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空から森を見守る:タイの森林管理を変えた「Eyes on the Forest」プロジェクトを完了

この記事のポイント
WWFジャパンとWWFドイツなどが支援してきた「タイEyes on the Forest」プロジェクトが終了しました。ドローン、衛星画像、パトロールを組み合わせ、タイの二つの国立公園で森林減少率を年間0.2%未満に抑えることに成功しました。さらに、森林の再生、野生動物の調査、レンジャーの育成、地域住民との土地利用調整においても成果を上げました。
目次

小さな森林減少を空から見つける

タイとミャンマーの国境沿いに広がるダウナ・テナセリム・ランドスケープ。2025年時点で約757万ヘクタールの森林が残る、東南アジアでも特に重要な森林地帯です。しかし、その周辺では農地の拡大などにより、森林が少しずつ失われてきました。

こうした変化は一度に広範囲に起きるとは限りません。森林と農地の境界で、毎年少しずつ開墾が広がるようなケースは、レンジャー(国立公園所属の自然保護官)が地上を歩くだけでは発見が困難です。

そこでWWFタイは、タイ国立公園・野生動物・植物保全局と協力し、2020年度から「タイEyes on the Forest(EoF)」プロジェクトを実施。衛星画像、ドローン、SMARTパトロールを組み合わせ、森林の変化を早期に発見する仕組みづくりを進めました。

ケーンクルン国立公園で行なわれたドローンによる森林モニタリング。高解像度の画像を使い、森林と農地の境界で起きる小さな変化を確認します。
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ケーンクルン国立公園で行なわれたドローンによる森林モニタリング。高解像度の画像を使い、森林と農地の境界で起きる小さな変化を確認します。

2万ヘクタール近くを高解像度で撮影

モデルサイトとなったケーンクルン国立公園では、森林と農地の境界を中心に1万1,223ヘクタールをドローンで撮影。クイブリ国立公園でも8,125ヘクタール以上を撮影し、二つの国立公園で少なくとも1万9,348ヘクタールの高解像度地図を整備しました。

画像から森林の変化が疑われた場所を絞り込み、レンジャーが現地を確認することで、広大な森林を効率よく監視できるようになりました。2024年の画像を使った調査では、400区画のうち399区画を確認し、78区画、計25.17ヘクタールで森林への侵入を確認。国立公園当局による土地の回収と法的措置につながりました。

こうした取り組みの結果、2025年の森林率はケーンクルン国立公園で89.60%、クイブリ国立公園で97.22%を維持。両公園とも森林減少率を年間0.2%未満に抑えるという目標を達成しました。

ドローンで撮影された高解像度映像と土地利用区分を確認。疑わしい場所は現地訪問し確認します。
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ドローンで撮影された高解像度映像と土地利用区分を確認。疑わしい場所は現地訪問し確認します。

失われた森と野生動物を取り戻す

回収された土地では、約3.2ヘクタールにおよそ8,000本の在来樹種を植栽。さらに別プロジェクトとの連携により、約19ヘクタールで森林補植や天然更新を促す活動を行ないました。また、不法侵入を防ぐ方策の一つとして、植物を使って侵入を防ぐ「グリーンフェンス」を農地と森林の境界約2キロにわたって整備しました。

違法に開発された土地で行なわれた森林再生活動。在来樹種の植栽や天然更新の促進により、生態系の回復を目指します。
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違法に開発された土地で行なわれた森林再生活動。在来樹種の植栽や天然更新の促進により、生態系の回復を目指します。

また、森林が健全に保たれているかを確かめるため、自動撮影カメラによる野生動物調査も実施。最終的に53地点でカメラを運用し、ウンピョウ、マレーバク、アジアゾウ、マレーグマなど、少なくとも37種を確認しました。得られた情報はパトロール計画にも活用され、密猟やわなの発見につながっています。

森林内に自動撮影カメラを設置する調査チーム。画角調整のため、左の男性は、野生動物に成り代わって四つん這いになっています。
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森林内に自動撮影カメラを設置する調査チーム。画角調整のため、左の男性は、野生動物に成り代わって四つん這いになっています。

技術を広げる

プロジェクトが特に重視したのは、ドローンやデータを現地の職員が自ら使い続けられるようにすることです。UAV、GIS、データベースに関する研修には、少なくとも延べ469人が参加。森林法やパトロール研修を含めると、保護区職員への能力強化は延べ679人以上に上ります。EoFプロジェクトは、その経験を評価され、タイ政府による全国UAV研修にも通算8回、共同講師として招かれました。

さらに、ドローン画像や森林変化、現地確認の結果を一元管理するデータベース「Geospatial Conservation Database」も開発。ケーンクルンとクイブリの両国立公園で、実地研修と初期運用が始まっています。

データベースの画面。スマートフォンやタブレット、PCなどからアクセスできる。
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データベースの画面。スマートフォンやタブレット、PCなどからアクセスできる。

活動は自走化を実現したためプロジェクトは完了へ

ご紹介した一連の活動により、タイにおける森林管理は一変しました。ドローンを最大限活用することで、徒歩では難しい場所も簡単に確認できるようになり、さらに得られたデータを一元管理することでいち早く目的のデータにアクセスできるようになりました。さらにこれらの技術はレンジャーに引き継がれ、自分たちで運用できるようになりました。こうした状況からWWFはプロジェクトを完了させることにしました。
プロジェクトは2026年6月をもって終了しましたが、レンジャーや地域住民との協力関係はそのままに、これからも連携して他のプロジェクトを通してタイの森を守り続けます。空から森を見守り、現場の行動につなげるEoFプロジェクトの仕組みは、他の保護区にも広げられる新たな森林保全モデルとなりました。

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