よみがえれ、アジアのヒョウたち


アジアとヨーロッパを隔てるコーカサス(カフカス)山脈。その南部で、野生のコーカサスヒョウの姿が、調査用の自動カメラに収められました。コーカサスヒョウは、この地域に分布するヒョウの亜種ペルシャヒョウの地域個体群で、推定個体数は数十頭といわれ、絶滅寸前の危機にあります。今回の撮影の成功は、コーカサス南部で10年にわたり継続されてきた保全活動が順調に進んでいることを示す、一つの事例となりそうです。

西アジアのヒョウの危機

アフリカ、インド、アジア、東南アジアの島々。ヒョウ(Panthera pardus)は大型のネコ科動物の中で、群を抜いて広い分布域を持つ動物です。

ヒョウは生息する環境も、地域に応じて多様で、IUCN(国際自然保護連合)が公開している「レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)」での評価でも、絶滅危機種の中には含まれておらず、全体としては今も多くの野生個体が生き残っていることが分かっています。

しかし、地域別に見ると、明らかに姿を消そうとしている場所が少なくありません。

特に深刻なのはアジア地域のヒョウです。
ヒョウは分布域によって、9つかそれ以上の亜種(種(しゅ)をさらに細かく分けた分類の単位)に分けられますが、そのうち少なくとも5つの亜種が絶滅の危機に瀕しています。

その一つがアジア西部に分布する亜種のペルシャヒョウ(Panthera pardus saxicolor)です。

ペルシャヒョウはかつて、黒海からカスピ海沿岸にかけての山岳域に広く生息していましたが、19世紀から20世紀にかけて、激しい狩猟にさらされて激減しました。

現在は、1300頭ほどが、イラン高原や小アジア、コーカサス地域など、いくつかの地域に分断された形で生息していますが、それぞれで数が減少しているとみられています。

コーカサスヒョウはこのペルシャヒョウの地域個体群の一つで、コーカサス山脈一帯に生息。1960年代には一度、絶滅したともいわれていました。

近年の調査によって、現在はアルメニア、グルジア、アゼルバイジャンなどの国々に、わずかに生き残っていることが分かっていますが、それでも総個体数は推定で数十頭。依然として、絶滅の危機は高いままです。

ペルシャヒョウ

コーカサスの森

10年におよぶ活動の意味

WWFではこのヒョウが生息するコーカサスの自然を守るため、プロジェクト・オフィスを開設し、密猟の防止や森林を保全する活動を、長く行なってきました。

今回公開されたコーカサスヒョウの写真も、過去8カ月間にわたり調査用の自動カメラを仕掛けて撮影に成功したもので、場所は、アルメニア南部と、アゼルバイジャンの飛び地ナヒチェヴァン自治共和国の領内。

レンズは1頭のオスと2頭のメスの姿を捉えており、メスの1頭は仔を産んでいるものと考えられます。これらの結果からも、推定で現在この地域には最大で7個体のコーカサスヒョウが生息していると推定されます。

また、この自動カメラを使った調査では、ヒョウの獲物になる他の多くの野生動物の姿も確認されており、その数が増えているらしいことも明らかになりました。

WWFのコーカサス・プログラムオフィスの保護部長ヌザール・ザザンシヒリは、次のようにコメントをしています。

「こうした一連の調査結果は、特に私たちがここコーカサスの南部で、10年にわたって続けてきた保全活動が、ヒョウにとって必要なものであり、また好ましい傾向をもたらしてきたことを示すものといえるでしょう」

WWFはまた、IUCNのネコ科のスペシャリスト・グループに属する専門家や、地域の機関とも協力し、コーカサス地域でのヒョウの保全に関する戦略を開発。その推進を手掛けてきました。

この戦略は、アルメニア、アゼルバイジャン、グルジアの各政府によって、国家行動計画の一環として採択されており、新たな保護地域の設置など国レベルでの取り組みを推進する大きな力になっています。

撮影されたコーカサスヒョウの写真

コーカサスの山並み

ヒョウの生きる自然を守れ

アジアのヒョウについては、極東ロシアの沿海地方でも、別亜種のアムールヒョウ(Panthera pardus orientalis)が、現在推定個体数50頭前後といわれ、絶滅寸前の危機にあります。

しかし、ここでも10年以上にわたる保護活動の結果、近年はヒョウの個体数が増加している傾向が確認されており、また新たな保護区の設立も実現するなど、絶滅危機からの復活に向けた取り組みが進められています。

場所や環境は異なりますが、継続的な地道な調査や、密猟の防除、そして保護地域の拡大、増設など、取り組みには共通した点が多くあります。

何より、ヒョウのような大型の肉食獣が生きられるということは、その食物となる多くの草食動物が息づいているということであり、その場所には多様な生きものと、豊かな生態系がのこっていることに他なりません。

ヒョウを守ること、ヒョウが生きられる自然を守ることで、そうした景観をも、未来に向けて保全することができます。

極東地域でのアムールヒョウの保全については、その分布域の森で違法に伐採された木材が、日本にも輸出され、消費されている可能性があることから、日本にも深いかかわりがあるといえます。

WWFジャパンも、日本がそうした違法材を利用せず、FSC認証材のような「持続可能な木材」を選ぶことで、ヒョウが生きられる森の保全を推進していきます。

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