160機のカメラを設置!サイやトラの保護に向けた調査活動


インドネシア・スマトラ島にあるブキ・バリサン・セラタン国立公園の熱帯林に、WWFインドネシアと国立公園当局は、2013年11月から現在までに、約160機の自動カメラを設置。トラやスマトラサイなど絶滅が危惧される野生動物の新たな調査活動を行なってきました。ここで得られた映像や画像は、今準備が進められている「集中保護区」設置のためのデータとして活用されています。

スマトラ屈指の熱帯林保護区ブキ・バリサン・セラタン国立公園

インドネシア・スマトラ島の南西部の山岳地帯に位置し、3,600平方キロの面積を誇るブキ・バリサン・セラタン国立公園。

ここに残る広大な熱帯林は、ユネスコの世界自然遺産の登録地の一部であり、スマトラサイやトラ、アジアゾウなど、多くの絶滅危機種にとっての貴重な生息地でもあります。

しかし、スマトラ各地で大規模な森林伐採と農園(プランテーション)の開発が進む中、この国立公園内でも、コーヒーなどの栽培を目的とした違法な森林伐採と農園開発、さらに野生動物を狙った密猟が問題になっています。

国立公園当局と協力し、長年にわたりブキ・バリサン・セラタン国立公園で保全活動を展開してきたWWFでは、その取り組みの1つとして、自動撮影カメラによる野生動物の調査を手掛けてきました。

これは、森の中に赤外線センサーのついた自動撮影カメラを設置し、前を野生動物が通ると自動的に写真や動画が撮影できるもので、調査員を配置しなくても、動物の種類や行動が把握できる調査方法です。

しかし、データ回収にはやはり数週間をかけて森を回らねばならない上、動物の行動や、通り道などについての知見や勘が無いと、適切な場所にカメラが設置できないため、その実施は容易ではありません。

こうした現場スタッフの経験と苦労に支えられ、撮影された写真や動画は、絶滅危機種の個体数や生息域を特定し、より効果的な保護活動に役立てられています。

スマトラ島で進む森林破壊

調査活動の成果が「集中保護区」の設置の基礎に

2013年11月、WWFインドネシアと国立公園当局は、ブキ・バリサン・セラタン国立公園で自動カメラを用いた、新たな調査活動を開始しました。

対象地域は、公園の中心地域およそ800平方キロにおよぶ熱帯林。

調査チームはここに毎月15日間ずつ滞在しながら、4平方キロ四方ごとに4機のカメラを設置。さらに、すでに設置したカメラからデータを回収しつつ、電池の交換を続けてきました。

この作業は1年間継続され、2014年12月には中心地域のほぼ全域に、約160機のカメラの設置を完了し、その間、実に500枚以上にのぼる野生のスマトラトラの写真の撮影に成功しました。

さらに、全世界で個体数が300頭以下といわれるスマトラサイの撮影にも、2度成功。 カメラによる調査と並行して、スマトラサイの足跡や糞といった痕跡を探し、GPSを使って地図上に記録していく調査も実施しました。

こうした調査によって少しずつ明らかにされた、スマトラサイをはじめとする絶滅危機種の重要な生息域を、「集中保護区」とする新たな保全の試みが今、進められようとしています。

この「集中保護区」は、レンジャーによるパトロールにより、密猟や違法伐採の防止を特に強化するエリアで、すでに公園の管理権権限を持つインドネシア林業省や、WWFをはじめとする環境NGOの協力のもと、その実現に向けた準備が進められています。

また、保護区を機能させ、その自然を守るには、林業省だけでなく、さまざまな開発に対して責任を持つ、インドネシアの内務省や公共事業省の協力も不可欠です。

そのため、主にスマトラサイを保護することを目的に、省庁横断による特別部会の設置準備も行なわれています。

スマトラに生息するトラの亜種スマトラトラ。個体数は多くても500頭ほどとみられる

スマトラに生息するアジアゾウの亜種スマトラゾウ。絶滅が懸念されている

スマトラトラ。夜間に撮影されたものはモノクロ画像になる

スマトラ島で生産された農産物と日本市場

スマトラ島の森やそこに生きる野生生物の保全は、日本とも深いかかわりがあります。

島の南部ではコーヒーやカカオ農園の開拓が、中部ではパーム油を生産するためのアブラヤシ農園や紙パルプ用のアカシアの植林が拡大し、自然の森が失われています。

そして、ここで生産される産物の多くは、海外市場へと輸出されています。

日本に輸出されている紙やパーム油、コーヒーなどの中にも、ブキ・バリサン・セラタンをはじめとする国立公園や保護区内で、違法に栽培・生産されたものが含まれている可能性もあります。

このような海外の森や野生生物に及んでいる悪影響を、消費者の立場から防ぐ手立てがあります。

それは、合法的かつ持続可能な方法で生産された林産物の証明である「FSC認証」の付いた紙や、「RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証」のマークが付いた商品を選ぶことです。

消費者が、こうした環境に配慮した製品を選び、使うように心がければ、スマトラ島の自然と絶滅危機種を保護することに、間接的に貢献できるのです。

WWFはこれからも、スマトラ島の熱帯林保全と希少な野生動物の保護活動を継続していく共に、日本の企業や消費者に対して、環境に配慮した方法で生産された農産物や林産物の調達・購入を働きかけていきます。

*この自動カメラによる調査活動は、公益財団法人大阪コミュニティ財団/東洋ゴムグループ環境保護基金、公益信託経団連自然保護基金の助成を受けて実施されています。

密猟者が仕掛けた罠を回収する

ブキ・バリサン・セラタンの森

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