極東ロシアでシベリアトラの保護を訴えるフェスティバルを開催!


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

2013年9月29日、極東ロシアの町ウラジオストクで「トラの日」を祝うフェスティバルが開催されました。喜びと敬意に満ちた陽気なパレードが行なわれ、数千人の人々が沿海地方の森にすむ希少なトラに関心を寄せました。WWFはこの人気ある祝日の企画に14年間にわたり携わっています。

トラの保護意識向上をめざす「トラの日」

シベリアトラは極東ロシアの森に生息するトラの亜種で、その個体数は500頭程度と絶滅が危惧されています。

トラの個体数が減少した原因の一つには、密猟や人との衝突があり、多くの人々にこうした問題に関心を持ってもらうことがトラの保護に向けた重要な一歩となります。

9月の青空の下、40の色鮮やかな隊列からなるタイガー・パレードが、ウラジオストク市内のオーシャン・アベニューから「トラ広場」と化した中央広場まで行進しました。

ロシアのメディアもこの9月29日「トラの日」の祝日の祭りについて報じており、その報道によると参加者は2,000~6,000人にのぼります。

2013年の「トラの日」のフェスティバルでは、WWFロシアのアムール支部代表で、ロシアの著名な環境保護活動家でもあるユーリ・ダーマンが、沿海地方狩猟局のレンジャーたちに動物鎮静用の麻酔銃を寄贈しました。

この麻酔銃は、大型肉食動物と人間の衝突回避を担当するこのグループにとって極めて重要なものです。

人里などに現れたトラが、もし簡単に立ち去らない時は、レンジャーがその個体を捕獲しなくてはなりません。その際に、トラを殺すことなく対応するため、この特殊な遠隔注射器を使うことで、一時的にトラを鎮静し、生きたまま捕獲することができるのです。

シベリアトラ

沿海地方狩猟局のレンジャーたちに動物鎮静用の麻酔銃を贈る、WWFロシアのユーリ・ダーマン

麻酔銃を受け取った沿海地方狩猟局のトラ衝突回避グループの職員であるアンドレイ・オリョールは、グループが「2013年1月以降、実際にトラと人間との衝突危機を9件解決してきた」とし、レンジャーに対して定期的に支援と訓練行なっているWWFロシアに対して、感謝を述べました。

WWFによるチャリティー活動

この日、ウラジオストクの中央広場には、トラの日の参加者を迎える各市民団体のパビリオンが並びました。

WWFのパビリオンには、一目でわかる大きなロゴ入りのバルーンも青空に浮かびました。
そして訪れた人々をパンダとトラで迎え、彼らと一緒に写真を撮ったり、パビリオンの壁に掛けられた大きな垂れ幕にトラへの願いを書き込んだりしました。

また、パビリオンの壁には、トラの足跡と共に、トラの一生の解説も描かれました。

WWFのパビリオンでは、いくつかの面白いイベントも行なわれました。

まず登場したのは、WWFのトラ保護活動を支援している、ロシアのポップシンガー、ディアナ・アルベニア。彼女のアコースティックコンサートのチケットが5枚、プレゼントされました。

また、エレメンツ・オブ・ライフ・アートスタジオの若手アーティストによる、トラの絵の伝統的な描き方教室も開催されました。

WWFがチャリティーとして行なっている恒例のハズレ無しのくじは、大人にも子どもにも大人気です。

参加者たちはロゴ入りのマグネットやマグカップ、野球帽、Tシャツ、本、ビデオや、その他の役に立つお洒落なWWFグッズを手にしました。

このイベントの収益金約1,500ユーロ(約20万円)は、沿海地方狩猟局に贈られ、すべてトラ保護活動のために使われることになっています。

「トラの日」のパレードの様子。たくさんの大人、子どもたちが参加しました

保護活動の展望と課題

シベリアトラが極東ロシアの地で生きてゆくためには、生息環境である広大な森と、食物となるシカやイノシシなどをはじめとする、多くの草食獣の存在が欠かせません。

つまり、トラが生きられる森は、それだけ生きもの豊かな、生物多様性に富んだ森ということができます。

しかし、この森では、開発や違法伐採などによる森の減少が続き、その結果としてシベリアトラが食物を求め、人と衝突する事故なども、しばしば起きるようになりました。過去には、危険を回避するために、トラを射殺することもありました。

2013年の「トラの日」を祝うフェスティバルで、麻酔銃をレンジャーに送ったWWFロシアのユーリ・ダーマンは、次のように語りました。

「ここ数年、病気や怪我を負った若いトラが犬や家畜など捕まえやすい獲物を狙って村に近づく事例がかなり増えてきました。

この問題を正しく解決し、トラの命と村人の安全を守るためには、最初に見かけた段階でトラを追い払い、怖がらせて村に近づかないようにすることです」

そして、ユーリ・ダーマンは、こうした取り組みを可能にする高価な装備を整えるにあたり、資金を支援してくださっているWWFのサポーター(会員・寄付者)の皆さまに、感謝の言葉を述べました。

この「トラの日」に参加していたロシアの子どもや大人のほとんどは、ユーリ・ダーマンと共にステージにあがっていたレンジャーたちの姿を、おそらく初めて見たことでしょう。

彼らは今、極東ロシアのタイガの森で、実際にトラ保護活動の最前線に立ち、密猟者を取り締まったり孤児になったトラを飢え死にから救っています。

たくさんの方がトラへの思いを書きました

トラの絵の描き方教室で、トラの絵をかく子供たち

そして、森を守る取り組みもまた、大きな課題として取り組まれています。
トラの生息地の森でも違法伐採が行なわれていますが、こうして伐採された木材は、日本にも輸出されている可能性があます。

トラの減少は、私たち日本の消費者とも無関係ではありません。WWFは今後も、極東ロシアのトラの保護活動と環境保全に対する意識の向上を支援していきます。

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