第13回ネイチャーキッズ特派員 石垣島しらほ探検隊を開催


2014年7月28日から31日まで、8人のネイチャーキッズ特派員による、「石垣島しらほ探検隊」のツアーを実施しました。これはWWFジャパンと株式会社カスミが毎年行なっているイベントで、今回で13回目となります。石垣島での開催は初めてとなりますが、石垣島の輝く太陽のもと、特派員の子どもたちは、サンゴ礁や海の生き物を観察し、ホームステイなどをとおして、地域の方々との交流を体験しました。

豊かな自然と、サンゴ礁の海とともに、そこに暮らす人々の生活を学ぶ

2014年7月28日、「石垣島しらほ探検隊」が沖縄県石垣島の白保集落を訪れました。

この探検隊は、WWFジャパンと株式会社カスミが2002年から開始したイベントで、毎年、小学4~6年生を対象として環境をテーマにした作文を募集し、ネイチャーキッズ賞受賞者をフィールドツアーにご招待する、というものです。

2014年は85名の方から応募があり、その中から選ばれた8名の隊員が石垣島へのツアーに参加しました。

第13回任命式の様子

今回のツアーは、シュノーケル観察会でサンゴや、シャコガイ、鮮やかな色の魚など、さまざまな海の生き物を観察するとともに、地元で獲れる食材を活かした郷土料理を味わうことで、サンゴ礁の恵みによる「食」と「自然」のつながりを学ぶことを目的として実施したものです。

訪問先の沖縄県石垣島の白保の海には、サッカーコート約6面分ものアオサンゴ群集をはじめ、数多くのサンゴや魚などが生息しています。

その豊かな自然、貴重なサンゴ礁を保全するために、WWFジャパンは2000年にWWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」を開設し、地域の方と協力して活動を続けてきました。

2013年5月には、白保集落の有志により設立されたNPO法人夏花(なつぱな)が誕生。今回のツアーでは企画協力、現地受入を担ってくださいました。

サンゴ礁の海を目指して

1日目、羽田空港に集合した探検隊は、少し不安な表情も見られましたが、元気な掛け声に合わせ、ガッツポーズで記念撮影。ご家族に「行ってきまーす!」と笑顔で伝え、株式会社カスミ、株式会社カスミトラベル、WWFジャパンのスタッフとともに出発しました。

約3時間で到着した石垣島空港で出迎えてくれたのは、「夏花」と「しらほサンゴ村」のスタッフたち。空港出口にはシーサーや、大きなシャコガイ貝殻が飾られており、沖縄らしい雰囲気に、皆、キョロキョロ。これから始まる探検への期待が伝わってきました。

白保集落のみなさんと一緒に

「しらほサンゴ村」到着後は、ホームステイする予定の白保小学校の皆さんとそのご家族をはじめ、地元の学校の生徒さんや先生、研修生や留学生の皆さんともご挨拶。

さっそく「入村式」が執り行なわれ、「夏花」理事長の花城芳蔵さんらより歓迎の挨拶があった後、地元の高校生による、アイスブレイクのための「ほうれんそうゲーム」に取り組みました。探検隊の皆さんも少しずつ緊張が解け始めたようでした。

続いて、地元の市民グループ「白保魚湧く海保全協議会」の新里昌央さんから、白保の海と人々の暮らしについてレクチャーを受けました。白保の海には、世界最大級と言われているアオサンゴの大群落があることや、サンゴ礁は海の中の生き物にとっても、人々の暮らしにとっても、大切な存在であること。だからこそ、地域が中心となって、保全に取り組むことが重要であることをお話いただきました。

サンゴの海と地元の文化のお話

サンゴとは生き物で、サンゴ礁は地形であることも教わりました。 サンゴは動物ですが、共生する藻類が光合成を行なうため、植物のような性質も持っています。そして、小さなサンゴが集まって少しずつ大きくなりながら、サンゴ礁を形成する石灰質の骨格を作ります。

たとえば、ハマサンゴは1年間に1センチメートル程度成長しますが、白保の海には、推定数百年は経っていると思われる大きなサンゴがある、というお話も聞きました。

また、地元では、このサンゴ礁の自然や地形を利用する、独自の文化もあります。

昔から白保の人たちは、潮が引いて広がった海岸では、アーサなどの海藻や魚などのおかずを採ってきました。サンゴの石で石垣をつくったり、サンゴを焼いてつくる漆喰で屋根瓦を留めるなど、地元の風景を造り上げることに一役買うなど、サンゴ礁の海は人の暮らしとも深く結びついてきたそうです。

しかし近年は、海水温の上昇による、白化現象(サンゴに共生する褐虫藻が抜けて色が白くなり、栄養不足から弱ったり、死んでしまう現象)、サンゴを食べるオニヒトデの大量発生、強い台風による被害、陸地からの赤土の流出による汚染などにより、このサンゴの海も脅かされています。

特に赤土は、雨が降るとすぐに畑などから川へ、そして海へと流れ込み、海水の透明度を下げ、サンゴの上に降り積もって、サンゴを弱らせてしまう、深刻かつ身近な問題です。

これは、地元で農業を営む人にとっても、財産である土を失うことにつながるため、「夏花」や「しらほサンゴ村」では、畑の周りに、しっかりと根を張る月桃(げっとう)などの植物を植え、赤土の流出を防ぐ対策に取り組んでいます。

また、この月桃はショウガの仲間で、地元ではお餅をくるむ時にその葉が使われるなど、昔から生活の中で利用されてきた身近な植物でもあります。

第1日目のレクチャーでは、こうした地元の文化と一体になった、サンゴ礁の保全の取り組みについて、聞くことができました。

サンゴについて教わりました

八重山そばとジューシー(炊き込みご飯)をいただきました

赤土の流出を防ぐ月桃植えのお手伝い

サンゴの海を見よう!シュノーケル観察会

2日目は、サンゴの海を実際にその目で見る、待ちに待ったシュノーケル観察会です。

前日のレクチャーで受けた、海に入る際の注意事項や、ハブクラゲ、イソギンチャク、ウツボ、ウミヘビなど、危険な生き物についての説明を忘れないようにしながら、装備を整えて海で泳ぎます。

まずは浅瀬でシュノーケルの使い方を習いました。初めて挑戦の子もいましたが、少し経つと皆すっかり慣れ、ポイントに行くのが待ちきれない様子でした。

そして皆でボートに乗り、1つ目のポイントに移動。 浅瀬とは全く異なり、透明度が高くて深く、海の中が見渡せました。ここで観察したのは、ハマサンゴの巨大な「マイクロアトール」です。このサンゴ群集ができるまでに、800年くらいかかっていることを聞くと、探検隊の子どもたちはとてもびっくりしていました。

2つ目のポイントは、「クマノミ城」。サンゴ礁の海を代表する魚であるクマノミが、何十匹も泳いでいる姿を観察できました。良く見るといくつかの種類が異なる模様のクマノミが。背中に白い線が入った、セジロクマノミというめずらしい種類も見られました。

普通に人が暮らしている白保の集落のすぐ先に、これほどの命にあふれた海がある!探検隊の皆さんも、さまざまな思いでこの海を満喫されたようでした。

この日の夕食は、「しらほサンゴ村」の中庭でバーベキュー。翌日、ホームステイでお世話になる、白保小学校の皆さんによる郷土舞踊を鑑賞しました。探検隊の子どもたちもおじい、おばあに教わった白保方言で自己紹介に挑戦。

最後には地元の先生に教えていただいた舞踊を、子どもたち全員で披露しました。初日よりもみんなの距離感がぐっと縮まった夜でした。

ホームステイで地元の暮らしを探検

3日目は、島での暮らしをより深く体験してもらう一日となりました。

探検隊はまず、白保集落内のオリエンテーリングに挑戦。地域で長い間大事にされた、集落の中に見られる史跡や拝所、巨樹などをめぐりながら、島とこの地域の伝統、歴史について学びました。

午後からは、島の今の暮らしを体験しよう!ということで、地元のご家庭でお世話になるホームステイを実施。泊り先となる家の保護者の方にお迎えに来ていただき、それぞれホームステイ先でいろいろな体験をさせていただきました。

白保は海に面した集落ですが、漁業専門で生計を立てている人はほとんどいません。地域での暮らしは、多くが農業や畜産業によって支えられています。

ホームステイした探検隊の子どもは、牛舎での牛の世話をお手伝いするなど、普段はできない体験ができたようです。

その他にも、ご家庭ごとに郷土芸能の獅子舞見学や、島内の一周、肝だめしなど、さまざまな楽しい機会をご準備いただいたおかげで、皆さん楽しみながら、地域の方々との交流を深め、そこに暮らす人々の生活を学ぶことができました。

前日、宿泊先に分散する直前には不安を訴える子もいましたが、翌朝に集まった皆の笑顔は、充実したホームステイの様子をしっかりと物語っていました。

今回のツアーは、以上をもって全ての予定を終了。忘れられない体験を胸に、全員が無事、帰途につきました。

探検隊の誰もが、これを機会として、自然の恵みについて考えるきっかけを手にし、自然を大切に思う大人になってくれるように。WWFをはじめ、一連の企画、受け入れを行なった関係者、スタッフたちはそう願っています。

探検隊の皆さん、白保の皆さん、本当にお疲れさまでした。

シュノーケルに出発

浅瀬で練習中

おじい、おばあに方言を教わりました

みんなで舞踊に挑戦

オリエンテーリングで白保のことを知りました

さとうきびを試食

ホームステイでは牛舎のお手伝いも

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