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WWFの活動

活動トピック

"ハチミツの木"の森と、村の養蜂業を支援する取り組み

インドネシア・スマトラ島中部のテッソ・ニロ国立公園やその周辺には、世界最大のミツバチ「オオミツバチ」が巣を作る背の高い木が500本ほど自生しています。高いものでは85メートルにもなるこの"ハチミツの木"は現地ではシアランと呼ばれ、そこから採れるハチミツは村の人々の大切な収入源です。しかし周辺の森では伐採が進み、また村の人々のハチミツ採取の方法も危険を伴うものでした。そこでWWFは、2004年よりテッソ・ニロでの森林保全活動の一環として、ハチミツ生産への技術支援も行っています。

テッソ・ニロ国立公園の豊かさと課題

インドネシア・スマトラ島のテッソ・ニロ国立公園は、島内に残されている最大の低地熱帯林が分布する地域です。

この国立公園は、スマトラトラやスマトラゾウなど希少な動物を保全することを目的として2004年に設立されました。

野生動物のための広い生息域を確保するため、また残されている低地熱帯林を守るため、2009年にはその面積を2倍以上に拡大し、現在の面積は8万1793ヘクタールとなっています。

国立公園として追加された地域は、長年、大規模な商業伐採が行なわれていた跡地であるため、林道なども残っており、国立公園に指定された時には既に外部からの不法な移住者が、園内でアブラヤシ農園の開発や経営を始め易い状態でした。

また、一部の地域住民も、本来であれば売買できないはずの国立公園内の土地の使用権が自分たちにあると考え、移住者にそれを売ってしまうことから、移住者が土地の所有権を主張するという事態も起きています。

そこでWWFは、2004年から、国立公園の周辺の村の人々が移住者に土地の権利を売ったり、また園内で違法伐採や違法な農園経営に関わることを防ぐため、森の保全を通じて収入が得られる仕組みづくりに取り組んできました。

その一つが天然ハチミツ生産への技術支援です。

オオミツバチの集う「シアランの木」

テッソ・ニロ国立公園とその周辺には、オオミツバチが巣をつくる木が500本程度自生していることが確認されています。

オオミツバチは、東南アジアから南アジアにかけて分布する世界最大のミツバチです。

彼らが営巣する木は幾つかの種がありますが、現地では「シアランの木」と呼ばれています。

85メートルにまで成長することもあるマメ科の木(Koompassia excelsa)もその一種です。

オオミツバチが営巣する木は限られるため、現地の人たちの間では、それぞれの木に対して慣習的な所有者が決められています。

外部からの入植者や違法伐採者も、住民との不要な衝突を恐れ、シアランの木を切ろうとはしません。

しかし、シアランの木だけが残されていても、オオミツバチが蜜を採れるような自然環境が周囲に残されていないと、ハチミツは採れません。

シアランの木から末永く天然ハチミツを採取するためには、周辺の森の豊かさを保つことが大切です。

こうした情報を知ってもらい、またハチミツ農家を支援することで、地域の人々にも森を守る担い手になってもらいたいというのが活動の目的です。

シアランの木とミツバチの巣

天然ハチミツの生産支援

オオミツバチの巣は非常に大きく、大きいもので全長1.5メートルに及びます。

1回あたりのハチミツ収穫量はおよそ4~5キロで、以前は地域で消費する分だけを採っていましたが、この天然ハチミツの生産から収入が得られるよう、WWFでは商品化に伴う品質管理や、パッケージとラベルの開発、卸先の開拓など、さまざまな支援を継続して行なってきました。

現在この天然ハチミツは通常行っている加熱処理を行なわず、本来の栄養分を損なわずに製品化しています。

スマトラ島では、2015年に大規模な野焼きや森林火災による煙害(ヘイズ)の被害が長くハチミツの生産量に影響を及ぼしましたが、2016年には前年ほどの被害がなく、テッソ・ニロ周辺地域の2016年におけるハチミツの主要な買取先への出荷量は、2015年比で、9.7トンから15.7トンへと回復しました。

このような体験などもあり、村の養蜂農家の協同組合の中でも森林保全への関心が向上、2016年からは、シアランの木の周りに村人自ら果樹を植林する活動が始まりました。

2017年7月現在、5ヘクタールの土地に200本程度が植えられ、将来ミツバチがより生息しやすい環境づくりを目指しています。

ハチミツの生産量が増えれば、シアランの木だけでなく、周辺の森の豊かさも更に守られることでしょう。

森林火災による煙害(ヘイズ)

ボルネオ島にも広がる取り組み

テッソ・ニロにおけるこうした取り組みは、同様の課題を抱えるボルネオ島(カリマンタン)にも広がり始めています。

西カリマンタンのアラベラ景観区では、オランウータンの生息地の森で暮らす人々が、違法伐採や野生動物の密猟などに頼らずに収入を得る取り組みの一つとして、ハチミツ農家の支援が行なわれています。

2016年には、3つの村で延べ15~20人に対し、計6回のトレーニングが行なわれました。

オオミツバチは気性が非常に荒く、集団で人を執拗に追いかけて刺すことで知られます。

その攻撃はスズメバチ以上に激しいものですが、これまで村の人々は防護服も命綱もつけずに作業をしていました。

オオミツバチの巣の採集は、ハチの活動が比較的穏やかな夜に行なわれます。

暗闇の中、シアランの木に登って行なう作業は常に危険を伴うものでした。

作業員の安全を守るために

そこで、まずは作業での事故を防ぐため、安全面に配慮したガイドラインが策定されました。

トレーニングを経て、今では明るい時間から、防護服や命綱を使用して安全にハチミツが採集できるようになりました。

また、スマトラ島で実施されている、より多くのハチミツが持続的に採れる方法も共有されています。

従来は、オオミツバチの巣全体を木から切り取って採取していましたが、新しい方法では、巣の先端部分のみを採集することにしています。

こうすると、巣を全て取るよりもハチによる巣の再生スピードが上がるため、ハチミツを採る回数も増えるのです。

支援の開始前ハチミツの採取は年3回行なわれていましたが、現在は4回の採取が可能になりました。

また、採取時には記録を取り、ハチミツの採りすぎを防ぐ仕組みも実施しているほか、ハチミツの製品化の過程での品質管理、衛生管理などのトレーニングも行なわれています。

天然のハチミツ生産は、周囲の森の環境やオオミツバチの行動に大きく左右されます。

たとえば2016年は、西カリマンタンの村では雨季が長く続いたことがオオミツバチの活動に影響したようで、ハチミツの生産量は思うように上がりませんでした。

難しい面もありますが、今後は、この活動の広がりとともに、生産量の増加も期待されます。

ハチミツの生産が地域の安定的な収入源となると同時に、村の人々の間で森の大切さへの意識が高まり、地域が主体となった森林保全の取り組みが更に広がっていくよう、現地での活動を続けていきます。

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