularly singled out Merkel for reversing her previous leadership on climate issues.

"Merkel is about to ruin the EU climate package she herself created last year." says Tobias Muenchmeyer, climate expert at Greenpeace. Merkel is at a crossroad and needs to decide now: Does she want to serve the coal industry or does she want to serve the planet?"

A strong EU package is considered crucial for progress at the ongoing UN climate talks in Poznan and beyond, as developing countries are waiting for industrialized nations to show leadership and responsibility.

While officially supporting carbon cuts, Merkel and Tusk are insisting on exceptions for their country's coal power plants and heavy industry.

"Angela Merkel and Donald Tusk are trying to shoot huge loopholes into the EU climate and energy package", says Kim Carstensen, Leader of the WWF Climate Initiative. "They want to protect jobs by watering down their climate commitments, but in reality a strong European climate policy will strengthen Europe's competitiveness and create more jobs, not less."

In a petition circulated by Avaaz.org last week, 114,347 people from 192 countries called on Merkel, Tusk, and other European leaders to support a strong EU climate and energy package. In a joint letter (s.attachment) the Executive Directors of WWF International, Greenpeace International and Oxfam International had urged Merkel to return to the path of global leadership in climate protection.


報告:クリーン開発メカニズム(CDM)を中心とする「メカニズム」関連議論の動向(2008年12月9日)

ポズナニ会議報告:「メカニズム」関連の議論の位置づけ

「メカニズム」の重要性

2013年以降の次期枠組みをめぐる議論の重要な論点の1つに、「メカニズム」があります。クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)、国際排出量取引といった、この通称「メカニズム」を、将来枠組みの中でも活用するのか。するとしたら、どのような改善を施すのか、という論点です。

これらのメカニズムは、もともとは京都議定書での排出量削減目標達成にかかる費用を軽減することを主な目的として作られた仕組みでした。したがって、次期枠組みでも活用された場合は、温室効果ガスの削減目標の設定にも大きな影響を及ぼします。なぜならこのメカニズムの内容によって、削減目標が各国にもたらす実質的な負担が変わることになるからです。

「手段」をめぐって

メカニズムに関連する議論は、2008年、議定書AWGの「手段」(means)という議題の中で議論されてきました。メカニズムが「先進国が将来の目標を達成するにあたって、活用しても良い「手段」の1つ」という位置づけになるためです。
メカニズム以外の「手段」の論点としては、たとえば、森林によるCO2の吸収の扱いを決める、いわゆる「吸収源」の議論があります。今回のポズナニ会議では、本来であれば、この「手段」をめぐる議論に一定の結論を出すことになっていますが、議論が複雑化しすぎている上に、他の議題とも関連が深く単独では決められないため、とても結論が出せる状況ではりません。
ただ、将来枠組みにおいてもこうしたメカニズムを活用するということについては、ほぼどの国からも反対の意見はなく、議論の争点は、むしろ「どのような改善が望ましいか」という部分にあります。

今回のポズナニ会議では、この将来のメカニズムに関する議論は、基本的に非公開の非公式協議の中で行われていました。今回ではとても結論が出せないことを踏まえて、基本的な意見交換と第1週目が終わった時点で行なわれた公式会合の中では、メカニズムついては今後も議論を継続していくことが確認されました。

さまざまな場で議論されるCDM

京都議定書の中で採用された3つのメカニズムの中でも、特にCDM(クリーン開発メカニズム)は、現状の仕組みの中では唯一、途上国が直接的に参加する仕組みであるということもあって、その議論の展開が注目されています。
CDMについては、「2013年以降の次期枠組みへ向けてどのように改善していくのか」という議論と共に、「議定書の第1約束期間(2008年~2012年)内でどのように改善していくのか」という議論も行なわれています。

将来へ向けての議論では、これまでのプロジェクトを対象としていたCDMを電力、鉄鋼、セメントなどのセクター(部門)全体を対象とした仕組みへとスケールアップしていくアイディアなどが議論されています。ただ、すでに述べたように、今回の会議では具体的な結論は出せない状況です。

しかし、第1約束期間内での改善の議論については、ポズナニ会議で何らかの決定が出されるかも知れないものもあります。とりわけ重要なのが、膨大な数になりつつあるプロジェクトの審査を効率的・効果的に行なうための組織体制の改革や、個々のプロジェクトをチェックする第三者審査機関の質を保つための措置、そして、プロジェクトが特定の地域に集中しており、アフリカや後発開発途上国、小島嶼国には極端に少ない問題という、「地理的不均衡問題」への対応などです。

EUや日本などの先進国は、プロジェクトの審査を効率的・効果的にするための組織改革を求めていますが、中国などの途上国は反対しています。また、小島嶼国やアフリカ諸国などは、地理的不均衡の問題を特に重要視していますが、多くの先進国はあまり本格的に議論をする意志をみせていません。複数の論点において各国の思惑が交錯する状態になっており、合意が難しい状況になっています。

また、過去の経緯から、これらのCDMに関する議題は2つの議題項目に分かれており、どちらの場でどの部分を扱うかというのも議論の一部となっています。
さらに別個の特殊な議題として、二酸化炭素の回収および地中貯留を行なうプロジェクトをCDMの中で認めるかどうかということも議論されています。

将来を意識した展望は?

将来の議論も含めて考えると、全部で4つの場所でCDMの議論がされていることになり、ある国の政府代表の言葉を借りると「今回の会議はどこへ行ってもCDMを議論しているようだ」というほどです。
WWFは、プロジェクトの審査を効率的に行なうことや、第三者審査機関の質を保つことには賛成しており、地理的不均衡の問題には是非とも解決が必要であると考えています。
しかし、そうしたルール変更を行なう過程で、大きなこの制度の環境的効果が弱まってしまうような事態、たとえば、排出量削減の審査が効率性の名の下にいい加減になる、といったことは、避けなければなりません。

特に、現状のCDMプロジェクトの中には、CDMなどなくてももともと行なわれていたはずのプロジェクトが審査を通り、追加的に「削減した」と見做されてしまっているケースが多いと見積もられています。
こうした問題については、審査方法の変更も含めて是非とも改善が必要であると考えています。

CDMは、先進国と途上国の排出削減へ向けた努力をつなぎ、信頼を醸成するという意味でも重要な位置づけを持つ仕組みであるため、これらの点を踏まえて、しっかりと交渉の進展を見守り、提言を行なっていく必要があります。


第一週目終了!ポズナニ会議報告(2008年12月7日)

世に迷い込んだような都市、ポーランドの第3都市ポズナニで開催中の国連気候変動に関する会議は、一週目を終えました。2009年末に次期枠組みに合意するために、交渉を加速していかねばならない中、遅々とした歩みに、WWFをはじめとする世界のNGOたちは、警鐘をならしています。

進まない交渉

今回のポズナニ会議においては、大きく以下の4点について成果が期待されます。

  • コペンハーゲン合意に向け、残り1年間となる交渉の具体的な作業計画を作成すること
  • 条約AWGと議定書AWGの二つのAWGの結果を受けて、アイデアを議論する段階から、交渉する段階へと移行できる具体的な交渉テキストに落とし込んでいくこと
  • 温暖化が危険な閾値である2度を大きく下回るようにするために必要な長期の排出削減ビジョンに対して、各国の共通理解が進み、先進国全体の中期の排出削減目標の範囲について科学に基づいた共有化が図られること
  • 途上国の緩和や適応をサポートする資金メカニズムや技術移転の議論の進展

条約AWGの展開

2009年の交渉の基礎をつくる条約AWG(条約特別作業部会)においては、これまで2008年中に3回開催された会議で議論されてきたことをすべてまとめた議長のアセンブリー(編さん)ペーパーが会議直前に用意されました。
これは、年末にコペンハーゲンで新たな議定書の成立が見込まれる2009年、年明け早々に本格交渉がはじめられるように、次期枠組みの原則や仕組みなど、アイデアを落とし込む作業です。

京都議定書に続く次期枠組のとりまとめ

次期枠組においては、京都議定書に入っていないアメリカを組み込み、また急速に排出を増加させている新興途上国の削減行動について、踏み込んだ対策を立てていくことが欠かせないため、膨大な項目において議論が必要です。

各国政府が、これまでに提出した提案や、会期中の発言をまとめたアセンブリーペーパーは、なんと84ページもありますが、これが2009年の本格交渉の基礎となりますから、さらに充実させていく必要があります。

これは、この会議中に提出される提案や、各国政府の発言を受けて、さらに膨らませ、再編さんされた形で出されることになっています。
このペーパーを基に、2009年3月に開かれる次の会議に向けて、内容の吟味と統合がはかられて、交渉のためのテキストに落とし込まれていくことになります。

日本と途上国の対立

一週目には、条約AWGにおいて、世界が共有すべきビジョンについてのワークショップが開かれ、長期目標をはじめとして、次期枠組みにおいて共通の原則となるべきことについて話し合われました。
ワークショップの意見交換を受けて、そのあとにコンタクトグループが開かれ、議論が行なわれることになっていましたが、結果として、途上国側の強い反対で、コンタクトグループの時間を短くされ、90分だけ開催されるにとどまりました。

この中で、日本政府は、G8の成果として、「2050年までに世界で温室効果ガスの排出を半減する」目標の共有を、国連の場で正式に議題にしようと、強調していました。
しかし途上国政府は、「次期枠組の共有ビジョンとしては、途上国が低炭素型の開発ができるような、技術移転や資金援助の仕組みを描くことが一番の目的である」と主張。議論は平行線をたどりました。

EUは、「主要な途上国では国内においてすでに多くの排出抑制目標などの対策法をとっている。それを国際的に議論していこうではないか」とソフトなアプローチで、途上国の行動を促したのに対し、日本政府は、「途上国にも法的拘束力のある効率目標や全体目標を持つべき」と主張し、途上国政府の強い反発を招いていました。

このあとは、11日、12日に行なわれる各国環境大臣級のハイレベル会合で、この共有ビジョンについてのラウンドテーブルが開かれることになっています。

議定書AWGの経過

議定書AWG(京都議定書特別作業部会)は、京都議定書に加盟している先進国の次期目標を決める場で、条約AWGよりも2年早く設立されたため、議論がより具体的に進んでいます。
この議定書AWGでは、まず次期目標を達成するための手段について話し合ったあと、先進国全体の目標の範囲について合意することになっています。

いかに、どれだけ削減するか?「手段」と「範囲」の議論

しかし、手段について、議論すべき膨大なリストが作成されただけで、具体的な項目についての実質的な議論はほとんど進んできませんでした。
今回のポズナニ会議では、まず二つの手段、吸収源とメカニズムについて、各国政府によるインフォーマルな議論が行なわれ、その結果を受けた文書が用意されることになりました。
その手段についての文書をつけた形で、先進国の削減目標の範囲についてのテキストが用意され、議論されることになります。

もともと、「先進国が次期目標とすべき範囲」とは、2007年にIPCCが第4次評価報告書の中で発表した、「気温上昇を、温暖化による影響が危険な閾値に達する、2度未満の上昇に抑えるため」に必要とされる範囲 = 「先進国全体で2020年に1990年比で25%から40%削減」ということがすでに示されています。

また、バリにおける議定書AWGの合意文書の中にも、この範囲が必要であることを認識する、ということがすでに入っているので、ポズナニにおいては、この範囲についてさらに共通認識を強固にしていく必要があります。

数値目標の設定に反対する国々

会議の一週目に開かれた、温暖化の影響の緩和に関するコンタクトグループの会議では、案の定、日本やオーストラリア、カナダなどの主要国(アンブレラグループ)が、目標数値を入れることに大反対しました。

日本はさらに基準年を現行の議定書の1990年から、各国政府が複数年の中から自由に選べる形を提案したり、「削減率で目標を持つのではなく、実質削減量で持つべき」などと独自に主張を展開して、議論を混迷させています。
EUは、すでに「2020年に単独では20%削減、他の先進国が追従する場合には30%削減」という目標を持っていますが、その数値が国内削減だけではない点について、疑問が呈されていました。

途上国政府は次々と発言して、現在の温暖化に先進国が歴史的責任を負っている点や、途上国が有する開発優先の権利を主張。「先進国側がまず削減範囲を明らかにして、先進国がリードする姿勢を示せと」強く迫っています。

特に日本の場合は、自らの中期の削減目標を明らかにしないまま、途上国に行動を迫っており、この主張は今後の交渉を難航させています。

先進国はリーダーシップを取れるのか

一連の議論が続いた会議一週目の最後、議長が取りまとめたテキスト案が出された模様です。
その中には、先進国が立てるべき目標について、「IPCCが示した先進国の削減幅25から40%を認識する」としたバリ会議での合意から、「IPCCが示した先進国の削減幅25から40%を参照するべきである」というさらに踏み込んだ表現が入っている模様です。
これが2週目の大臣級会合などを経て、最終的にどのような形になるか、注目されます。

地球が必要としているのは、世界の国々が一刻も早く、行動を起こし、必要な削減幅の目標に向かって、協力・行動してゆくことです。
そのためには、先進国がまず、このIPCCの科学者たちが示した削減範囲「25%から40%の削減」に合意して、途上国を引っ張っていく姿勢が、今こそ求められています。


ウインター・スポーツ界からのメッセージ(2008年12月5日)

2008年12月5日、WWFが主催したイベントで、オリンピックの金メダリストや、ワールドカップチャンピオン、国連気候変動会議が開かれているポーランドのポズナニで、欧州チャンピオンらをはじめとした、スキーヤー、スノーボーダーが、華麗な技を披露。温暖化がウインター・スポーツにも重大な影響を及ぼすことを訴え、ポズナニ会議参加各国に迅速な排出削減を求めました。

雪や氷がなくなったら困ります!

「地球温暖化」は、ウインター・スポーツにも重大な影響を及ぼす! 12月5日のWWFのイベントで、世界を代表するスキーヤー、スノーボーダーたちが、ポズナニ会議参加各国に迅速な排出削減を求めました。

選手たちは、ポズナニ会議の議長をつとめるポーランドのノビツキ環境相と、代表団に対し、以下の取り組みを求める署名にサインし、手渡しました。

  • 気温の上昇を、温暖化が地球に危険な影響を及ぼすと考えられる、2度未満の上昇に抑えられるような、次期枠組みを作ること
  • 世界の二酸化炭素の排出が、2020年よりも早い時期にピークを迎えること。また、排出量を、2050年までに1990年比で80%削減すること
  • 先進国は2020年までに、1990年比で25~40%排出削減すること

この署名を受けとる際、ノビツキ環境相は公式の場で初めて「ポーランドが2020年までに30%の排出削減が可能である」ことを明言しました。

Press Release:World-famous skiers and snowboarders demand climate action in Poznan

5 December 2008

With snowy winters and ski resorts under threat from climate change, world-famous skiers and snowboarders are calling on governments attending the UN climate talks in Poznan to rapidly reduce global emissions. At a WWF action in Poznan, athletes performed a series of tricks expressing their support for urgent action against rising temperatures.

The skiers - including Olympic and world champions from the US like Ted Ligety and Julia Mancuso as well as world and European champions from Poland like Magdalena Gwizdon and Tomasz Sikora - have signed onto an urgent appeal by WWF. It addresses Maciej Nowicki, the Polish Environment Minister and President of the Poznan talks, and other Poznan delegates.

"From the European Alps to the Asian Himalayas, the US Rockies and the Central American Andes, global warming means milder winters and less snowfall", the petition said. "Ice and snow are particularly vulnerable to the impacts of global warming, and as avid skiers and snowboarders we see our beloved sports endangered."

The signatories demand a new global climate treaty which is ambitious enough to keep global warming below the danger-threshold of 2°C. They urge a peak of global emissions well before 2020 and a reduction of 80% by 2050 compared to 1990 levels. As a crucial first step, they call on industrialized countries to cut their emissions by 25 to 40% by 2020.

"Skiers are first-hand witnesses of the destructive power of climate change, seeing glaciers retreat and snowpack disappear with their own eyes", says Kim Carstensen, Leader of the WWF Global Climate Initiative. "These massive changes endanger important species and alpine ecosystems and threaten local communities depending on tourism and winter sports."

According to science, glaciers in the European Alps have decreased by at least 50% since 1850. If climate change intensifies as projected in upcoming decades, the snowline will move from 1200 to 1800 meters above mean sea level, leaving only 44% of existing ski centers with enough snow for the whole season.

Nearly all glaciers surveyed in Alaska are melting, with thinning rates in the last 5 to 7 years rising to more than twice those seen in previous years. Glaciers in the Northern Andes are receding rapidly and losses accelerated in the 1990s. The majority of Himalayan glaciers have also been retreating and thinning over the past 30 years, with accelerated loss in the last and current decade.

List of signatories:

NameCountryDisciplineTitles
Toni Innauer Austria Ski jumper Olympic winner in skijumping 1980, former holder of 2 world records in ski flying. Since 1993 Nordic Director of the Austrian Ski Federation
Julia Manusco US Alpine skier 2006 Olympic Gold Medalist
Ted Ligety US Alpine skier World Cup Giant Slalom Champion and 2006 Olympic Combined Gold Medalist
Aleksiej Litovaara Poland Snowboarder ISF World Cup Winner 1996
Tanja Frieden Poland Snowboarder Olympic Gold Medalist 2006 (Snowboard Cross)
Tomasz Sikora Poland Biathlonist Olympic Silver Medalist 2006, World Champion 1995, Silver Medalist 2004
Magdalena Gwizdon Poland Biathlonist European Champion 2000
Jagna Marczutajtis Poland Snowboarder European Champion
Mateusz Ligocki Poland Snowboarder Medalist in European and World Cup
Stefan Hula Poland Ski jumper Representative of Polish ski jumping team
Marcin Bachleda Poland Ski jumper Representative of Polish ski jumping team
Maciej Kot Poland Ski jumper Representative of Polish ski jumping team
Krzysztof Mietus Poland Ski jumper Representative of Polish ski jumping team
Eero Ettala Finland Snowboarder World Champion 2006
Heikki Sorsa Finland Snowboarder 7th in World Snowboard Championships 2002 (Halfpipe)
Jouni Pellinen Finland Alpine skier Finnish Champion 2008 (Super Combined)
Jonne Ruoppa Finland Alpine Skier Finnish Champion

気候変動政策と産業の競争力に関しての報告書を発表(2008年12月3日)

ポズナニでの国連気候変動会議における、議定書AWGで開かれた、先進国の削減ポテンシャルと削減目標の範囲に関するワークショップに際して、WWFは温暖化防止政策と産業の競争力に関する新しい報告書を発表しました。この報告書では、しばしば聞かれる「厳しい削減目標の設定は、産業等の競争力の低下につながる」という議論のをあらためて評価し、必ずしもそうではないということを示しています。

先進国の削減ポテンシャルと削減目標の範囲

12月3日、京都議定書特別作業部会(議定書AWG)では、先進国の削減ポテンシャルと削減目標の範囲に関するワークショップが開かれました。
この先進国の削減ポテンシャルと削減目標の範囲は、2007年の第4回議定書AWG(2007年9月)において、各国が厳密な合意に至ることができず、今回のポズナニ会議に残されていた議題です。

このワークショップの開催に当たり、WWFは、気候変動政策と産業の競争力に関しての報告書を発表。
削減ポテンシャルと削減目標の範囲の議論において、先進国は競争力に関する懸念にとらわれず、IPCCが求める『2020年までに1990年比25~40%削減』の高い側の中期目標を採用するよう真剣に議論するよう、各国代表に求めました。

WWFは報告書の中で、しばしば生じる「厳しい削減目標の設定は、産業等の競争力の低下につながる」という議論の中身について、これまでの実証研究をあらためて評価し、必ずしもそうではないということを示しています。

WWFグローバル気候イニシアチブ代表のキム・カーステンセンは、次のようにコメントしています。

「大幅排出削減によって産業の海外移転や経済への悪影響などは起こらず、むしろ将来的な気候変動の悪影響から国を守り、早く行動を起こした国に競争力を与え、たくさんのグリーン雇用を創出します。
削減ポテンシャルと削減目標の範囲の議論において、先進国は、競争力に関する懸念にとらわれず、IPCCが求める「2020年までに1990年比25~40%削減」の高い側の中期目標を採用するよう真剣に議論するべきです」。

報告書

WWF Global Climate Policy Background Paper
Climate change policy and competitiveness :a legitimate concern ?

【PDF形式:296KB / 英文】


【記者発表資料】WWF、ポズナニ会議での気候変動の難題解決を各国政府に求める(2008年12月1日)

【ポーランド ポズナニ発】いよいよ国連気候変動枠組み条約の締約国会議がポズナニで開幕するに当たり、WWF(世界自然保護基金)は各国政府に、会議での交渉をこれまで以上に加速させ、次期枠組みの最初の交渉テキストを作り上げるよう求めた。次期枠組みの最終案は2009年末までに合意を目指す。

WWFの見るところ、今回の会合ほど、世界の気候変動対策を進展させるための好条件はない。

「オバマ次期米国大統領は、気候変動に対して野心的に取り組むことで米国をリードすると約束し、新興の経済諸国は、国内の排出量削減へ向けて迅速な行動をとろうとしている。本日ポズナニに到着する各国代表団にとっては、気候変動の難題を解決し、先進国と途上国の間の膠着状態を打開する、またとないチャンスである」と、WWFグローバル気候イニシアチブ代表のキム・カーステンセンは言う。

交渉の進展は各国代表の手にかかっており、その達成はたやすい。各国代表団は、温暖化を危険な閾値である2℃未満に抑えるために、気候変動問題解決に対する政治的意志と有望な構想を、公平で野心的な交渉テキストへと落とし込まなくてはならない。

「2020年までに少なくとも25~40%排出量削減を約束することによって、先進国の指導者たちは歴史を作り、成功の土台を築くことができる。気候変動による大災害を避けるために、各国政府は世界の排出量が2020年より十分早い時期にピークを迎え減少に転じるよう力を合わせ、この目標達成のための手段に合意しなければならない」とWWFグローバル気候イニシアチブ政策部長のカトリン・グットマンは言う。

既に交渉に上がっている次期枠組みの構築に向けた力強い提案を、ポズナニで具体化しなくてはならない。何よりもまず、途上国の気候変動に対する緩和と適応の取組みに対する先進国の資金援助の公約を増やすべきである。これは、途上国側が次期枠組みに合意する上で、極めて重要な前提条件となる。

「現在の金融崩壊は、大きな危機を無視してきた結果である。この教訓から、気候変動というさらに大きな危機を無視することによって、同じ過ちを繰り返すことのないようにしなくてはならない。途上国における排出削減努力や適応行動に向けた資金提供の遅れは、ただ、状況を悪化させるだけだろう」と、キム・カーステンセンは述べる。


国連気候変動ポズナニ会合に向けて:これまで以上に進展が期待される会合(2008年11月26日)

背景

2008年12月1~12日にポーランドのポズナニで開催される国連気候変動会合は、来年末までに世界が気候変動に関する公平かつ野心的な国際協定に合意できるかどうかを左右する、一つの重大な足掛かりである。

昨年の気候変動会合で合意されたバリ・ロードマップは、各国政府に対し、2009年12月にコペンハーゲンで開催される国連会議において、その国際協定に合意するよう求めている。その期限まで残すところ1年となり、ポズナニ会合では、長期的協力行動に向けた共有ビジョンを展開させ、具体的な交渉テキストを進展させようとしている。

今後1年かけて交渉担当者たちは、それらを具体化していくだろう。今回の会合は、すでに話し合いのテーブルにある選択肢を絞り込み、最も有望な提案をさらに進展させる、絶好の機会である。

主要論点

ポズナニ会合は、スタート地点が前回までの会合とは劇的に異なる。気候変動に野心的な取り組みを掲げている米国大統領が新たに選ばれ、幾つもの新興国が国内排出量削減のためのこれまでにない政策を採用しようとしており、二の足を踏んでいるEUが12月に一連の画期的な気候・エネルギー関連法案を成立させることで、かつての強力なリーダーシップを取り戻す可能性がある。
「幾つかの国で政治的な進展が促されていることで、ポズナニでは確実な前進が期待される。各国の閣僚たちがその政治的意思を、気候変動に関する新たな国際協定に向けた最初の交渉テキストに置き換える、その時が到来した」と、WWFグローバル気候イニシアティブ代表のキム・カーステンセンは述べる。

景気後退を恐れて気候変動への対策を遅らせるのではなく、各国閣僚は、排出量を削減しエネルギー効率を向上させるための対策強化に合意すべきである。それが、環境への負荷が小さい仕事や産業を後押しすることになる。「低炭素社会とクリーンエネルギーへの投資は、気候変動問題と金融危機の両者を解決する重要な要素である。
現在の金融崩壊より重大な、気候変動による大災害を避けるためには、ポズナニで、世界の排出量が2020年より十分早い時期にピークを迎え、減少に転じさせることに合意しなければならない」WWFグローバル気候イニシアティブ政策部長のカトリン・グットマンは述べる。

気候変動の脅威には、断固とした行動を伴う、緊急の取り組みが必要だと認識する先進国や途上国が増える一方で、会議の主催国であるポーランドは、たびたび石炭産業の支持者としての立場を際立たせてきた。
そのためポーランドは、気候変動会合の足を引っ張る者と評されている。「ポズナニは、ポーランド政府が自らのネガティブなイメージを正すための、またとない機会である。まず最初にEUの気候・エネルギー関連法案への反対を取り下げることで、ポーランドは、その時代遅れの見解を見直し、信頼できる主催国になるべきである」と、WWFポーランドの気候・エネルギー部長のボイチェフ ・シュテファニスキは述べる。


ポズナニ会議に向け、斉藤鉄夫環境大臣に書簡(2008年11月26日)

WWFジャパンは11月26日、斉藤鉄夫環境大臣に対し、12月にポーランドのポズナニで始まる、国連気候変動枠組み条約および京都議定書の締約国会議に向け、この会合の重要性をあらためて訴えると共に、日本として取り組むべき政策について提言を行ないました。

環境大臣斉藤鉄夫殿

財団法人世界自然保護基金ジャパン事務局長樋口隆昌

時下、益々ご清栄のことと、お喜び申し上げます。

ポズナニで行なわれる第14回気候変動枠組条約締約国会合及び第4回京都議定書締約国会議は、1年後に控えた京都議定書の次期枠組みを決定するコペンハーゲン2009年会議で、温暖化による壊滅的な平均気温の上昇を防ぐために必要な国際協定の合意に向けた重要な道しるべです。
各国環境大臣は、2009年12月に野心的で衡平な国際協定の合意に至るように、ポズナニでの国際交渉に全力で取り組む必要があります。

今こそ、責任を持つ真のリーダーシップが必要とされています。2007年のバリ会議以降、交渉は遅々として進まず、野心を欠いています。米国のバラク・オバマ次期大統領の言葉を引用すれば、「今こそこの難題に立ち向かい、決着をつけるときです。先送りという選択肢はありません。拒絶という態度はもはや受け入れられません。事は重大です。影響は深刻なのです」

WWFは、オバマ氏のこの明確な使命感が、各国政府を鼓舞して、交渉を進展させることを強く願います。ポズナニ会議において、各国政府は、来年のコペンハーゲン合意を成功させるよう国際交渉を軌道に乗せる意欲があることを十分に証明しなければなりません。

ポズナニにおいて達成すべきこと

1.議論の段階から、具体的な交渉テキストに基づいた交渉モードに切り替えること

各国大臣は、国連交渉をアイデアを議論する段階から、交渉テキストに基づいた真剣な交渉に切り替えなければなりません。京都議定書と条約両方の特別作業部会の議長たちは、ポズナニの結果に基づく交渉テキストを通して来年の交渉を進めていくという明確な使命を与えられるべきです。2009年に新たな国際協定に合意するためには、ポズナニにおいて、各国政府のこれまでの有望な提案を集約した結論が出ることが必要です。

2.「共有ビジョン」には、科学に基づき、衡平な基盤を入れよ

ポズナニにおける焦点は、大臣級による「共有ビジョン」の議論であり、「共有ビジョン」は、法的拘束力のあるコペンハーゲン協定を導く野心的な骨子である必要があります。「共有ビジョン」には、長期目標だけではなく、少なくとも以下の要素が入るべきです。

  • グローバル排出量が2020年よりも十分早い時期に確実にピークを迎え、減少に転じるような行動の必要性を踏まえた合意であること。温暖化が危険な閾値である2℃を大きく下回るようにするためには、2050年には、90年比で少なくとも80%削減する長期目標が必要であることを認識すること。
  • 先進国は全体として、IPCCの示す2020年に90年比で25%から40%の削減が必要であることを認識すること。途上国グループも、何も対策をとらない場合(BAU)の排出から大幅な削減が必要です。先進国がオフセットを使う場合には、目標をその分上乗せするべきです。
  • 途上国が緩和と適応方策を実行するに当たっては、先進国が、適切な計測、報告、検証可能な資金的、技術的サポートを提供することが条件であることは言うまでもありません。

3.2012年以前にも途上国の制度構築の能力向上と早期削減努力をサポートすべき

2012年以前の期間にも、各締約国は、途上国の制度構築の能力向上を行なうプログラムにさらに協力するべきです。特に(1)適応(2)エネルギー及び森林関連の緩和が重要になります。

4.資金メカニズムと技術移転に対して、明確に建設的な提案を行なうべき

これまで途上国側の方が、幅広く積極的な提案を出すことによって、主に交渉を前へ進める役を果たしてきました。ノルウェーやスイスからはよい提案が出ていますが、ポズナニにおいては、その他の先進国から、もっとエネルギーや森林、適応などの技術移転や資金メカニズムの提案を出す必要があります。また先進国は、G77やメキシコなどから出ている提案を十分議論する姿勢を打ち出すべきです。

5.信頼されるリーダーとなるには、国内において早期に一貫した気候変動政策をとるべき

先進国の大臣たちは、京都議定書の目標達成を確実にして、より実効力のある次期枠組みの準備をするために、国内における気候変動政策を強化し、あらたな緩和政策の導入を表明すべきです。あまりにも多くの国々で、WWFは、約束と現実との乖離があるのを憂えています。削減目標と政策を約束する一方で、高炭素社会が長引くような経済政策、たとえば化石燃料補助金の継続で新規石炭火力発電所の建設を促すなどの矛盾した行動をとっています。国際交渉において信頼できるリーダーとなるには、国内での時代遅れな政策をただちに低炭素開発型の政策に変えるべきです。

6.また日本においては、いまだ自国の中期目標を明らかにしていない中、途上国にのみ法的拘束力のある目標を求めており、国際交渉への悪影響が懸念されます。科学に基づいた中期目標を明らかにして、国際交渉へ貢献することを望みます。また自主的に参加し、自主的に目標を持つ排出量取引制度の試行的実施は、実効力に大きな疑念があります。すみやかにキャップアンドトレード型へ移行するべきです。

WWFは、上記に示したゴールは、コペンハーゲンにおける成功のために必要な要素であり、十分達成可能なものだと信じます。気候変動の破壊的な悪影響から、人と生態系を守るために必要な方策について、ポズナニ現地において、日本政府の見解をお聞きし、議論する機会を楽しみにしています。


2008年 国連気候変動アクラ会議(2008年8月21日)

2008年8月21日から28日まで、ガーナのアクラで、地球温暖化防止のための国連会議が開催されました。これは、2007年のドイツのボンでの会議に続くもので、京都議定書の約束期間が終わる2013年以降の世界の温暖化防止を話し合う、2009年のコペンハーゲン会議に向けた、重要なステップです。会議は長大な時間を要しましたが、それでも特筆すべき成果が見られました。

2つのAWG

今回のアクラ会議では、温暖化に関する国連会議が定めた国際交渉の場である、2つのAWG(アドホック・ワーキング・グループ)、すなわち、京都議定書AWGと温暖化防止条約AWGの2つの会合が、平行して開催されます。

京都議定書AWG

京都議定書AWGは、最終的には2009年末までに、京都議定書に続く、先進国の次期削減目標数値を決定するための会合です。

今回の会議では、先進国が削減目標を達成する際に使うことが許されている仕組み(排出量取引、共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM))や、将来的な森林吸収源のあり方、温室効果ガスの種類、排出源、セクターを対象としたアプローチの扱いなどについて、一応の結論を出すことになっています。

しかし、これらの問題は極めて複雑で議論にも時間がかかります。従って、現実には今回の会合では、これらについての明確な結論が得られないまま、論点の整理と今後の議論の方向性が示されるにとどまることが予想されます。

条約AWG

国連気候変動枠組み条約(温暖化防止条約)AWGは、議定書AWGより取り扱う議題が広く、温室効果ガスの削減対策、適応、技術移転、資金メカニズムなど、全般について議論される場です。

こちらの会合の方が、関係者の間で比較的高い関心を集めています。その理由は、将来、先進国からの支援を前提に、インドや中国などの途上国が、どのような気候変動対策を行なうのかという問題や、京都議定書を離脱しているアメリカの将来の扱いについて議論される場であるためです。

ただし、現時点ではまだ各国間の思惑が対立し続けており、交渉が十分に進んでいないため、実質的な進展は、今後の議論にゆだねられることになると思われます。

条約AWGの2つのワークショップ

今回の条約AWG会合では、2つのワークショップも開かれることになっています。テーマはそれぞれ「セクター別アプローチ」と「途上国における森林減少および劣化からの排出量削減(REDD)」です。

テーマは両方とも、各国の関心が非常に高く、特に前者は日本が首相のスピーチ等でも重要視しているアプローチであり、日本がどのような発言を行なうかが注目されます。

条約AWGでは、これら2つのワークショップに加え、3つのテーマにそったコンタクト・グループで議論を進めてゆく予定です。1つは、排出量削減対策と、技術移転、資金メカニズムをテーマとするコンタクト・グループ。2つ目は、温暖化に対する適応対策と、技術移転、資金メカニズムをテーマとするコンタクト・グループ。そして 3つ目は、技術移転・資金メカニズムに関する制度的環境の整備についてです。

ポスト・京都議定書に向けた大切な一歩

2009年末に予定されているデンマーク・コペンハーゲンでの会合では、京都議定書の約束が終了した後の、将来の国際的な温暖化防止のための枠組みについて、世界の国々が合意することが求められています。

しかし、そのステップであったはずの2つのAWG会合は、過去の会合においても、手続き論や論点リストの作成、純粋な意見交換といった議論に終始し、大幅な進展を導き出すには、残念ながら至っていませんでした。

2008年12月には、ポーランド・ポズナニで第4回京都議定書締約国会議(COP/MOP4)の開催が予定されていますが、この会議では、2009年コペンハーゲン会議に向け、さまざまな論点についての提案をまとめあげ、各国が未来に向けた、前向きな交渉のスタートラインに立たねばなりません。

今回のアクラ会議では、その実現に向けた、より具体的な提案に基づいた議論をしていくことができるかどうかが、大きなポイントになります。

WWFが目指すもの

今回の会議の議題にはあがっていませんが、WWFは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第四次評価報告書に示されている、将来の温暖化の影響を最小限に抑えるシナリオに対応する形で、先進国が2020年までに、1990年比で25~40%の温室効果ガス排出量を削減することが、重要だと考えています。さらに政府代表は、先進国が2050年までに1990年比で80~95%の温室効果ガスの排出量を削減することを、アクラで宣言すべきであると考えています。

前向きかつ明確な目標を掲げることこそが、地球温暖化の防止に向けた、今後の交渉の進展の鍵を握っているのです。


記者発表資料 国連気候変動ガーナ会議にも「オリンピック精神」を!(2008年8月20日)

【ガーナ、アクラ発】8月21日よりガーナの首都アクラにて開催される会議で、国連の気候変動交渉は新しい段階に入る。それに際し、WWFは、各国政府が交渉のテーブルにもオリンピック精神を持って参加することを呼びかける。危険な気候変動から人々と自然を守り、2009年のコペンハーゲンでの新しい世界的合意を達成するために十分な基盤を築くには 「より早く、より高く、より強く」というオリンピックのモットーが、議論の指針とならなければならない。

「アクラでの交渉は、実質的な中身について"より速く"進展を見せなければならないし、先進国・途上国ともに"より高く"野心を掲げなければならないし、CO2排出量を減らすための政策は"より強く"なければならない。気候変動に対抗するレースで金メダルを獲得するためには、交渉官たちは具体的なアイディアや詳細な提案をテーブルに出すことで、交渉戦術に明け暮れるのではなく実質的な中身の議論を始めなければならない」と、WWFグローバル気候イニシアチブ・ディレクターのキム・カーステンセンは述べている。

今年、先に開かれたバンコクやボンでの会合では、交渉の手続き論や議論すべき争点に関する「ほしいものリスト」をまとめることに焦点が当てられていた。今回アクラでは、交渉官は違うところで手腕を発揮すべきである。つまり、気候変動に関するファイナンス、技術移転、適応措置および緩和措置に関する確固たる提案をとりまとめ、最も革新的で野心的な案の詳細を作り出すのである。

「何カ国かの"競技者"たちは、具体的な提案を携えてきている。それらの国々は、気候変動に関するしっかりとした国内政策をもっており、交渉を前進させるための新しい協力体制を築く準備がある。よく準備ができているノルウェーや南アフリカなどの国々はだいぶ調子が上向きのようである。他方で、アメリカや日本はだいぶ遅れをとっており、従来のように時代遅れの妨害戦術を貫きその手腕をムダにするようであれば、メダルは望めないだろう」と、WWFグローバル気候イニシアチブ・政策コーディネーターのカトリン・グットマンはみる。

南アフリカやメキシコに代表される新興経済国が、勇気や創造力、そして政治的決意の面で、かつてのリーダーであったEUを追い越そうとしている。先日の日本でのG8洞爺湖サミットにおいても、それらの国々は、現状の延長線上の排出シナリオから大きく離れる(削減する)ということを約束することで、本当の意味でのリーダーシップを示した。それに引き換え、ほとんどの先進国は温暖化を危険な閾値である2℃より低いレベルに抑えるために必要な排出量削減目標を公約することができないでいる。

「北京のアスリートたちが陸上や水泳で世界新記録を出し続けているが、アクラの交渉官たちには、先進国と途上国の膠着状態を打ち破ることができるはずである。究極的には、すべての国々が一緒に気候変動には取り組まなければならない。アクラにおいて、裕福な先進諸国は、自らのポテンシャルを活かしきることができるはずである。理想的には、EUが、かつての強さを取り戻し、新興経済国とチームを組んでその取り組みをリードするべきである」とWWFグローバル気候イニシアチブ・プログラム コーディネーターのダイアン・マクファジエンは期待を込めて語っている。


記者発表資料 国連気候変動アクラ会議で交渉の進展を促す国々が新たに登場(2008年8月27日)

【ガーナ、アクラ発】国連の気候変動会議の終了にあたり、WWFは、議論に焦点を持たせ、具体的で詳細な方向へと進める道筋を示した、先見の明のある国々の登場に対し賞賛を送る。2009年までに、新たな気候変動に関する世界的な合意を得るというバリでのマンデートは、依然として非常に大きな課題であるが、アクラでは、意見対立の混迷を乗り越えて、気候変動に対する実効力ある取り決めを行うことは可能であり、それはリーダーシップを示す政治的な意志次第であることが示された。

「現時点で、気候変動への国際的な取り組みの中で賞賛すべきは、議論を本質的な要点へと推し進めている先進的な国々である。アクラでの遅々とした交渉においても、確固たる決意を持った先頭グループの交渉官たちが、重大な議論の進展へ向けて努力する勢いが損なわれることはなかった。しかし、次回ポズナニにおける気候変動交渉の成功が確保されたとは言いがたく、より多くの国が真剣に政治的野心を高める必要がある」とWWFグローバル気候イニシアチブのディレクターであるキム・カーステンセンは述べている。

各国は幾つかの重要な課題において何とか結論へと近づいたと、WWFは考える。森林破壊によるCO2排出に立ち向かう戦略が生まれ、大幅排出削減および気候変動への適応に対する資金援助に関する交渉が具体的なものになってきた。しかし、その他の複雑な交渉課題についてはアクラでの進展は見られず、予定よりも大幅に遅れをとっている。

後ろ向きの国々による恣意的な議論のかく乱と手順に関する議論に、必要以上の時間を浪費したため、気候変動交渉は停滞し、交渉官たちはあまりにも長い間、時間を無駄にさせられてきた。アクラで初めて、革新的な国々による建設的な対話の前向きな例が見られるようになってきた。このような前向きな姿勢が12月のポズナニでも、確固たる傾向とならなくてはならない」と、WWFグローバル気候イニシアチブ・政策コーディネーターのカトリン・グットマンは述べている。

アクラでは、これまでの交渉で見られた傾向も確定的なものとした。EUは、途上国やノルウェー、スイスといった創造的な国々に対し、気候変動リーダーとしての役割を失いつつある。過去の提案の改善や、新たな提案の具体化によって、これらの国々は交渉の進展役として信頼できる国になりつつある。これらの国々は、新興諸国と共に交渉の新しい動力となっている。とりわけ注目を浴びたのは、アクラで排出削減目標の設定と再生可能エネルギーの普及を公約した韓国である。

「EUは、6月のボン会議で我々を失望させたのと全く同じようにアクラでも我々を失望させた。手ぶらで交渉のテーブルについてしまったことへの後悔を示しながら。ポズナニ会議は欧州各国にとってはホームゲームであり、能力を全て発揮する絶好の機会である。野心の低さにおいて、カナダやロシア、日本、オーストラリア、米国などと同じレベルにならないためにも」とWWFグローバル気候イニシアチブのプログラム・コーディネーターであるダイアン・マクファジエンは期待を込めて語っている。


国連気候変動アクラ会議を振り返って 2008年9月11日

2008年9月11日

西アフリカはガーナの首都アクラにおいて、2008年8月21日から27日まで、世界150カ国あまりが参加する国連の気候変動に関する特別作業部会(AWG)が開催されました。世界がアメリカの次期政権を待つ間に開催されるこの気候変動の会議は、あまりにも遅々としたペースでしか進みませんでしたが、それでも特筆すべき成果が見られました。

見られた進展

アクラ会議における二つの成果。
その一つは、2013年以降の気候変動に関する将来枠組において欠かせない新興途上国(他の途上国と比較して発展が著しい途上国)の排出削減について、はじめて交渉の場で議論がはじまったこと。
そしてもう一つは、年末のポズナン会議に向けて、やっと少しずつ具体的な提案が姿を見せ始めたことです。

気候変動枠組み条約AWG(条約AWG)

バリ行動計画の実施を話し合う条約AWG(アドホック・ワーキング・グループ:特別作業部会)では、「セクター別アプローチ」と「森林減少防止」の二つのワークショップが行なわれました。

セクター別アプローチのワークショップ

日本政府は、これまで国際社会へ向かって「セクター別アプローチ」を強力に推進してきており、今回もこのワークショップにむけて事前に意見書(サブミッション)を提出。初日にはプレゼンテーションを行ない、さらに「セクター別アプローチ」のサイドイベントも行なう、という力の入れようでした。
「セクター別アプローチ」という言葉は、提示する各国政府によって、それぞれ違った思惑で使われており、共通の概念はまだありません。今回のワークショップでは、日本をはじめ、EU、オーストラリア、インドネシアが意見書を提出、また日本、EU、G77、インド、バングラデシュ、中国がプレゼンテーションを行ない、討議する中で、おおよそ以下の3つの意味に整理されてきました。

  1. 先進国の国別総量目標を決めるため、セクター別に排出削減量を積み上げる方式
  2. 途上国の削減行動のあり方として、途上国(主に新興途上国対象)のある特定のセクターだけに削減目標を課し、先進国からの技術移転、資金供与などの協力のもと行う協力的セクター別アプローチ
  3. 国際船舶・航空など、従来の各国別の国別総量目標のもとでは捕らえにくい排出セクターを対象に、別ルールで枠をかけようとする方式

このうち、日本政府は、(1)と(2)の二つを提案しており、特に強く推奨しているのは、(1)の積み上げ方式です。これは、セクターごとに世界統一の指標で削減ポテンシャルをはかり、その積み上げで、先進国それぞれの国の総量目標を決めよう、という方式です。先進国対象と銘打ってはいますが、新興途上国も同じ方式で積み上げポテンシャルをはかることを打ち出しています。

これに対してEUは自らの経験をあげながら、「積み上げ方式は経済的に苦しい国に不公平で過剰な負担を強いることになる」として、明確に反対を表明。インド、中国をはじめとする途上国側も「途上国に先進国と同じ指標を用いるのはありえない」と強く否定の見解を示しました。他のどの国も、日本の積み上げ方式(1)に賛意を表明するところはなく、日本の孤立が目立つ結果となりました。

また、EUは、(2)の途上国への協力的セクター別アプローチを提案。その方法として、(A)カーボンマーケットとリンクさせる方式(B)技術政策協力などを使い、カーボンマーケットとリンクしない方式の二つに分けられると説明しました。
(A)のカーボンマーケットとリンクするという方法は、すなわち途上国において達成される削減量を、削減クレジット等の形で売買可能にするものです。既存の制度では、クリーン開発メカニズム(CDM)がこれに該当しますが、将来枠組みの議論ではより規模の大きなものが想定されています。この方式を採用した場合、途上国での排出量削減をダイレクトに先進国が支援することになる(=先進国はそこで得られるクレジットを自国の目標達成に使える)ため、明確なインセンティブが生まれる可能性がある一方、売買可能な形まで持っていくためには、かなり詳細なルールが必要になります。
(B)のカーボンマーケットとリンクしないという方法については、政策に関する経験の共有や個別の技術供与などが想定されています。ファンドなどの形での支援はありつつも、途上国での削減量にダイレクトに応じて先進国が投資をするという形にはなりません。

フィリピンをはじめとする途上国側は、セクター別アプローチは、「途上国への技術移転、資金供与を進めるためのツールであり、途上国の削減目標を話し合う場ではない」と、次々と一貫して主張しました。ただし、そうした従来どおりの主張の中でも、若干の変化が見られるようになりました。

たとえば韓国は、EUの(A)のカーボンマーケットへリンクする方式を支持する形で、途上国における削減行動をクレジット化し、先進国の目標をあげることによる先進国側のクレジット購入で、すべての資金をまかなう、という案を提案しました。韓国は、自国内における削減計画を披露した後、2009年には自らの目標を設定することを発表し、途上国における削減行動について、全面否定の戦略から、条件闘争に移ったことを印象付けました。
また、メキシコは、セクター別アプローチは、いかに途上国を削減行動へ動機付けるかを話し合う場だと主張。インドや中国は、自国内における国内対策として省エネ目標などを設定していることを示して、途上国側の努力を強調しながらも、その国内目標を国際目標にするのはありえないと言及しました。

これはつまり、途上国の目標設定への強い否定の中にも、途上国側の削減行動が、国際交渉の議題に上る段階に入ってきたことを示すものであり、将来枠組みの交渉がターニングポイントに入ってきたことを感じさせるものでした。

なお、ブラジルは、先進国がエネルギー集約産業の国際競争力への懸念からセクター別アプローチを提案することに対し、「国際競争力というのは、そもそも整ったインフラがある先進国に備わっているものであり、インフラが整っていない途上国に向かって、先進国への排出制限約束を持って国際競争力に影響があるとするのは、おかしい」と言及。国際競争力懸念から、セクター別アプローチの展開に備えていました。

条約AWGの下に設置された3つのコンタクトグループ

条約AWGは、その後議長の提案で、3つのコンタクトグループという分科会のようなものが作られ、その3つに分かれて議論が進められました。

(イ)緩和のための技術移転、資金供与に関するコンタクトグループ
(ロ)適応のための技術移転、資金供与に関するコンタクトグループ
(ハ)技術移転、資金供与のための制度設計に関するコンタクトグループ

このうち、(ハ)のコンタクトグループは、その設置をめぐって、アンブレラグループ(日本、オーストラリア、アメリカなど、EUを除く主要先進国のグループ)が、(イ)(ロ)と、(ハ)で話し合う議題の区別がつかないとして、議論が長引きましたが、結局アクラ会議に限って、3番目を設置することになり、(ハ)のコンタクトグループも開催されました。

途上国の差異化議論の開始

実際には、(イ)の緩和に関するコンタクトグループと、(ハ)のコンタクトグループは、ほぼ同じ議論が続く結果となり、一番の焦点は、途上国の差異化議論にあたることになりました。
途上国の差異化議論とは、現状は「途上国」という一つのグループとしてとらえられている数々の途上国について、将来の枠組みの中では、グループ分けをしていく必要があるという考え方です。

条約AWGというのは、京都議定書AWGと違って、京都議定書で削減義務がある先進国だけではなく、アメリカや途上国を含む世界全体での緩和(排出削減)の取り組みを話し合う場になります。2013年以降の将来枠組において、先進国が野心的な目標を持つことは当然ですが、急速に排出を増加させている中国、インドなどの新興国もなんらかの削減行動をとらなければ、世界全体での排出削減は望めません。

(イ)のコンタクトグループの会合では、日本、EU、オーストラリアが、次々と口火を切って、途上国の差異化の必要性を強く訴えました。日本、オーストラリアは意見書も提出し、途上国を3つのグループに分けるべきであると発表しています。
具体的には、

  1. 韓国、メキシコなどOECD加盟国は、先進国としての国別総量目標を持つべき
  2. 中国、インドなどの新興途上国は、削減ポテンシャルをセクター別指標で先進国同様に評価し、何らかの目標を持つべき
  3. その他の低開発途上国は、先進国からの全面的な資金、技術支援の下に、適応と低炭素型の開発政策を行うべき

という内容になっています。
また、緩和に必要な資金も、3つのグループそれぞれの能力に従って、負担していくべきとしています。

特に日本の発表では、シンガポールを名指しで「日本よりも一人当たりGDPが高い」として、「それが途上国というのか」と強い口調で非難し、会場の雰囲気が凍り付きました。シンガポールは、抑制した口調ながら「シンガポールのような小さな島国で、一人当たりGDPの指標で国の発展をはかるのが、どんなに不適切な指標であるかということだけを述べるにとどめる」と応戦し、途上国側の態度が一気に硬化してしまいました。

また途上国側からは、条約AWGは、緩和に必要な途上国への技術移転や資金援助を話し合う場であり、途上国の差異化を議論する場ではないと、強く否定する発言が相次ぎました。
最後に、EUの議長国であるフランスが、「すでに主な途上国では国内対策として緩和政策を計画して、実行しているではないか。その途上国国内で行われている対策を、国際交渉の場で話し合っていこうと提案しているのだ」と、途上国側の理解を求める発言で締めくくりました。

2013年以降の枠組においては、急速に開発が進んでいる途上国の参加が欠かせません。そのためには現在はG77/中国として一致して国際交渉に臨んでいる途上国側を、開発、及び対応能力において区別して、それぞれに削減努力を求めていくことは必要です。そのための議論が、いよいよ国際交渉の場で始まったことは、特筆すべきことです。

いたずらに対立するような交渉戦略をとるのではなく、先進国がまずお手本を示して、野心的な目標を持つことを明らかにし、その上で、途上国への具体的な資金供与や技術移転の仕組みの話し合いをしながら、途上国の努力を促していく姿勢が求められています。
条約AWGでは、まだ意見提出と意見交換の段階です。交渉のスピードアップが必要です。

注目を集める資金メカニズム提案

議長が、一見(イ)と同じように見えるコンタクトグループ(ハ)を設置したのは、資金メカニズムの組織構成を話し合う場を作ることにより、将来枠組における資金メカニズムの話を大きくしていこうという意図があったものと思われます。

資金メカニズムというのは、将来枠組における途上国への緩和、適応支援のたに必要となる莫大な資金を、気候変動枠組み条約のもとに自動的に集まる仕組みを作ろうというしくみです。
これまで、適応のために3つのファンドが、気候変動枠組み条約、及び京都議定書の下に設置されていますが、技術移転のためのファンドはなく、またバリ行動計画において定められた途上国の緩和のための資金支援の仕組みも、現存の枠組内にはありません。
これらに必要な資金を、個別ではなく、全体としてまかなう資金メカニズムの仕組みを議論しようということです。

前回6月のボン会議で、いくつかの提案が出されました。アクラ会議では、さらにその提案を深めた形で、各国が発表を行ないました。
主な提案は以下のとおりです。

ノルウェー案:先進国の排出割当量(AAU)の一部を、条約の下の運営母体が最初からとりおいて、オークションを行って資金とする案。技術移転、適応から森林減少防止まで、将来枠組に必要な資金すべてをまかなう。2%ほどのオークションで、150億~250億ドルの資金が得られるとしている。

メキシコ案:排出量・人口・GDPなどの指標による計算式で、課徴金を、先進国、途上国の両方に課し、削減、適応、技術協力の資金とする案。

スイス案:国際的な炭素税をつくり、それを資金に充てて、確実に確保する案。ちなみに、CO2の排出量が、国民一人当たり1.5トン以下の国は税を除外されるとしている。資金は適応と保険のために、多国間ファンドに組み入れられる。

韓国案:途上国の削減行動(当該国に適切な削減行動の略語としてNAMAと呼んでいる)にクレジットを付与する案。クレジットの市場は、先進国がより深い目標を持つことによって作り出す。

G77/中国案:今回新たにG77/中国としてまとまって提出された案。先進国のGNPの0.5%~1%を拠出させる。条約の下にこの資金を扱う主体を作る。用途は、途上国の緩和、技術移転、R&D、キャパシティービルディング、適応、パテントなどとなっており、メキシコ提案やスイス提案などと違って、途上国側からは一切の資金をとらないとしている。またODA以外の新たな資金源であるべきであるとし、条約の外にある資金メカニズムは、バリ行動計画における先進国の資金サポートとはみなさないとけん制している。

現在、世界銀行の下に、日本やイギリスなどが出資するファンドがありますが、途上国側は、条約以外の場にあるものは、バリ行動計画の中で「先進国の義務とされている資金サポートとは認めない」とけん制したものです。
いずれにしても、新たな資金メカニズムは、新たな追加的資金が、十分に、自動的、かつ予測可能に拠出されることが保障される仕組みで無ければなりません。まだEUも提案を出しておらず、その動向がポズナンにむけて注目されます。

翻って日本はといえば、具体的な提案はなく、クールアースパートナーシップの下で拠出される、条約外で世界銀行管理の資金援助について、ことあるごとにPRを繰り返しているだけです。必要とされる額の資金が自動的に流れる仕組みを将来枠組の中に作っていく議論に、前向きに貢献できるようにしていかねばなりません。

京都議定書AWG(議定書AWG)

京都議定書のもとで、先進国の次期約束を決める京都議定書AWGでは、約束を決める際に使用できるツール(京都メカニズムや森林吸収源等)にまず合意してから、約束の幅の話に入ることになっています。今回のアクラ会議では、そのツールに合意することが課題でした。

しかし、各国がそれぞれ自国に都合のよいツールを取り入れようとするため、交渉は少しも前へ進んでおらず、アクラ会議の前のボン会議では、「買い物リスト」と揶揄的に称される、各国が主張したツールに関する論点がずらっと並ぶテキストとなっていました。
今回のアクラでは、この膨大な数のツールの買い物リストから、どのように絞って合意に導いていけるのか、誰もが先の展開が読めない中、はじまりました。

案の定、リストの数を絞れるどころか、一つ目のリスト「CDMに原発を入れるかどうか」ですでに1時間以上議論が紛糾する有様。結局、議長の判断で、「重要なチケット」「さほど重要ではないチケット」という名目で、各国に札を上げさせ、リストを減らしていく試みが行われました。これは、各国政府が、どうしてもツールとしてはずせないと思う重要な項目だけに絞ろうとしたのですが、結局ほとんどの項目に、いずれかの政府が札をあげ、リストはわずかにしか減りませんでした。

一つ一つのツールの是非や中身について議論する時間は全く取れない状態なので、今度は、議長が各国政府に、それぞれの「重要なチケット」について、意見書を一晩で出すように求め、各国政府の言い分を下に、議長がリストの各項目の下に、説明と、議論ポイントを書き込んだテキストが作成されました。次の会議であるポズナン会議に向けて、各国政府はさらに言い分を意見書の形で、議長に提案することが決められ、それを議長が一つの交渉テキストにまとめて、ポズナンまでに用意することで合意されました。

議長団は、議長と副議長、筆記者、それに事務局で構成されますが、連夜につぐ徹夜続きのハードなまとめのため、副議長が突然インフォーマル会議の途中に倒れ、意識不明の状態で、本国へ搬送されるというアクシデントに見舞われました。幸いこの副議長は、命に別状はなかったということです。

ポズナン会議では、本来ツールの決定を受けて、先進国の約束の幅が合意されることになっています。しかし、ツールの合意がこの状態では、どのように決定の形になるのかが見えてきませんが、早く交渉の土台となるテキストを作り上げ、前へと進めていかなければなりません。


G8関連情報:【緊急声明】主要経済国首脳会合は、全く時間の無駄だった(2008年7月9日)

2008年7月9日 WWFによる緊急声明

【日本・留寿都】本日の主要経済国首脳会合(Major Economies Meeting: 以下MEMと記す)は、前日のG8サミットにおいて、排出削減に対するG8首脳陣のリーダーシップが欠けた結果、全く意味を失った。MEMを主催したブッシュ大統領は、新興経済国に強い気候変動対策を要求しているが、その実現のためには、まず先進国側が、強力なコミットメントを示すことが大前提であるとWWFは考える。しかし、昨日のG8の気候変動に関するコミュニケは、富裕国に必要とされる大胆な政策を全く示すことができないまま終了した。

WWFグローバル気候変動イニシアチブのディレクターであるキム・カーステンセンは次のように述べている。「MEMは、全く成果がなく、中身のない結果で終了した。G8首脳陣が、途上国に対して多くのことを要求しながら、先進国自身はろくに対策をとる気がないわけであるから、当然の因果である。G8首脳陣は、過去にすでに発表した気候変動に関する合意を焼きなおして、まるで新たな合意であるがごとく見せ、世界を欺こうとした。今はG8側が行動を起こす番であり、インドや中国は、富裕国が野心的な目標を持つよう正しい主張をしている」

WWFは、昨日札幌でブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカ共和国のG5カ国が共同で発表した「気候変動に関する国内対策を強化する」という建設的な提案を歓迎する。その代わりにG5カ国は、先進工業国が温室効果ガスの排出量を2050年までに80~95%削減することを求めており、その長期目標を達成する上で必要なエネルギー変革を促すために、2020年までに25~40%の範囲での中期目標が必要であると主張している。

富裕国側が、人と自然が生き残れるかどうかが、彼らの肩にかかっているということを忘れて、交渉戦術に埋没している一方、途上国側は、温暖化の脅威を理解し、前向きに行動する強い意志を示している。昨日のG5カ国の声明は、ここ数ヶ月の間にこれらの国々がそれぞれ発表した有望な政策提案を強調するものである。「途上国側が示している前向きな動きを、先進国はこれ以上無視することはできない」とカーステンセンは付け加える。

洞爺湖ではほとんど進展はなかったが、WWFは、途上国が今後も協力的な志を持って、積極的に対策に取り組み続けることを強く望む。このMEMは直ちに終了させ、8月に予定されているガーナ・アクラ、及び年末のポーランド・ポズナニにおける気候変動に関する国連会合において、国際交渉を前進させるべきであると、WWFは考える。MEMは、G8のプロセス、及び気候変動の次期枠組交渉を前進させるどころか、混乱させただけであり、全くの時間の無駄であることが証明された。
「MEMは、ブッシュ政権が、米国内にはめぼしい気候変動政策が全くないことから、目をそらさせるために、アメリカが主宰したものである。新興途上国を指差して、排出が急増していることを非難したところで、国際交渉は全く進まない。アメリカが、歴史的に大きな排出責任を負っており、一人当たりの排出量が世界で最も高いことから目をそらさせようとするのは、恥知らずな行為である。」とキム・カーステンセンは強調する。


2008年 国連気候変動ボン会議(2008年6月2日)

2008年6月2日から13日まで、ドイツのボンで、国連の気候変動会議の会議が開催されました。この会合は、2007年12月のバリ会合からスタートした交渉マラソンの第2段階にあたり、100カ国以上の政府代表が参加。WWFジャパンも温暖化の担当スタッフが現地に向かい、交渉の行方を追いました。

2008年ボン会議について

2008年6月の国連気候変動ボン会議は、大きく三つの会合に分けられ、開催されます。

1:補助機関会合(SB)

一つは、京都議定書と気候変動枠組み条約の「補助機関会合」です。
この会合は、「京都議定書」で定められた、さまざまなルールなどを議論する定例の会合で、2008年の焦点は、途上国への技術移転、資金援助のメカニズム、適応、森林減少からの排出量削 減、クリーン開発メカニズム(CDM)などの個別の議題について交渉することです。

2:京都議定書AWG

あとの2つは、2013年以降の枠組みを話し合う、二つの特別作業部会(アドホック・ワーキング・グループ:AWG)です。そのうちの1つが、先進国が取り組む温室効果ガスの排出削減について、「京都議定書」での取り決めに続く約束を話し合う「京都議定書のもとの特別作業部会(京都議定書AWG)」です。

3:条約AWG

さらにもう1つのAWGは、「京都議定書」に参加していないアメリカや、議定書のもとで温室効果ガスの排出削減を義務付けられていない中国、インドなどを含めた枠で、削減行動を話し合う「気候変動枠組み条約の下の特別作業部会(条約AWG)」です。今回のボン会議では、この二つの会合が、第一週目から並行して集中的に行なわれます。

位置づけと期待

ポスト「京都議定書」に向けた足取り

2007年末に、インドネシアのバリ島で開かれた温暖化防止のための国際会議では、「2009年までに、2013年以降の次期枠組みに合意する」ことが合意されました。そして、2008年3月には、タイのバンコクで2つのAWGによる第一回目の会合が行われました。

今回のボン会議は、その第二弾にあたるもので、今後2年の間、このような会合の場での交渉が、年に4回ずつ、計8回にわたって集中的に行なわれることになっています。

これらの会合を経て、国際社会は「京都議定書」の後に続く、国際的な温暖化防止のための目標を、2009年末にデンマークのコペンハーゲンで開催される予定の会議で、実際に合意することにしています。

二つのAWGで議論されること

「条約AWG」では、前回のバンコク会議で、今後の作業計画を決めました。
その中で、今回は「資金と技術を通しての適応について」、「気候変動に関する投資と資金の流れについて」、それに「環境技術の普及や移転を促す資金や他のインセンティブ推進について」という3つのテーマで、ワークショップが開催されます。それぞれのワークショップでは、各国政府が意見を述べた後、議論され、その内容が、議長によってまとめられることになっています。

そして、「京都議定書AWG」においては、引き続き、日本でも利用が広がっているCDMなどの京都メカニズムや、土地利用変化、排出が増大している航空、船舶からの排出削減など先進国の削減目標を達成する方法について議論することになっています。
WWFジャパンも温暖化の担当スタッフが現地に向かい、交渉の行方を追っています。


Statement:今こそ行動の時!気候変動問題の解決を運任せにするな!(2008年6月2日)

【ドイツ、ボン】本日からボンで国連気候変動会合が開催されるに際し、WWFは、今会合は話し合いの場である以上に、具体的な結果を出す場とならねばならないと主張した。WWFとオックスファムの代表は、ホッキョクグマに扮して、今会合に対する明解な政策的要求16項目とともに、フォーチュン・クッキー(おみくじ入りのクッキー)を会場で配布した。

2008年6月2~13日にボンで開かれる国連気候変動会合には、100カ国以上の政府代表が参加する。今回の会合は、昨年12月のバリ会合からスタートした交渉マラソンの第2段階である。バリでは各国政府が、コペンハーゲンにおける2009年末の国連サミットまでに、気候変動に関する世界的な協定を作り上げることに合意した。この協定は、緩和、適応、ファイナンス、技術、森林に関するメカニズムや資金とともに、危険な気候変動を回避するための排出量削減目標を含むことになっている。

「各国政府が依然として2008年内の会合は悠長に構えていて平気だと考えているなら、それは完全に誤りである。来年コペンハーゲンで合意を達成するには、各国は今年末にポーランドですでに、2009年の交渉でさらに詰めるべき選択肢と基本論点に合意する必要がある」とWWFグローバル気候イニシアチブ部長のキム・カーステンセンは言う。

前回のバンコクでの国連気候変動会合で、各国政府は詳細な作業計画を作り上げることができず、バリの気候変動サミットでの決定以上の進展を見せることができなかった。ボンでは、交渉担当者たちは、必要な排出量削減とそのために必要な資金を動かすための手段を明確にしなくてはならない。

クリーンエネルギーと適応についての資金調達に関して、各国政府は、資金援助の枠組みのためのツールとしてどのようなものがありえるかを検討し、その開発を約束する必要がある。そして、そのような資金援助の枠組みは、途上国における低炭素型の発展へ向けて、予測可能かつ確実な資金を保証するものでなければならない。

また、気候変動問題への資金援助は既存の開発援助に追加的でなければならない。開発援助は最貧諸国の貧困問題を解決することを目的としており、気候変動による危機の解決を目的とする資金と混同させるべきではない。資金拠出は、開発の目的にしても気候変動の目的にしても全て、計測可能、報告可能、検証可能でなければならない。

それと引き換えに途上国は、実効性ある適応策とより少ない量に排出を抑えるために必要な開発政策を打ち立てることを約束しなければならない。

「先進国は気候変動に対する取り組みをリードすべき自分たちの義務と責任をしっかりと自覚する必要がある。途上国と先進国の間には明らかな差異があり、『大量排出国クラブ』のような表現でもってこの事実を隠すことはできない」とWWF気候政策コーディネーターのカトリン・グットマンは言う。一部の先進国は、バリで京都議定書の締約国が合意した2020年までに25~40%という、中期的な削減約束の範囲に、再び疑問を投げかけようとするだろう。各国政府は、この中期での削減幅を再度確認し、2050年の長期目標にのみ頼ってはならない。

フォーチュン・クッキーに込めた政策要求ポイント

6月2日月曜日の朝、WWFとオックスファムによる共同アクションが行なわれ、今回の気候変動会議に参加する政府代表に、今後2週間の交渉について、一定の方向性を持ってもらうためのアピールをした。NGO2団体は、どのような点ついて進展があるべきなのかを明確に示す、16のメッセージを込めたフォーチュン・クッキーを政府代表に手渡した。渡されたメッセージの中身は次のとおり。

  1. 地球の気温上昇を2度未満に抑えることが、2013年以降の国際的な気候変動防止体制の目標でなければならない。
  2. 2013年以降に関する合意は、貧しい国の開発の権利を保証するものでなくてはならない。
  3. 適応と、気候変動に配慮した開発を対象とする「計測可能、報告可能、検証可能な(MRV)」資金の先進国からの移転は、途上国の行動にとって、必須の前提条件である。
  4. 途上国での適応策のための先進国からの資金提供は、新規で、予測可能であり、かつ適切なレベルのものでなくてはならない。そしてさらに、既存のODAに追加的でなくてはならない。
  5. コペンハーゲンの合意では、適応と低炭素型の発展にしっかりと資金が付くように、毎年数百億USドル規模の資金が、確実に先進国から途上国へ提供されるようにすべきである。
  6. 将来枠組みの下では、先進国は、2020年までに25~40%という削減幅の少なくとも上端で、法的拘束力のある絶対量の排出量削減約束をしなくてはならない。
  7. 気温上昇を2度未満に抑えるためには、世界の排出量を、今後10年間のうちにピークを迎えるように抑え、2050年までに1990年に比べて80%削減しなくてはならない。
  8. 米国は、他の附属書I国と同等の努力を伴う絶対量での排出量削減目標(たとえば2020年までに25~40%の削減)を約束することで、気候変動に対する地球規模の取り組みにもう一度参加しなくてはならない。
  9. EUは域内の排出量を2020年までに、少なくとも、1990年レベルから30%削減しなくてはならない。
  10. 2013年以降の気候変動の国際的な枠組みでは、航空機と船舶からの排出を削減対象とする必要があり、まずは先進国のそれらの部門の排出から削減対象とされるべきである。
  11. 韓国、サウジアラビア、シンガポールのような新興工業国は、2013年以降の枠組みの下では、拘束力ある削減約束に参加するべきである。
  12. 後発開発途上国と小島嶼国に対する気候変動の影響を、2013年以降に関する合意の中での削減努力レベルの適切さを判断する基礎とすべきである。
  13. 一部の主要な途上国は、附属書1国からの適切な財政的・技術的支援を条件として、現状のままの傾向で排出量が推移した場合(BAU)と比べて、低く排出量を抑えなければならない。
  14. CDMを改革せよ!真に持続可能な開発を助け、地球規模の排出量削減を確実にし、技術を移転し、貧困の減少に役立つ、新規のメカニズムが必要である。
  15. 将来枠組みは、京都議定書を基礎に作られ、そして拡大されなくてはならない。先進国には引き続き絶対量での排出量削減目標が課せられることになる。
  16. 各国政府は、ポズナニでの会合以前に、将来枠組みの合意へ向けて2009年中に交渉することになる重要な概念や提案について、共通の認識を持つまでに達しなければならない。ボンはこれに向けての前進を示さねばならない。

CAN(気候変動ネットワーク)による福田首相への要望(2008年6月6日)

ドイツ・ボンで気候変動に関する会議が開催されている中、6月9日に日本の首相がG8へ向けての日本の気候変動対策に関する方針「福田ビジョン」を発表されました。会議参加者の間でも話題になったこの方針発表に向け、WWFも参加している世界の400の温暖化関連団体が集まったCAN(気候変動ネットワーク)Internationalでは6日、以下のレターを福田首相あてに送り、福田ビジョンに対する期待を述べました。

内閣総理大臣 福田康夫 殿

ドイツ・ボン 訳:気候ネットワーク

日本の環境NGO7団体ほか、世界各地の400以上のNGO団体で組織する「気候行動ネットワーク(CAN)・インターナショナル」を代表し、福田総理大臣に述べさせていただきます。
私たちは、福田総理大臣が、洞爺湖サミットに向けて、リーダーシップをはかり、来週「福田ビジョン」を発表することを心より歓迎いたします。

ご存知のとおり、悪化する気候変動問題を回避するために残された時間はほとんどありません。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、世界全体の排出量は今後10年~15年でピークを迎え、その後削減に転じさせ、2050 年までに1990年の排出量に比べ少なくとも半分以下にしなければ、危険な気候変動の悪影響を避けることはできません。これを実現するためには、2020年までに、先進国が1990年の排出量に比べ25~40%削減することが不可欠です。

日本(福田総理大臣)が、気候変動に真剣に取り組む姿勢を示すためには、私たちは、以下の3点を「福田ビジョン」に含めることを強く望みます。

  1. まず最初に、日本の長期目標として、1990年の排出量に比べ2050年に60~80%削減することを掲げようとしていることについて歓迎します。しかし、2050年の目標だけでは、直ちにとりかかるべき排出削減対策の実施を遅らせてしまう恐れがあります。日本のリーダーシップを示すためには、この緊急性を要する問題に対して、最新の科学に基づいた対応をすることが不可欠です。すなわち、洞爺湖サミットの開催国として、日本が、1990年の排出量に比べて2020年に25~40%削減するという自国の中期目標を発表することが何より不可欠です。
  2. 次に、福田ビジョンではセクター別アプローチの推進を提案すると聞いていますが、それが、日本の中期目標を低い数値におさえるためではないということを明確にしておく必要があります。セクター別アプローチによってエネルギー指標に基づき排出削減ポテンシャル算出することは、一見、公平であるように聞こえます。しかし、その方法を推進することには強い懸念を抱いています。なぜなら、2008年3月、経済産業省によって発表された「2020年におけるエネルギー需給見通し」では、最先端技術を最大源導入した場合の最大技術ケースであっても、2020年の日本の排出削減が、1990年の排出量に比べたった4%にしかならないことが示されています。この数値と最新の科学が求める2020年に必要な排出削減数値との間には、大きなギャップがあることを私たちは憂えます。日本が、自身の中期目標として25~40%削減という数値に沿った発表をすることなく、セクター別アプローチを強く主張するなら、日本自身が真剣に気候変動問題に取り組んでいるというリーダーシップを図ることにはならず、科学を無視しているものと受け止められることになります。
  3. 最後に、日本は、特定のセクターに特別条件を与えない国内の排出量取引制度(キャップアンドトレード制度)及び、炭素税を実施することによって、世界に向けて、日本が京都議定書の第1約束期間の数値目標を真剣に達成する意思があることを示さなければなりません。

私たちは、福田総理大臣が、気候変動に真剣に取り組む準備があることを示すことによって、洞爺湖サミットでの大きな成果につながるリーダーシップを発揮されることを期待しています。そして、世界を、コペンハーゲンにおける実りある合意に向けて一歩前進させることができると考えます。

気候行動ネットワーク・インターナショナル(CAN)代表
米国CAN ディレクターPeter Bahouth

英文オリジナル

6 June 2008Bonn

Dear Mr Prime Minister,

I am writing to you on behalf of Climate Action Network International, a network of more than 400 non-governmental organizations worldwide, including seven in your own country.
We welcome your initiative to announce a "Fukuda Vision" to show your leadership, as G8 President towards the Toyako Summit next week.

If we wish to avoid dangerous climate change, the objective of the UN Framework Convention on Climate Change, it is clear that there is very little time left to act.According to the IPCC, global emissions must peak in the next 10-15 years and decline afterwards, and must be at least halved from 1990 levels by 2050, if we are to avoid the worst impacts of climate change. A 2020 target for deeper reduction with the range of 25-40% from 1990 levels by developed countries is essential to achieve this.

In order to demonstrate Japan's commitment to tackling climate change, we expect that you will include the following elements in your "Vision".

  1. First of all, although we value your willingness to have its own long term target within the range of 60 to 80 % by 2050, we are concerned that these alone will not spur immediate required action to reduce emissions. To demonstrate Japanese leadership, a sense of urgency, based on the science, is crucial.As the host country of the G8 Summit, Japan should state its own mid term goal within the range of 25 to 40 % from 1990 level in the Fukuda vision.We would strongly welcome such a goal.
  2. Secondly, we would ask you to make it clear that your advocacy of a sectoral approach is not being used as a means to lower the level of ambition of Japan's mid term goal.Although calculating the reduction potential based on energy indicators may sound fair, we have serious concerns about Japan's intention.In the March 2008 "Outlook of energy supply and demand in 2020" issued by the Ministry of Energy, Trade and Industry, it clearly states that even if maximum technology is applied in 2020, Japan's reduction amount results in only a 4 % reduction compared to 1990.Clearly, there is a significant gap between the result of this calculation and the required science-based emission reduction. Without announcing Japan's own mid term target within the range of 25 to 40%, Japan cannot show the leadership that it is detemined to follow the science.
  3. Lastly, Japan should show to the world that Japan is committed to meet its Kyoto target, by implementing a domestic Emission Trading Scheme and/or carbon tax without any special conditions for certain sectors.

We look to you to lead the G8 to a successful outcome by showing the Japan is ready to respond to the climate change challenge and by doing so, bring the world one step closer to a successful Copenhagen Agreement.

Peter Bahouth
Director, Unites States Climate Action Network,
on behalf of Climate Action Network International


国連気候変動ボン会議 AWG会合についての報告(2008年6月12日)

2008年6月2日から、ドイツ・ボンにおいてはじまった温暖化防止のための国連会議では、2つの補助機関会合と、2つの特別作業部会による、4つの会議が平行して開催されています。会合の第一週目に行なわれた、条約AWGと議定書AWGの会議内容を報告します。

4つの作業部会による会合

ボン会合の内容を構成する4つの会議の内容は、以下のとおりです。

SBI 気候変動枠組み条約の実施に関する補助機関会合
SBSTA 科学と技術に関する補助機関会合
議定書AWG 先進国の更なる削減に関する、京都議定書の特別作業部会
条約AWG 気候変動枠組み条約の下での長期的で協力的な行動に関する特別作業部会

このうち、補助機関会合は従来から行なわれてきたもので、今回が28回目の会合となります。特別作業部会は、「京都議定書」の第一約束機関が終わる2013年以降の、次期枠組みに関する話し合いを行なうための会合です。

ボン会議の第一週目は、条約AWG(アドホック・ワーキング・グループ)と議定書AWGの会議が併走する形でスタートしました。

議定書AWGの動き

3つのコンタクト・グループ

議定書AWGは、京都議定書のもとで、先進国の次期目標を決める作業部会です。つまり、アメリカを除いた先進国が、どのような目標を持つかを話し合う場です。

議定書AWGの会合では、まず次期枠組における先進国の目標の達成手段に関連して、柔軟性メカニズム、森林吸収源、セクター別アプローチなどついて、意見を出し合うラウンドテーブル(全体会合)開催されました。

それが終了した後、会議は以下の3つのコンタクト・グループに分かれました。

  1. 国際排出量取引やCDMについて
  2. 土地利用と土地利用変化と森林(LULUCF)について
  3. その他の項目

1と2のコンタクト・グループでは、先進国が削減目標を達成する手段としての排出量取引や、二酸化炭素(CO2)を吸収する吸収源としての森林をどのように計算するか、といったルール作りについて、話し合いが行なわれました。

注目された「その他の項目」

これらは、いずれも重要な項目ですが、今回の会議では、最後の「その他の項目」に注目が集まりました。これは、日本政府が最近とみに地球温暖化防止に関する国際交渉の場で繰り返し提言している「セクター別アプローチ」を話し合う場が、3番目の「その他の項目」に入れられたためです。

この「その他の項目」では、セクター別アプローチのほか、2つの項目が盛り込まれました。
一つは、京都議定書が規定する、二酸化炭素など6つのガスをはじめとした、さまざまな温室効果ガスやそのガスの温暖化係数(大気を暖める力がどれくらいあるかを図る指数)について。もう一つは、「バンカー油」として記述される、船舶や航空機からの二酸化炭素の排出についてです。

議題としてはどれも大きな内容ですが、3つ以上にコンタクト・グループを分けると、参加している交渉官の数が少ない途上国は参加できないため、結果として「その他の項目」が膨らむことになりました。
なお、これらの内容の一部については、同時に開催されていた意見交換の場であるワークショップでも議論されました。

議長の提案

この3つのコンタクト・グループでは、それぞれ要約(サマリー)を作成し、議定書AWGの議長に提出します。そしてその内容は、議長サマリーとして、まとめられることになっています。
これに際し、議長は付録という形で、ここまでのAWGで議論されてきた先進国の削減目標の設定と、その達成方法についてまとめたドラフトのテキストを、議長サマリーにつけたいと提案しました。

このドラフトのテキストは、今後の会合における交渉で、実際に議論の土台となるものです。ドラフトには、同じ項目について、各国の異なる言い分がいくつも括弧つきで挿入されるため、熾烈な国際交渉の原因となりますが、そもそもドラフトが出なければ、国際交渉自体を始めることができないため、これは重要な一歩となります。

補助機関会合は、あくまで準備会合であり、本格交渉の場ではありませんが、議長としては、2009年末のコペンハーゲンに向け、なるべく早く交渉をすすめていきたいという意気込みから、今回「付録としてでもドラフトを作りたい」という提案を行なった模様です。
しかし、各国の意見対立は解消しておらず、厳しい前途が予想されています。

条約AWGの動き

アメリカの削減約束、および途上国の削減やその支援について

条約AWGは、国連気候変動枠組み条約の下で、各国が協力し、長期的な温暖化の防止を話し合う特別作業部会です。ここには、京都議定書から脱落したアメリカも入っており、アメリカの削減約束は、この場で議論されていく予定です。
また、中国、インドなど京都議定書の下で削減目標を負っていない途上国が、どのような削減を行なっていくのかについても、この場で話し合われます。

条約AWGでは、まず、「適応」、「技術移転」、「資金」に関する3つのワークショップが開催され、各国からさまざまな意見や提案が出されました。このワークショップの内容は、ワークショップごとにそれぞれ副議長がサマリーとしてまとめ、条約AWGの議長の下で一本の議長サマリーとしてまとめられます。

次期枠組みにおける最大の課題

今回の条約AWGで、最も注目を集めているのは、「資金」メカニズムについてです。
その理由は、2013年以降の枠組において、国際社会が大幅な二酸化炭素の排出削減を実現するために、省エネルギーなどの技術を途上国をはじめ、全世界へ飛躍的に普及させる必要があるからです。
また、海面上昇や異常気象など、加速度的に悪化している気候変動に対応する「適応」のためにも、莫大な資金が必要とされています。

これらの資金の試算については、さまざまな数字が挙げられていますが、おおよそ数十兆円~数千兆円という規模になると見積もられています。
この資金をどうやって捻出し、運営していくか。これは、2013年以降の枠組における、最大の課題といっても過言ではありません。

今後必要とされることになるこの莫大な資金をまかなうためには、従来のように、先進国が自主的に拠出してきた貧弱な額に頼るだけでは、到底不十分です。
つまり、次期の枠組では、各国が自動的に資金が拠出される仕組みを作り、それを運営してゆくメカニズムを、気候変動条約の中にしっかりと作っておく必要があるのです。

「資金」メカニズムをめぐる提案

こうした問題意識が広がる中、6日に開催された「資金と投資に関するワークショップ」では、各国から具体的なアイデアが提案されました。あわせて9つほどの提案がなされましたが、そのうちの具体性の高い4つの案が注目を浴びています。

  • ノルウェー案:先進国の排出割当量(AAU)の一部を、条約の下の運営母体が最初からとりおいて、オークションとして資金をまかなう案。目標を設定すると同時に、お金が確実に確保できる方法である。
  • メキシコ提案:排出量・人口・GDPなどの指標による計算式で、課徴金を、先進国、途上国の両方に課し、削減、適応、技術協力の資金とする案。
  • スイス提案:国際的な炭素税をつくり、それを資金に充てて、確実に確保する案。ちなみに、CO2の排出量が、国民一人当たり1.5トン以下の国は税を除外されるとしている。資金は適応と保険のために、多国間ファンドに組み入れられる。
  • 韓国提案:途上国の削減行動にクレジットを付与する案。クレジットの市場は、先進国がより深い目標を持つことによって作り出す。
  • その他、中国はGDP比による資金供与案を、島嶼国は条約の下に適応ファンド作る案を提案し、保険のためのメカニズムや、再生可能エネルギーを早期に普及させるための技術ファンドについての提案もありました。さらに、航空機に課徴金を課す、ほかの京都メカニズムについても課徴金を課す、バンカー油に課すなどの案が出されました。

これらの案は、いすれもアイデアの段階ですが、重要ななことは、「予測可能で」「十分な」資金が「迅速に」「確実に」拠出され、適切で公平に管理運用される仕組みを作ることです。

その意味で、オークション、税・課徴金などはいずれも重要な選択肢であり、今後これらの議論が具体的に詰められていくことが求められます。

日本の参加姿勢

この条約AWGにおける重要な資金メカニズムについて、日本の発言は、これまでにも繰り返してきた、「クールアース構想で100億ドルを拠出する」「アフリカ開発会議(TICAD)で今後5年間にODA資金を倍増することを発表した」といった、日本独自の取り組みについての宣伝が大半で、新しい提案は全く入っていませんでした。

しかし一方では、資金についての議論において、「いかに民間資金を導入するかの仕組みを考えるべきである」といった、国の責任を回避するかのような発言を行ない、そのあまりの消極性に、他国との温度差が目立つ有様でした。
これから必要とされる「大きな資金」をいかに賄っていくかという、重要な交渉の場において、このような場当たり的な逃げの対応を繰り返していては、国際社会の信頼を失うことになりかねません。


Statement:ボン国連気候変動会合での進展は不十分(2008年6月13日)

2009年12月のコペンハーゲンにおける気候変動会議まで、あと536日を残すのみとなったが、本日閉幕したボン国連気候変動会合で、各国政府は、気候に悪影響を及ぼす排出量の削減に向けた将来枠組み作りを、ほとんど進展させていないと、WWFは述べた。

WWFの交渉チームによると、今回のボン会議は、将来枠組みを議論する国連気候変動会議の特別作業部会の第2回目の話し合いであったが、目覚しい進展は全く見られなかった。「各国政府が出し合ったアイデアは、単に、今後話し合うべき買い物リストとして載せられただけで、交渉の前提となるドラフトの形には全くならなかった。議論の進展はあまりにも遅い。」と、WWF気候政策コーディネーターのカトリン・グットマンは述べている。

WWFは、今まで気候変動の議論をリードしてきた欧州連合(EU)が、今回の会合では、全く新たな提案をすることもなく、交渉の進展を実質的にリードすることもなかったことに特に失望している。その一方、EU非加盟国のノルウェーとスイスは、両国とも、将来枠組みにおける資金メカニズムについて、実施可能な具体的なシステムについて詳述する提案を行った。そして途上国の多くが、適応・資金メカニズム・技術移転についての提案を行っていた。このような積極的な動きは、交渉を建設的に進めるための弾みと、政策そのものを提供する行動で、WWFは歓迎する。

「EUは高みの見物を決め込んでいるようだ。昨日までリーダーシップを示していたという驕りの中で、議論を実質的に前へ進めるために必要な中身のある提案を示さずにいる。多くの途上国が積極的に交渉に参加してきた今、EUはその挑戦に向けて動く必要がある」とカトリン・グットマンは述べている。

その他、オーストラリアとカナダは、森林と農業由来の排出についての議論の場で、可能な限りの抜け穴を獲得しようと画策した。これは、これらの国がエネルギー起源の排出量削減目標をなるべく低くする目的のために行っているもので、WWFは強く非難する。

「危険な気候変動を抑えるためには、各国政府が、これまでの取組をはるかに越える大規模な行動を検討しなければならないことを、科学は示している。各国政府がこの場で集中しなければならないのは、地球が必要とする成果を挙げることである。優先するべきは、、途上国が低炭素型の開発を実現するために必要な巨額の資金をまかなう新しい資金メカニズムの構築を、先進国が約束することである。その資金援助は、革新的な新規メカニズムと、直接資金をやり取りすることの二つを含む。」とグットマンは述べている。

来るG8+5サミットでは、世界のリーダー達は、アメリカに対し、国連の話し合いの場に戻るよう説得しなくてはならない。国連の場こそ、世界が直面しているこの難問解決ができる唯一の場である。

「日本には、北海道のG8サミットでの国連交渉に向けて勢いをつけるという、大きな責任がある。正式な国連の交渉プロセスは、G8+5諸国の首脳が一気に奮起すれば、その恩恵を受けるだろう」と、カーステンセンは述べている。


バンコク会議 条約の下でのAWG 報告(2008年4月7日)

条約の下での特別作業部会(AWG-LCA)報告

条約AWG会議の任務は、2007年にインドネシアのバリ島で決められた「バリ行動計画(BaliActionPlan)」に基づいた作業計画を立てること。この作業計画とは、4つの論点について、いつ、どのような方法で、議論を進めるかをまとめ、それを2009年のCOP15で報告・採択することを目的としたものです。

条約AWG会議の意義と構図

しかしこの条約において、最も重大なそもそも論は、この「条約AWGの任務は何か」、という点でした。

途上国側は、このAWGが設置されたことにより、今までなおざりにされてきた、気候変動枠組み条約の中で定められている「先進国の義務の履行について話す場」ができたことが、バリ行動計画の最大の成果とみています。その最重要課題として掲げられているのは、各国による「条約の履行の持続」です。

一方、先進国側は、気候変動枠組み条約が成立した1992年の「リオ・サミット(地球サミット)の時点とは時代が変わってきており、それに応じた取り組み方を検討するべきだ」と主張。条約の枠組みのもと、途上国を含めた温室効果ガス排出削減について検討する場として、AWGを位置付けようとしました。

特にアメリカ、日本、カナダなどの国々は「先進国」「途上国」の定義を見直すことを要求し、「ベルリン・マンデート(*1)」「共通だが差異ある責任の原則(*2)」から、シフトすることを求める発言を繰り返しました。

*1995年のCOP1のとき採択されたもので、温暖化防止のため、まずは責任の大きい先進国が削減数値目標をCOP3までに決める、というもので、これにより途上国の参加がない、という非難へとつながったもの

*2気候変動枠組み条約のもとに定められている原則で、地球温暖化は先進国が大量に温室効果ガスを排出してきたことによりもたらされた、という歴史的責任があるので、先進国と途上国の間には、責任の上でも行動の上でも差異がある、というもの

この先進国の姿勢に対し、途上国側は強く反発。「先進国、途上国の定義は、条約の4条2項に詳細に述べられているので十分」「リオの原則を再解釈しなおすのは危険」「条約は17年の歴史があり、これを重んじる必要がある。そもそも先進国は、条約の義務を履行していないではないか」という反論が相次ぎました。

各論点の要約

1)共有すべき長期目標のビジョンについて

ここでは、先進国側と途上国側、それぞれの中で意見が分かれました。

先進国側からは、日本の「2050年に現状から半減」というものから、EUの「先進国は2020年までに1990年レベルから25~40%削減。2050年までに60~80%削減。世界全体では今後10~15年以内に、排出のピークを超える必要があり、2050年に50%以上削減」とするものまで、幅のある複数の目標が提示されました。
この内容を比較すると、EUの目標が具体的な「拘束性のある義務」としようとしているのに対し、日本やアメリカ、オーストラリア、韓国、サウジアラビアなどは、目標をあくまで「抱負」として掲げるにとどめており、拘束力のないものを提案しています。

一方、途上国側でも、目標の設定について意見がいくつかに分かれました。
「すでに気候変動枠組み条約において、目指すべき削減目標について第2条に細かく書かれているので、これで十分」とみなし、それ以上の具体的な目標に合意することに抵抗を示す国が多くある一方で、すでに温暖化の影響を受けているAOSIS(小島嶼国連合)やSIDS(小島嶼開発途上国)などの国々が、自分たちがより深刻な危機にさらされていることを主張。IPCCの第4次報告ですらもう古くなっており、最新の科学的知見としては「大気のCO2濃度を350ppm以上にしてはならない」と言うことをたびたび引用して、より強い目標の設定を訴えました。

ブラジルは、各国が「共有すべきビジョン」は、あらゆる視点に基づいた議論を行なうべきであり、歴史的な責任や、「共通だが差異ある責任」論に基づき、附属書1国(先進国)と非附属書1国(途上国)がともに行動すべきこと、また、究極的には貧困撲滅を目指すことである、と主張しました。

インドの政府代表は、アメリカを含む附属書1国の更なる削減の合意なくして、「共有すべきビジョン」はありえないと主張。発展の代償として温室効果ガスを排出する権利は、各国に平等な方法で配分されるべきである、と語りました。

また一方、沿岸部に国土を広げ、海面上昇の危機にさらされているバングラデシュは、「世界全体としての排出削減目標を立て、地球の平均気温上昇を工業化前に比べ、2度未満に抑えるべきである」という、積極的な提言を行ないました。

2)温室効果ガスの排出緩和と削減について

ここでも、主に先進国と途上国、それぞれの立場を反映した意見の対立が見られました。

途上国側は、バリ行動計画で合意された、先進国と途上国の削減行動には、明らかに違いがあることを強調。先進国が自国の総排出量を削減する義務を果たし、途上国は「持続可能な発展」を実現する中で削減行動を行なう、という点を繰り返し述べました。

これに対し、全く正反対の主張を行なったのが日本でした。
日本はここで、セクター(部門)ごとに定めた削減可能量を、ボトムアップ式に積み上げて、その合計を削減目標として掲げることを提案。IPCCが求めているように、気候変動を危険な域に行かせないための削減量を、予め総量としての削減義務を負う代わりに、自主的な努力の積み上げることで、無理なく果たせる目標の設定を求めました。

もっとも、2008年3月に千葉で開かれたG8グレンイーグルス・ダイアログで受けた途上国からの批判を踏まえ、「主要排出国」という言葉を英語だけ「主要経済国」に換えたほか、「国別総量削減目標に代替するものではない」「共通だが差異ある責任の原則を踏まえている」点を強調したほか、「すべての国に適応するグローバルな基準を設けるわけではない」と言い訳し、各国の同意を求めました。

しかし、これらの言い訳にもかかわらず、日本の提案が示す実際の内容や、国連に提出された意見書、そして発言の当日、会議場で参加者に配られたペーパーには、すべての国に、セクターごとの削減可能量を積み上げた形で削減目標を設定することや、世界共通のセクターごとの基準を作り、そこから削減を行なうことを示唆する内容が明示されており、2013年以降、日本が排出量を削減すべきと考えている途上国の警戒心を招いただけでした。

この日本の発言のすぐ後に、バルバドス政府代表が発言し、まず「先進国が2020年までに25~40%削減する、という目標は明らかに少なすぎる」とした上で、日本の提案に対し、「基準年を変えたり、削減量を原単位や絶対量で示したり、国別やセクター別の目標をばらばらに設定してしまうと、先進国の取り組みを比較できない。統一された方法論(ベンチマーク)を用いるべきである」と反論。先進国の取り組みとしては、第一に「国別総量削減目標を掲げ、その上でセクターごとの目標を掲げるべき」と発言しました。

また、大人口を抱えるインドは、独自に提言を行ない、世界の国々を(1)最も排出しているOECD諸国(2)中規模に排出している国々(3)残りの国々に3分割し、それぞれ国民一人あたりの排出量を示して、「2050年に排出量を半減するためには、(1)の国々は90%、(2)は70%、そして(2)が削減出来なかった場合は、(1)が100%削減しなければならないだろう」と発言。また、(3)の国の人々には、温室効果ガスを排出する余地を残しておいてほしい、と訴えました。

3)温暖化の影響に対する適応について

すでに温暖化の被害を被っている多くの途上国にとって、その対策と被害軽減を意味する「適応」は、最も重要な課題です。そしてこの取り組みは、気候変動枠組み条約で、先進国の法的な義務とされています。

しかし、現在までのところ、条約上の特別気候変動基金、後発開発途上国基金のいずれに対しても、出資が十分に行なわれていないため、今後どのようにして、適応措置に必要な資金を捻出し、技術を移転するかが、この会議でも焦点になりました。

適応について、途上国側から提出された新しい資金供出提案は以下のとおり。

  • 各国の排出枠をオークションにかける。(ツバルなどAOSIS、SIDS諸国より)
  • バングラデシュからの「適応議定書」案
  • メキシコからの「多国間気候変動基金」
  • 保険制度を使った施策(2003年にミラノで開かれたCOP9の会議で、AOSISなどが一度提案しましたが、もう一度出しなおす、ということで、あらためて提出)

この提案の中で、最も注目に値したのは、各国の温室効果ガスの排出枠を、オークションにかける案です。これは、例えていうと、おおよそ次のようになります。

日本は京都議定書の約束によって、1990年時点の自国の排出レベルから6%削減することを義務付けられています。これは言い換えると、残りの94%を「排出してよい」排出枠としてタダで与えられている、ということでもあります。ツバルなどの今回の提案は、京都議定書でいうこの94%分の排出枠を、有償にする、というものでした。

つまり、温室効果ガスをたくさん出している国は、その分「排出してよい」枠を、多く買うことになり、排出削減を実現している国は少しの枠を買えばよい、ということになり、温暖化防止に積極的な国が、余計な出費を抑えられる仕組みです。
そしてこの提案では、ここで得られた収入を、途上国の適応策の費用にあてる、ということになっています。

メキシコの「多国間気候変動基金」も斬新な提案でした。これは、先進国だけでなく、途上国も支払い能力に応じて、適応への資金を出資し、これに参加した途上国は、支払った以上の適応措置を受けることが出来る、というものです。この支払い能力は、各国のGDP、排出量、そしてHDI(人間開発指標)をもとに算出されます。

この他、すぐにでもできる適応策として、南太平洋の島国パラオなどは、(1)雨水に多くを頼っている淡水資源の管理(2)品種改良により温暖化への耐性を強めた農作物の確保、などをあげ、アルゼンチンも、短期的に取り組むことのできるアクションについてワークショップを開くことを提案しました。

4)技術および技術移転と資金について

最後に行なわれたこの議論は一部、「適応」のための資金や技術の問題と重複しますが、ここでも途上国側は、条約上の義務を先進国が果たしていない点について、次々と指摘を行ない、「過去16年間も、この問題は動いていない」と強く主張しました。

これに対し、先進国側が「すでに技術移転は、民間セクター同士で行なわなれており、政府の関与できる余地は少ない」と言い切るなど、対立の構図も引き継がれることになりました。

技術の問題は、知的財産権(IPR)の問題とも密接に結びついています。
アメリカは、技術移転が条約の外で、主要経済国を含む民間セクターで行なわれていることを指摘。むしろ「IPR制度こそが温暖化防止の技術開発を進めるものである」とし、この制度を使って「利益を得てきた国もあるではないか、例えば中国の太陽光パネルなどだ」と名指ししました。

さらにアメリカは「条約が成立した時代から、世界は変わっている。条約の外を見るべきだ」と挑戦的に発言。これに対し中国は「10年前、私があなたに10ドルを貸したとする。その後、私が金持ちになったとしても、私が貸した10ドルを、あなたが返さなくて良いという法的根拠はない」と痛烈に反撃しました。

また途上国を代表して、アンティグア・バーブーダも「民間セクターを利用した技術移転は、ビジネスとして当然行われる技術移転よりひどい。IPRは技術のコストを制限するだけでなく、技術の普及も阻害している。この議論は、技術移転の話ではなく、技術トレードだ」と反論しました。

議論ではその後、世界銀行や日本、アメリカ、イギリスが拠出する資金の流れが断片的になっていることへの批判が相次ぎ、条約の元、基金を一本化して活用する必要があることが述べられました。

採択された作業計画

一連の議論の末、決議文のドラフトが作られることになり、深夜に及ぶ交渉が2晩続きました。このドラフトの作成は、非公開で行なわれたため、NGOの関係者はその細部を知ることは出来ませんでしたが、この折、日本代表が、日本が提案した「セクター・アプローチ」のワークショップを6月のボン会議で開くか否かについて、強硬な発言をしたようでした。これは一時、「G8の前にワークショップを開催したい」という首相官邸の意志を反映したものではないか、という誤解も招きましたが、最終的にその開催は、8月に開かれる3回目のAWG-LCA会合に持ち越されることになりました。

そして、最終的に作成され、採択された「作業計画」は、総じて途上国への配慮が優先されたものになりました。

計画では、すべての会合において、次のことが決められました。

  • 4つの論点について話しつつ
  • 6月のボンで、適応、技術、資金に関するワークショップを開き
  • 8月の会合で途上国における森林破壊防止と森林保護、およびセクター・アプローチと特別なセクター(航空機や船舶の燃料)についてのワークショップを行ない
  • ポーランドのポズナニで2008年末に開かれるCOP14で、保険制度を使った温暖化による被害のリスク管理や軽減、途上国と先進国の双方にプラスとなる技術移転について、また「共有すべきビジョン」についてのワークショップを開くこと

以上が、参加各国により合意された計画となりましたが、この内容については、必ずしも十全とはいえない要素もあります。

たとえば「共有すべきビジョン」ですが、これは今後行なわれる一連の会合に先んじて合意され、共有されなければ、ならないものです。なぜならこれが、削減や適応、技術移転や資金獲得などについての、全ての会合に通じた基盤となるはずのものであり、これ無くして建設的な議論は出来ないはずだからです。

WWFも含めた、温暖化問題に取り組む世界のNGOの連合体CAN(気候アクションネットワーク)でも、事前に独自で作成した、今回の作業計画で採択されるべき内容のリストの中で、まず最初に「共有すべきビジョン」を定めること、そして、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やUNDP(国連開発計画)の「ミレニアム開発目標」などについてのワークショップを行なうことを提案していました。

今回の会議は、「作業計画を立てる」ということが目的であったものの、そこに至る過程で新しい提案が途上国の側から数多く出されるなど、各国がさまざまな意見を述べ合い、中味の濃いまさに「交渉」そのものでした。

これは、従来のAWGで行なわれてきた「対話」レベルでの話し合いと異なる、新しい、大きな違いであり、進展といえる点でした。

しかし、建設的な面が見られた一方、どの論点においても、明確な対立構造があることも改めて明らかになりました。これらを、今後の2年間の交渉でどのように解決してゆくのか。その課題は山積みですが、限られたこの期間と議題の緊急性を考えた時、議論が悠長であった点も否めません。最終的に採択された作業計画が、それほど切迫感のあるものにならなかった点も懸念の残るところです。

今回の会議において日本が果たした役割と「セクター・アプローチ」提案

日本の政府代表団は現在、福田首相が1月にスイスで開かれた「世界経済フォーラム(ダボス会議)」で演説した、セクター別、ボトムアップ方式(積み上げ式)の国別総量削減目標の設定の提案に基づき、その内容に沿った発言を行なっています。今回のバンコク会議においてもその姿勢は維持されていました。

しかしこの提案では「すべての国の参加」「主要排出国(インドや中国などを含む)とともに」という言葉が羅列されていたため、「公平性」を強調する日本の主張が、日本にとっての「公平性」としか受け止められず、さらに、「共通だが差異ある責任の原則」や「バリ行動計画」を踏まえていない点が、多くの途上国に不安を与える結果になりました。

また、日本がセクター・アプローチに関するワークショップを、早速次回の会合において一番初めに取り上げようとしたことに対しても、途上国が反対。結局、セクター・アプローチのワークショップ開催は8月に先送りされ、しかも「航空機や船舶燃料」という、別の特殊セクターとの問題とともに検討されることになりました。

日本のこの提案は、2008年3月に千葉で開かれたG8グレンイーグルス・ダイアログに続き、バンコクでの国連の正式な会議の場でも、受け入れられなかったことになります。

これはある意味で戦略の誤りであり、取り返しのつかない結果を招いてしまいました。

そもそも、セクター・アプローチは、途上国が温暖化防止の国際的枠組みに参加する道を開く一つのツール(「食用きのこ」に喩えられる)であり、やり方によっては、とても可能性のある手法の一つです。

しかしこれを、「主要排出国」「すべての国の参加」という言葉を用い、さらに、先進国・日本としての明確な削減の数値目標とその期限を示さないまま、消極的な姿勢で語ったため、途上国の警戒心を招いてしまいました。この結果、セクター・アプローチという手法自体が途上国によって「毒キノコ」のように思われ、決定的な拒絶反応を持たせてしまうことになったのです。

EUなどは、セクター・アプローチが温暖化防止に有効なツールであり、他のあらゆるコンセプトと共に検討し、定義してゆく必要がある、と述べましたが、途上国の警戒心を解くことは出来ませんでした。

日本はこの失策を補い、G8に向けた戦略と、2013年以降の枠組みを考える上で、まず日本の中期目標を、2020年までに1990年レベルから25~40%削減することを定め、その上で、特定のセクターに向けた提案を行なうよう、方針を改める必要があります。

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