業界初、自動車メーカーが持続可能な天然ゴムの調達を宣言


2017年5月15日、アメリカに本社を置く自動車メーカー、ゼネラルモーターズ社が天然ゴムに関して、森林破壊や人権の侵害に関与しない「森林破壊ゼロ」の調達を目指してゆくことを発表しました。天然ゴムに関しては、近年その原材料調達において、自然の森の減少や地域住民や労働者の権利が尊重されていないなどの問題が報告されています。そんななか、持続可能な天然ゴムの調達が自動車メーカーによって明示されたことにより、こうした動きが業界全体で加速することが期待されます。

広まる「調達物のリスクの確認」

今、世界の各地で、自然資源に由来する産品の持続可能な調達が広がっています。

たとえば、木材、紙製品、植物油の一種で食品や石鹸などさまざまな製品に使われるパーム油、そして水産物など。これらの他にも多くの産品で取り組みが進められています。

実際、こうした自然資源に由来する製品や原材料の生産が、環境的、社会的な負荷、具体的には自然の森やトラなど希少な野生生物の生息地の減少を引き起こしていないか、地域住民が生活に利用している土地を、事前の合意なく奪ったりしていないかなどを、企業が確認しようとする動きは、もはや珍しいことはではなくなっています。

こうした姿勢と具体的な取り組みは、リスク回避による安定的な調達だけでなく、その企業の社会的な責任に対する意識の高さを表し、信頼性の評価にも欠かせない、きわめて重要な要素となっています。

近年、天然ゴムもそうした確認が必要な産品の一つとして、近年注目を集めています。

2015年にはWWFとタイヤメーカーのミシュラン社が協働し、インドネシアで貴重な自然林が今も残る国立公園に隣接した地域で、責任ある天然ゴムプランテーションの管理を実践するプロジェクトを開始。

ナイフなどでゴムの木の表面近くを削ると出てくる白い樹液。これを集めて凝固、加工したものが天然ゴム。

集めた樹液に薬品を加えて固め、シート状にして乾燥させる。

2016年には、ミシュラン社は「持続可能な天然ゴム調達方針」を公表し、全てのサプライチェーンのトレーサビリティの確認を開始しています。

同じ年の2016年にはWWFとトヨタ自動車株式会社とのグローバルなパートナーシップも始まり、森林生態系を保全するための取り組みの一つとして天然ゴムの持続可能な生産と利用を目指し、これを普及する活動がスタートしています。

自動車メーカーから新たな一歩

このような動きに続き、2017年5月、ゼネラルモーターズ社が調達する全てのタイヤにおいて「森林破壊ゼロ」を目指してゆくことを発表しました。

持続可能な天然ゴムの調達が初めて自動車メーカーによって明示されたことにより、こうした動きが業界全体で加速することが期待されます。

しかし、調達の取り組みはサプライチェーンを通じた協力が欠かせません。

このため、発表が行なわれた5月15日に開催された同社のメディアイベントには、タイヤメーカー4社も参加し、今後サプライヤーとともに協力して、この取り組みを進めていくことも話されました。

今回のゼネラルモーターズ社の発表を受け、WWFアメリカの森林部門バイス・プレジデントのケリー・セサレオは、「主要なサプライヤーとともにこれに取り組むというゼネラルモーターズ社のコミットメントを歓迎する。(中略)天然ゴムの75%がタイヤ製造に利用されることを考えれば、この市場変革にタイヤメーカーと自動車メーカーの果たす役割は大きい」と述べています。


WWFアメリカ 発表資料 2017年5月15日

持続可能な天然ゴムに向けて一歩前進

ゼネラルモーターズ社は、天然ゴム調達についてサプライヤーへの要求事項を策定すると発表した。これを受けWWFアメリカは、森林部門バイス・プレジデントのケリー・セサレオによる以下の声明を発表した。

「近年、天然ゴムのプランテーションは大規模な自然林減少の原因となっている。その範囲は、主要生産国である東南アジアを越えて広がり、「ランドグラブ」と呼ばれる強制的、あるいは大規模な土地取引と人権侵害を引き起こしている。

こうした破壊的な状況は、今日の天然ゴム需要を満たすために不可避というわけではない。保護すべき価値の高い自然林を皆伐するのではなく、劣化した土地において責任ある管理を行うことが、産業界の需要に応え、炭素蓄積量を増加させ、生物多様性を維持し、地域コミュニティの暮らしを向上させることにも貢献する。

ミシュラン社が2016年に発表した森林破壊ゼロ方針に続き、ゼネラルモーターズ社は自動車メーカーとして初めて、天然ゴム(タイヤ)調達ガイドラインを策定すると発表した。これは、自社サプライチェーンのすべてにおいて森林破壊ゼロを確実にし、かつ人権と労働者の権利を尊重することを目的としている。WWFアメリカは、主要なサプライヤーとともにこれに取り組むというゼネラルモーターズ社のコミットメントを歓迎するとともに、この発表によって近い将来、他の自動車メーカーやタイヤメーカーもタイヤの森林破壊ゼロに賛同することを期待する。

天然ゴムの75%がタイヤ製造に利用されることを考えれば、この市場変革にタイヤメーカーと自動車メーカーの果たす役割は大きい。

WWFアメリカは、自動車メーカー、タイヤメーカー、天然ゴムサプライヤーに対し、天然ゴムサプライチェーンの変革に貢献し、我々をより持続可能な未来へと導く、強い森林破壊ゼロ方針の策定と公表を求める」

原文 A Step Forward for the Future of Sustainable Rubber

A Step Forward for the Future of Sustainable Rubber

In response to General Motors (GM) announcement to develop natural rubber procurement requirements, World Wildlife Fund (WWF) issued the following statement from Kerry Cesareo, vice president, forests.

"In recent years natural rubber plantations have been contributing to massive deforestation across Southeast Asia and beyond, and have led to major land grab and human rights violations.

"These devastating outcomes are not necessary to meet today's demand for natural rubber. Implementing responsible management practices on degraded land, rather than clearing high conservation value forests will help meet industry demands, increase carbon stocks, maintain biodiversity and improve community livelihoods.

"Following in the footsteps of Michelin's 2016 zero deforestation policy, GM is the first automaker to announce their intent to develop tire procurement guidelines that aim to ensure zero deforestation and uphold human and labor rights throughout its supply chain. We welcome GM's commitment to bring their top suppliers on board and hope today's announcement will inspire automakers and tire makers alike to deliver on the promise of zero deforestation tires in the near future.

"Given that tire manufacture represents 75 percent of the natural rubber market, tire manufacturers and automakers have an important role to play in the transformation of this market.

"WWF calls on automakers, tire manufacturers and rubber suppliers to develop strong public zero deforestation policies that will help transform the natural rubber supply chain and set us on a path toward a more sustainable future."

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