メコン川流域で115種の新種発見!最新報告を発表


2017年12月19日、WWFはメコン川流域での生物調査の結果を報告し、2016年の1年間に115種の新種が発見されたと発表しました。WWFが調査を開始した1997年から2016年までの間にメコン川流域で発見された新種は計2,524種となります。しかし、今回新たに見つかった種の多くが、開発による環境破壊や、密猟や違法取引により、既に絶滅の危機に瀕していると考えられており、WWFはその早急な保全の取り組みが必要であることを強く訴えています。

生物多様性の宝庫 メコン

チベット高原から南シナ海まで4,000km以上を流れる、東南アジア最長を誇る大河メコン川。

カンボジア、中国、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの6つのインドシナ半島の国々に広がるその広大な流域には、サバンナから熱帯雨林、山間の急流から広い川幅を持つ本流の流れまで、多様な景観が存在し、生物多様性の宝庫としても知られています。

この地域でこれまで確認された野生生物は、2万種を数える植物をはじめ、哺乳類が430種、鳥類が1,200種、両生・爬虫類が800種。

また、流域河川に生息する魚類については、メコンオオナマズなどをはじめ、1,100種あまりが生息しているとされ、世界でメコン地域にしか分布していない固有種も少なくありません。

他にも、陸域の代表的な野生動物としては、インドシナトラやサオラ、アジアゾウなどが生息していますが、その多くは絶滅が危惧されており、WWFは世界で最も重要な生態系の一つとして、調査と保全を進めてきました。

顔が蹄鉄の形をしたコウモリ(Rhinolophus monticolus)。ラオスとタイの間にある森で見つかり、新種と認定されるまでに10年間かかった。

ベトナムシナワニトカゲ(Shinisaurus crocodilurus vietnamensis)。中国南部からベトナム北部の森に生息。石炭採鉱等による生息地の破壊や、ペット取引により深刻な脅威に瀕しており、ベトナムで生存するのはわずか200頭と見込まれている。2003年に発見されていたものの、2016年になってから、在来種とは別の亜種と認定された。

これまでに発見された新種は計2,524種!

このメコン流域で、WWFは新たに115種の新種が発見されたことを、2017年12月19日に発表しました。

これは、これまでに行なわれてきた調査の結果、2016年の1年間で新種として確認された種(一部、亜種を含む)の総数です。
その内訳は、哺乳類3種、魚類2種、爬虫類11種、両生類11種、植物88種。

WWFが調査を開始した1997年以降、メコン川流域で発見された新種の総数は、2016年の一年に発見された種を加え、実に2,524種に上ります。

これは平均すると、1週間に2種が新たに発見されてきたことになります。

カタツムリを食べるカメ(Malayemys isan)。川や森の中ではなく、タイ北部のマーケット2カ所で研究者により発見された。販売者は近くの運河で捕まえたと話しており、研究者が購入し調べたところ新種と判明した。ダムの開発により、既に脅威に瀕している。

急激な開発などによる自然への驚異

しかしこうした発見が続く中、近年メコン川流域では、急激な経済成長と人口増加に伴い、道路やダム等の建設計画が乱立。

一連の開発行為のために環境破壊が深刻化しています。

生息地の分断や消失により多くの野生生物も危機に瀕しており、今回新たに発見された種の中にも既に絶滅のおそれがあるものが多く確認されました。

実際、インドシナ半島では道路やダムなどのインフラだけでなく、アブラヤシやゴムなどの大規模な農園の開拓や、紙・パルプを生産するための植林地の拡大、違法伐採の横行などの影響で、多くの森林が失われています。

また、流域の河川でも、現在204件ものダムの建設計画が持ち上がっています。

充分な環境評価や対策が成されないまま、これら多くのダムが建設されれば、自然の流れは失われ、産卵のために長距離を遡上する魚類や、イラワジイルカなどの水生哺乳類などが息づく淡水生態系に、深刻な影響が及ぶと考えられます。

また、下流域での農業や漁業への影響も懸念されます。

さらに、希少な野生生物のペットとしての需要や、薬の原料、食肉としての利用等を目的とした、密猟や違法取引も横行。

今回の調査と報告では、捕獲され売られていた新種のカメが、地域のマーケットで見つかった例もあり、環境の保全、違法取引の監視や法整備等、多角的な取り組みが強く求められています。

ベトナム北部の川で発見されたモグラ(Euroscaptor orlovi)。地中で生活するためか、個体数は現状比較的安定している。

カエル(Odorrana Mutschmanni)。ベトナム北部の森で見つかった。セメントの採石場や道路建設による森林破壊により危機に瀕している。

自然資源の保全と、持続可能な利用のために

メコン川流域の豊かな自然は、6,000万人ともいわれる、多くの人々の暮らしを支え、多くの恵みをもたらしています。

しかし、環境に配慮のない急激な開発による生態系の破壊や消失や、資源の過剰な利用が続けば、こうした人の暮らしの基盤もいずれ脅かされることになるでしょう。

WWFメコン・プログラム代表のスチュアート・チャップマンは今回の発表に際して、次のようにコメントしています。

「このメコン川流域は、素晴らしい自然環境や野生生物が存在します。そして、それだけでなく、多くの人々が生きていくためにも必要な場所です。 貴重な自然や野生生物を保全しながら、人の暮らしも持続可能に続けられるよう、活動を続けます」

WWFはメコン川流域での生態系の保全と、地域の持続可能な発展の両立を目指し、森林モニタリングや、持続可能な天然ゴムの生産などをこれまでに推進。

また、違法な野生生物取引の取り締まり強化や、ダム建設に対する政策提言にも取り組んできました。

そうした中で明らかになった、今回の新種の存在は、今後もこの流域で、未知の生きものたちが更に発見される可能性を示しています。

WWFはこれからも、希少な野生生物や自然環境の保全と、持続可能な開発を目指した取り組みを支援してゆきます。

カンボジアで発見されたドジョウ(Schistura kampucheensis)。

ベトナム ラオカイ省の山

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