シベリアトラの増加を確認!推定個体数は最大で540頭


※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。

2015年5月27日、ロシアの天然資源省は極東ロシアを中心に生息するトラの亜種シベリアトラ(アムールトラ)の総個体数が増加の傾向にある、とする調査結果を発表しました。これは、2015年2月に、10年ぶりに実施されたシベリアトラの総合的な個体数調査の暫定結果として発表されたもので、総個体数は推定で480~540頭。前回2005年の調査時の推定を上回る数字です。また、調査では、同じく極東地域に生息するヒョウの亜種アムールヒョウについても、確実な増加があらためて確認されました。

2,000人の調査員たちが見極めたシベリアトラの現状

今回のシベリアトラの最新の推定個体数の発表は、極東ロシアの沿海地方およびハバロフスク地方南部を中心とする15万平方キロ(北海道の二倍近く)におよぶ地域を対象に行なわれた、シベリアトラの総合調査の暫定結果を得て発表されたものです。

その数は、推定で480~540頭。
わずかではありますが、前回2005年の推定結果である428~502頭という数字を、上回る結果となりました。

2015年2月1日からおよそ半月をかけて行なわれた今回の総合調査は、ロシア連邦の天然資源省が中心となって取り組んだもので、連邦政府や地方政府の保護区当局者、政府監督機関の代表者、生物学者、経験豊富なハンターなど、およそ2,000人の調査員が参加。

足跡や自動カメラ(カメラトラップ)を使った、生息の痕跡を示すデータだけでなく、トラの食物となる草食動物や、生息地である森林の状態についても情報を収集しました。

WWFも民間団体のアムールトラセンターとともにその実施のための資金を支援。現場となった多数のフィールドで、実際の調査にも取り組みました。

アムールヒョウの増加も確認!保護活動の確実な成果が明らかに

また、この総合調査では、シベリアトラと同じく、ロシア極東地域を中心に分布するヒョウの亜種アムールヒョウの個体数についても、精度の高い調査が行なわれました。

その結果として、これまで多くて50頭ほどとされてきたその推定個体数が、最大で70頭に届くことが明らかにされました。

その内の57頭が生息しているのが、2012年4月に設立された「ヒョウの森国立公園」です。

この国立公園は、管理管轄がそれぞれ別の省庁に分かれていた三つの保護区を、一つの大規模な保護区に統合したもので、WWFなどが長年にわたり続けてきた、調査データの提示と政府への働きかけにより、設立が実現したものです。

今回の調査は、恒常的に把握するのが難しい、トラやヒョウの個体数や生息現状を明らかにするとともに、過去10年間におよぶ、こうしたさまざまな保護活動の成果も示すものにもなりました。

自動撮影カメラが捉えたアムールヒョウ

WWFロシア・アムール支部代表のユーリ・ダーマン。

今も続く危機

しかし、保護活動の前進が認められたとはいえ、トラ、ヒョウ、そして極東ロシアの自然に、明るい未来が約束されているわけではありません。

今回の調査では、保護活動を実施する上で必要な、トラが棲み続けてきた森林の現状把握にも、力が入れられました。過去10年間で、人の手により森がどのように変化し、どのような問題が生じてきたかを理解するためです。

日本もまた、このロシア極東地域から直接、または間接的に木材や木材製品を輸入している国ですが、こうした国際取引の背景には、現地の森林破壊や、違法伐採の影が見受けられます。

まだ十分に回復したとはいえないトラやヒョウにとって、生息地の環境破壊は、今後も最大の脅威として、保護活動の大きな課題となるでしょう。

厳罰化などの適用により、減少傾向にあるとみられる密猟の問題も、決して収束はしていません。

2014年10月には、沿海地方で高速道路上に停車していた自動車から、警察が大量の動物の骨を発見。WWFロシア・アムール支部とアムールトラセンターに送られ、確認されたこの骨が、密猟の犠牲になったトラのものであることが判明しました。

こうした現状は、現在の保護活動と、トラを生態系の頂点にいただく極東の自然が、いまだ多くの課題に直面していることを物語っています。

極東ロシア沿海地方の森と川。

2014年10月に押収されたトラの骨。

これからの保全、そしてさらなる活動の成果に向けて

今回の調査の結果は、あくまで暫定的なものであり、正式な報告は2015年10月に発表される予定ですが、これは今後10年間に、どの地域で、どのよう保護活動に力を入れるべきなのか、その方向性について、大きな示唆を与えるものとなります。

実際、調査の結果からは、全体では増加傾向が認められた反面、トラが減少している地域も明らかになりました。

こうした地域を中心に、新たな保護のための取組みが求められることになります、

WWFも今後、この調査データをふまえ、国立公園当局や現地のNGOと協力しながら、シベリアトラおよびアムールヒョウの保護・調査活動を継続してゆきます。

また、日本においても、木材の輸入を手掛ける企業に対して、森林保全に配慮した「責任ある原料の調達」を働きかけてゆきます。

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